ユーゴ空爆の背景 利権と歴史と謀略と侵略とメディアの嘘と(37)

ユーゴ戦争:報道批判特集

初端からユ-ゴ戦争は大手デマ宣伝横行

1999.8.27 WEB雑誌『憎まれ愚痴』35号掲載

読者の積極的コピー提供による資料紹介

 別途、http://www/jca.apc.org/~altmedka/ron-23-bos.html(リンクミス2016.12.27訂正)の最後に収めた年表、「旧ユーゴズラビア連邦の崩壊」を見れば明らかなように、最近のユーゴ戦争の歴史は、少なくとも、1989年12月の「自由選挙実施方針」決定にまでは溯らないと、その真相が見えてこない。経済的な土台としては、別途記した「カスピ海の石油」争奪戦がある。

 西側寄りのデマ宣伝の中でも、最も極端で、しかも、世論操作の上で最大の効果を発揮したのは、セルビア兵による万単位の「レイプ事件」報道だった。日本の大手新聞も、短いベタ記事だが、その外電を伝え、その後に、それがデッチ上げのデマ宣伝だったことが判明したにもかかわらず、訂正記事を掲載しなかった。当然、そうした「お上品」な嘘付き居直り常習犯の大手報道による資料は求め難いので、つぎのような「大衆的」「猟奇的」報道によって、まとまった批判の文字記録の存在を指摘する以外には、適当な方法がないのである。


『週刊実話』(1993.5.22)

現地報告!

本誌特派

3万人レイプ事件はウソ!
「ボスニア」内戦報道に大疑問!
俺の目で確かめた

写真説明:

1.「拷問の上、下腹部を切り裂かれたセルビア女性」

2.「生きたまま眼をえぐり取られた兵士」

3.「戦闘で死亡したイスラム教徒兵が持っていた慰安所の入場チケット。右端には、血がこびりついている」

4.「戦争に女・子供の別はない」

5.「強制収容の場所と慰安婦の人数が書かれたレポート」

6.「死んだボスニア兵が持っていた身分証明書」

7.「拷問を受けた後に焼かれたセルビア人」

[以下、本文]

「虐殺」と歴史的内戦

 泥沼化する一方の旧ユーゴスラビアの内戦は、勃発以来2年目を迎えようとしている。

 なかでも、旧ユーゴ内戦の報道で中心になっている場所がボスニア・ヘルツェゴビナ共和国、一般にはボスニアど呼ばれている場所だ。

 内戦が起きる9年前、このボスニア・ヘルツェゴビナ共和国の首都サラエボで、冬季オリンビックが開催されたといえば分かりやすいだろう。

 このユーゴ内戦での『レイプ3万人』衝撃ニュースが世界に走ったのは、今年の年頭のことだった。「セルビア人によるイスラム教徒とクロアチア人に対する虐殺とレイプ」の報道だ。

 この歴史的内戦の取材に当たって、ラッキーだったのは現地で『民族問題』に関心を持つスウェーデンのフリージヤーナリスト・ミロス氏と出会えたことだ。以下はミロス氏との同行取材となる。

 まず、立ち寄ったのが、新ユーゴの首都ベオグラード。長々と続いた旅、ようやくベッドに横になり、日本から持ち込んだ新聞のスクラップを読み返してみる。“デマ”らしきものがないかと思ったからだ。

 やはり出てきた。まず虐殺だが、3000人虐殺と、捕虜収容所での虐待が書かれている

 ところが、これらの文章は全て末確認なのだ! 誰も死体など見てはいないのだ。セルビア人が3000人のイスラム教徒を虐殺したという記事などは「2人のイスラム教徒の証言によると・…」となっている。

 そのほかには、「サラエボ放送によると……」とか「ボスニア・ヘルツェゴビナ政府によると・…」という具合に日本の新聞記事に出ている事は、どれもこれも見た人間はいないし、証拠写真すらない。出所がハッキリしていれば新聞に掲載してもよいということらしいが、それが事実かどうがは問題にならいらしい。

 新間記事の終わりに……という、とか……らしい、という具合に人の話のまた聞きなのだ。

 このことについて矛盾していることも多い。

 例えば、虐殺された人数やレイプされた女性の数が雑誌や新聞で違っている事。調査元が違うのか、独自の調査の結果生じた事かも知れない。

 しかし、問題は最初に違っていたものが段々変化して来ることだ。つまり、最初1000人殺された記事がそのうちあれは12人の間違いでしたとか、あれは500人だったそうですという具合だ。

 確認したのなら問題ないが結局、誰も見ていないのが実に怪しい。

まかり通る「ヤラセ報道」

 つい先日、日本でも不思議な矛盾が3月29日の毎日新聞と28日TBSの深夜番組CBSニュースで見ることが出来た。

 まず、CBSニュースはドラガンというセルビア人を「現在では人道的援助活動をしている男性」と紹介し、ドラガン本人も登場した。

 ところがその翌日、毎日新聞は同じ男性をカピタン・ドラガン(ドラガン大尉)として紹介している。そしてドラガンの事を軍人としてルポ、写真も掲載した。つまリ、直接会っているのだ。その記事にはドラガンは自分のキャンプを持っており、戦車数両がそこにはあった。そして3週間で兵士を育てる事が仕事と書いている。兵士を育てる軍人と人道的援助活動を援助する男性とどう結び付くのだろうか

 もし毎日新聞が本当ならCBSは「やらせ」の報道をしたことになる。逆にCBSが本当なら毎日新聞の記者はいったい何を見てきたのかということになる。さらに実は両方ウソかもしれないし、世界的なテレビ局CBSと日本の3大新聞社の1つ毎日新聞がドラガンという男にすっがりダマされたのがもしれない。となると何が本当なのか全く分からない。

 要するに旧ユーゴの内戦のニュースは証拠がなかったり憶測や想像で作られているものが少なくないのだ。

 その最たるものがレィプ収容所とかレイプ慰安所のニュースだ。これが嘘だと言っているのではない。戦争にこの「慰安」の2文字は付きものだ。

 ボスニアでセルビア人が2万人のイスラム教徒をレイプしているというのが新聞やテレビ、雑誌の言い分である。しかし、だれもこの慰安所がどこにあるのか見たものはいない。写真すらない

 まずレイプされた人数だが、最初クロアチアで発表されたのは2万人だった。その後ボスニア政府の戦争犯罪調査機関が発表したときには3万人になっていた。次にボスニア内務省が発表したときには5万人になっている。どれが本当なのか。

 そのうえこれは全て推定人数で実際にテレビに登場したり雑誌で紹介されたのは、1桁の人数だ。

 その登場した人について少々おかしな部分がある。それは妊娠して出産するまでの事だ。

 ボスニアに内戦が起きたのは去年の4月。最初にレイプされて出産するはめになった女性が現れたのが去年の9月。出産が早すぎるのだ。

 さらにイスラム教徒の女性は顔を隠すのがしきたり。だからテレビや雑誌に好んで顔を出すことはない。

出産したのは黒人の子供

 ところで、このレイプ報道には1つの約束ごとがある。それは、セルビア人が他民族に対してレイプを行つているというもので、その逆は報道しないことだ。そしてこのレイプとセットになっているのが民族浄化。

 民族浄化というのは要するに日本を日本人だけの国にするために、その他の国籍の人を追い出したり殺したりすることだ。

 セルビア人にレイプされたイスラム教徒がジュネーブで出産したという報道が現地に伝わってきた。やはりレイプは行われていたのだ。事実セルビア人も否定はしない。

 ところが生まれてきたのが黒人だった。

 白人同士の結婚で黒人が生まれるケースはアメリカなどでは決して珍しくはないのだが、同じスラブ人であるセルビア人とユーゴのイスラム教徒との間に黒人ができることはまず考えられない。

 セルビア人は言う。「戦争しているからセルビアの兵士もレイプしてるでしょうね。でも私たちだけが戦争しているんじやないから、セルビア人だってレイプされているはずよ」

 サラエボの近くでは「子供ができたんだって。黒人かもね」というジョークがはやりつつある。

 セルビアのべオグラードにある病院の産婦人科を訪ねてみた。

 担当医師は不在だったもののカウンセラーに会うことが出来た。慰安婦にされた女性のためのカウンセラ-だ。

「慰安婦にされた女性は生きた屍のようで一言もしやべらないね。じっと椅子に座っているだけなの。本当に狂ってしまうのはお母さんの方よ。娘のかたき討ちにボスニアに行くという母親は少なくないの」

 レイプされたセルビア人の話題は出てこないが、やはりお互いが同じ事をやっている。このカウンセラーの話では、堕胎することを希望する女性にはスイスに行って病院で相談することを勧めているそうだ。

 この[ママ]慰安婦がいる以上、慰安所があるはずだ。報道ではボスニアのフォチャにある『パルチザン・ホール』サラエボ近郊の『ソニヤ・カフェ』等でセルビア人がレイプを続けてるという。記者は確認すベくボスニアに向かった。

慰安所のチケットを入手

 取材は困難を極めた。第一、この寒さでセックスなどできる訳がない。電気もなければガスもない。おまけに灯油もないときた。気温は零下20度にまで下がる。人肌で暖めるのがよいというものの、この気温では論外だ。スキー場の雪の上でセックスする自信のある人はいるだろうか。それも夜中に。

 とは言うものの、キリスト教団体が内戦に関わるセルビア、クロアチア、イスラム教徒それぞれが慰安所を作り女性をレイプしていると非難声明を出した。そしてレイプされ、妊娠を理由に解放された女性が、自分達が強制収容されていた場所を告白し、これをまとめた。それを入手したので紹介しよう。

 ここには場所と慰安婦の人数が書かれているのだが、常時10から20人が1ヵ所に集められている。そして慰安所は、ホテルだったリ街角の小さなカフェの2階だったりする。これでは見付かるはずもない。

 ボスニアを取材中あるプレスセンターで意外なものを見せてもらった。以前日本人ジャーナリストが持ち帰ったそうだが、貴重な資料なので現在では持ち出し禁止になっている。

 これが何かと言うと、セルビア人との戦闘で死亡したイスラム教徒兵が持っていたもので、何とイスラム教徒のために作られた慰安所の入場チケットだった。大股広げて、露骨なまでに描かれた女性器そして男根が4つ。この入場券には「セルビア人のキャンデーのように甘いプッシー。セックス・クラブでやっちまおう」らしきことが書いてある。

 セルビア人がレイプしているのも事実だろうが、レイプされているのも事実だつた。

 このレイプ報道でセルビア人に戦争責任があるとしているが、戦争責任はイスラム教徒にもクロアチア人にもあるような気がしてきた。

 これについてボスニアや新ユーゴでは「西側のジャーナリストがでっち上げているのさ。みんなレイプしているがセルビア人だけがやっているとしか伝えない。人数だってN.W誌とR通信の記者が、でっち上げたって認めたようなもんだし、欧米のテレビ局が、これをネタにニュースをつくっちまったのさ。おまえもその一人か」と人々が口にする。

 びっくりしてレイプ報道のねつ造の話を間いたら、R通信の記者がある雑誌記者と談合してレイプ問題をつくり、人数を決めたという。この内容に関する話し合いがきちんと書き留めてあったR通信の記者の手帳が何らかのきっかけで公表されたので嘘がばれた。嘘がばれた後、R通信社はこの記者との関係を断絶することを発表、間接的に記者がレイプ問題を談合の上ねつ造、世界中に配信したことを認めた

 ねつ造されていたのだ。レイプの人数が増えていったり、同じ話題ばりかをテレビが流すわけだ。

 最後に記者がクロアチア共和国(セルビアの宿敵、現在も戦闘中)の首都ザグレブで聞いたレイプに関する報道を紹介しよう。

「あるクロアチア人女性がセルビア人にレイプされたそうだ。そして彼女は妊娠してしまった。しかし、彼女が身ごもったのはセルビア人ではなく犬だった。実はセルビア人が見せしめにクロアチア人の女性を犬を使ってレイプしたのだ」というもの。

 世界史に残る内戦なのだが、このレイプに関する報道、真実は極く僅かしか伝えられていない

 以上。

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