ユーゴ空爆の背景 利権と歴史と謀略と侵略とメディアの嘘と(10)

ユーゴ戦争:報道批判特集

誤爆再論:米軍事分析家も技術に疑念

1999.5.21 WEB雑誌『憎まれ愚痴』21号掲載

1999.5.17.mail再録。

 先のmailで、簡略にいえば、「いかに電子技術が発達したとはいえ、誤爆の基本は操縦士の逃げ腰にあり」との持説を展開しましたが、その後、録音して置いた米軍放送の中に、アメリカの軍事分析家が、やはり、技術的な疑問を呈している部分があるのを発見しました。要約すると、武器(weapon)は不完全(not perfect)だから、誤爆が起きるのは防げない、という主旨でした。

 この際、皆さんにも、わがチャリン語学による副産物の情報収集を推薦しますが、無料で聞ける米軍放送には、世界規模の米軍ニュースだけでなく、定時ニュースのAP, UPI, ABC, CNNなどの大手のニュース、日本で作られたニュースも入っています。

 特にお勧めしたのは、NPRの略称の公共放送ラディオの特集です。

 アメリカの公共放送は、日本のNHKと民放の関係とは逆の歴史で、1960年代、「テレヴィは一望の荒野」という連邦通信委員長の名言が生まれた時代に始まった地方分権的なメディアです。テレヴィもやっていますが、日本での放送はラディオだけです。その後、政府の補助金カットなどにより、大財閥の資金提供告知が入るなど、商業化の傾向もあります。しかし、あくまでも比較上のこととはいえ、ほとんどがユダヤ資本で、シオニスト・ロビー支配下の大手メディアよりは、公平性を保っています。日本で聞く場合、現在は、週日の朝9時から10時、土・日の朝7時から8時、1時間枠のニュースと現地ルポの特集があります。終日の夜10時から11時、11時から12時にもありますが、途中に経済ニュースが入ります。

 これらのラディオ放送を受け身で聞いているだけでも、アメリカ人、アメリカの軍人、などへの報道操作の状況が分かります。「情報は敵から取れ」はスパイ学の初歩です。

 さて、5.11.のNPR特集の中には、ペンタゴン(米国防総省)発のユーゴ中国大使館「誤爆」問題ルポがありました。そこでも、「古い地図」発表への疑問が、様々に展開されていました。その最後に、上記の軍事分析家のコメントが入っていたのです。

 以上のような問題の報道を分析する際に、私が最も重視しているのは、単なる情報源の信頼度だけではなくて、その「論理」です。情報の比較検討による論理的な検証作業です。昔から「眼光紙背を貫く」と表現があります。紙に文字で書かれた情報を読む際にも、その裏側を読み取り、真相を見抜く「眼力」が必要だったのです。「眼力」とはもちろん、そこに繋がる脳ミソの中の情報の蓄積、論理的分析力の象徴的表現であって、たとえ視覚障害者であっても、予備知識が不足で「心ここにあらざれば見えども見えず」の視覚健常者を上回る「眼力」の持ち主がいます。

「古い地図」問題では、「バイブルを使ったら」とCIAをからかったFavorite Monologue(お好み独り言)という番組を先に紹介しましたが、この番組の主役のコメディアンの名前は、ジェイ・レノーです。別のニュースによると、彼はカー・マニアで、何十台ものクラシック・カーを持っていて、毎日、取っ換え、引っ換えしているそうです。ジョークは、アメリカでは生活必需品ですから、おそらく相当な売れっ子なのでしょう。

 上記のNPRの特集の方は生真面目なのですが、「古い地図」という弁解の件では、sイタリアのアルプス山地のスキー場でのゴンドラ追突で20人の死者が出たアメリカ軍の訓練飛行の件と、スーダンの報復爆撃の例が、同じ弁解だったので、その点を指摘していました。私は、この「CIAに汚れ役を引き受けさせる」手口の「逃げ口」を、論理的に塞いでしまいたいのです。

 論理的に詰めると、「古い地図」説には本当か嘘かの、ふた通りしかありません。

 まず、「古い地図」説が本当で、CIA(中央情報局)の情報が間違っていたというのなら、ではでは、その同じCIA、別途情報によれば毎日、大統領に最新情報分析のブリーフィングを提出しているはずのCIAが、やはり同じく責任を負っているはずの「民族浄化」に関する情報分析の方については、間違っていないと言い切れるのでしょうか。

 つぎに「古い地図」説が嘘だとすると、なぜ、このように「中央情報」機関の権威を台無しにし、コメディアンのネタばかり増やすような、みっともない嘘を、付き続けるのかという理由が、この問題の核心的焦点になります。

 日経1999.5.17.「海外論調」欄には、「平手打ちされた中国国民」と題する(中国=チャイナ・デイリ-12日付)記事が、以下のように紹介されています。

「[前略]何ともひどい理由だ。[中略]多くの中国国民は『例外的な悲劇』とする言い分を信ずるわけにはいかない。[中略]中国国民の心を見誤ってはならない」

 これだけ疑われ、逆に、「中国国民の心」を逆撫でにし、さらに怒らせるような嘘を、なぜ、無理をして突き通すのか、その理由、メリットは、何かです。

 唯一の論理的な説明は、軍事目標だけを正確に爆撃することが可能なのだという「神話」の維持でしょう。しかし、最早、この神話を、そのまま信じ込む「お人好し」は、ますます減る一方でしょう。

 以上、双方からの論理的検証の結論として、本当でも嘘でも、どちらにしても、アメリカの言い分は「嘘だらけ」となります。なお、クリントン大統領による「野蛮なのは民族浄化作戦だ!」の連呼に呼応して、アメリカ版「鉄の女」、オルブライト国務長官は、「若い女性たちが強姦されている」(Young wemen are raped)から「空爆を止めるわけにはいかない」などと重々しく、ダミ声で合唱していらっしゃいましたが、その場所は、もしかすると、貴国アメリカの軍隊とか高校とかの間違いなのではないのでしょうか。そちらの方の「レイプ」については、米軍放送でも毎日のように伺っていますがね。

 中国との関係では、昨日、5.16.(日)13:30から防衛庁裏の谷間の檜町公園集合、「Stop the 空爆」の行動には、主催者の目標 100人の倍の 200人以上が集まり、在日の中国のテレヴィ、新聞が総結集し、その他、目に付いただけでも、読売新聞、日本テレビ、TBSなど、その全部が、集会から日比谷公園へのデモ行進まで、丹念に取材していました。この件も、さらに詳しくmailしたいと思っています。

 とりあえず以上。


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