ユーゴ戦争:報道批判特集
ユーゴ「虐殺死体発見」報道ほか裏話
1999.6.25 WEB雑誌『憎まれ愚痴』26号掲載
1999.6.22.mail再録。
1. KLA掃討作戦を「虐殺」と報道操作
1月15日のラチャク村「虐殺」デッチ上げの資料を集めている間に、NATO軍がコソボ州に入り、最新のところでは「虐殺捜査が本格化/英専門家チーム」「ロンドン警視庁」(1999.6.21.日経)など、シャーロック・ホームズの威光を借りるような記事が目立つようになりました。
この「発表報道」による情報操作のパターンは、ラチャク村「虐殺」デッチ上げと同工異曲のものです。たとえば先に抄訳を紹介した『ワシントン・ポスト』(1999.1.28)記事でも、ラチャク村の事件以前に、KLA(コソボ解放軍)に対する「11カ月の掃討作戦」が続き、その「紛争中に少なくとも1000人の文民が殺された」(----11-month campaign against ethnic Albanian gerrillas seeking independence for Kosovo----.At least 1,000 civilians have been killed in the conflict)と記しています。相当数の戦死者が出ているのです。
空爆までの掃討作戦は警察によるものでしたが、空爆以後には、それと呼応する一斉蜂起の用意をしていたKLAに対して、ユーゴ連邦軍が本格的な掃討作戦を展開し、アルバニア国境を越える追撃戦によって、「地上戦勝利」を果たしています。この方のKLA戦死者の数は、さらに増えているでしょう。春から初夏に向かう時期ですから、死体は埋葬しなければ疫病の流行を招きかねません。そういう仮墓地を、今、掘りくり返しては、「虐殺」と発表しているだけのことです。さすが「7つの海」に世界帝国を築いた海賊集団、アングロ・サクソン、実に汚い手口です。
KLAの実態に関しては、最新のところで、新潮社発行・「予約購読・直送制」の強気商売『フォーサイト』(1999/No.6)の新聞広告に、「KLA(コソボ解放軍)の『怪しき正体』/NATOの懸念する、麻薬密売組織やイスラム原理主義とのつながり」とあります。
2. ロシア軍の「先んずれば人を制す」作戦成功の裏話
ロシア軍の先駆け成功と、プリシュティナ空港占拠、その後の妥協などは、各紙でも報道しているので、報道されていない裏話のみを記します。
英軍が焦ったのに、米軍が自分の方が先に入ると押さえたようですが、米軍放送によると、海兵隊をギリシャに上陸させて、ギリシャからマケドニアに入る予定が、3日ほど上陸を待たされたのです。なぜかというと、ABCのニュース・コメンテーター、ポール・ハーヴェイの表現では、「ギリシャはNATOに加盟しているが、戦闘的(militantly)に、我々の空爆に反対している」からです。
別途、『長周新聞』という元日本共産党山口県委員会の「日本共産党左派」機関紙には、情報源が明記されていないのですが、おそらく某外電の「パクリ報道」でしょう、ギリシャの米軍基地に1500人のデモが押し掛け、「一部の抗議参加者が基地内に突入したあと、警棒と催涙銃で武装した警察によって押し戻された」とあります。これも別途、耳情報によると、この間、ギリシャの「共産党左派」が、このような「戦闘的」なNATO抗議運動を繰り広げ続けていたようです。
この状況の下に、トルコとの関係でアメリカには公然と反旗を翻すことのできないギリシャ政府も、国民向けに一定の時間稼ぎをせざるを得なかったのでしょう。
ABCのニュース・コメンテーター、ポール・ハーヴェイは、その後にも、このロシア軍の「奇襲作戦」の成功について、「クリントンも、オルブライトも、大変に困惑している(deeply embarrased)」と、言葉を区切りながら、揶揄的に論評していました。
ロシア軍の動きと、その後のケルン・サミットでのエリツィンの「時を笑顔」には、元を質せば、アメリカとその同盟軍のNATOが、国連(正しくは諸国家連合)を無視し、その結果として、その常任理事国として拒否権を持つロシアと中国を「こけにした」思い上がりがあります。その意味では、NATOと対抗関係にあった「ワルシャワ条約機構」やギリシャの「共産党左派」などが、あたかもタイムトンネルから抜け出してきたような「奇襲」によって、「スキャンダル男のクリントンと、SM教育ママのオルブライト」を「困惑」させたのは、「自業自得」と言うべきでしょう。
以上。
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