ユーゴ空爆の背景 利権と歴史と謀略と侵略とメディアの嘘と(9)

ユーゴ戦争:報道批判特集

BBC-NHK特集が立証する民族浄化の嘘

1999.5.21 WEB雑誌『憎まれ愚痴』21号掲載

mailの再録と増補。

 昨晩、1999.5.14(金)22:00~22:45「コソボ紛争・その構図と歴史的背景」を見ました。NHK第3チャンネル『海外ドキュメンタリー』の放送枠で、イギリスのNHKに当たるBBCが、今年の1999年に制作となっていましたが、内容から見て、3.24.のNATO軍による空爆開始以前に編集されたものでしょう。

 日経のテレヴィ番組紹介欄では、「民族運動の起源」という副題が付いていました。つまり、「歴史的背景」と「民族運動」を骨子とする「構図」のまとめ方ですが、その構図に現在の状況を組み合わせていました。

 まず、私が「民族浄化」の「嘘」を立証したと判断する部分について紹介します。

 さすがにBBCらしく、コソボでは少数派のセルビア人と、多数派で独立を要求するアルバニア人の双方から取材しています。アルバニア人に銃撃されたセルビア人の話もあります。段々と対立が深刻化、激化していきます。コソボ解放軍(KLA)も出てきます。アルバニア人が「40人殺された」話の場面では数人の死体が写りました。しかし、その事件の犯人の特定はありませんでした。これが「民族浄化」なのでしょうか。少なくともBBCは、そういう説明をしてはいませんでした。

「民族浄化」というキーワードについて、私は、先に、「Q2:誤爆報道で消えた『民族浄化』?」と題するmailを送り、これを5.14(金)発行のWeb週刊誌『憎まれ愚痴』20号に再録しました。そこでは、中国大使館爆撃直後、5.8.朝に聞いたAPニュースでの、竜巻被災地からのクリントン大統領の肉声と、「何が野蛮かと言えばセルビアの大統領がコソボで行っている民族浄化」というアナウンスについて5.10.日経では単に「やっていること」になっていると指摘しました。これでは意味が分かりません。というよりも「尻尾を掴み難い」のです。そこで私は、いわゆるシビルミニマムの習慣に従って、この意見を日経の読者応答室にも伝えました。

 5.11.APニュースによると、クリントン大統領は、誤爆を「悲劇的な間違い」(tragic mistake)としながらも、それを、「計画的かつ組織的犯罪」(deliberate systematic crime)としての「民族浄化作戦」(ethnic cleansing operation)と一緒にするな、と言い出しました。これは当然、セルビア政府が、政策的に、意図的かつ集団的行動として、アルバニア系住民を大量に虐殺しているという意味になります。

 もう1つのクリントン大統領の表現は、「民族浄化」は「計画的に実行している犯罪」(deliberate acting crime)であって、これを、「誤爆」という「悲劇的な間違い」と、識別(discriminate)しなければならない、というものです。actには、積極的に、意図的に、の感じがあります。聞いていると、中国に謝っているのか、それとも「空爆の中止」を求める中国に対して居直っているのか、まるで分からない調子です。

 5.12.日経によると、5.11.米国防長官コーエンは議会証言で、「『中国では報道の自由がなく、ミロソビィッチ・ユーゴ大統領が行ってきたことを中国国民は理解していない』と指摘、ユーゴ側による『民族浄化』こそが最大の問題であることを強調した」ようですし、その後、5.14.日経夕刊によると、クリントン大統領が5.13.「米国防大学での演説で」、「ユーゴ政府が進める民族浄化作戦が旧ナチス・ドイツによる『ホロコースト』に通じるものがあるとし、これを放置するのは人道上、許されないと強調」しました。

 さあ、いよいよ、ここは私の表現ではなくて、昔からの将棋を使うと、「雪隠(せっちん)詰め」ではないでしょうか。「雪隠」はワープロ一発変換できませんでしたが、別に「差別用語」ではないので、手元の安物辞書にも載っています。「便所。禅宗の用語から広まった」とあります。生臭坊主が気取って「雪に隠す」などと称し、これを漢語読みしたのでしょうか。「雪隠詰め」は「将棋で、王将をすみに追い込んで詰めること」「逃げ場のない所へおいつめる意にも使う」とあります。それもこの場合、自ら好んで、空爆の根拠として国際社会に振りかざした「民族浄化」を、誤爆と空爆継続の弁解にも使い、つまり、それを「最後の逃げ場所」とし、日本の神主が「カシコミ、カシコミ、マオサク」などと御幣を振り立てては「怨敵退散!」を唱えるがごとく、オドロオドロの不気味用語で飾り立て、さらに意味をエスカレートさせて、いよいよ、のっぴきならないものにしているのです。

 折から、ハーグで戦争犯罪法廷も開かれます。ドイツでは緑の党が分裂直前、60%の賛成で「空爆の一時中止」を決議。イタリアのスカルファロ大統領も「空爆の停止」を求めました。ドイツとイタリアの両翼をもがれたステルス爆撃機、アメリカ国内でも「モニカ戦争」と嘲られるクリントン大統領の振り上げた拳の運命や、これいかに。

 なお、「古い地図」と言う弁解についても、Favorite Monologue(お好みの独りごと)という番組で、汚れ役のCIAがコメディアンにからかわれ、「いっそのことバイブル(旧約聖書でしょう)を使ったらどうか」などと言われています。ところが、5.8.日経では、「ユーゴスラビアの独立系ベタ通信によると」として、7日に、「病院、市場を誤爆」と報じています。1日にもバスを誤爆しています。これらの誤爆も、米軍放送で聞きましたが、この時には、「古い地図」のせいだとは言いませんでした。

 私は、この誤爆の原因を、湾岸戦争で有名になった「ピンポイント爆弾」の例から類推しています。テレヴィ画面に命中場面を写しては「クリーン」を謳っていたのに、イラクでも、かなりの誤爆がありました。戦争が終わってからの情報によると、「ピンポイント爆弾」は7%で、残りの93%は、目で目標を確認したから投下する通常爆弾だったのです。

 今度のユーゴ空爆でも、かなり前に、鉄橋の爆撃で民間人が載っていた列車を破壊しました。あの時には、操縦士が、「列車が近付くのが見えなかった」と弁解していました。つまり、いわゆる「目視」による爆撃をしているのです。すでに、レーダーでは捕捉できないことが売り物のステルス爆撃機が、一機撃墜されていることから考えると、肉眼で照準を合わせて撃ってくるセルビア軍の砲弾、または対空ミサイルを恐れるNATO軍の操縦士は、一刻も早く爆弾を落として上空に逃げ帰りたいに違いありません。

 東京の下町大空襲についても、本当は、天皇を狙っていたのに、そこには強力な対空部隊が配置されていて、高射砲弾がバンバン撃ち上がるから、アメリカの飛行士が、その手前で落としてしまうのだという説を聞いたことがあります。今はもっと電子的な誘導装置が発達しているのでしょうが、やはり、人間が乗って行かざるを得ないのですから、ほんのちょっとの角度の違いで、誤爆が起きるのではないでしょうか。この点、一応、同程度の危険で超々高値の玩具を、超々無駄使いしている自衛隊こと日本軍の本部、防衛庁広報部に聞いてみたのですが、「分からない」の一点張りでした。

 確か、列車の爆撃の際には、アメリカの軍関係者が、「そういう事態は起こり得るが、戦争だから仕方がない」という主旨の強気の説明をしていました。しかし、これだけ誤爆が続くと、ますます空爆への疑問、非難が高まるので、「軍事目標だけを正確に爆撃できるのだが古い地図」という「雪隠」に逃げ込んだのかもしれません。しかし、それでも、誤爆は誤爆ですから、やはり、空爆は確実に、民間人にも被害を与えるのです。

 いよいよ明日。以下の集会・デモ、東京の天気予報は雨ですが、これは誤爆ではなくて、「誤報」を希望します。


Stop the 空爆!!
ユーゴに平和を市民集会とデモ

日時:5 月16日(日)雨天決行。
   13:00集合。13:30集会開始。14:30デモ出発

集合場所:檜町公園(港区、地下鉄日比谷線六本木駅下車、徒歩5分)
   (外苑東通りで防衛庁の六本木寄り手前を右に折れ、防衛庁裏の左手)

デモ・コース:檜町公園から日比谷公園まで。

解散後:集会アピールと空爆反対署名をアメリカ大使館に届ける。


 1999.5.15.以上。

 さてさて、わがステルス爆撃機ならぬ念力テルテル坊主に恐れをなしたものか、上記の5.16.当日の天気は、小糠雨から曇りとなり、無事、主催者の予想を上回る参加者を得て、集会、デモ、ともに成功。詳しい報告は、5.17.に入力予定。

 なお、事態に鑑み、ユーゴ問題については、Web週刊誌『憎まれ愚痴』の次号発行以前に、下記、「緊急:ユーゴ問題一括リンク」に入力することにします。5.16.追記。

 以上。


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