一,若桑みどり『象徴としての女性像:ジェンダー史から見た家父長制社会における女性表象』(筑摩書房)
二 峯陽一『現代アフリカと開発経済学:市場経済の荒波のなかで』(日本評論社)
三 小倉英敬『封殺された対話:ペルー日本大使公邸占拠事件再考』(平凡社) A五判/五百頁/二段組の大著である一を、まだ全部は読み切っていない。
途中まででも、父権主義的な価値観を基盤とする既成概念をつぎつぎと覆していく本書の意義は十分に掴み取ることができた。著者も十分に参照したという、世界中で積み重ねられてきたジェンダー史学の厚みを感じる。
「沖縄における少女レイプ事件をめぐる規範的言説」の項などにはその萌芽が見られるが、西洋美術史中心の研究を続けてきた著者は、今後は日本の、同時代の女性像の研究に向かうという。
小林よしのりの漫画の図像学的分析と批判でも冴えを見せる著者だけに、その成果を待ちたい。
二は、「貧困を除去する実践の学」としての、本来の姿に立ち戻ろうとする経済学は、「世界経済の最底辺へと突き落とされた」アフリカ大陸に対して、何ができるかを考え抜こうとする好著。
三は、十七人を殺したフジモリの国家テロを称讃した連中にこそ読ませたいが、読まないだろうな。
|