有事法制、イラク特措法成立、イラク派兵以後の動き 2003年12月 (次)(戻る)
2003年12月
2003年12月1日
■政府は1日、イラクでの日本人外交官殺害事件を受け、技術者や医療関係者などからなる文民のイラク派遣について自衛隊の派遣と同様年明けに先送りする方針を固めた。
■有事の際の国民の非難や救援措置を定める国民保護法案をめぐり、政府と都道府県知事の懇談会が1日、首相官邸で開かれた。イラクでの日本人外交官殺害事件を受け、知事側からは「自衛隊がどこまで国民を守ってくれるのか」などと心配する声が続出した。
■民主党の菅直人代表は1日、イラクの日本人外交官殺害事件を受け、自衛隊派遣について「イラク全土が戦闘状態にあると見るのが自然だ。こんな状況でも出すとなれば、説明責任が問われる」と述べ、衆院テロ防止特別委員会の閉会中審査などで小泉首相に派遣断念を迫る考えを示した。共産党の市田忠義書記局長は記者会見で「自衛隊派兵は逆にテロを活発化させる。派兵すべきでない」と強調。社民党の阿部知子政審副会長も「米英軍による統治への強い反感が(事件の)背景にある。日本独自外交の道をもう一度考えるべきだ」と述べた。
■イラク、バグダッドの西約75キロのハバニヤで1日、米軍の車列が待ち伏せ攻撃を受け、兵士1人が死亡。ハバニヤは反米感情の強い「スンニ・トライアングル」と呼ばれる三角地帯にあり、この地域では11月30日、米軍と武装勢力が激しく交戦し、米軍はこの戦闘でイラク人54人が死亡したと発表している。
2003年12月2日
■自衛隊のイラク派遣を検討している防衛庁は、隊員の安全確保のため、陸上自衛隊が持ち込む車両をすべて防弾仕様とする方針を固めた。車両の改造に時間がかかることから派遣開始は早くても2月上旬となる見通しとの報道。
2003年12月3日
■イラク、シーア派の最高権威のアリ・シスタニ師は先月26日、主権移譲の日程について「選挙が2005年まで遅れる理由が分からない」と強い不満を示し、来年7月に発足する見通しの暫定政府が直接選挙を経て成立されるべきだとの認識を示した。米軍と統治評議会の合意に基づく主権移譲の日程では、来年2月末までに宗派・民族の平等を規定した基本法をCPAの承認を経て統治評議会が制定。同5月末までに全国18州の有力者が州代表の議員を任命して暫定国民議会国民議会を立ち上げ、同6月末までにCPAが解散、全権を移譲する予定。米国務省のバウチャー報道官は1日に「統治評議会との11月15日の合意は今も有効だ」と合意変更を拒否したとの報道。
■石破防衛庁長官は首相官邸で小泉首相と川口外相と会談。先のイラク専門調査団からの報告を基に、イラクに自衛隊を派遣する環境は整っていると説明。石破長官は自衛隊派遣が予定されているサマワがあるイラク南部の治安情勢について「掃討安定している」と報告した。小泉首相はこの会談について会談内容を口外しないよう異例の「かん口令」を敷いた。
2003年12月4日
■イラクで殺害された外交官2名の遺体が4日、成田空港に到着。
■防衛庁が2006年から導入予定の空中給油・輸送機の配備候補地に航空自衛隊小牧基地を有力視していることについて、同庁担当者が近く、同県春日井市など地元2市1町の首長と会談を持つことが分かったとの報道。基地について2市1町は「基地機能の拡充は行わない」との立場で足並みをそろえている。春日井、小牧の両市議会はともに「今後も基地機能の強化を行わず、周辺対策を充実するよう強く要望する」とする意見書を小泉首相に送付した。意見書は空中給油・輸送機については触れていない。
■世界各地の日本大使館が、例年は12月に各国大使ら要人を招いて開催する天皇誕生日の祝賀会を相次いで中止しているとの報道。
■政府は4日、イラクへの自衛隊派遣の基本計画を、9日に閣議決定する方針を固めた。
■イラクへの自衛隊派遣に向けて先月現地入りした防衛庁の専門調査団の報告書概要が4日、明らかになった。陸上自衛隊の派遣を予定しているイラク南部のサマワについて「治安は安定」との味方を示す一方、航空自衛隊C130輸送機の拠点となるクウェートに関し「イラクからのテロリストによる地対空ミサイルは航空機の脅威となり得る」と警戒の必要性を指摘している。
■政府は4日、弾道ミサイル防衛(MD)システムの導入に伴い、日本の防衛力の基本方針である「防衛計画の大綱」を見直す方針を固めた。MDの導入には初期配備の5年間で約7千億円が必要とされこのための予算を年間約4兆9千億円(03年度)程度の防衛予算から工面するには中期防で計画された兵器を圧縮する必要がある。
2003年12月5日
■石破茂防衛庁長官は民放報道番組で、イラクへの自衛隊派遣の条件になっている「非戦闘地域」について「自衛隊の行くところ、活動するところが非戦闘地域だ」と述べた。さらに「自衛隊の活動は憲法の枠内で行う、ということが、非戦闘地域という意味だ。安全な所などとは一度も言ったことがない」と強調。イラクの治安悪化に関しては「百パーセント安全な地域など地球上にない。東京でも女子中学生が突然襲われた」と反論した。
■イラクの首都バグダッド南部のニューバグダット地区で道路の中央分離帯に仕掛けられた爆弾が爆発、イラク人3人と米兵1人の計4人が死亡、イラク人13人が負傷。
■政府は5日、イラクへの自衛隊派遣に関連し、派遣部隊が活動している場所周辺でテロ攻撃が発生したり、米軍など他国の部隊がゲリラと交戦しても、こうした事態を「戦闘行為」とは認めない方針を固めた。イラク特措法では部隊の近くで戦闘が起きた場合は活動の一時休止や中断を定めているが、テロ攻撃や他国部隊によるゲリラ掃討作戦を戦闘とみなさないことで、活動を継続できるようにすることを狙ってのもの。政府は「作戦の内容は様々で、一概に戦闘と断定できない」(防衛庁幹部)としている。
■ロシア南部のスタブロポリ地方のエセントゥキ付近で5日、通勤通学客で混み合う走行中の列車が爆破され、40人が死亡、177人が負傷。自爆テロ事件と見られている。現場は独立運動が起きているチェチェン共和国に近い。
■自民党の久間章生幹事長代理は5日、インタビューに応じ、イラクへの自衛隊派遣の基本計画が9日に閣議決定されても、実際に派遣できるのは1月中旬以降になるとの見通しを示した。久間氏は「(自衛隊輸送機への)防護対策のための改造に時間がかかる。年内派遣は事実上無理だ」どの見解を示した。
■民主党の菅直人代表と岡田克也幹事長、枝野幸男政調会長らが5日、党本部で会談し、イラク問題に関する党兼愛を正式決定した。党見解ではイラク復興支援特措法に基づく自衛隊派遣に反対とし、その一方で、新たな国連安保理決議が採択され、イラク人政府が樹立された場合は、国連平和維持活動(PKO)の派遣基準を緩和し、自衛隊の活用を含めた復興支援に取り組むとしている。
■外務省は5日、奥克彦参事官と井ノ上正盛書記官が殺害された状況に関し、「二人は食料と飲み物を買おうとして停車したところを襲撃された」米軍が当初提供してきた情報は誤りだったと発表。外務省は「走行中に襲撃された可能性が高い」と判断している。
■中部電力は5日、北陸、関西電力と共同で進めてきた珠洲(すず)原子力発電所計画の「凍結」を、立地地点である石川県珠洲市に正式に申し入れるとともに、2004年度の電力供給計画から外す方針を示した。
2003年12月6日
■欧州連合(EU)は北大西洋条約機構(NATO)とは独立した作戦本部設置を検討しており、米国が警戒を強めているとの報道。米防衛筋は「少数に部隊でも、NATOを内側から壊すトロイの木馬になりかねない」として警戒している。
■年内開催を目指していた北朝鮮核問題の6カ国協議開催時期が不透明になっているとの報道。北朝鮮の労働新聞は「米国が6カ国協議を進める本心は、わが国に対する国際圧力と干渉の余地を拡大し、軍事行動の口実を作ろうというものだ」としている。
■イラクで殺害された奥克彦参事官と井ノ上正盛書記官の合同葬が6日、行われた。小泉首相はこの合同葬のなかでイラクへの自衛隊派遣を涙ながらに強調した。また「いつの日になるか分からないが、(イラクに)将来行きたい」と表明。
■6日、ラムズフェルド米国防長官がイラクの治安、軍事情勢の視察のためバグダッド入り。長官のイラク訪問は9月に続き3回目。長官はバグダッド入りに先立ち、グルジアの首都トビリシから空路でイラク北部のキルクークに入り、キルクーク州知事と会談した。キルクークにはイラク有数の油田地帯があり、石油輸出は復興資金調達の主軸になると期待されている。
■アフガニスタン南部のカンダハルの繁華街で爆発があり、15人以上が負傷。地元警察幹部はタリバン残党の犯行との見方を示した。
■6日付の英紙ガーディアンなどによると1982年のフォークランド紛争時に派遣された複数の英海軍の艦船が対潜水艦核爆弾を搭載したことを英国防省が認めたと報道。
■6日、アフガニスタン南東部ガズニ州の州都ガズニ近郊で米空軍が空爆した際、子ども9人が巻き添えになって死亡。駐留米軍は「罪のない命が失われたことは残念」とコメントし7日に事実を認める。タリバン政権が本拠地カンダハルを明け渡して12月7日でちょうど2年。
2003年12月7日
■政府は7日、自衛隊によるイラク復興支援について、空輸支援を行う航空自衛隊の部隊は来年1月に派遣し、陸上部隊の派遣は同2月以降とする方針を固めた。空自の活動は陸自に比べて安全性を確保しやすいことから先行させることにしたとのこと。
■テロ組織による日本でのバイオテロを想定し、警視庁公安部と東京都が都研究施設で、短時間で天然痘ウィルス感染の有無を調べる「判別きっと」を研究・開発していたことが7日明らかとなる。
■イラク北部のモスルで7日駐留米軍の車列が走行中に爆発し、米兵1人が死亡2人が負傷。
2003年12月8日
■イスラム教シーア派の最高聖職者で、レバノンのシーア派組織ヒズボラの精神的指導者とされてきたムハマド・フセイン・ファドラー師(68)はインタビューで9日に基本計画が閣議決定される日本の自衛隊のイラク派遣について「日本の兵士は、(先月12日にイラク南部での自爆テロで16人が死亡した)イタリア兵士と同様の事態に直面するのではないか」と警告。また「ブッシュ大統領は、イラクがテロとの戦いの戦場であると宣言した。つまり、米国の関心はいかにイラクの抵抗勢力と戦うかであって、イラクに平和と安全をもたらすかでない。現時点での派兵は日本の国益にかなっていない」「イラクの人々は、米国との(同盟)関係で派遣されてくる他国の兵士を、イラクの平和維持でなく米兵の防護が目的だと考えている」「日本の人々に分かってほしいのは、われわれはテロに反対するが、ナチス占領下のフランスの抵抗のように(占領された)自国の自由を守る人々をテロリストとは考えないということだ」「われわれは米国民やユダヤ人を嫌っていない。他の民族の土地を占領する彼らの政策を嫌っているのだ」と語ったとの報道。
■民主党は8日、イラクへ自衛隊を派遣する基本計画の閣議決定を前に、派遣反対を国民に呼びかける運動を開始。菅直人代表は8日、都内の街頭演説で「『テロに屈するな』という言葉だけで自衛隊派遣に短絡的につなげるやり方は、太平洋戦争と同じ間違いを犯すことになる」と小泉首相を批判した。
■小泉首相は8日、陸上自衛隊が携行する無反動砲などの装備について「安全を図るうえで必要な装備だ」との認識を示した。
■衆院テロ特別委員会は8日、イラクに自衛隊を派遣するための基本計画に関する閉会中審査を15日に行うことで合意。
■アフガニスタンの駐留米軍の報道官は8日、旧政権タリバンなどによるテロが激化している同国東部と南部で、一昨年のタリバン政権崩壊後、最大規模の武装勢力の掃討作戦を開始したことを明らかにした。作戦名は「雪崩作戦」で米軍を中心にアフガン軍閥など約2千人の兵員を動員するとのこと。
2003年12月9日
■政府は9日、臨時閣議でイラク復興支援特措法に基づく自衛隊派遣の基本計画を決定。派遣期間を「12月15日から1年間」とし、医療、給水、学校復旧などの人道支援や安全確保の実施を盛り込んだ。
■イラクへの自衛隊派遣基本計画の閣議決定を前に、中日新聞社が6、7日に愛知、岐阜、三重、長野、福井、滋賀の中部6県で550人に電話調査、結果が9日、報道される。「派遣に反対」(41パーセント)と「治安が安定してから派遣すべき」(47パーセント)で、慎重派遣と反対で合計が86パーセントに上った。小泉内閣の支持率は39パーセントにとどまり、不支持が8ポイント上回った。
■9日、イラク基本計画に盛り込まれる武器・車両が報道される。武器として個人携帯対戦車弾、無反動砲(いずれも対戦車火器。主に自動車爆弾によるテロを想定し今回初めて携行)、機関銃、小銃、拳銃(小銃、拳銃は初のPKO参加となった1992年カンボジア派遣時から携行。機関銃は94年ルワンダ派遣時が初)。車両として装輪装甲車(8輪の装甲車。有事では戦場で、兵員輸送に用いられる。今回初投入)、軽装甲機動車(4輪の装甲車。2002年度から部隊配備が始まった最新型。今回初投入)。
■9日、イラクのバグダッド国際空港を離陸した米空軍輸送機C17、一機が地上から発射されたミサイルが当たりエンジン爆発したが、無事着陸。搭乗していた16人のうち1人が軽い怪我をした。
■バグダッド西方のファルージャ近郊で9日、米軍ヘリコプター1機が緊急着陸。
2003年12月10日
■10日、イラク派遣が想定される陸上自衛隊員が、武器使用を迫られる各局面ごとの行動原則を具体的に示した「対処図」を、防衛庁が内局の内部資料として作成していたことが分かる。襲撃者が銃口を自衛隊員へ向けて水平に構えれば、襲撃者の体を狙った危害射撃が可能と明示。遠方から肩に担いだ大戦遮断などを向けている場合、相手の発砲前でも車載の機関銃から危害射撃まで可能になるとしている。
■10日行われた2003年、ノーベル平和賞の授賞式でノーベル平和賞を受賞したイランの人権活動家シリン・エバディさんは記念講演で「米中枢同時テロ以降、”テロとの戦い”を口実に、普遍的な人権の原則や法規を犯している国がある」と指摘し、名指しはしなかったが米国を批判。また「イスラエルがパレスチナ自治区からの撤退を求める何十もの決議に違反しているのに決議が拘束力を持つといえるのか」「安保理が反対したのに、なぜイラク軍事攻撃や経済制裁、ついには占領を受けなければならないのか」と矛盾をついた。
■10日、イラク北部で米軍の攻撃型ヘリが火を噴き、緊急着陸。
■アフガニスタンの駐留米軍は10日、東部パクティア州で5日夜、空陸から攻撃した現場から、子ども6人と大人2人の遺体が見つかったと発表。攻撃の巻き添えになったと見られている。
■イラク駐留米軍によると、イラク北部のモスルで10日、給油所を警備中の米軍兵士らが銃撃を受け、兵士とクルド人当局者の計2人が死亡し、兵士1人が負傷。また、この数時間後、モスルの別の場所で米軍車列が仕掛け爆弾で攻撃に遭い、兵士1人が死亡、3人が負傷。
■米国防総省がイラク復興事業に参加できる国は、戦争を支持し米国主導の復興に協力的な63カ国に限定、戦争に反対したフランス、ドイツ、ロシアを排除する決定を下したことが分かったとの報道。
■福田康夫官房長官は10日の記者会見で、イラクに派遣する自衛隊の後方支援活動で行う武器、弾薬輸送に関連して、米軍の兵員を輸送する際、兵員が一般的に携行している武器なら輸送は可能との見解を示した。
■10日、小泉首相はASEAN特別首脳会議出席のため来日したメガワティ・インドネシア大統領、ファン・バン・カイベトナム首相と会談。会談で小泉首相は「戦争に行くわけでないし、戦闘行為をするわけではない。イラクの人々の生活基盤をつくるための復興支援に行く」と強調したが、メガワティ・インドネシア大統領は「これまで世界の平和のため27回、海外に軍隊を派遣した。すべて国連の枠の中で進めてきた」と述べ、国連主導による復興支援が必要との考えを示した。
■水資源機構が岐阜県藤橋村に建設中の徳山ダムの事業費を960億円に増額する問題で、同県は10日、機構側の増額方針を事実上受け入れる意向を示した。
■10日、バグダッド市内でパトロール中の米軍車両が手りゅう弾攻撃を受け、同行取材していた米紙タイムの記者2人が負傷。
2003年12月11日
■自衛隊をイラクに派遣するための基本計画決定を受け手の9日の小泉首相の記者会見に対し、自民党内からも「あれで国民に納得してもらえるだろうか」「ワンフレーズばかりで説明になっていない」などの声が相次いだとの報道。
■欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会は11日、イラク復興事業の発注で米国が、イラク戦争に反対したフランス、ロシア、ドイツなどの企業を除外したことについて「決定は政治的な誤りで受け入れがたい」と強く批判する声明を発表した。
■イラク中部ラマディにある米軍基地に対し11日、自爆攻撃があり負傷者が出た。
■イスラエル軍が11日、エジプトとの国境に近いガザ地区南部のラファに侵攻、銃撃戦でパレスチナ人5人が死亡、17人が負傷。
2003年12月12日
■政府は12日、各省庁の局長級によるテロ対策関係省庁会議を開き、イラクへの自衛隊派遣の基本計画を閣議決定したことを受け、国際空港や港湾を中心に警備体制を強化するなどのテロ対策を決めた。
■政府が11日、イラク復興支援特別措置法に基づく航空自衛隊の先遣隊約10人を、カタールとクウェートに向けて25日に派遣する方針を固めたとの報道がされる。
■欧州連合(EU)憲法の制定をめざすEU首脳会議が12日ブリュッセルで始まり、共通防衛政策に関してEU独自の作戦司令室創設で合意したほか、初の「安全保障戦略」を採択。独自の作戦司令室は北太平洋条約機構(NATO)が関与しない平和維持活動などを担当する。しかし、EUのNATO離れを危ぐする米国に配慮してフランスなどが提案していた独自の作戦本部は見送られ、NATO作戦本部内に設置する形となった。
■バグダッド西方約100キロのラマディで12日、イラク駐留米軍の車列を狙って道路脇の爆弾が爆発、米兵1人が死亡、2人が負傷。
■12日、バグダッド連合軍暫定当局(CPA)本部を狙った迫撃砲によるとみられる攻撃で兵士2人が軽いけが、兵士の国籍は不明。
■12日、中部バビロンの北方で道路に仕掛けられた爆弾が爆発、ポーランド人2人が負傷。
2003年12月13日
■ブッシュ米大統領は13日、週末恒例のラジオ演説で今年の業績を振り返って対テロ戦争について「勝利するまで戦いを継続する」と述べ、来年も最重要課題として取り組む考えを強調した。
■政府は、イラクへの空輸支援でクウェートに派遣する航空自衛隊の活動に必要な車両や物資を、「日米物品役務相互提供協定(ACSA)を根拠に米軍から調達する方針を固めたとの報道。
■13日、外務省がバグダッド日本大使館の安全確保のため、米国に大使館周辺に装甲車を配置するなど、重装備の米兵による警備強化を非公式に打診していたことが分かった。しかし、米側は「大使館は自国で警備してほしい」と難色を示している。
■欧州連合(EU)憲法制定に向けたEU首脳会議は13日、加盟国の意見に隔たりが大きく同日午後、協議を打ち切った。次の議長国アイルランドの下で協議を継続し、制定のための首脳会議は04年4月から6月になる見通し。
■中曽根康弘元首相は講演で13日、「小泉(純一郎)君の人気は高いが、衆院選では森(喜朗)君と同じくらいしかとれなかった。参院選は厳しい。小泉君が続くか、かなり疑問になっている」と述べた。
■北朝鮮の平壌放送は13日、日本のイラク自衛隊派遣を閣議決定したことについて「(日本の軍事大国化が)自衛隊武力の海外派兵を範囲をイラクまで拡大する水準に入っている」と批判。
■13日、イラク駐留米軍によって北部ティクリット近郊でフセイン元大統領が拘束される。
2003年12月14日
■来年1月中旬にもイラクにC130輸送機を派遣する航空自衛隊が、8日から17日までの日程で、派遣要員を対象に、集合教育訓練を愛知県小牧市で行っていることが分かったとの報道。集められた人ずんから派遣部隊と予備要員の合計が320人であることも判明。初句書ごとに不測の事態やテロ攻撃への対処法、応急処置、射撃など派遣に必要な訓練を集中的に実施している。派遣要員と予備要員はC130輸送機3機を派遣する第一輸送航空隊(小牧市)の190人が最多。他に航空総隊、航空教育団、航空開発実験集団といった全国にある防衛庁直轄の組織や各方面隊から選ばれる。尉官以上の幹部が110人、一般隊員210人の合計320人で医官と看護官も4人含まれた。
2003年12月15日
■15日、衆院テロ防止特別委員会で自衛対イラク派遣の基本計画決定を受けた閉会中審査が行われた。この論戦の中で石破防衛庁長官は「戦闘地域で危険なところ、安全なところ、非戦闘地域で安全なところ、危険なところの4つがある」と答弁し「活動は非戦闘地域でなければならない。イラクを二つに分け、『ここは戦闘地域、ここは非戦闘地域』と行う予定はない」とした。また小泉首相は「安全確保支援活動は米英軍に対する協力だ」との質問に対し「物資の輸送や人員の協力とか、やれることがあればやるべしと思っている」などと答えた。
■15日、滋賀県米原町の村西俊雄町長は同町議会で、、自衛隊のイラク派遣について「戦死者が出れば、内閣は頭を丸めて総辞職すべきだ」と派遣を決めた政府を厳しく批判した。町長は「戦争の目的も、戦地に行く理由も分からない」とし「平和憲法、人命尊重の観点から派兵はやめるべきだ」「憲法違反の派兵を閣議決定した内閣が責任をとるべきだ」とした。
■15日、イラク駐留米軍は13日、拘束したフセイン元大統領の本格的な追求を開始。
■イラク・サマラで15日、米軍部隊が待ち伏せ攻撃を受け反撃した米軍がイラク人11人を殺害。
■イラクの首都バグダッド周辺で15日、地元警察署に対する自爆テロが連続して発生。合わせて少なくともイラク人警察官8人が死亡、通りかかった市民を含め30人以上が負傷。
2003年12月17日
■バグダッドの在イラク日本大使館へのテロ予告で外務省は17日、同大使館員全員の退避を発表したものの直後に発表を取り消した。
■17日、バグダッド南西部で、警察暑へのテロ攻撃のための爆発物を積んでいたとされる燃料輸送用トラックが小型バスと衝突して爆発。市民少なくとも10人が死亡、約15人が負傷。
■イラク駐留米軍、第一機甲師団のパトロール隊が17日深夜、バグダッドしないデマつぶせ攻撃を受け、米兵1人が死亡。
2003年12月18日
■ロシアのプーチン大統領は18日、ロシア国民とのテレビ対話番組の中で、米国のイラク戦争に「正当性はない」と批判した。また「フセイン時代、国際テロリストはいなかった」とも述べた。
■18日未明、バグダッド市内で爆発があり、パトロ−ル中の米兵1人とイラク人通訳1人が負傷。
■18日、防衛庁はイラクに派遣される自衛隊の活動内容を定めた実施要項を小泉純一郎首相の承認を得て決定。
■18日、時事通信社がまとめた12月の世論調査結果によると、小泉内閣の支持率は前月比2,0ポイント減の41、7パーセントとなり、二ヶ月連続で低下した。
■18日、NHKは政府が行った時期通常国会への国民保護法制の提出に向けての有事に協力を求める関係機関との意見交換会で「放送責務を課す場合、必要最低限に限定すべきだ」と要望した。
■18日、中部電力は定期点検中の浜岡原子力発電所1号機の原子炉圧力容器内にある3台のポンプの溶接部に数カ所のひび割れが見つかったと発表。
2003年12月19日
■19日、石破防衛庁長官が航空自衛隊の先遣隊にイラクへの派遣命令を出した。また、陸上、海上自衛隊にも派遣準備命令を出し、戦闘状態が終結していない「戦地」での自衛隊活動が本格化する。
2003年12月19日
■19日、イラク駐留米軍がイラク北部キルクークの南約90キロの検問所でイラク警察に向けて発砲し警察官3人が死亡、2人が負傷。
■政府は19日、日本の防衛力整備の基本的な考え方である「基盤的防衛力構想」を見直す方針を決めた。同日、ミサイル防衛(MD)システム導入を閣議決定した際、検討を進めることを決定した。
■イラクの首都バグダッドの西方で19日、米軍のタンクローリーが爆発米兵2人が負傷。同日、バグダッド市内のイスラム教シーア派の最大組織イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)の建物で爆発があり1人が死亡。
■連合軍暫定当局(CPA)のブレマー行政官は19日、ラムズフェルド米国防長官がバグダットを訪問した1月6日、自らの車列が銃撃を受けたことを明らかにした。
2003年12月20日
■防衛庁は20日、2006年度に導入予定の空中給油機を、航空自衛隊小牧基地(愛知)に配備することを決めた来年度予算で、整備場や誘導路の整備費約20億円が認められたことに伴う措置。空中給油・輸送機は民間旅客機のボーイング767に空中給油機能と輸送機能を持たせたもの。愛知県春日井市の鵜飼一郎市長は「配備自体が基地機能の拡充強化につながるとは考えられない」と述べるとともに「格納庫などの施設整備や空中給油・輸送機の運航という面で、防衛庁の行動によっては機能強化につながる恐れもある。問題はこれから」と懸念も示した。
■石破防衛庁長官は20日の記者会見で、。政府が日本の防衛力整備の基本的な考え方である「基盤的防衛力構想」を見直す方針を決めたことに関して「(この構想は)周囲の状況の変化に、柔軟に対応できるものとは必ずしも思っていない。分かったような、分からないような言葉」と述べ、見直しを積極的に進める姿勢を示した。
■外務省などによるとイラクには米英軍を除き36カ国が部隊を派遣している(8日現在)。国連加盟191カ国の2割弱。派兵国を地域別でみると、英国を除く欧州が22カ国と最多。アジア・オセアニア7カ国、中南米4カ国、中東2カ国、北米(米国を除く)1カ国。このうち17カ国は米英軍と一線を画し、地雷除去や飲み水の供給、病院修理など人道支援に限定し、武器を携帯しての治安維持活動は行っていない。ヨルダンとアラブ首長国連邦の中東2カ国は医療支援を中心に活動している。派兵国の特徴としてポーランド、ウクライナなど旧共産圏の国が17カ国と目立ち、協力の見返りに米国の後ろ盾を得たい思惑が見え隠れする。また、米英の占領軍を除くと”先進国クラブ”の経済協力開発機構(OECD)加盟の30カ国中、派兵しているのは半数以下の14カ国にすぎない、との報道。
■公明党の神崎武法代表が20日、クウェートからヘリコプター出、イラク南部サマワにあるオランダ軍駐屯地を訪問。
2003年12月22日
■リビアの最高指導者カダフィ大佐はCNNテレビのインタビューで北朝鮮やイランなどもリビアの措置に倣って大量破壊兵器開発計画を放棄するように促した。大佐は「自らの国民に悲劇が降りかかる古都を防ぐためにもリビアに倣うべきだ」と述べた。
■イラク北部ティクリット近郊で11月末、日本人外交官2人が殺害された事件で、現地捜査を担当する米陸軍第4歩兵師団のマーク・ヒューロン大佐は22日、会見に応じ、事件準備の情報収集や手配を担ったとみられる容疑者1人を特定したことを明らかにした。大佐は「二人は外国人を標的にするグループに偶発的に遭遇してしまった可能性がある」と述べた。
■イラク・首都バグダッドで22日、米軍の車列が通過中、路上に仕掛けられた爆弾が爆発し、米兵2人とイラク人通訳1人が死亡、米兵2人が負傷。
■イスラエル訪問中のエジプトのアハマド・マーヘル外相がエルサレムの旧市街で襲われる。
2003年12月23日
■韓国の金章洙韓国軍合同参謀本部作戦部長は国防省で会見し、イラクに追加派兵される韓国軍の担当地域が北部・キルクークに事実上確定したことを発表。韓国は既にイラク南部ナシリヤに派遣している工兵、医療部隊もキルクークに移す方針。韓国のイラクへの追加派兵は3千人以内で派遣期間は2004年4月1日から同年末までの予定。キルクークは現在米軍3千人が駐留し、8月1日から11月11日にかけ4度の攻撃を受け、5人の米兵が死亡。
■中国・重慶市開県で23日、天然ガスの噴出事故が起きる。新華社通信によると死亡者191人。10歳以下の子どもが39人、60歳以上の高齢者が46人と、死亡者の大半は付近の農民であるとしている。10万人が避難。
■イスラエル軍は23日武器密輸トンネルを破壊するためとしてガザ南部の難民キャンプを戦車約20台で攻撃。パレスチナ人9人が死亡。
2003年12月24日
■イラク首都、バグダッド北部で24日、路上に仕掛けられた爆弾が爆発し、掃討作戦に参加していた米兵1人が死亡。米大統領が5月大規模戦闘終了を宣言して以来攻撃による米兵の死者は206人。
■24日付で公開された外交文書で米国が1953年から54年にかけての日米相互防衛援助(MDA)協定締結交渉で、5東西冷戦を背景に日本の早急な防衛力増強を要望し、将来の集団的自衛権行使にまで期待を表明していたことが分かった。
■東北電力は24日の臨時取締役会で新潟県巻町に建設する予定だった巻原子力発電所の計画断念を正式に決めた。
2003年12月25日
■25日早朝、イラク・バグダッド中心部で反米抵抗勢力によるとみられるロケット弾計10発以上が連合軍暫定当局(CPA)本部やシュトランホテルの他、ドイツ、トルコ、イラン大使館などを狙って撃ち込まれた。
■25日イスラエルで自爆テロ、4人が死亡。12月に入って初めてのイスラエル側の犠牲者だが12月はじめから22日までにイスラエル側の攻撃でパレスチナ側は少なくとも25人が死亡しているとロイター通信は集計している。
■25日、イスラエル軍のヘリコプターがガザ市内を走行中の車に向け2発のミサイルを発射。少なくとも5人が死亡、数人が負傷。
■日本のイラク復興支援の資金協力50億ドルのうち、無償協力の15億ドル(政府開発援助、ODA)をめぐり外務省が一部商社などにイラク国内で検討可能な事業リストを提出させていたことが25日、分かった。大手商社8、9社への呼びかけのみで、非政府組織(NGO)への呼びかけもなかった。
■小泉首相は25日、首相官邸でカタールの衛星テレビ「アルジャジーラ」のインタビューに応じイラクへの自衛隊派遣について「人道不幸支援活動に赴く。戦争のために行くのではない」と述べた。石破防衛庁長官も同テレビのインタビューで航空自衛隊は武器・弾薬でなく、主に医薬品や食糧を輸送することなどを説明した。
■パキスタンの首都イスラマバード近郊の都市ラワルピンディで25日、ムシャラフ大統領の車列を狙った自爆テロとみられる2回の爆発があり、警官や市民ら少なくとも14人が死亡、46人が負傷。大統領は無事だった。
■北朝鮮の労働党機関誌「労働新聞」は25日、今年の日朝関係について、「日本の反共和国(北朝鮮)敵視再侵略策動が強化されたことで、朝日関係が、軍事的衝突の危険な境界線に至った」と指摘した。また、朝鮮中央放送などは24日、自民、公明両党が日本独自の判断で北朝鮮に対して経済制裁できるようにする外為法改正案を、来年の通常国会に提出する方針に対し「いかなる封鎖や制裁も宣戦布告とみなす」と強調した。
■愛知県は25日、2005年愛知万博と中部国際空港の2大事業が県内経済に波及させる効果について、民間シンクタンクに2千万円で試算を委託。その中間試算の結果を発表、05−10年度の6年間で2兆2千億円とのこと。
2003年12月26日
■バグダッド北方バクバで、駐留米軍を狙った迫撃砲や爆弾による攻撃が25日から26日未明に書けて続発、米兵計4人が死亡、5人が負傷。また駐留ポーランド軍によると南部バビロン付近で26日、同軍の車列が爆弾や小火器で攻撃され兵士2人が負傷。米軍はクリスマス期間中大規模な掃討作戦「アイアングリップ(鉄の締め付け)」を実施している。
■イラク派兵で航空自衛隊の先遣隊が26日、クウェート、カタールに向け民間機で出発。数班に分けて約50人。先遣隊は到着後、輸送物資をめぐる米軍との調整や、隊員の宿舎や飛行場設備の確認など、本隊受け入れの準備を進める。先遣隊の調査を基に、C130輸送機など本隊は1月下旬にクェート入りし、地上からの攻撃を避ける安全飛行訓練を行った後、同国を拠点にバグダッドや北部モスル、南部バスラなどイラク国内の飛行場との間で、米軍関連物資や医薬品食料品などの物資を輸送する。防衛庁は陸上自衛隊部隊も1月中旬に先遣隊を、本隊派遣は2月中旬からというスケジュールを描いている。
■26日、イラン南東部のケルマン州の古都バムでマグニチュード6,3の地震があり、少なくとも5千人から6千人が死亡、負傷者は3万人。
■山本一太参院議員ら自民党の国会議員有志でつくる「対北朝鮮外交カードを考える会」は26日、北朝鮮の貨客船万景峰(マンギョンボン)92」などの船舶野入港を禁止できる経済制裁新法案の骨子をまとめた。
■拉致被害者家族の支援団体「救う会」は26日、拉致議連の事務局長平沢勝栄衆院議員(自民)や救う会メンバーらが北京で20日と21日に行った北朝鮮政府高官との協議内容の要旨を公表。北朝鮮側は帰国した被害者5人の家族の帰国問題について「5人が北朝鮮に戻り、家族と会って意思を確認した後なら、5人と家族を帰国させることは可能」と指摘。「拉致義連やマスコミが同行し、5人と家族との面談に立ち会っても構わない」と述べたとしている。
2003年12月29日
■イラク・サマワ近郊でオランダ軍兵士がトラックを略奪するため集まっていた群衆に発砲、1人を死亡させた。
2003年12月31日
■イラク・バグダッドの繁華街にあるレストランで自動車爆弾テロ。イラク人の客ら8人が死亡、米紙ロサンゼルス・タイムズの記者3人を含む30人以上が負傷。
■防衛庁がイラクやクウェートなどへ派遣する自衛隊の武器使用基準を非公開の「訓令」で定めていることが分かりその内容が31日明らかにされた。武器使用は「口頭での警告」から始まり、相手を傷つける「危害射撃」を経て「武器使用停止」で終わる6段階の手順を踏むよう規定。その一方で「事態の急迫時」など手順によらず「危害射撃」できる特例を4項目定めている。最終的な判断は現場任せと受け取れる内容になっている。