「恐ろしいほどの無知」は反核記事剽窃が典型の朝日記者
2000.9.9
この連載の主題は、本来、わがホームページ開設の直接の動機をなすものであるが、このところ、地元の諸問題などに追われ続けて、休刊状態が続いた。その間、いくつかの「周辺事態」が発生していた。わがホームページ読者、かつ「歴史見直し研究会」の会員から、次の記事の切抜きを頂いていたのだが、早くも4ヵ月以上も前の話になってしまった。記事紹介の後、簡単な批判を加える。
反ユダヤ主義/無知が生む勝手な像
「自由の」周辺3「みる・きく・はなす」はいま/第22部
(『朝日新聞』2000.5.2)
東京で翻訳業をしている50代のユダヤ系米国人男性は、仕事場近くのコンビニに立ち寄るのが日課となっている。ドーナツやコーラを買い、その日発売の週刊誌を立ち読みする。目次を開き、時々、目を止める。
「ユダヤ人」
「陰謀」
「世界制覇」彼は「在日ユダヤ人名誉保護委員会」の会員である。
15年ほど前、ユダヤ人への偏見をあおる本の出版が相次いだのを機に委員会は誕生した。その種の本や記事を見つけると、手紙や電話で抗議する。東京・広尾にある日本ユダヤ教団に所属。中心メンバーは彼のほか、ユダヤ教聖職者、政治学者、貿易商ら数人。事務所はない。定期的に会議するわけでもない。抗議しても大半は無視されたまま、終わるという。
「火事のとき、バケツを持って集まるような力の弱いグループです」と彼はいう。
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昨年10月、この男牲は「週刊ポスト」の記事を読み、行動に出た。「長銀『われらが血税5兆円』を食う/ユダヤ資本人脈ついに掴んだ」と題した記事だ。男性は米ロサンゼルスにあるユダヤ系人権保護団体「サイモン・ウィーゼンタール・センタ一」にEメールで連絡した。
センターは同誌の広告主に、「このような記事のためにお金を出したのですか」と迫った。相手はトヨタ自動車、サントリー、松下電器産業など8社の米国現地法人と、米国企業2社。一部の広告主は一時的に広告の掲載を見合わせた。同誌は記事を撤回し、おわびを載せた。
センターのエイブラハム・クーパー副所長は「我々が行動に移るのは一線が超された時であり、編集部への手紙1通ではどうにもできない場合です。ユダヤ人は前の世代で人権を侵され、差別的扇動で最終的に民族虐殺を被った。この悲惨な歴史を繰り返さないためには、何が何でも立ち上がるのです」と話す。
センターが動けば事態は急転する。5年前、「マルコポーロ」誌が廃刊した出来事も、似た構図だった。
「なぜ言論のやりとりもしないまま、広告を封じ込める手段をとったのか」
今年2月、ポストを発行する小学館で開かれた人権セミナー。小学館の男性社員は、講師のクーパー副所長にただした。副所長は「日本発の情報は近隣の国にも影響を与える。我々はちゅうちょなく広告主の所に行く」と答えた。
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日本に住むユダヤ人は2千人弱。なじみが薄いためか、「全融界を支配している」「世界征服を狙う」などの論調が堂々と公表される。翻訳業の男性によるると、この状況は世界的に見て「極めて異質」だという。
同志社女子大の宮沢正典教授(西洋史)によると、「ユダヤ陰謀論」は大正時代に欧州から入り、銀行の破たんなど大きな困難があると姿を現す。ユダヤ人を扱った本は3百冊以上出版されているという。
「社会不安や経済のかげりの原因を『ユダヤ人の陰謀』と言い切ってもらうと、何となく安心するのではないか。金持ちでずる賢いという勝手な像をつくりあげている」と宮沢教授は分析する。
男性が委員会に入るきっかけは、バブル当時のユダヤ非難だった。東京・赤坂を歩いていると、ナチスのかぎ十字とともに赤地に白抜きで「地価高騰を引き起こしたユダヤを追放せよ」と書かれたビラが、電柱に張られていた。10メートルほどの間隔でいくつもあった。ナチ政権下のドイツに迷い込んだように感じた。
子どものころ、母親から第2次世界大戦当時の強制収客所のパンフレットを見せられたことがある。遺体が折り重なる光景が胸に焼きついていた。
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国内のある雑誌は昨年末、ユダヤ人社会がとる抗議方法に疑問を呈する記事を載せた。「ユダヤ系団体には逆らわない方がいいという印象は、別の偏見を生み出しかねない」と。
翻訳業の男性は納得できなかった。日本では口頭や文書でどれだけ強く抗議しても耳を傾けてもらえなかった経験があるからだ。在米ユダヤ人の言葉を引用して、筆者のフリーの記者に手紙を出した。
「ユダヤ人である私にとって、害のない反ユダヤ主義が存在するとは思えない。あらゆる種類の反ユダヤ主義の根底に流れているのは、恐ろしいほどの無知なのだ」
私は、この切抜きを頂いた直後、朝日新聞「株式会社」の広報部に電話をした。この記事には、「その種の本や記事を見つけると、手紙や電話で抗議する」とあるから、私も、同じことをするという前置きで、執筆した記者の「傲慢」を批判し、その記者こそが「無知」なのだと諭した。私が諭した内容は、すでに本シリーズで何度も論じたことなので、省略する。ホロコーストの嘘の指摘と「反ユダヤ主義」とを、わざと混同してみせるシオニストの常套手段については、私の本の中で詳しく論じていると話した。
対応した広報部員は、非常に素直で、私の著書の題名を聞き、データベースで朝日新聞株式会社の図書室の蔵書には入っていないと言った。私が特に付け加えたのは、上記の記事では「力の弱いグループ」などと同情を引くが、背後のゴロツキ集団、「サイモン・ウィーゼンタール・センタ一」が動けば、日本のメディアでは史上空前の事態が発生すること考えよ、彼等シオニスト・ロビーほど強力な世論操作力を持つ集団はないのだ、ということだった。
なお、上記の記事中の「ユダヤ人名誉保護委員会」(Anti Defamation League.略称ADLは、「サイモン・ウィーゼンタール・センタ一」ほかの暴力的なゴロツキ集団を手先に使う最強のシオニスト・ロビーである。本シリーズ[(その35)「法王」はシオニストの嘘の恐喝に屈したか?]において、ユダヤ人の歴史家、ピーター・ノヴィックの著書、『アメリカ人の生活の中のホロコースト』の記述を引用し、「アメリカのユダヤ人によるホロコースト・プログラミング」を指摘したが、この背後にもADLがいる。
この朝日記事の中で実に面白いのは、「サイモン・ウィーゼンタール・センタ一」のクーパー副所長が、「日本発の情報は近隣の国にも影響を与える。我々はちゅうちょなく広告主の所に行く」と答えたらしいことである。
彼等は日本の世論が欧米以外の諸国に影響を与えることを恐れているのである。クーパー副所長には、『マルコポーロ」廃刊事件の際の記者会見で、彼の発言に批判を加えたのだが、終了後に彼の方が近寄ってきて「サイモン・ウィーゼンタール・センタ一」発行の怪しげな本をくれた。拙著『アウシュヴィッツの争点』の巻末資料にも記した『ホロコースト否定論/学問を装う迷信』である。内容は、それこそ「学問を装う」デマゴギーの羅列でしかない。実に品の無い本である。上記の記事を書いた朝日新聞の記者も、その程度なのである。
以上で(その39)終り。(その40)に続く。
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