仰天!武蔵野市『民主主義』周遊記(その30)

借金火達磨・巨大政治犯罪都市

川崎市土地開発公社「経営健全化団体」指定は、
わが提言の2年遅れ矮小具体化

2000.10.1

 土曜日(2000.10.21)の『日本経済新聞』朝刊に、「再建支援の『経営健全化団体』/川崎市土地公社を初指定」の見出しの記事があった。リードの冒頭は、「自治省は20日……指定した」となっていたので、月曜日の23日、土地開発公社問題を担当する大臣官房地域政策室に電話をした。

 ところが、この記事には、少なくとも読者誤導の不正確さがあった。さらりと読むと、いかにも自治省が「7月にまとめた『公社経営健全化対策』を適用し」、大所高所から、「指定した」かのようなのであるが、「指定」は「指定」でも、実情は違っていた。各自治体が各都道府県に指定を申請し、各都道府県の指定を受けて、自治省が追認するのであった。実情は「追認」である。過去、および、いざという時の責任逃れの欺瞞である。

「5年以上公社が保有したままの塩漬け用地」とか「塩漬け土地」とか

 記者会見資料を求めると、近くホームページに入れると言う。最近、こういう返事の官庁が増えた。便利なようで不便だ。無料で郵送して貰う方が時間も掛からず、読むのも楽なのである。しかも、どの例でも、担当者は、入力されるのが何時かを知らない。「待ちぼうけ、待ちぼうけ……」なんて、歌の文句が頭の隅で響く。あの、世間知らずの餓鬼ばかりの記者クラブとの、差別待遇だ!

 だから、とりあえず電話で質問を続けた。記事の用語の「塩漬け土地」について、「私は、あれじゃ腐らないように感じるから吸血用地にした」と言い、「塩漬け土地」に関する本シリーズの前回の批判を簡略に述べると、相手は苦笑しながら、「記者会見では使っていない。メディアが勝手に使っている表現」ときた。記事そのものにも、読み直してみると、「5年以上公社が保有したままの塩漬け用地」となっていたり、「土地」か「用地」か、実に「幼稚」な表現の不一致が見られる。

 さて、ここで大問題なのは、この「5年以上公社が保有したままの塩漬け用地」と言う基準である。これはまさに、前回指摘した「全国市民オンブズマン連絡会議」による土地開発公社問題の「矮小化」と、ピタリ一致する。『日本経済新聞』(2000.8.28)は、「全国市民オンブズマン連絡会議」の東京集会について、「土地開発公社が事業化されないままで五年以上保有している『塩漬け土地』の実態調査を公表した」点だけしか報道していなかった。私は、「この『売名』運動の成果は、土地開発公社が抱える諸問題を、この部分だけに矮小化することだったのである」と指摘していた。

1998.6.22.緊急提言「21世紀日本再生ニューディール」に先見の明

 ただし、上記の『日本経済新聞』(2000.10.21)記事、「再建支援の『経営健全化団体』/川崎市土地公社を初指定」には、「自治省の支援策は、保有土地の簿価総額が、自治体の標準的な収入額を表す『標準財政規模』の50%以上となっている公社などが対象」とあり、「自治体では基準に該当するのは全国1,594公社のうち2百程度と見ており、そうした自治体にも再建を急ぐよう求める」ともある。

 つまり、自治省は、一応、「全国1,594公社」を見渡しているのである、ただし私は、早くからとは言えないが、1996年初頭から土地開発公社問題を調べている。自治省の仕事の仕方も知っている。各自治体が各都道府県に報告し、それを自治省に上げるのだから、まったく「寝て待て」の仕事振りである。実情が分かるのは1年後になる。

 私は、バブル崩壊期に、地価の買い支えに動員された地方自治体が、銀行から「借金させられて」、無理やり「買わされた」土地の簿価総額を、約十数兆円と試算している。同様な金額を記した経済専門誌もある。これを「矮小化」するのは許し難い。私は、2年以上前の1998.6.22.緊急提言「21世紀日本再生ニューディール」を発表したが、そこでは、これらの土地を国が全部肩代わりして、地方自治体が「インフラ整備」できるようにせよ、と主張した。この金額は、泥棒に追い銭の銀行への公的資金投入よりも少ない。

 面白いことに、上記の記事が出た21日より20日前、『日本経済新聞』(2000.10.1)「経済観測」欄に、「IT戦略会議、産業新生会議」などの「委員を務め」、「森首相を囲む財界人の1人」の人物紹介で、「ウシオ電機会長」牛尾治朗が登場した

 牛尾は、編集委員の質問:「米国に比べて遅れている情報インフラの整備は容易ではないでしょう」に対して、つぎのように答えている。

バブル崩壊後の経済対策は百兆円にのぼった。その3分の1でも情報インフラに使っておけば、日本はIT先進国になっていた。[後略]」

 今ごろ気が付いても遅いのである。

現在の日米産業戦争の「ミッドウェイ」惨敗の遠因は何か

 これまた今から6年前、1994.7.18.初版(ただし、残念ながら初版止まり。直接メール注文受け付け中)の『電波メディアの神話』で、私は、「CIA委託件報告書『日本2000年』」などの存在を示しつつ、以下の指摘をしていた。

 ところが、この「日経産業新聞」の連載記事のことに触れる論文が、まるでないので、日経のデータベース担当者に聞いたところ、インターネット以前なので、キーワードのITは愚か、情報ハイウェイでも、出てこない。記事の見出しの「情報・通信」だと、多すぎて困るのだそうである。パソコン情報に頼る最近の記者、その薄味記事を読むだけの財界人、読みもしない政治家には、現在の日米産業戦争における「ミッドウェイ」惨敗の遠因が見抜けないである。