政策提言:日本経済再生への提言(その1)

初出:1998.6.22. 関係各所へのメ-ル。
以後、様々な視点からの意見を加えて逐次増補。最終改訂は1998.10.15

**緊急提言**
21世紀日本再生ニューディール

 Think globally, Act locally, and Fight professionallyを標榜する木村愛二です。

 1998.6.22.現在。ここ一週間ほどの状況を見た上で、全国で十数兆円に達する「塩付け土地」問題(わがホームページ「武蔵野市民オンブズマンの城」参照)に関して、この際、反体制型批判を超越した「日本経済の起死回生」のための緊急政策提言に転ずることにしました。

 結論を先に要約すると、今話題の「金融システム」救済のようなモグラ叩きの表面的な対症療法よりも、「環境・福祉」を旗印とする根本治療、史上空前の大規模な地方公共事業を先行させることによって、足元から日本経済の再生を図る案です。同じ「バブった」土地の処理なら、銀行の不良債権の担保土地よりも、地方自治体が抱える不良資産の「塩付け土地」処理の方を優先し、それを国が十数兆円を投じて取得価格で引き取り、その分の資金で地方自治体が「環境整備施設」「高齢者福祉施設」「児童福祉施設」「文化施設」などを建設するのです。

 結果として、これまでの自民党型保守政治の「巨大仰天!」政治犯罪が明らかになれば、それで善しとし、政策提言能力のある市民ネットワークの形成を呼び掛けるものです。

 緊急政策の提言として一般受けを狙う都合上、この際、やむをえず、アナクロ元号「平成」までをも、あえて、キャッチフレーズとして使用します(、と最初は書き、「平成日本版ニューディール政策」の題名で発表したのですが、参議院選挙が終わってから、やはり余りの古臭さが鼻に付いて気が変わり、これもやはり鼻に付くところがありますが、国際性を考慮して年代を耶蘇教式の「21世紀」に変更し、キーワードとして浮上中の「再生」を加え、「政策」はディールの原義と重複するので削除しました)。

 経済復興の資金源を水源にたとえると同時に、「国外から大きな疑問符がついている」(日経1998.6.27「日本/今なすべきこと」)現状に鑑み、知られざるキーポイントのドラマチックな序幕式を演出するべく、現在、アメリカで針灸(鍼。acupuncture)が流行っていることに着目し、日本経済を立て直す「三里の灸点」のたとえを用いて説明します。

 すでに大手紙と外国通信社の記者に連絡を取り、簡単なヒントを与え、まずは、わがホ-ムペ-ジを見てから質問をしてほしいと伝えました。

 電話中、その場で、わがホ-ムペ-ジを見ながら同僚に「それコピーして」などと指示していたベテラン記者もおり、今度こそ、これはいけるのではないかと期待しています。すでに断片的な報道はあったのです。

 簡単なヒントを要約すると、以下の如くです。

 1998.6.17.日米の円買い支え協調介入以後、国内でのドタバタ政策調整が行われ、不良債券処理のための受け皿銀行設立などの動きがあるが、これは、足がなえた病人の背中をどやして早く歩けと急かすような愚策であって、特に、銀行救済は「泥棒に追い銭」でしかない。

 銀行は生産現場ではない。生産、流通、消費の流れを作り直し、機敏に内需拡大を図る資金投入なしには、経済は復興しない。

 早い例が1930年代、アメリカのニューディールと戦争(実は、経済の軍事化の効果が大きかったというのが定説)である。

 景気回復のカンフル剤として、しきりと地方公共事業、インフラ整備が説かれるが、中央からの資金援助があっても、一向に新事業着手の花火は上がらない。その理由は簡単である。

「企業ならばとっくに和議申請か自主廃業に追い込まれてもおかしくない自治体が急増している」(日経1998.6.7.Sunday Nikkei「シミュレーション/自治体」)からである。同記事によれば、1975年には20兆円以下だった「地方の借入金残高」は、1997年には約150兆円に達している。ただし、この「借入金残高」には、自治体がすでに取得した「塩付け土地」代金の出費に見合う別途目的で発行した、いわば玉突きの地方債残高が含まれてはいるものの、情報公開が不十分な第3セクターである土地開発公社の借入金は含まれていない

 地方財政を「借金火達磨」にしてしまった原因も、非常に簡単で、銀行とゼネコンが、右肩上がりの財政予測を作成し、「投資的経費」を前倒しで貪ったからである。各自治体には、それぞれ長年の付き合いの指定金融機関があり、武蔵野市の例では、指定金融機関が三菱(現東京三菱)銀行で、バブル時代の財政予測を請け負ったのが三菱総研という関係にあった。

 これらの歴代の貪りの中でも、最も非生産的な貪りは、土地開発公社の制度を逆用したバブル崩壊期における地価買い支えのための「先行取得」強要であった。前出の1989.6.7.日経記事にも、「塩付けになっている土地は思いのほか多く」とある。この不要土地の取得に要した金額は、全国で少なくとも十数兆円に達している。その内、自治省の集計によると、土地開発公社の保有土地総額が約九兆円である。

 結果として、現在、銀行は、地方自治体から貸付金の利息を吸い上げることはできるものの、新規事業への貸し付けが不可能になっている。ゼネコン倒産の悲劇は周知の事実である。

 病気を直すには、その原因を解明し、足なえならば、三里に灸を据えるような最大の急所を押さえ、そこから元気を付け直さなければならない。

 バブル崩壊後、しきりと、地方財政の危機が叫ばれ、地方分権の声が高いが、現状は、独立できない子供の貯金を奪い、借金を背負わせて追い出すような、親が子を貪り食う餓鬼地獄(わがホ-ムペ-ジ「農水省跡地」問題参照)である。

 略述すると、武蔵野市議会の本会議は、1998.3.27.武蔵境駅前の食糧倉庫跡地を、「米が売れなくて懐がさみしい」農水省から、「時価約73億円」(実勢は約30億円)で買う計画を決定した。初年度予算は10億円だが、残りは、武蔵野市土地開発公社が東京三菱銀行から借金して購入する。

 国有財産法によれば、地方自治体は、国有地を無償で譲与、貸与、減額などの優遇措置で獲得または使用することができるのだが、市長は、「そういう制度がなくなり」「時価」「原則」と議会で説明した。それに疑問を呈する議員の質問の声は、市長支持派議員の怒号でかき消された。農水省との交渉経過の文字記録はない。

 以上のように、バブル崩壊に慌てふためき、国家予算よりも大きく、しかもこれまで公共事業でゼネコンを潤してきた地方財政の水源を、吸血鬼のごとく土地バブル買い支えに横取りして独占し、「塩付け土地」の借金で事実上閉鎖し、地方財源を「死に金」にしてしまった二重三重の愚行の解明と反省が必要だが、この責任追及は当面、棚上げとする。

「『平成の徳政令』急浮上の舞台裏」(1998.6.21.日経)には、「中小建設・不動産業者の声」ありとの観測があるが、この業界も、消費者なしには復興しない。

 急場に間に合う最強力の消費者は、やはり、地方公共団体である。

 そこで具体案だが、国は、十数兆円を投入して、不要な「塩付け土地」を、取得価格で引き取る。

 回復した地方財政の水源を、さらに緊急援助資金で増強して、環境整備施設、高齢者福祉施設などを大規模に建設する。いわば「環境・福祉戦争」の全面展開による「内需拡大」である。

「公共資金」、つまり、結局は税金を、私企業の金融機関に注ぎ込むことについては、住専予算以来の強い批判があるし、それがどこへ吸い込まれるかについては、疑惑なしとしないが、この方式であれば、国税で地方税の損失を肩代わりすることになり、その批判は避けられる。もちろん、情報公開の確保が必須条件である。

 環境・福祉の整備は、誰しもが納得する公共事業である。とりあえず以上。

 これぞ、国際社会にも胸を張って報告できる真のビッグバンではないでしょうか。すでに、一部政党にも政策提言しました。

 土地開発公社:「武蔵野市民オンブズマンの城」参照。
 URL: http://www.jca.apc.org/~altmedka/musasino.html


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