I.ルネ・シェレール『ノマドのユートピア:2002年を待ちながら』(杉村昌明訳、松籟社)
II.山内昌之編訳『史料 スルタンガリエフの夢と現実』(東京大学出版会)
III.D・デリンジャー『アメリカが知らないアメリカ:反戦・非暴力のわが回想』(吉川勇一訳、藤原書店)
Iは、現代社会の束縛を解かれた「ノマド」的な生き方についての論議をさらに一段階進めて、示唆的。
IIは、ロシア・ボリシェヴィキ革命の初期にあってすでに、タタールという「辺境」の地から、「中枢部革命」への偏向を批判する目があったことを、具体的な論文・書簡・演説に即して検証することができるようになったという意味で、画期的。
IIIは、二〇世紀のほぼ百年間を通して、世界一の大国として身勝手な軍事的ふるまいをしてきた米国の内部にも、ここまで原則的で強靭な反戦運動を展開してきた個人(運動の方法)があることを知り得て、刺激的。
「周辺事態」なる曖昧な規定のまま、米国主導の戦争に主体的に参加しようとする国に生きる我らへの激励。因に、朝日新聞書評欄「眼の探索」などのコラムで、この愚かな日米防衛協力と死刑問題について執拗に批判的な発言を続ける辺見庸に注目した。他に丸山眞男『自己内対話』(みすず書房)と吉本隆明『アフリカ的段階について』(春秋社)は、「異見を挑発された」という意味も込めて、面白い。
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