STEP4 訴訟を起こすとき
裁判を起こすデメリット 2002.2.2. 最終更新 | ||
費用がかかる | 弁護士費用や訴訟の手続き費用、証人喚問の時の日当、鑑定・検証費用など、裁判に直接かかる費用の他、通信費、交通費などさまざまな出費がある。 | |
プライバシーが暴かれる | 被害者や遺族・家族のプライバシーがマスコミその他を通じて公になる。しかも、好意的なものばかりではない。公判中も、被告側から被害者や家族の人に知られたくない部分や触られたくない部分を言い立てられたりする。 | |
時間がとられる | 日常的にも準備書面を作成したり、証拠を収集したり、いろいろな手続きに行ったりと時間がとられる。 また、裁判通常1カ月に1回(スケジュール調整等で1〜2カ月間があくこともある)、平日に行われる。証言する必要のある時など以外は、代理人(弁護士)の都合には合わせられるが、原告のスケジュールは考慮に入れられない。 遠くの裁判所まで出かけなければならない。(高裁・最高裁となると特に) 多くは1審だけで2〜3年、控訴審を含めると長くて10年前後の年月を要する。 |
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賠償金に換算 | 命を金に換算することに抵抗があっても、民事訴訟の場合、損害賠償金という形で金額に換算される。 | |
勝訴するとはかぎらない | 訴訟の事例をみればわかるが、人道的にはどんなに理不尽なことであっても、勝訴するとは限らない。あくまでも法律に照らし合わせて、違法性があるか、過失があるかで争われる。前例がものを言う世界。とくに、公的な責任は認められにくい。 また、裁判官によっても大きく左右される(少年事件やいじめ、被害者の心情に対して無理解な裁判官も多い。古い価値観や偏見をもった裁判官、やる気の感じられないものもいる)。 遺族の心情を必死に訴えてきたにもかかわらず、結審まぎわになって裁判官が交代することもある。 |
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周囲からの批判 | 「金目当て」「自分たちの責任を他人になすり付けようとしている」などと誹謗・中傷される。好奇の目にさらされたり、「地元の恥」「騒ぎ立てる人たち」として、孤立させられたり、イタズラ電話がかかってきたりする。 | |
精神的な負担 | 相手はこちらの一番弱いところ、痛いところを遠慮なく突いてくる。公然とプライバシーをあばかれたり、親の責任や本人の責任と責められたりする。また、思い出したくない辛いことを証言しなければならないこともある。被告からは、憎悪の目で睨まれる。ときには罵倒される。 | |
生活が犠牲になる | 経済的、時間的、精神的にも日常生活が犠牲になりやすい。また、親の関心が裁判に集中するため、残されたきょうだいが寂しい思いをすることも。また、会社の取引上の都合や外聞、裁判にはエネルギーと時間が必要なため、現職を失うこともある。 | |
裁判を起こすメリット(ただし、保障されているわけではない) | ||
少年審判の調書がみられる | 普通は見ることのできない少年審判の調書が証拠提出され見ることができる。多くの証拠に触れることができる。場合によっては、現場検証が行われることも。ただし制限付き。(少年法の改正により、裁判を起こさなくても、調書のコピーを手に入れることも可能になった) | |
詳しい経過がわかる | 裁判の過程で、それまでわからなかった事件の経過や詳細を知ることができることもある。時には、遺族にとって残酷なことではあるが、愛するものの最後の様子を知りたいという欲求に答えることができる。ただし、裁判になっても、被告やその周辺の人びとの拒否にあい、全く何もわからないこともある。 | |
証言が聞ける | 証人申請がとれれば、加害者や関係者の証言を聴くことができる。その中で、相手がどう思っているかや事件の詳細がわかることもある。少年事件の場合は特に民事裁判ではじめて相手の顔を見れることもある。(証人申請が認められなかったり、相手が出廷を拒否することもある) | |
多くのひとに知ってもらえる | 訴訟を起こさなければ埋もれてしまうような事件でも、多くのひとに知ってもらうことができる。 勝訴に結びつかなくとも、人びとの関心を呼び、社会運動につながっていくこともある。同じ訴えが多くなれば次の勝訴に道を開くことも。 ひとりが声をあげることで、多くの泣き寝入りしている人たちが声をあげるきっかけともなる。 |
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責任を問える・懲罰的な意味あい | 刑事事件では問えなかった責任を民事裁判で問うことができる。裁判に引きずり出すことで心理的な圧迫や社会的なダメージを与えることができる。法定の場で原告の思いをぶつけることができる。少なくとも、裁判の期間中は、加害者や関係者は被告のことを忘れることができない。 | |
事件の再発防止 | 多くのひとの関心が集まれば、対策もたてられやすい。また同じことをすれば訴訟になるかもしれないという思いは、抑止力になる。また、様々な角度から事件をみることで、問題点が明らかになる。泣き寝入りすれば、事態は何も変わらない。さらに悪くなることも。 | |
勝訴すれば損害賠償金をえられる | 賠償金は相手への懲罰的な意味合いがあったり、再発への警告にもなる。また、被害者が傷害を負っている場合は治療費や生活費にあてることができる。新たな運動の資金源とすることもできる。(ただし、実際には弁護士費用等を差し引いても儲かったという話はあまり聞かない) |
※裁判はメリットが必ずしも大きいとは限らない。みな、やむにやまれぬ気持ちで闘っている。
家族への負担も大きいだけに、よく話し合って決めたい。
迷ったときは、自分にとって何が一番たいせつか、大切なものを書き出して、優先順位をつけてみるといい。
将来をも見据えたうえで、絶対に譲れないことは何か、物心両面でよく考えてみたい。
裁判の意味
2002.8.18 更新
「いじめ事件裁判において、いじめ被害者が民事事件として加害者や学校・教師の責任を追求する場合、その訴訟目的は、経済的損害の補償を求める形をとるが、追及するものの実態は、「事件がどのような状況で発生したのか、何が子どもにあったのだろうか」を知りたいという思いが強い。 いじめ事件の民事裁判になっている例は、ほとんどが事件が発生してから被害者が真実を知りたい、疑問を解きたいということを学校や教師にぶつけていったときに事実や証拠の隠蔽、ひどいときには虚偽の説明をしたり、被害者を傷つけないために、といった言い方で真実を隠す場合などの不誠実さをきっかけとするものが多い。 この意味では、被害者=原告の求めるいじめ民事裁判の目的は、裁判過程を通して真実を究明することにある。それによって精神的な救済、自らの精神的支援救済の獲得をしたいと考えている。そういった意味での訴訟による救済の実現が教育法裁判として重要な課題であることを提起したい。」 季刊教育法2000年9月臨時増刊号「いじめ裁判」の中の「いじめ傷害事件と教育法における損害賠償・救済論」/青木宏治(高知大学教授士)/2000年9月エイデル研究所 |
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民事裁判当事者の半数が裁判に不満 2000年6月、東京・大阪・札幌・冨山・松江など全国16地裁で終結した民事訴訟民事訴訟の原告や被告となった個人、法人(当事者)1612人に調査を依頼、591人(36.6%)が9月と11月の面接に回答(原告54.3%、被告45.7%)し、結果が2001年2月13日の司法制度改革審議会第47回会議で報告された。
2001年2月14日 共同通信 より |
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損害賠償金について ・判決の時効は民法によって10年と定められている ・働いて稼いだ給料を差し押さえることはできるが、生活に支障のない範囲に限られる。 ・相手の居場所などは自力で調べなければならない。 (変更になっている可能性あり) |
訴訟を起こす前に
事実関係について年表形式の表を作成するとよい。 全体の事実を時系列に沿って整理しておくことは、多様な事実関係の中で被害者が追い込まれている有り様や、学校が被害者を救うことに如何に無力であったかを裁判所に理解してもらう上では重要な作業である。弁護団の頭を整理するのにも役立つ。 弁護団は、全体の事実関係を時系列に整理し、各事実毎に関連する書証を掲げ、その事実が持つ意味内容について欄外に解説文を加える形式の準備書面を作成。 季刊教育法2000年9月臨時増刊号「いじめ裁判」の中の「上越春日中いじめ自殺事件」/近藤昭彦(弁護士)/2000年9月エイデル研究所、 |
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裁判に何を求めるのかを決める。 裁判に求めるものは、いろいろあるだろう。真実の追及、名誉の挽回、相手の反省と謝罪、責任の所在の確認、社会的制裁を加えること、被害者の思いをぶつけたい、賠償金を得る、新たな社会規範をつくる、など。しかし、その中でも何を一番に考えるのか焦点を絞る。それによって、訴える相手や闘い方も変わってくる。 |
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家族のなかで、よく話し合う。 訴訟を起こすとなると、金銭面、時間面、労力、周囲の視線など、家族への負担もけっして小さくない。家族のなかでも、思いは様々だ。自分はどうしたいのか、それぞれが本音を出して話し合うことが必要。その上で、何をどこまで協力できるのか、具体的な協力はできなくとも見守っていけるのか、名前や住所、電話番号などを公表することの影響や是非についても話し合いたい。 |
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支援者を募る。 一緒に闘ってくれる仲間がいると心強い。また、個人の問題できなく、社会運動へと還元していける。 そのためには、まずは自分の情報を開示することが必要。なかには心ないひともいる。誹謗・中傷もある。しかし、それを恐れていては、心から支援してくれる人びととも出会えない。(STEP5参照) |
弁護士の探し方
2002.5.5 最終更新
弁護士費用は高い。その上、わらをもすがりつく思いで依頼した弁護士に裏切られることも、騙されることもある。弁護士=善人とは限らない。後悔をしないためにも、勝敗をも左右する弁護士は慎重に選びたい。 弁護士探しはある面で医者探しに似ている。腕のいい医者、悪い医者、ビジネスライクな医者、親身になってくれる医者、自分にあった医者を探すことが病気を治す第一歩となる。(親身になってくれる医者が必ずしも、腕がよいとは限らない。その場合は、命にかかわることも) それぞれ得意分野や専門分野があり、治療法も手術派、薬物療法、その他さまざま。知人に紹介されたからとか、有名な病院・医者だからと安心していたら、実際にはトンデモナイ結果になった、など共通項も多い。 以前は、弁護士が自ら宣伝することは禁じられていたが、2000年10月から広告が解禁された。弁護士会の運営するサイトでも、名簿などが公開される方向になっている。検索してみよう。
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弁護士を頼むときの心得・八か条 (知識武装で権利を守れ 「知って得する訴訟のしかた徹底ガイド」 裁判所・警察・弁護士の最大活用法/自由国民社より引用) 1.相談にいくときは必ずアポイントメントを。弁護士は非常に忙しい職業なのです。 2.相談の概略をまとめ、文書にしておく。 3.ただ相談するのではなく、こちらがして欲しいことを明確に。何となく、では弁護士も困ります。 4.電話で連絡し、持参したほうがよい書類等を確認しておく。実際に依頼するのでしたら印鑑も持参。 5.事件の内容は有利・不利にかかわらず、包み隠さず話しておく。疑い深い依頼者は負けると言います。 6.弁護士と意見が合わなければ、訴訟になる前に手を切ること。訴訟になってからでは費用がかかります。 7.事件解決の見通し、費用については事前に聞いておくこと。できれば報酬契約を結ぶとよいでしょう。 |
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弁護士に最初にコンタクトをとるとき 〜経験者からのアドバイス〜 弁護士に最初にコンタクトをとるときに、いきなり電話で依頼内容を説明するよりも、簡潔に概要を書いてFAXするとよい。あるいは、概要を先にFAXする旨を電話連絡する。 弁護士は忙しいので、突然、電話をしても、来客中だったり、次の予定時間が迫っていたり、急ぎの書類を作成中だったりしてじっくり電話口で応対していられない。 また、依頼者は自分のことなのでわかっているつもりでも、初めて内容を聞くものにはわかりにくいことがある。 長い文章を並べ立てるよりも、箇条書きするなど要点を簡潔に。新聞記事などの資料があれば添付する(新聞はプロが書いているだけに読んで第三者にわかるようになっている。情報の過不足については自分で補う)。 書類に目を通してもらったうえで、時間を裂いてもらえるかどうかアポイントをとる。 |
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本人訴訟 弁護士の引き受け手がないとき、よい弁護士と巡り会えないとき、弁護士費用が払えないとき、本人訴訟という方法もある。法律問題は弁護士がいなければムリという意見もあるが、現実に本人訴訟で闘っている人びともいる。弁護士が絶対に負けると言っていたにもかかわらず、勝訴した事例もある。ただし、平日に出廷しなければならない(原則として欠席は認められない)など負担も大きい。 当事者本人に対する裁判手続関する一般的な情報の提供は、現在、民事訟廷事件係、事件担当部の書記官、事務官により口頭で行われることが多い。 ただし、裁判所は、当事者間の紛争を解決する公正中立な機関であるので、書記官は、弁護士が代理しない当事者本人に対しても、公正中立な立場を害するような助言をすることはできない。 (「本人訴訟に関する提言 −当事者に対する正確でわかりやすい情報提供 /東京地方裁判所部民事部 本人訴訟検討会」/「判例時報 平成13年10月11日号 No.1756 /判例時報社」 参考になる本 参照) |
弁護士を頼んだら
2004.5.22 最終更新
弁護士費用について 2004年4月1日から弁護士法が改正され、従来の弁護士標準規程が廃止され、料金が自由化された。 各弁護士が報酬の基準を作成することになった。 弁護士に支払う主な料金は下記のものがある。(法律は変わるし、また、あくまで目安でしかないので要確認)
日弁連では、各事務所で報酬基準を作成し、依頼者に求められれば、見積書を作るよう務め、依頼を受けた際は報酬額を含む委任契約書を作ることを義務づけた。依頼する前に見積書を出してもらうとよい。 (2004/5/20 朝日新聞参照) また、日本弁護士連合会はホームページ(http://www.nichibenren.or.jp/index.html)で、 弁護士報酬 http://www.nichibenren.or.jp/jp/soudan/komatta/housyu.html や 市民のための弁護士報酬ガイド http://www.nichibenren.or.jp/jp/soudan/komatta/housyu/guide01.html を 公開している。 |
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私の知る限り、弁護士費用に関する依頼者の不満は多い。予想以上にお金がかかった、何にどのくらいかかるのかが事前事後とも不明確、弁護士の能力や対応・結果に対して大いに不満を感じているにもかかわらず多額の報酬を請求された、善意でしてくれたと思っていたことが後でしっかり請求された、などなど。 損害賠償請求の場合、相手に請求する金額によって、弁護士に支払う着手金や裁判所に納める印紙代が異なる。請求金額を決めるときは、そのことも考慮にいれて慎重に。 近県の弁護士に依頼するか、それとも玉石混淆で数が集中している大都市の弁護士に依頼するかは、人物、専門分野もさることながら、交通費、宿泊費、日当なども考慮にいれて。 弁護団を組んでもらうと心強いが、費用は×人数分になる(まれにボランティアで参加)。本当に必要かどうか、よく考えてから依頼する。 |
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依頼内容を確認する。 契約書等はよく読む。依頼にどこまでが入っているか、どこまでやってくれるか(同行調査・書類作成)、また料金はどうなっているかをしっかりと把握しておく。料金一覧表の写しをもらうなどしておく。 |
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お金の話はしっかりとする。 料金がいくらかかるのか、その都度確認する。訴訟費用には何が含まれて、何が含まれないのか、どこまでの段階(調査・示談交渉・第一審・控訴審・上告審・など)の料金なのかを確認する。(文書作成や同行の日当・交通費・宿泊費、調査費用など)成功報酬などについても話し合う。経済事情が苦しい場合などは、正直に打ち明けて事前に相談する。 |
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主体はあくまで原告。 弁護士は法律知識を持った代理人にすぎない。この裁判に何を求めるのかを他人任せではなく、自分たちではっきりと決めておく(賠償金なのか、名誉の回復なのか、真実を知りたいのか、報復目的なのか、再発防止なのか、謝罪なのか)。 |
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打ち合わせは綿密に行う。わからないことは聞く。 ただし、弁護士は忙しい。依頼者が事前に、ある程度勉強しておく必要もある(あまり専門的にやる必要はないが、基礎的な法律用語、手続き方法など)。 抜けや漏れがないように、予め質問事項をメモなどに整理しておくとよい。 |
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弁護士を信頼する。 いったん依頼をしたら、信頼してまかせることも必要。裁判は駆け引きでもある。駆け引きの上手下手が、審判を左右する。遺族のストレートな思いがかえって裏目に出ることもある。弁護士との息が合わないと失敗する。 ただし、どうしてもダメだと思ったら早めに手を切り、新しい弁護士を探したほうがよい。 |
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弁護士には真実を打ち明ける。 被害者であっても、他人に知られたくないことはある。しかし、裁判に不利になる材料であればなおさら、弁護士には打ち明けておいたほうがいい。相手は必ず、こちらの弱みを突いてくる。その時に、弁護士が知らなければ、対策の立てようがない。(たとえば、過去の犯歴、万引きや暴行、いじめの加害行為、親の認知、他人の警告など) |
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自分でできることは自分でやる。 すべてを弁護士任せにできると考えない。証拠集め、情報収集、書類の作成など、何をすればよいか、相談しながら行う。 また、加害者や証人との接触は慎重に。(脅迫・強要したなどと言われ、裁判で不利になることも)やったほうがいいこと、やらないほうがいいこと、弁護士と共にやったほうがいいこと、打ち合わせをする。 |
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弁護士への苦情申し立て。 疑問があれば、弁護士に説明を求める。納得ができないことは、きちんと意思表示する。 弁護士は必ず、弁護士会に所属しなければならないことになっている。どうしても納得がいかない場合には、該当弁護士が所属する弁護士会の苦情処理委員会に申し立てを行う(無料)。 |
参考になる本 2003.12.3 最終更新
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注 意:私自身は法律の専門家でも、少年犯罪やいじめ研究の専門家でも、カウンセラーでもありません。
最終的な判断はあくまでご自身の責任でお願いします。 S.TAKEDA
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