STEP2 いじめや体罰を発見したら



親が子どもにしてやれること

子どもから、じっくり話をきく。
最初から質問責めにはしないで、子どもの気持ちにあわせて話をきく。また、同じことの繰り返しのようでも、話しているうちに別のことを思い出すこともある。
(聞く姿勢については STEP1 参照)
話の内容を整理する。
いつ、どこで、誰に、何をされたか、見ていたひとはいるか、その時どう思ったのか、誰かに相談したか、など。
時系列にした一覧表やメモなどに整理しておくとよい。証拠となるものは必ずとっておく。
(証拠の集め方 参照)
子どもの安全を確保する。
学校に行き続けることで、心や体がひどく傷つけられることが予想される場合、子どもの安全を第一に考える。報復の危険性を常に大人が考慮にいれておくこと。
子どもが望むのなら親が送り迎えをする、SOSを求められるようチカン防止警報装置を持たせる、携帯電話を持たせる、非通知電話を受け取れないようにする(NTTに相談)、なども。
命を削ってまで学校に行く必要がないことを子どもに話す。(そのためには、まず親が確固たる信念を持つこと。世間体や学歴、将来よりも、心と命が一番大切であることを再認識しよう)
周囲に協力を求める。
学校の先生をはじめ保護者など、学校をとりまく人々に協力を求めよう。連携しよう(情報をもらったり、行動を共にできる関係を日頃からつくっておく)。
とくに、学校で常に一緒にいられる生徒の協力が求められれば、なおよい。
被害者同士が連絡をとりあったり、行動や交渉を共にすることも有効。
また、教師や加害者、周囲と対立するより、協力することのほうが、子どもにとって利益が大きいということも忘れずに。
ただし、いざという時には、親が矢面に立つ覚悟も必要。わが子を命がけで守れるのは親しかいない。
学校の外に助けを求める。
あらゆる手だてをつくしても、学校内で協力を得られない場合、学校の外に助けを求めよう。
ただし、それによって学校との関係がこじれることもあるので慎重に。
(相談場所について 参照)
継続して観察を続ける。
大人の介入で一旦は下火になったいじめや体罰が、ほとぼりが醒めた頃、再発することは多い。その場合、隠蔽工作は巧妙になり、程度も報復の意味あいを込めてよりエスカレートする場合がある。事態はより深刻なものとなる。
また、体罰を封じられた教師が、言葉でのより陰湿ないじめを行うことがある。体罰がなくなったからといって安心してはいけない。
アフターケアも忘れずに。
傷つけられた子どもの心の傷は、大人が想像する以上に深いことがある。性格に暗い影を落としたり、対人関係に自信が持てなくなったり、拒食症や不登校、引きこもり、自殺や自殺未遂に発展することもある。周囲の理解が必要。見守りながら、その後のケアも忘れずに行う。半年から1年間は要注意。また、精神に残した傷が一生ひびくこともある。ただし、臆病になりすぎてもいけない。
家族だけではカバーしきれない時には、外部の助けを借りよう。また、同じ経験をもつもの同士が話し合うことで、孤立感から救われることもある。


「子どもの人権と体罰」研究会の事務局長・山岸秀氏のアドバイス
(「愛しき娘よ」13歳の遺稿と母親の手記(吉野和子/母と子社)より抜粋)

1.子の事故報告書を○○県庁公文書館内の情報公開センターへ行き、写しをもらってくること。
2.学校へ再調査依頼書を送り、子の自死について再調査を依頼すること。
3.学校の教員の中に協力してくれそうな教員を探すこと。
4.いじめがどの程度であったか内容を具体的に整理し、まとめておくこと。さらに多くの資料を集めたほうがよいので、できるだけ努力を試みること。
5.加害者との話し合いの件については、この話し合いを進める方法としては、この事件(子の自死は事故ではなく事件であること)の責任は学校にもあると思えるので、学校、つまり校長が仲介に当たるのがよいが、校長に依頼しても引き受けてくれるかどうか甚だ疑問であること。



証拠の集め方

2002.2.25 更新 

メ モ 日記や手帳、時系列にした一覧表など。(過去のできごとも、覚えている限り思い出して書く)
年月日/時間/場所/関係した人物の氏名(目撃者を含む)・住所(知らない人物の場合、特徴を書いておく)/細かな内容/とられた金額・モノ/その時の自分の感情(恐怖感・不安感・怒り)など。
会話・恐喝内容・命令・交渉・相談内容・相手の反応・態度や言葉。(相手の言葉はできるだけ正確に書く)
似顔絵、現場の地図、部屋の見取り図、人員の配置図。
手紙類 手紙や書類など、出すものはコピーをとっておく(場合によっては、コピーのほうを相手に出す)。
内容証明で出す。
連絡帳を有効利用する。
受け取ったものは保存しておく(なるべく触らずビニール袋に入れて)。
ファックス、メールなどに書かれた呼び出しや脅迫の言葉、掲示板への書き込み、着信履歴。
電 話 留守番電話のメッセージ、通話録音テープ、通話記録。いたずら電話の時間記録。
※電話や会話の録音は、電気屋さんに相談すれば、いろいろなものが出ている。
※録音した内容はテープ起こしするとよい。
金 銭 金の渡し先と金額、日時。通帳記録、銀行の支払明細書。レシート。
モ ノ 壊されたり、落書きされたもの。修理記録・請求書。衣服、ハンカチなど。凶器。
写 真
ビデオ
現場の写真、壊されたり落書きされた物品、ケガの態様など。
日付や時間を入れられるとよい。
診断書 ケガや病気の診断書(有料)や治療明細書。医薬品購入の領収書。
公文書類 情報公開条例や個人情報保護条例をつかって、「事故発生報告書(学校事故報告書)」「指導要録」「職員会議録」などの書類を請求する。(ただし、「部分開示」で肝心な部分は黒塗りにされていたり、「不存在」「非開示」と回答されることもある。その場合、審査会に「不服申し立て」をすることができる)同じ書類を両方の条例を使って開示請求した結果、黒塗り部分が異なる場合もある。なお、文書によっては保管期限が1年未満と短いものもあるので要注意。閲覧手数料やコピー代は自治体ごとに異なるので要確認。
STEP3の「被害者を支援する法律・制度」を参照。
証言を
集める
事件の間接的、直接的な目撃証言を集める。できれば、録音をさせてもらったり、署名をもらえるとよい。後で、周囲に影響されたり、保身から証言を翻したり、証言台に立つことを拒否されることも多い。ただし、テープを取ると言うと相手の態度が硬化することもあり得るので慎重に。また、できれば、先方が安心するような弁護士や同級生、教師、知人に同行してもらえるとよい。
証言はで
きるだけ具体的に、日付け、時間、場所、人数、相手氏名、特徴、他に目撃したひとなど、具体的に思い出してもらう。
記憶があいまいな時には、「服装は半袖だったか、長袖だったか」「学校の行事の前後?」などをキーワードに思い出してもらう。また、日記や手帳、学校の行事一覧などの記録を見て思い出してもらうとよい。
その他 死因に少しでも不審な点があれば、遺体の写真を撮る、衣服を保管する、遺体を解剖に回してもらう、臓器を保存してもらうなどの措置を。荼毘にしてからでは原因の追求が困難となる。
ヒント! 証拠となるものは常に取っておく心構えで。使うか、使わないか、どう使うかは、後からゆっくり考えればよい。証拠隠滅されてからでは遅い。
ヒント! 訴訟の準備をしているとわかった途端に学校や周囲のガードが固くなり、情報が得にくくなることもあるので、できれば、ぎりぎりまで黙っていたほうが得策。
ヒント!

NEW
被害者と対立する側(加害者や学校など)も、被害者にとって不利な証拠を集めていることがある(予想と覚悟をしておいたほうがよい)。気がつけば、こちら側の情報が相手に筒抜けになっていたり、情報収集を妨害される(箝口令がひかれる、被害者の悪口を吹き込むことで反体制をつくるなど)こともある。証人に対して圧力(脅しや利益の供用)がかかることもある。
押さえられる証拠はできるだけ早いうちに、確実に押さえておく。

参 考:「緊急出版 いじめ少年犯罪に、宣戦布告 史上最強の告発マニュアル」/プレスプラン編集部/プレスプラン、
     「いじめと闘い、勝つ!」 自分の子どもは自分で守る/小寺やす子
/サンマーク出版発行
     ほかTAKDA私案


学校との交渉の仕方

担任に話をする・手紙を書く。
一方的に責任を押しつけるのではなく、共に考えていく姿勢で。話し合うときは両親揃って行く。もしくは複数でいく(親族、同級生の保護者、支援者など)。感情的にならないよう冷静に話し合う姿勢で。ただし、「これだけは譲れない」というものをはっきり示す。(相談や交渉の内容を記録に残す)
担任ではラチが明かない場合、学年主任や教頭、校長に直接相談する。もしくは、部活の顧問や前担任など、他に信頼できる教師に相談してみる。
どうしても本人からは言えない、言いたくない場合、匿名の手紙で学校に被害が広がっていることを知らせる方法もある。
情報の共有をはかる。
担任教師は自分だけで処理しようとして、ほかの教師と情報を共有していないことが多い。どこまで情報が共有されているか確認する。必要なら学年主任や教頭、校長に直接、相談する。
場合によっては、他の保護者にも知らせる(学校側は知らせたがらないことが多い)。
子どもの人権と安全には十分に配慮する。
いじめられている子どもにも、いじめている子どもにも、人権はある。また、教師は必ずしも、いじめられている側に協力的とは限らない。そのあたりを見極めて、子どもに危害が及ぶようであれば、いじめている子どもからはもちろん、教師からも引き離すことを考える。
また、安全配慮については、言い過ぎるくらい言って丁度よい。
記録を残す。
交渉の経過も、連絡帳やFAX、コピー、録音、メモなど、記録に残る形で保存する(日付・交渉相手なども忘れず記入)。
また、話し合った内容を文書にして双方で確認するとよい。
具体的な対応策をたてる。
「気を付けておきます」などとあいまいな表現ではなく、何をどうするのか、して欲しいのか、して欲しくないことは何かなど、具体的に話し合う。
結果の報告も、期限を設けて必ずもらうようにする(できるだけ文書で)。
学校とトラブルになったら。
転校や不登校も選択肢のひとつと考える。ただし、あくまで緊急避難。ここからが新たな問題解決のスタートとなる。問題をいつまでも先送りしないことが大切。
もし、内申書に1をつけられたり、悪く書かれたとしても、受験時に「教育方針の不一により学校とトラブりました」と書いて貼って出した結果、受験校にすべてに合格した例もある(「担任への不満!! 穏便即決マニュアル 参照)ので、必要以上に怖がらない。



学校の先生(親にも)に求めること

※多くは「親」にも共通する。「教師」を「親」に、「生徒」を「子ども」に置き換えてみてほしい。
                                             2002.2.25 更新

生徒に関心を持つ。
教師の仕事は忙しい。それはわかる。しかし、もっと生徒一人ひとりに関心を持ってほしい。一方的な価値観を押しつけたり、面倒くさがったりせずに、生徒の言葉にもっと耳を傾けてほしい。関心があれば小さな変化に気付きやすいし、内面を見抜く目が養われる。関心がなければ目の前で起きていることすらわからない。
子どもに関心がない人間に、小・中・高の教師をして欲しくない。扱っているのはモノではなく、「ひと」だ。
頃から人権意識をもつ。
体罰を行っていないか、差別をしていないか、生徒の人格を傷つけるような発言や態度をしていないか、自己採点してほしい。信頼できない教師に生徒たちは相談しない。日頃、人権侵害を行っている教師の言葉に説得力はない。
教師の不用意な一言(特にあだなや、叱ったときの言葉、グズ・デブ・暗いなど体型や性格・行動を表現する言葉など)からいじめがはじまったり、いじめられて傷ついている心が、さらに深く傷つけられることもある。
生徒を管理するための安易な連帯責任制は、生徒間に「あいつさえいなければ」という排除の思いを抱かせやすい。教師の言動がいじめを誘発していないか、よく考えてほしい。
できるだけ問題は小さいうちに、徹底して解決する。
小さいいじめの芽をそのままにしておくと、手に負えないほど大きく成長する。まして、いじめを見て見ぬふりをすれば、子どもたちは大人に黙認されたと受け取り、いじめはエスカレートする。
数人から始まったいじめは、グループに、クラスに、学年に、学校中に広がる。そして、部活や地域に飛び火する。口でのいじめは、暴力や恐喝に発展する。そのスピードは速い
何をしても許されるという万能感を持った子どもは、その未熟さゆえに、相手に対して懲罰権や財産・生命の剥奪権さえあると思い上がりやすい。
いじめはいけないことだとはっきり、態度と言葉で示す。
あやふやな態度をとってはいけない。また、いじめをケンカと混同してはいけない。善悪の基準をおとながしっかり示してやらなければ、子どもたちにはわからない。ますます混乱する。
「たとえ民主主義における多数決であっても、個人の人権を侵害することはできない」ことを、生徒たちに示したい。「いじめられるヤツには、それなりの理由がある」など、教師自身が生徒の数や言い分に惑わされない。

※「いじめは犯罪」だからやってはいけないと言うひとがいる。では、警察につかまらなければ、犯罪にカウントされないことならばやってもいいのか?犯罪であるかないか、法律で定められているから、罰を受けるからではなく、いじめは相手の心と身体を深く傷つける行為であるからやってはいけない。そう教えたい。
子どもの話を共感的に聴く。
たとえ被害者にも悪いところがあったとしても、相談した生徒を責めない。「お前にも悪いところがある」「お前がこういうところを直せば、いじめはなくなる」などと言われた生徒は、「先生は自分の気持ちを受け止めてはくれない」と感じて、口を閉ざしてしまう。相手の年齢を考慮に入れたうえで、想像力を働かせて、被害者の身になって、まずは感じてほしい。それから、ゆっくりと冷静に大人の頭で考えてほしい。教師は何をするべきか、被害生徒とも、じっくりと話し合ってほしい。
表面的には笑っていたり、平気を装っていても、内心は深く傷ついていることがある。小さい子どもにも、プライドも演技力もあることを忘れずに。
「もしわが子が同じ被害にあったとしたら」と考える。
もし被害にあったのが自分の子どもだったとしたら、親ならきっとその身の安全を第一に考えるだろう。被害にあった生徒を自分の子どもだったらと思って、気を抜かずに、手間を惜しまずに、保護してほしい。「絶対にこれ以上傷つけさせない」という強い決意をもって問題解決に当たってほしい。被害者の心の回復に精一杯の努力をしてほしい。
一方で、加害者にとってもと言いたいところだが、加害者の親のつもりになると、親は自分の子どもがしでかしたことに対しては過小評価しやすい。現実から目を逸らしてしまいがちになる。加害者に対してはむしろ、第三者の目で冷静に事態を見極め対処したい。そのうえで加害者やその親の精神面でもフォローできるとよい。
いじめを安易に考えない。
表に出ているのは、氷山の一角であることが多い。いじめの根は深くはびこっていることがある。過小評価しない。メディアから仕入れた子どもたちの知識は驚くほど豊富。精神が未熟で希薄な人間関係から共感に乏しい分、予想以上に残酷な仕打ちも平気でやってのける。また、暴力がなかったから、恐喝がなかったから、口や態度だけのいじめだからといって、大したことはないと考えないでほしい。思春期の子どもたちを暴力以上に傷つけることもある。
いじめは、ひとの一生を左右することもある。命がなくなったり、障害を負わされたり、心の深い傷は性格や対人関係を歪めてしまう。自己否定、人間不信、心身症、精神障害、拒食や不登校、ひきこもり、自殺、自殺未遂、家庭内暴力、犯罪等に結びつくこともある。
先入観を捨てる。
学力や親の職業・地位、日頃の生活態度や服装と、いじめの加害者であるか、被害者であるかは必ずしも関係しない。生徒にしてみれば、常に自分を評価の対象として見ている教師に対する顔と、そうでない人間に対する顔とが違うのは当然。まさかあの生徒はいじめをしないだろう、自分の学校・クラスでは事件は起きないだろう、と思う心が、小さなサインを見逃す。こんな生徒がいじめるはずがない、いじめられるはずがないと思いこまない。いつでも、誰でも、加害者にも、被害者にもなりうる。一見、加害者に見える生徒が、恐喝などの被害者である場合もある。
「いじめは隠される」ことを理解する。
加害者はもちろん、傍観者も、被害者でさえ、言いたがらないことがある(STEP1参照)。生徒たちは口裏をあわせる。プロとしての見抜く目が必要になる。日頃、生徒が相談しやすい環境づくりをしているかどうかも、自己採点してほしい。
「いじめはある」「隠されている」という目で見なければ、いじめは容易には発見できない。表面に出てきた事象の奥には、必ずやもっと多くの陰湿ないじめや問題点が隠されている。
ひとりで抱え込まない。
同僚や上司、養護の先生、親、地域の人びと、警察と連帯して問題解決にあたる。このさい、生徒のために、恥や外聞、学校の名誉を捨てて、一緒に問題に取り組みたい。ひとりでは限界がある。特に被害者生徒とその保護者との連絡を密にすることで、共に解決への努力をはかりたい。
その場合のネックとなるのが、教師評価制度や教師間のいじめ、孤立など。教師が連帯できない学校で、生徒の問題を解決することは難しい。また、教師が自己保身を捨てなければ、生徒を守ることはできない。
情報の共有化。
教師間で、親子間で、保護者の間で、事前に情報の提供があれば気付くことができたかもしれない子どもたちのSOSを見過ごしてしまった結果、取り返しのつかない事件に発展することも多い。
事件の予防、再発防止に、情報の共有化は欠かせない。隠蔽することで守られるものより、失うものの大きさに気付いてほしい。被害者・加害者のプライバシーに配慮したうえで、できるだけ多くの関係者と情報を共有し、知恵を出し合いたい。また、情報を開示したことで、新たな情報が集まることもある。多角的に見ることが大切。
問題から逃げない。
中高生ともなれば、体格・腕力で生徒のほうが勝っている。教師が殴られたり、ケガをさせられたり、刺されたりするなかで、教師にも生徒と対峙することへの恐怖心があるのは当然だろう。しかし、教師が問題から逃げてしまうと、逃げることのできない生徒はますます追いつめられる。市の教育相談や警察、カウンセラーに丸投げしてしまうことも、けっして問題解決にはつながらない。協力しあうことはよいが、加害者、被害者双方の一番身近にいる教師が問題から手を引く姿勢は、子どもや保護者に学校・教師への不信感や絶望感を与える。教師は大人の知恵と連帯で、生徒たちに敢然と立ち向かってほしい。
生徒の安全に配慮する。
中途半端な介入は、時として生徒の命を危険にさらすことさえある。いじめに報復はつきものであることを認識して、加害生徒、被害生徒からけっして目を離さない。休み時間や掃除の時間、部活動の時間、放課後など、教師の目の届かない時間帯を含めて、連携して安全に配慮する。
学校での安全が守られない状況下で、生徒の意思に反して、無理に登校を勧めないでほしい。多くの被害者は(小学生など低年齢でも、また高校生であっても)「加害者から殺される」恐怖感をもっている。生徒を追いつめる結果となる。
対策は結果を熟慮して行う。
こういった対応をとれば結果はどうなるか、加害者は、被害者は、傍観者は、保護者は、いろんな可能性をシュミレーションしてから、具体的な対応策を実行してほしい。
ただし、臆病になりすぎてもいけない。すでに問題は起きているなかで、何もしないことは「無策」という最も悪い策のひとつを選択したことと同じ。
常に最悪の事態を考慮して、フォローできる周囲の協力体制や代替案を考えておく。
安易に転校をすすめない。
何も悪くないのに、なぜいじめられている側が転校させられるのか、被害者は学校不信に陥る。
子どもにとっても、新しい環境になじむのは大変なこと。まして、いじめられて人間不信に陥っている。しかも、転校生はいじめのターゲットになりやすい。昨今のいじめ対策により、転校してくるのは、いじめている側か、いじめられている側、という先入観を教師や生徒が持っていることも多く、最初から偏見に満ちた扱いを受けることもある。
また、いじめの根を断たない限り、新たな犠牲者が出るだけ。
いじめている生徒の話もじっくり聴く。
いじめている生徒は、心に鬱屈をかかえていることが多い。自分自身が過去にいじめの被害にあっていたり、先輩から二重恐喝にあっていたり、親からの過剰な期待にストレスを感じていたり、虐待を受けていたり、いじめられている生徒以上に大きな問題をかかえている。なぜ、いじめるのか、責めて表面的な言い訳や謝罪の言葉を引き出すのではなく、心の奥にあるものを見極めてほしい。暴力をふるうことでしか表せなかった気持ちを聞いてほしい。生徒への愛情と根気が必要。
問題解決したと気を抜かない。
いじめはなくなったと周囲の大人たちが思った頃が一番あぶない。しかも、報復の意味を込めて揺り戻しはさらにひどくなる。隠蔽は巧妙化する。1カ月、3カ月、半年、1年と気を抜かずに生徒たちを見守ってほしい。
一つの表出した問題の影には、もっと多くの問題が隠されている。それを根本解決しないことには、いつまでたってもイタチごっことなる。
加害者だけでなく、その親をフォローすることが重要。
被害者よりもむしろ、加害者の親子関係に問題を抱えていることが多い。その結果がいじめや恐喝、暴力などの問題行動として表れることがある。
また、加害者の親が、問題の深刻さに気付いていなかったり、見たくないものから目を逸らそうとしたり、自分の子どもに対処しきれなかったりする。理解の浅い親に対してはことの重大性を認識させる。ただし、責任をただ押しつけるだけではなく、精神的にも支えて、共に問題解決にあたる姿勢で。
被害者対加害者の図式にするのではなく、間にこの問題を真剣に考える第三者をはさむことで、冷静に話し合いが行われる。その役割をはたすのは、本来、学校がふさわしいだろう。学校や教師にその力量がない場合、弁護士や民間団体など第三者を巻き込むことを考えて。


なお、学校の果たすべき義務や具体的な方策として、大阪十三中学の傷害事件(事例 881100)に対する判決要旨が参考になると思われる。

「学校には、学校の教育活動及びこれと密接に関連する生活関係において、暴力行為(いじめ)等による生徒の心身に対する違法な侵害が加えられないよう適切な配慮をするべき注意義務があると認められる。

すなわち、学校側は、
日頃から生徒の動静を観察し、生徒やその家族から暴力行為(いじめ)についての具体的な申告があった場合はもちろん、そのような
体的な申告がない場合であっても、一般に暴力行為(いじめ)等が人目に付かないところで行われ、被害を受けている生徒も仕返しをおそれるあまり、暴力行為(いじめ)等を否定したり、申告しないことも少なくないので、学校側は、あらゆる機会をとらえて暴力行為(いじめ)等が行われているかについて細心の注意を払い、暴力行為等の存在が窺える場合には、関係生徒及び保護者から事情聴取するなどして、その実態を調査し、表面的な判定で一過性のものと決めつけずに、実態に応じた適切な防止措置(結果発生回避の措置)を取る義務があるというべきである。
そして、このような義務は学校長のみが負うものではなく、学校全体として、教頭はじめとするすべての教員にあるものといわなければならない。」

学校側は、暴行行為を未然に防止し、結果の発生を回避するために

1.教員間、教員と生徒間、教員と保護者間における報告、連絡及び相談等を密にする
2.校長又は教頭自らが加害者に厳重な注意を与える
3.教員らが校内を見回るなどの指導、監督体制を全校的規模で行う
などの措置を講じなければならないとした。




加害者から話を聴くとき      

2003.4.1 最終更新

時機を逃さない。
事件直後は、しまったという気持ち、反省の気持ちから本当のことを話してくれる加害者も、時間がたつにつれて、保身のほうが強くなる。事件直後に、反省をうながす場所(被害者や被害者の遺影、遺族の前など)で、話がきけると一番よい。当然のことながら、子どもたちの心理状態にも充分に配慮して。
聴くことに専念する。
話を途中でさえぎらない。話している最中に、行為を責められたりすると、本当のことが話しづらくなる。まずは、事実を事実として受け止める覚悟で最後まで聴く。矛盾している点、疑問点はメモをしておいて、最後にまとめて聞く。加害者に対して言いたいことも、最後にまとめて言う。関係ないと思えるようなことも、話をさえぎらずに充分にきく。(聞く側との信頼関係ができる。また、一見関係ないような事柄のなかに、実は真の原因があったりする)
証言は変わる。
一旦は反省して、本当のことを言っていても、前言を翻すことがある。言った、言わないの争いになることが少なくない。そのためには、録音する、内容を筆記する、筆記した内容に間違いのないことをサインしてもらう、しかるべき証人をたてるなど、予めしておく。ただし、それを前面に押し出すと、相手の警戒を深め、かえって口が重たくなることも。
個別に話を聴く。
他人の言ったことに惑わされたり、口裏をあわせたりできないように、できるだけ個別に話を聞く。一人ではいやだという場合、事件とは関係のない第三者に立ち会ってもらうか、家族や教師に立ち会ってもらう。その場合、話の途中で口を挟まないよう事前に約束してもらえるとなおよい。
矛盾点をつく。
保身やもの忘れから、必ずしも最初から本当のことは出てこない。他の証言や証拠とつきあわせて、矛盾点をついていく。時間や場所、金額など、あいまいにせずに、できるだけ具体的にきく。自分に都合のよいことだけを話していないか、慎重に聴く。
何度も話を聴く。
事情が許せば何度でも話を聞く。繰り返しているうちに、出てこなかった事実を思い出すことや、あいまいなことがはっきりすることもある。ただし、最初から何度でも聞けると思っていると、拒否にあったりして聞けなくなることもあるので、1回、1回の機会を大切にして聴く。
話を整理して聴く。
一度聞いた話を整理して、確認しながら聴く。そのためにメモは書かせない。
いつ、どこで、誰が、何を、どのように、どうした(5W1H)のか。また、時系列で表をつくってみるとわかりやすい。
話してくれたことに対して感謝する。
相手の罪は罪として、正直に話してくれたことに対しては感謝したい。自分の罪を正直に話すということは、とても勇気がいることだ。相手に、「言うんじゃなかった」と思わせず、「話してよかった」と思わせることができれば、加害者・被害者双方の利益になるだろう。
まずいのは・・・
まずい聞き方は、最初からガンガン責めたてる、逆に「あなたたちは悪くはないのよね」などと擁護するようなことを言う、話の途中で「そうじゃないでしょ」と口をはさむ、または「こうしたんじゃないか」などと憶測をしたり、話の内容を誘導する、数人から一度に話を聞きリーダー格や弁のたつものに代表でしゃべらせる、当人たちが話した内容を何の裏付けもなく鵜呑みにする、メモもとらずに聴きっぱなしにする。
言いたくない相手から、暴力も権力も使わずに話を聞き出すのは、とても忍耐と根気がいることです。でも、それができたら、問題解決への大きな一歩を踏み出したことになるでしょう。
一方で、中途半端な介入は被害者をさらに危険にさらす結果となります。被害者だけでなく、加害者からも目を離さないこと。そのためには、家庭や学校の教師同士の連携が大切になります。
気になること!
いじめの加害者に対して、何の対策もとらない学校や教師がいる一方で、過剰に責任を追及し、子どもを追いつめる学校の姿勢がここのところ目立ちます。問題は生徒だけですか?自分たちの問題についても充分に話し合いましたか?責任を子どもにだけ押し付けていませんか?安易に厳罰化に走っていませんか?厳罰化が真の問題解決になるでしょうか?
もう一度よく、考えてみてください。



問題解決のステップ

2002.2.25 最終更新

問題意識を持つ 事件が起きる前に常に、起こるべく最悪のシナリオ(リスク)を想定しておく。そのためには、学校や社会ではどんな問題が起きているかに関心を持ち、自分の身近にも同じようなことが起きる可能性について考えておく。アンテナを高くしておく
(そのためにも、このサイトをぜひ役立ててほしい)
事実を知る いじめの被害者、加害者とされている生徒から充分に話をきく。

クラス・学年・他学年・部活の生徒、担任・教科・その他の教師、保健指導員・用務員など学校関係者、他校の教師、保護者などから、多角的な情報を集める
ただし、情報提供した生徒が「チクった」として報復を受けることがないよう、配慮を全員に徹底すること!(名前を絶対に外に出さないなど)

情報の集め方を工夫する。(直接聞く・電話をする・アンケート・懇談会)
アンケートのとりかた、情報の集め方、使い方についても工夫する。(事例No.970107 事例No.941029 事例No.870423 参照)

いつ、どこで、誰が、誰に、何をしたか。目撃した生徒は、教師はどういう対応をしたか。
きっかけはなにか。いつから始まったのか。リーダーは誰か。面白がってはやしたてているのは誰か。加害者、被害者の周辺情報をも集める。ただし、いじめは隠されるという性質から、表面にあらわれるものは一部にすぎないと考えたほうがよい。

学校全体を総点検する。
問題分析 何がほんとうの問題なのか、どこに問題があるのかを考える。
(固定観念・先入観・偏見・好き嫌いの感情・経験にとらわれた根拠のない断定的判断に陥らないようにする)

直接的原因は何か、背後にある原因や感情は何か。状況を作り出している背景は何か。
(表面に現れているものが全てとは限らない。生徒たちは自分を正当化するための言い訳を駆使する)

いじめは、いつ、どこで、どんな時に、どのように起きているのか。
時間的特徴 いつから始まったか。主にいつ行われているか(登下校中・授業中・休み時間・掃除の時間・放課後・部活の時間・学校後など)。また、学校外の時間についても要注意。
場所的特徴 教室・廊下・部室・屋上・校庭・体育館内・自転車置き場・昇降口・寮・繁華街など。人目のあるところ、ないところ。
どんないじめが行われているか 悪口・暴力・嫌がらせ・恐喝・仲間外れ・性的いやがらせなど。
参加する人数・頻度・程度。
どんな人間が関わっているか 同級生・親しいグループ・不良グループ・クラス全体・部活の仲間・教師など。(場合によっては学外の不良グループやヤクザなどに上納金システムがつながっていることも)
個人的か、特定グループか、全体的に蔓延しているのか。
被害の特徴 いじめによってどんな被害を受けているか、受ける可能性があるか。
(金銭的負担・ケガ・成績の低下・遅刻・不登校・人間不信・心身症など)
緊急度・重要度・関連性を見極める。
解決のための
アイデアを
集める
協力を得られるひとは誰か。できるだけ多くのひとに関わりをもってもらう。学校外の経験や知識もフル動員する。

情報の共有と十分な意見交換を行う。

問題が起こらなかった、解決した事例と比較検討し、アイデアを出す。

被害者・加害者の立場、その保護者の立場、その他の親の立場、担任、副担任、同僚、学年主任、教頭、校長、地域の人間など、他人に要求することだけでなく、それぞれの立場で自分たちに何ができるかを考え、統合していく。

スローガンや心の持ちようなど抽象的なこと(時には必要だが)だけでなく、具体的な対策を立てる。
解決策を
立てる
被害者の身の安全確保を第一の目的に対策をたてる
被害者をこれ以上、傷つけたり、追いつめたりすることのないよう配慮する。被害者の心のケアもあわせて考える(カウンセラーにまかせればよいという安易な方法ではなく、被害者が納得のいく方法で)。

加害者の人権についても配慮する。問題を起こす生徒の排除を目的としない(子どもは未熟で当たり前。未熟な生徒ほど、教育は必要)。

緊急対策・個別対策・環境的対策についても話し合う。多角的に考える。
なにを目的とするか、どんな効果を期待するのか、その場合の注意点(人権・プライバシーへの配慮など)などを話し合う。
いつ、だれが、どのように、実行するか、役割を具体的にする。誰が行うのがもっとも効果的かを考える。ただし、一部の人間に責任を押しつけるのではなく、フォローできる体制をきちんとつくっておく。

効果がなかった場合の代替案や段階にあわせた対策を考えておく。

情報の流れ(誰がどのように収集し、誰に集約、どのように共有化するか)を確認しておく。

被害者・加害者・担任へのサポート体制をつくる。
効果を
チェックする
観察を続ける。生徒たちから継続して情報を集める。情報の集め方を工夫する。
保護者や他の教師とも情報を共有化する。
何が変化したか、変化しなかったのかを把握する。定期的な話し合いの場を設ける。
根本的な再発防止策をたてる。



いじめを解決したある事例   2002.12.23最終更新 

身近なところで実際にあった事例です。
転任してすぐに小学校の5年生を受け持ったその女性教師は、A子と隣の席が少し離れているだけで、「どうして、そこ離れているの?」といじめを察知しました。そのことで、A子は女性教師を信頼でき、いじめを相談することができました。
 
また、同教師は、クラスでいじめ事件があったときに、すぐに、いじめられた側の親と子に学校にきてもらい、一方でいじめた側の子と親を呼びだして謝らせました。

いじめをしたり、少しやんちゃな子には、エネルギーがあり余っているとして、コンクールや競技会など、様々な機会を提示して、積極的に勧めました。もちろん、やりたい子には誰でも。

日頃、いろいろ注意されることの多い子どもでも、良いことをすればすごくほめてくれました。そのかわり、怒るときはとっても怖い

年齢が低かったこともあったでしょう。いじめがひどくなる前に対処できたことは、加害者・被害者の双方にとってよかったと思います。また、目に見えないところでやはりいじめはあったのかもしれません。繰り返し、根気強く指導して下さいました。結果、明らかに子どもたちは変わりました。教師の「愛」を親も子も感じることができました。悪いことは悪いとはっきり叱り、いいところをほめて伸ばそうとしてくれる。良いことも、悪いことも、親にきちんと情報をくれる。こんな先生に巡り会った子どもたちは幸せです。そして、「頑張っている先生だっている」と、私がはっきりひとに言える根拠ともなりました。     (TAKEDA)


2002.12.23
NEW
「教育を追う 日本の教育風土」/毎日新聞社編 のなかの「揺れる心」から抜粋。

「(小学校6年生の担任)藤原先生は学級会でこの問題を取り上げた。説教だけでは意味がないと思い、劇でカオリさんやユカさんにいじめを再現させたそのあと、みんなに意見を出させ作文を書かせた

「藤原先生はみんなに生活ノートを持たせ、どんな小さないじめも書きとめて出させた。その中に重要なものをシナリオふうに直し、学級会や道徳の時間などで月に2、3回、10分程度の劇にした。ときには、藤原先生が場面を設定して即興劇を演じさせた。いじめっ子にいじめられっ子役をさせることもよくある。
劇の後には全員で話し合い、感想文も書かせる。これによって劇体験が確かになるわけだ。

劇をとりいれたのは、いじめられる子の気持ちをみんなにわからせたり、自分の言動を見つめ直すのに効果的だから集団いじめは、いじめられる子、いじめの中心になる子、いじめに加わったり見て見ぬふりをする子がそろったときに起きる。従って、学級全体への指導が大切だ

一度、劇を演じると、その役の気持ちが身にしみるようだ。いじめられっ子役ょ初めて演じたある女子は「仲間はずれにされるって、どんなにつらいことかがよくわかった」。いつも、いじめる側だった男子も「いじめられている人には想像以上の痛みがあるんだね」と話した。」

「まだ仲間はずれの経験がない子に、いじめられっ子の役を即興劇で演じさせたところ『どうやって解決させたらいいかわからん』と音を上げてしまったという。子どもたちだけで、いじめを解決することがいかに難しいか、助けを求める子どもたちの姿が見えてくる。」

「藤原先生に助言してきた高橋超(すすむ)愛知教育大助教授は『劇をする場合は教師と子どもに日ごろから信頼関係がないと形式的になるおそれがある』とクギを刺す。」


※TAKEDA私見:この方法を中途半端に取り入れないでほしい。教師に本気でいじめをなくそうという気構えがないと、勇気をもって告発した生徒が報復を受けることになり、形骸化していくばかりでなく、いじめられている子どもをさらに追いつめる結果となる。また、必ずしも子どもたちは大人の思惑どおり感じ取るとは限らない。集団でいじめることの楽しさに目覚める子どももいるだろう。いじめられる側にやっぱり問題があると結論を出す子どもたちもいるだろう。何より教師の力量が問われる。自信がない場合には、きちんとした指導者に依頼すること。(カウンセリングの分野で演劇療法に取り組んでいる団体や児童虐待防止プログラムに取り組んでいるCAPなどにも相談できるのでは?)
 



相談場所について

2002.5.5 最終更新 

教育委員会
要望書や被害や学校との交渉の経過一覧などを手紙にして出す(コピーを手元に残しておくこと)。
ただし、多くは学校と一枚岩。世間を騒がすような不祥事に発展する可能性が高い場合、教育委員会が率先して隠蔽工作に走ることもある。かえって、大きな事件となる前のほうが有効かもしれない。ひとにもよる。
教育委員会へ知らせた内容は、学校側に全て筒抜けになることもある。(告発者の学年・氏名、告発内容など)
教育相談
機関によって、考え方は様々あることを自覚したうえで、相談する。
特徴として、市の教育相談は校長、教頭など学校の管理職経験者が行っている場合が多く、学校寄りの考え方だったり、いじめられている子ども側の問題と捉えてカウンセリングを勧めることもある。いじめは、いじめられている人間の外(いじめている人間、傍観者、いじめが行われる学校・学級の雰囲気や構造、教師の対応など)に問題があるということを理解しない相談相手には、相談しないほうがまし。でないと、一緒になって被害者を追いつめる結果に。
カウンセリング
カウンセリングで、より傷つけられたという話も多く聞く。盲信はやめよう。
子どもの生育歴や親との関係、いじめられている子どもの性格や生活態度に話が終始する場合、カウンセラーのいじめに対する認識が浅かったり、問題のすり替えが起きていると考えてもよい。いじめは、いじめられている側の問題ではなく、いじめている側の問題であることを認識しよう。でないと、子どもはかえって傷つく。
カウンセリングは傷ついた心の傷には有効であったとしても、いじめ問題の解決策にはならない(加害者へのカウンセリングなら別かもしれないが)。
児童相談所
児童相談所は、児童福祉法に基づいて設置され、18歳未満の子供に関する相談であれば、本人、家族、学校の先生、地域の方々など、どなたでもうけられる。
子どもの問題行動の原因が親の育て方にあったり、親では手に負えない状況であったりすることもあるので、いじめだけでなく、様々な問題を抱えていると思われる場合には特に有効。ただし、近年、児童虐待件数の増加により、職員の手が回らないことも。
警察に相談
賛否両論わかれるところだ。警察は民事不介入で、相談してもとりあってくれないという意見もある。また、対応したひとにもよるだろう。
どうせ、警察に頼るのであれぱ、きちんと「被害届け」を出そう(警察官は面倒くさがって教えてくれないこともある)。取り下げは後でもできる。
被害事実や心情、警察になんとかしてほしい、ということを書いた「上申書」(上申書/自分の住所/氏名/簡単な自己紹介/被害の具体的内容・回数・証拠など/心情/警察へのお願いごと/氏名/印/届け出年月日)を書いて持っていくとよい。文書として形に残るため放置しにくくなる。ただしウソは書かないこと。
被害事実が明確なのに放置されたら、警察署長か警視庁、道府県警察本部長あてに質問状を出す。内容証明で出すと有効。(「いじめ少年犯罪に宣戦布告」参照)

ただし、刑事告訴するためには、何年、何月、何日、何時頃、誰が、どこで、誰に、どうされたなど、具体的な事実が必要。
人権救済の申し立て
人権擁護団体に相談をする。ただし、必ずしも取り上げてもらえるとは限らない。「警告」「勧告」「要望」の順に重い意見表明とされる。しかし、勧告をしても法的な縛りがないので、聴く耳を持たない相手に対しては、無力であることも。なお、人権救済も調査に当たる弁護士等の最低限の活動費などがかかるようなので要確認(20万円前後?)。
東京法務局
子どもの人権110番
 03−3214−0424
東京弁護士会
子どもの人権110番
月 〜 金 午後1時半〜4時半
        電話相談
 03−3503−0110
東京弁護士会
子どもの人権救済センター
月 〜 金 午後1時半〜4時半
        面接相談
 03−3581−2205
第二東京弁護士会
子どもの悩みごと相談
火・木・金  午後3時〜5時
        電話相談
        面接相談(予約制)
 
 03−3581−1885
 03−3581−2255
弁護士
金がかかること、万能ではないことを承知のうえで相談する。
法律で取り締まれないものに関しては有効に機能しないことが多い。
弁護士にも、それぞれ得意分野とそうでない分野がある。なかには人権意識が低かったり、ビジネスとしか捉えていなかったり、あまり知識を持ち合わせていない弁護士もいる。何もしてくれず、高い料金だけ請求されることも。
政治・宗教団体
大きな力を持っており有効なこともあるが、利害によっては敵に回る可能性もある。また、単に団体の宣伝に利用されたり、加入への勧誘や寄付をさせることが目的のこともあるので、親切そうに見えても要注意。
また、ひとつの政治・宗教団体が関わっていることで、他の人や団体の支援を受けにくくなったり、行動そのものが周囲から政治や宗教活動の一環と取られることがある。支援を受けるなら、団体ではなく、(団体に属していたとしても)共感する個人の資格で。
その他の団体
少年事件犯罪被害者の会や、いじめホットライン、その他、学校問題や体罰などテーマごとに取り組んでいる団体には、経験者がいたり、情報をもっているひとがいたり、豊富なネットワークを持っていたりする。そういうひとたちと繋がることで、新たな道が見えてくるかもしれない。ただし、いずれにしても、他人まかせにゲタを預けることはできない。自分自身が矢面にたって闘う気のないものに対して、誰も本気になって支援しようとは思わない。


2002.2.2. 最終更新

「人権申し立て」について実践例から。
優しい心が一番大切だよ ひとり娘をいじめで亡くして」/小森美登里著/WAVE出版 より抜粋
「正式に、横浜弁護士会・人権擁護委員会へ人権救済の申し立てをしました。このときは、結果が出るまでにまさか2年2か月もの時間を要するとは思っていませんでしたし、調査の内容を一切知らされないとも思っていませんでした」

いつ、どこで、誰が、どのような話をしたのかということは、私たちに一切知らせていただくことはできませんでした。そのことは、人権擁護委員会の最終的な発表があったあとも同じです。」

「人権擁護委員会は、弁護士たちによってボランティアで活動されている組織なのですが、誰の人権を守るためのものではないそうです。申し立てがあると、集められた情報をもとに判断するようです。そして、警告が出された以前もそれ以降も、この調査に対する内容は一切知らされません。」

「私たちは、いかに香澄の人権が加害生徒と学校から侵害されていたかを申立書で訴えたので、それを理解してくれた弁護士の先生方が、香澄の人権を守る立場に立って調べてくださるものと勘違いしていたのでした。」

「2年2か月の調査期間でありながら、A4で4枚」

「香澄の死の原因について、吹奏楽部の体質、香澄の技術の未熟さ、母親の対応の甘さなどの記載が多くなされていたのです。」

『警告』が出ても、学校からも、教育委員会からもなんの連絡もありません。夫は仕方なく、校長に意見を聞くために、出向くことにしました。校長は『警告が出されてたいへん迷惑している』といい、『いままでの改善過程が無視されたことが心外だ』と訴えていました。『3人の言動が香澄を傷つけたことが自殺の要因のひとつであることは否めない』という警告内容の一文があったので、夫がいじめの存在を追及すると、『いじめという言葉はどこにもない』といい、まったく反省の様子がありませんでした。」

「結果、『3人の言動が死の要因であることは否めない』という警告が出されたのですが、誰一人謝ってきませんでした」
被害者の味方になってくれるところというのが、「人権擁護委員会」に対する私たち一般の認識ではないでしょうか。もしかしたら、事件の内容や、相談する弁護士会によっても異なるかもしれません。しかし、あまり期待すると、ここでもただ年月を浪費してしまうことになりかねない、がっかりすることになりかねない、というのが、正直なところ現在の私の感想です。
小森さんのほかにも、「人権擁護委員会に訴えて一年以上にもなるが何の音沙汰もない」「勧告してもらったが、学校も、加害者もまるで態度が変わらなかった」という話を聞きます。
これが、生きている子どもが対象であれば、回答を待っている一年、二年の間に、とっくに自ら命を断ってしまっているかもしれません。

すがりつく「ワラ」は、あくまで「ワラ」でしかないのでしょうか。せめて、人権擁護委員会の「警告」「勧告」「要望」に対して、文部科学省なりが教育委員会や学校に対して「真摯に受け止め、具体策を出してきちんと改善するよう」指導すれば効果も違うと思うのですが、日の丸・君が代の指導については全国すべての学校にまで行き渡るようやっきになる文部科学省が、子どもの人権に侵害に関しては傍観を決め込んでいるように思えてなりません。

2002.2.2  S.TAKEDA



問題解決に役立つ本

「いじめと闘い、勝つ!」 自分の子どもは自分で守る/小寺やす子
1997.11.10サンマーク出版発行/1400円+税
実際に自分の子どもが、学校でいじめられた経験を元に、闘い方・怒り方を書いた本。問題解決の具体的な事例も豊富。また、自分の子どもがいじめをした場合の親のあり方についても述べている。
「担任への不満!! 穏便即決マニュアル」 学校へのモノ言い入門/小寺やす子
1999.11.8学陽書房/1500円+税
教師へのもものの言い方、交渉の仕方が具体的に書いてある。連絡帳・手紙・FAXの効果的な使い方や文例、トラブルの様子の記録・学校の対応記録・要望書の書き方、校長と面談して交渉する法など。また、学校とトラブルを起こして内申書に1を付けられたらなど、具体的で役立つQ&Aが豊富。
緊急出版 いじめ少年犯罪に、宣戦布告 史上最強の告発マニュアル/プレスプラン編集部
2000.10.23.プレスプラン発行/1524円+税
親に相談するときの注意、教師に相談するときの注意、警察に相談するときの注意、など実際的ですぐに役立つ。また、被害記録、教師への手紙、匿名告発手紙、警察に提出する上申書、内容証明、の具体的な文例を掲載。法務局、警察窓口、児童相談所、法務局の人権相談、全国弁護士会一覧、日本いのちの電話連盟加盟センター、などの連絡先一覧を掲載。Q&A式のいじめ対策も具体的。一つひとつの対処方法が具体的なので実践的。
「子どもたちは二度殺される」/武田さち子/2001.7.7世界子ども通信「プラッサ」発行/  販売終了 
いじめや体罰、学校での事故など、70の事例のなかから、現在の学校で具体的にどんないじめが行われているのか、昔のいじめとはどう違うのか、誰にいじめられているのか、なぜ子どもたちはいじめるのか、いじめに対して親や教師がとった対策、その結果、親・子ども・教師・学校の問題点、などを分析。また、子どもたちの具体的なSOS、いじめをなくしていくための提言などを盛り込んだ。



注 意:私自身は法律の専門家でも、少年犯罪やいじめ研究の専門家でも、カウンセラーでもありません。
     最終的な判断はあくまでご自身の責任でお願いします。   S.TAKEDA



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