『電波メディアの神話』(8-5)

第三部 マルチメディアの「仮想経済空間
(バーチャル・エコノミー)」

電網木村書店 Web無料公開 2005.4.15

第八章 巨大企業とマルチメディアの国際相姦図 5

「公共性が高い」NHKが生きのこる「住み分け」作戦

 もう一つNHK広報室がおくってきた記事のなかに、海老沢専務理事の記者会見があった。

 広報部がそえてきたメモには、「日経の記者が別件の取材に来たので」説明したとあったが、こちらにはいささか民放を刺激する見解がふくまれている。光ファイバーによる次世代通信網が整備されても「公共性が高い分野を中心に無線による放送の必要はある」日経産業94・1・24)というものだ。

 つねづね、独占的な「公共性」をシャッチョコばって主張し、それを根拠に視聴料を徴収しているNHKの発言である。これでは、「公共性が低い分野」の娯楽を中心とする民放は光ファイバに移行しろ、という趣旨だとかんぐられてもしかたあるまい。これまた、NHKと民放の間で「論議を呼びそう」に思えるが、民放がとくにさわぐようすもみえない。さわげばかえってヤブヘビと感じているのだろうか。日経産業新聞のような専門紙誌の読者はすくないし、しかも体制順応タイプの読者がほとんどだ。大手メディアは大手メディアらしくふるまう。仲間の大手メディアが大々的にとりあげないかぎり、日頃の習慣にしたがって黙殺する方が利口なのだ。しかしこのままでは、民放は腰ぬけと罵倒されてもしかたあるまい。


(6)規制緩和政策でメディアの国際的大手支配は野ばなし