『電波メディアの神話』(8-6)

第三部 マルチメディアの「仮想経済空間
(バーチャル・エコノミー)」

電網木村書店 Web無料公開 2005.4.15

第八章 巨大企業とマルチメディアの国際相姦図 6

規制緩和政策でメディアの国際的大手支配は野ばなし

 さて以上のように、CATV契約世帯たった二・七パーセントのケチ(?)な日本人にたいして、国際的な電波ジャックの強制による全放送有線化のたくらみが進行中という事態である。

 地上波放送をなくしてしまえば、いやでも光ファイバ網による有線放送と契約せざるをえない。ただし、いきなりでは、いくら権力にたいして無抵抗のおとなしい日本人でも、すこしはさわぐだろう。二〇一〇年に電波ジャックを開始するとして、あと一五年の余裕がある。その間に、あらゆる手段をつくして、既存のCATVなりあたらしい光ファイバ網による有線放送なりの基盤を強化する。民放や背後の大手新聞社を納得させるためには、CATVの「規制緩和」という名目で政治利権を配分する。これが基本戦略だ。

 すでに「規制緩和」作戦は開始された。その際、従来の政策的失敗は逆にいなおりの材料に利用される。郵政省は昨年末、一二三社のうち黒字化はたった二四社というCATVの「経営困難」をすくうために、「事業展開の広域化」、「電気通信事業への展開」、「外資参入」、道路使用料や電柱共架料の減免などの有線化「普及促進」を目的とする通達改正にふみきった。

 郵政省のうごきは業界の要望をうけたものであり、今年(九四年)の一月一八日に名古屋市でNCNがCCTVを吸収するなどのCATVの合併、新規発足準備、外資参入につながっている。二月二一日には民放の株式上場の自由化、放送地域の隣接県への拡大などの緩和策が発表された。三月三〇日には、湾岸戦争で国際的メディア・メジャーの地位を一挙にたかめたCNNニュースの親会社ターナー・ブロードキャスティングのターナー会長が、東京都内の記者会見で「日本でCATVが発展しないのは多くの規制が原因だ」などとかたった。日本の財界がお得意の「外圧」利用のにおいがプンプンする。


(7)「独占集中排除」のおざなり堤防は完全に決壊状態