『電波メディアの神話』(8-4)

第三部 マルチメディアの「仮想経済空間
(バーチャル・エコノミー)」

電網木村書店 Web無料公開 2005.4.15

第八章 巨大企業とマルチメディアの国際相姦図 4

三〇万円前後のマルチメディア専用パソコンが必要

 さらにもう一つの出費が強制される可能性をわすれてはならない。

 さきの日経記事にも、次世代通信網によって「テレビの機能を向上させ新しいビジネスを生む素地を作るのが狙い」とあった。ただし、「テレビの機能を向上」というのは、現在手持ちの古いテレヴィ受像機の機能が向上するという意味では断じてない。「双方向のマルチメディア機器」への買いかえが社会的に強制されるのである。数十チャンネルで双方向の利用が可能な光ファイバー通信網が各家庭につながるのだから、子供たちはとくに、いままでどおりのテレヴィの利用だけだと仲間はずれの感じになるだろう。かつては白黒のテレヴィ受像機の購入、つぎにはカラー受像機への買いかえが強制された。その当時の電機メイカーは子供を販売促進の人質にとるという計算をして、カラー・アニメーション漫画のスポンサーになったのだ。現在はNHKの地上波放送にCMまがいの衛星放送の番組宣伝がはいるのとおなじように、マルチメディア機器による多チャンネルおよび双方向のメディア利用の宣伝が、ひんぱんに普通のテレヴィの画面にも登場するようになるであろう。

 家庭用マルチメディア機器のはしりは子供向けのゲーム機で、一万円台からあるが、マルチメディアの本格的な機能はパソコンと連結することによって発揮される。あたらしいところで、「マルチメディアパソコン/30万円を切る普及型/NEC発売」(日経産業94・1・27)といった宣伝の値段である。ただし、「カラーディスプレーやキーボード、マウスなどをセットにして販売する。価格は二九万八〇〇〇円から三六万三〇〇〇円で、現行機種に比べて最大二九パーセント安く設定した」というもの。つまり、よくある手で、売り文句の「三〇万円以下」では付属機器がすくなくなるのだ。


(5)「公共性が高い」NHKが生きのこる「住み分け」作戦