杉花粉被害放置政策に猛然反撃の独立反乱!
“杉林焼き払い放火作戦”開始宣言!
恐怖:雄花が端に穂状に群がるのに枝打ち不必要!
2000.5
わが「自称名探偵」編集長独特の執拗な直撃取材の結果、杉花粉激増の決定的、かつ、「知られざる」真相の1つが判明した。前回に紹介した杉植林の「標準」の1つ、苗から数えて11年から20年の時期に2度の枝打ちが、「必要ない」と言えば極端になるが、事実上、やらなくてもいいことになっていたのである。
ヒントを示すと、手間、つまりは賃金と見合うだけの収入の増加に、つながらなくなっていたのである。これで、わが名探偵は、初めて、合点がいったのである。というのは、杉林の「保育」に関して「盥回し」取材を続けている内に、「間伐」が強調される割りには、「枝打ち」、つまりは、「雄花は……小枝端に穂状に群がってつく」のが常識なのにもかかわらず、その一番肝心な作業についての情報が、実に、実に、薄ぼんやりとしているのが、段々と気に懸かり出していたのである。なぜか。形を成さない疑問を抱えながら、まずは上記の本来の「標準」を問い質し、さらに、その現状を、日本の民間林業団体、全国木材組合連合会に聞いたところ、実に、実に、アッケラカンと、自慢じゃないがド素人が、まったく知らなかった恐怖の真相を教えてくれたのである。
加害者の自覚が無い林業関係者を許せるか?
前回の終りに、上記の民間林業団体の状況を簡略に紹介した。中央段階では「日米貿易摩擦」の関係で「国産品愛護」は「差別」であるとして拒否されるので、「地元自治体」への「地元生産物利用」などの便法の工夫を、お願いしているというのである。
ああ、花粉で痛め付けられた目から、ああ、涙が出る。
涙よ、出ろ! 出ろ! 花粉を流すまで!(少し古い演歌の替え歌なのだ!)
と記したが、本当に涙が出たわけでもないし、気持ちとしても別に、全国木材組合連合会の皆様に対する同情ではなかった。実のところ、同情よりも呆れが先に立っていたのである。というのは、こちらは花粉症に悩んで調べており、その実情を訴えているのに、電話に出た担当者の対応の仕方には、杉花粉症患者への同情は、まったく感じられず、患者激増についても、ほとんど無知のようであった。まるで「加害者」の自覚が無いのである、むしろ、自分たちの方が「日米貿易摩擦」の「被害者」だということのみを主張していたのである。
むしろ、花粉症の加害者の意識がまったくないからこそ、主務官庁が薄ぼんやりとした回答で「ごまかしていた」可能性のある「恐怖の真相」を、気楽に明かしてくれたのかもしれない。これが、聞いてみれば、実に簡単なことであった。和室が減り、三寸角の杉材を使っても表面に出る場合が少なくなったので、節のない柾目の杉材と節目の多い杉材の値段に、あまり差がなくなっていたのである。だから、もともと、手間暇掛けて枝打ちをする林業者が、いなくなっていたのである。
こうなると、花粉症対策で「間伐ウンダラカンダラ」予算を組んだという林野庁の説明も、怪しくなってくる。間伐の方は、やらないと、密植状態の杉は、ヒョロヒョロになってしまう。枝が増えても、その分だけ栄養分を取られるが、決定的ではない。しかも、肝心の幹を傷つけないように何本もの枝を切るのは、根元から切り倒す間伐よりも手間が掛かる。この間の事情を、林野庁や都庁の林業関係者は、知っていたのか、知らなかったのか。思えば実に怪しい。
さらに思い返せば、林野庁や都庁の林業関係者も、花粉症に関する主務官庁の意識を持っていなかった。健康の問題なら、国の場合は厚生省、都庁の場合は衛生局の仕事なのである。だが、肝心の「病原物質」を発生する犯人の杉、または、杉の管理を怠った「杉林荒れ放題」の犯人の取り締まりは、厚生省や都庁の衛生局の仕事ではない。事実上、野放し状態なのである。もともと、林野庁や都庁の林業関係者の基本的な仕事は、林業という商売の繁盛だったのである。私が「源を絶たなきゃ駄目!」と追及して行くと、まさに「盥回し」の電話料金請求額の激増になる原因は、この仕組みにあったのである。
しかし、今や、杉花粉は、「産業公害」である。今の今、目の前には本日、2000.4.8.『日本経済新聞』夕刊1面中段の4段見出し、「汚染排出者に回復責任/循環型社会法案/自公合意、国会提出へ」と題する本文38行の記事の切抜きがある。「法案」の名は、「循環型社会形成推進基本法案(仮称)」とある。
では、杉花粉症の発生原因について、「産業公害」と世間に認めさせるだけのデータの積み重ねがあるかというと、それも実に心許無い。
例年の定点観測なしに疫学的研究とは何ぞや?
ここで再度、いや、4度目、東京都の衛生局の環境保健課が調査し、林野庁森林研究所多摩森林科学園が出典を明記せずに、『研究の森』67号に掲載したデータを示す。
1964年:スギ花粉症発見
1987年:東京都全体のスギ花粉症推定有病率:10.1%
1996年:東京都全体のスギ花粉症推定有病率:19.4%
(あきる野市:25.7%,調布市:21.1%,大田区:17.7%)
当然、私は、東京都の衛生局の環境保健課に、1997年以降の調査結果を求めた。ところが、いとも簡単に、「その後は調査していません」「なぜ?」「数年置きで十分の意見あり」「ウヌ! そんなことをいうのはアレルギーと無縁で鈍感な奴に違いない。許せぬ!」となったのである。かくて、またもや、押さえ難い怒りが爆発したのである。
この件では、その後に、別の課員、おそらくは上司から、「毎年、調査の予算を請求し続けているが、認められない」との証言を得た。
ところが、ここで私は、まず、重大な疑惑に襲われたのである。というのは、それ以前に、厚生省の「エイズ疾病対策課」(ここで「難病」として杉花粉症をも担当!)の仕事の内容を詰めて聞いた際、「花粉症の疫学的研究をしている」との、実に御立派な返事を得ていたのである。手元の安物辞書にも「疫学」の項目がある。「伝染病の流行動態を研究する医学の一分野。または広く、集団的に頻発する疾病の発生を、生活環境との関係から考察する学問」と説明している。
医学とは無縁の私が「疫学」の定義に触れたのは、自分の不当解雇事件で裁判中に、九州の「水俣病」患者の裁判を知ったからである。熊本大学の医者たちが、上記の通りに、「集団的に頻発する疾病の発生を、生活環境との関係から考察」し、原因物質を魚に含まれていた有機水銀と特定し、有機水銀を海に垂れ流していた企業に迫ったのである。
「スギ花粉症」の場合には、もしかすると、「もう原因物質は明らかになっているから云々」と言い出す向きがあるかもしれない。しかし、発祥する患者の個々人が、それぞれ違った体質、経歴の持ち主なのである。杉花粉の飛散が、どれだけ増えると、どれだけ、どういう患者が増えるのか。上記の東京都の衛生局の環境保健課の調査結果の用語によれば「スギ花粉症推定有病率」に含まれる「都民」の数、比率、容体、治療状況、副作用、等々、調べて欲しいことは山程ある。
特に今年は、例年の3倍とか、6倍とか、8倍とか、ともかく、「非常に多いでしょう」と東京都の「スギ花粉の飛散量予報」、03-5272-1187番、「いいはな」のオネエチャンが、さわやかにアナウンスするのだから、当然、「スギ花粉症推定有病率」も、「非常に多いでしょう」と愚考するのである。絶対に詳しい調査をして欲しい。ところが、「追加予算」の可能性を聞いても、こちらはテープ録音ではなかったのだが、即座に、「駄目でしょう」と予報されたのである。ああ、こん畜生!
以上で(その5)終わり。(その6)に続く。