杉花粉症は “外交 行政 産業” 環境公害だ!(その11)

編集長の毒針:緊急課題!

杉花粉被害放置政策に猛然反撃の独立反乱!
“杉林焼き払い放火作戦”開始宣言!

“あの”都知事「ディーゼル排ガス規制」田舎芝居

2000.5

 前回に引き続き、「各種業界」の一つとしての「杉花粉症業界」の周囲に蠢く「専門家」の正体を暴きつつ、問題点を深めて行くが、今回は話題沸騰の“あの”都知事がらみなので、皆の衆が騒ぐことには冷ややかな私としては気が進まないが、仕方がない。

 本年3月中旬、杉花粉症の激化を契機として、私は、年来の疑問の数々を徹底調査し始めた。すると、これまた「各種業界」の共通現象として、いわゆる「専門家」の太鼓持ち、私の命名では「21世紀デカメロン」が、ウジャウジャとひしめき、真相を歪め、「餅は餅屋」「蛇の道はへび」の「薬九層倍」「医は算術」、より正確には「生かさず殺さず業界」に奉仕する有様までが、嫌でも見えてきた。

「21世紀デカメロン」の実態を「知らぬは患者ばかりなり」

 ここでも前回の留保を繰り返す。……もちろん、いわゆる良心的な薬屋や医者がいることは否定しないが、これも「各種業界」同様、ごくごく少数派である。

「21世紀デカメロン」とは、わがホームペ-ジの内で、Fight Professionally Series に位置付けた課題である。ヨーロッパ近世の『デカメロン』は、中世は愚か古代社会以来の独裁君主の太鼓持ち、すなわち糞坊主どもの仮面を剥がすのであるが、現代ともなると、太鼓持ちの職業的分化が、さらに複雑に入り組む。

 特に、アカデミ-業界、マスコミ業界、自称革新党派業界などに群がる今様糞坊主の仮面を剥がし、その正体を世間に晒すためには、私のように、断固、独立独歩、一匹狼、はぐれ狼、ドン・キホーテの苦難を覚悟し、業界内の友人知人さえも時には敵に回し、逆恨みの敵がいかに増えようとも、恐れずに戦い抜く決意を固めることが、不可欠の条件となる。

 以下、「杉花粉症」業界にも巣くう現代権力の太鼓持ちどもの実態を紹介しつつ、さらに杉花粉症の問題点を深めていくことにする。

曲学阿世を超える暴言都知事の提灯持ち「研究員」の正体

 わがホームペ-ジの読者が、わが命懸けの「杉花粉症」キャンペーンを知って、新聞記事の切抜きを届けてくれた。『朝日新聞』(2000.4.11)「科学をよむ」欄「大気汚染も花粉症の一因」である。写真入りで紹介されている執筆者、黒田洋一郎の肩書きは、「東京都神経科学総合研究所参事研究員」となっている。「東京都」の「都」が微妙だが、それだけでは立場が不明である。

 ともかく読むと、冒頭から、「『花粉症の原因は花粉である』と単純に思っている人が多い」ときた。これは怪しいぞと思いつつ、読み進むと、文章の構造が曲りくねっていて、、いちいち気に障る。読者誤導の文脈が続く。骨格は「花粉症の増加の一因はディーゼル排ガス中の微粒子」だと主張することにあるのだが、後段になると、ついに出てきた。

「石原慎太郎東京都知事が最近決断した」「ディーゼル排ガスの厳しい規制」の意義の強調と相成った。しかも、これが、例の「三国人」発言と同時期の掲載だったから、当然、それだけでも「ウヌ!」となる読者が、少しは、いたはずだ。執筆者、または担当記者は、出番を間違えたのである。

 その上に私は、杉花粉症について、早くから「ディーゼル排ガス」の補助効果に関する研究があることを知っていた。いわば「触媒」の役割である。しかし、あくまでも「主犯は杉花粉の増大」にあると確信しているから、すでに本シリーズでも軽く触れたように、この種の補助効果や、回虫、真田虫などの「虫下し」の失敗説などについては、問題点のすりかえに注意してきた。特に、「杉林」の荒れ放題と、その始末に目を向けない「杉花粉症」論に対しては、意図の如何に関わらず、結果として「行政・産業」公害を見逃す立論として、遠慮なく批判し、告発する覚悟を固めてきた。

 ところが、この記事は、それ以上で、通常の補助効果説を、はるかに上回る強引な立論になっていた。何と、「今のところスギ花粉の飛散は防止できないが、自動車の排ガスは規制できる」などと断じ、事実上、「スギ花粉の飛散の防止は諦めろ」と脅かし、スットントンのスットントンと、「石原都知事の決断」を称える結論を導き出している。

 こりゃ何じゃ、この曲学阿世の自称「研究者」奴と思って、仕方なしに調べると、これまた何と、曲学阿世の原型の「アカデミ-業界」の商売人ではなかった。「東京都神経科学総合研究所」は、一応、財団ではあるが、運営の費用は東京都衛生局が100%出している。「参事研究員」と名乗っているが。賃金などの労働条件は東京都の職員の体系と同じであり、職員の出向の扱いとなっている。つまり、世間常識に照らせば、黒田洋一郎は100%「東京都職員」なのである。やはり、トンデモナイ「都」の字だったのである。

 しかるに、その本人が上記の記事の中に記している著書、『ボケの原因を探る』(岩波新書)の奥付の経歴紹介では、現職について「東京都神経科学総合研究所参事研究員」だけとなっている。著書を見て寄稿を依頼し、著書の奥付で肩書き知り、それを、そのまま記事に使うという通常の怠惰な仕事の流儀であれば、朝日新聞の担当記者は、「東京都」の「都」の字を見ても、100%「東京都職員」だとは気付かなかったのかもしれない。

「誤導の肩書き」は朝日新聞の元著名記者の真似か

 上記の記事が、「東京都職員」の肩書きで掲載されていたら、朝日新聞には、「暴言都知事の提灯持ち!」の抗議が集中したであろう。いや、その前に、いかな「エセ紳士」の朝日新聞と言えども、100%「東京都職員」、または傍系ゆえの必死の売り込みかもしれない「誤導の肩書き」の可能性に気付いていたならば、少なくとも、「石原慎太郎東京都知事が最近決断した」という部分については、「ご遠慮」を願ったかもしれない。

 なお、「誤導の肩書き」の最たるものは、朝日新聞の大先輩、本多勝一の「京都大学農林生物科を経て」である。偉そうに「大卒」を採用条件とする朝日新聞人事部への届けでは「千葉大学薬学部卒」なのに、実は「中退」の上記学歴の方が格好が良いのか、初期作品の奥付に記し、講談社文庫版の奥付では「経て」が「卒」に化けていたのである。その後、本多勝一は奥付に学歴を記さなくなっているが、これも誤報を頬かむりする大手メディア共通のヤクザ仁義である。文藝春秋相手の裁判の際には、法廷で証拠を示され、「経歴詐称」と批判されているが、当の文藝春秋も、やはり大手メディアの仲間だから、法廷では戦術として使っても、法廷外での公然たる「経歴詐称」批判はしていない。とどめを刺していないので、本多勝一の言論詐欺商法が、いまだに通用しているのである。

「デキレース」見え見えの「ディーゼル排ガス」規制

 さて、都知事の「ディーゼル排ガス」規制に関しては、次回に詳しく「デキレース」を喝破する。昨年の8月27日の記者会見発表が最初だったようだが、その時にも私は、「デキレース」を直感した。最新情報では、通産大臣が「補助金」「取得税引き下げ」を提案している。これが背後の業界の真の狙いだったのだ。東京都、運輸省、自動車業界、石油業界から、公開の記者会見用資料を取り寄せて、見比べるだけでも、それぐらいのことは簡単に喝破できるのに、この田舎芝居に騙されて、「あれだけは評価できるが……」などと宣う「暴言都知事批判派」が多いのだから、ああ、ああ、とても疲れる。

 で、以下は次回へ。ここでは、上記「提灯記事」の言論詐欺の基本を暴く。

「日光のスギ」研究の出典を明示せず論旨を曲げる詐欺

 黒田は、出典も示さずに、自説に展開の論拠として「日本のスギ花粉症は63年に日光の杉並木の近くで発見されたのが最初だ」と記す。いかにも物知り風である。歴史的研究風である。しかし、これは素人騙しの言論詐欺に特有の手法である。

 この「特ネタ」こと、「日光の杉花粉症」発見者の斉藤洋三は、多数の学術論文のみならず、何冊もの一般教養書を発表している。日光(栃木県北西部、日光市)は、確かに、黒田が形容するような「江戸時代から杉が多く植えられた」地域であるとしも、斉藤は、医者であって、江戸幕府の歴史的責任を追及するために研究したのではない。そもそも、かの著名な「杉並木」などは数も知れたものである。

 斉藤らは、杉花粉症が多い「地域的背景」(『花粉症の化学』斉藤洋三・井手武、化学同人、1994.p.13)として「関東地方」の条件を指摘し、林業関係の資料を漁り、特に、「1都6県のスギ、ヒノキ科植物植林面積では栃木県がトップで、ここがスギ花粉症発祥の地であることもうなずかれる」(p.13)と論じているのである。問題の根本は、戦後の植林なのである。

 しかも、「花粉症増加の直接原因」として、基本的には本シリ-ズと同主旨の林業の実態を指摘し、杉植林政策の歴史まで簡略に記しているのである。

 さらには、「初発病者数」と「スギ花粉数」の相関グラフを作成し、その「直結」関係を「強調」(p.10)している。1965年から1990年までの「スギ花粉数」は、「国立相模原病院の調査成績」(p.11)だと注記している。ところが、これも次回以後に詳しく論ずるが、前回紹介した東京都のデータは、1985年以降のものである。それ以前のことを聞いても、何も分からない。誰も知らない。厚生省も同様である。歴史的な基礎データの整備は急務であるが、ああ。疲れる。

以上で(その11)終わり。(その12)に続く。


(その12)「21世紀ニッポン杉花粉症研究基礎データ」の処遇
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