第三部 マルチメディアの「仮想経済空間
(バーチャル・エコノミー)」
電網木村書店 Web無料公開 2005.4.15
第八章 巨大企業とマルチメディアの国際相姦図 2
「解説員室」のモゴモゴ「怪説」で疑問が増大
そんなおりもおりのこと、今年(九四年)一月一九日の朝、新聞のテレヴィ番組欄をみると、夜の八時四五分からのNHK3チャンネル「解説員室」の題名が「情報網の全国整備」となっていた。夕刻からは外出の予定だったので、早速、ヴィデオ収録をセットした。そのおかげで番組内容を再現しながら細部の検討ができたのだが、結論をさきにいうと、NHK「解説員室」の「情報網の全国整備」の内容は、「解説」ではなくて「怪説」だといわざるをえないシロモノだった。視聴者にたいしては説明不足で非常に不親切だった。しかも、NHKの本音がどこにあるのかが、まったくつたわってこなかったのだ。
解説員の浜野崇好氏はおわりぎわに、「そのほかにも色々な問題が……」といい、「光ファイバーのコスト」「放送と通信の融合」「将来のテレヴィはどうなるか」「いまのこのテレヴィは悪いのか」「有線と無線の住み分けみたいなこともいるんじゃないか」などとモゴモゴつけくわえた。司会者は最後に、「経済効果があることは間違いなさそう……」という台詞で郵政省などの宣伝をみとめたうえで、「私たちの暮らしに役立つものとして、暮らしに根づいたものとして誕生してほしい」という要望をのべてしめくくった。
これらのおわりぎわの台詞からはまちがいなく、郵政省やNTT関係の「有線化」計画についてNHK内部で論議があり、かれらがそれを意識していることが読みとれる。しかし、「解説員室」は、一番の焦点となるべき地上波テレヴィ「有線化」の問題を真正面からとりあげようとはしなかった。おわりぎわの「有線と無線の住み分け云々」という台詞にはあきらかにこの問題がひそんでいるのだが、この程度のモゴモゴ解説だけでは、事前の知識のない視聴者にはなんのことだかわからないであろう。
この件でNHK広報室に取材を申しいれたところ、ただちに「地上放送の有線化方針と書くのは日経さんだけ」といういいわけの台詞がとびだした。つまりは逆の形で、日経の記事を意識していることを告白したわけだ。しかしNHKは、郵政省やNTTとの正面対決をさけている。私は、NHKがこの問題で、結果として視聴者を裏切っていると判断する。