『電波メディアの神話』(7-8)

第三部 マルチメディアの「仮想経済空間
(バーチャル・エコノミー)」

電網木村書店 Web無料公開 2005.4.15

第七章 日米会談決裂の陰にひそむ
国際電波通信謀略 8

日米ともニューメディアで政策的詐欺と失敗の歴史

 日本でも一九八〇年代に「ニューメディア」ブームがはやしたてられた。だが、衛星放送、CATV、キャプテン・システムは、ことごとく経営困難である。とくに問題の次世代通信網、NTTの計画ではBーISDN(広域総合デジタル通信網)に関しては、その前例となるISDN(総合デジタル通信網)が開始後五年をへてなお赤字つづきで、九二年度の経常赤字は五五四億円という惨状である。

 この赤字をかかえたままのNTTがあたらしい計画を発表して、それを電話料金の値上げに利用するとなれば、すでにまたあたらしい口車の詐欺で庶民のフトコロに被害をひきおこしていることになる。現在地域単位で普及困難のものをB(広域)に昇格させれば成功するという保障はどこにもない。昨年はじめに一時もりあがった「新社会資本整備」政策の際にもNTTはのりそこね、BーISDN計画の「三年延期」を発表した。その際にも足下の経済界から、「そもそもBーISDNは何のために作るのか。だれのためのものか」(日経93・8・21)という根本的な疑問がなげかけられた。

 土地や証券のバブル崩壊のおかげでめだたなかったが、「ニューメディア」は政策的には大失敗だったし、詐欺にひとしかった。情報ハイウェイ構想が、おなじような政策的詐欺にならない保障は、いったいどこにあるのだろうか。

 アメリカではレーガン政権時代に、おなじ電機業界を中心とする軍需産業の分野で、ミサイルを空中でうちおとすという、とうていできもしない「スターウォーズ」の盛大な詐欺がおこなわれ、真相が暴露されたばかりである。マルチメディアでは、空の放送衛星や通信衛星にくわえて、地下と海底の光ファイバ網まで駆使する。スターウォーズよりは技術的にたしかなものかもしれないが、経済効果は未知数なのだ。それなのに、たとえばジョン・スカリ元アップルコンピュータ会長は、「二〇〇〇年までに、米国のマルチメディア市場は三・五兆ドル(約三六〇兆円)になる」(日刊工業94・1・7)と予言する。この金額はアメリカの国民総生産(GNP)の、なんと、約半分なのだ。本当にそういう可能性があるのだろうか。ともかく慎重に吟味してみるべきだろう。


(9)ピザの宅配注文なら電話で十分、パソコンは不要