第二部 「多元化」メディアを支配する巨大企業
電網木村書店 Web無料公開 2005.4.6
第五章 「打って返し」をくう「公平原則」信奉者 9
二重の神話利用による逆ハンディレースのおしつけ
以上の問題点は、アメリカの放送界の実態を知ることによって、さらに明確になる。
まず最初に注意を喚起しておくと、「公平原則」廃止の前提となった「規制緩和」という用語は、政策宣伝用の美辞麗句型キーワード、ないしはキャッチフレーズ、あえていえば、まやかしの口実にほかならない。私なりに規制緩和の本質を表現すると「弱肉強食」である。弱肉強食政策のもとで、放送の公平原則廃止が強行された結果こそが、あの湾岸戦争報道だったのだ。
公平原則廃止の口実は、ケーブルテレヴィなどのあたらしい電子情報メディアの普及による「多メディア」化、私の表現では「多元化神話」だった。だが、再度くりかえして強調するが、活字メディアはもともと多元である。しかしそこでも古今東西、巨大資本が優位に立っている。「多元化」イコール「民主化」という前提は、資本という最大の土台を無視するあやまりをおかしており、場合によっては積極的なまやかしである。しかも、放送の場合には、これまでの「希少性神話」によって、既存の地上波放送局が特権的地位を確保してきた。「公共の財産」であるはずの電波を独占的に使用しながら、巨大な資産をたくわえてきた。体制側が、特権的ブランド、ノウハウ、ベテラン従業員をふくむ資産を維持したままの「多元化」神話による公平原則廃止は、二重構造の神話的ドンデンがえしだ。出発点から逆ハンディつきのレースをしいられる反体制少数派には、まず勝ち目はない。
第六章 レーガン政権下で激変したアメリカの放送
(1)巨大軍需会社がテレヴィ全国ネットワークを買収 へ