朝日新聞社と講談社は「高みの見物」か「洞が峠」か?
1999.2.5
今回の小見出しは、基本的に、前回の予告通りである。
だが、前回の時点ではまだ、「岩瀬vs疋田&本多」裁判に関して、背後に控える朝日新聞社と講談社の責任を問うのは、またもや「我一人」なのかな、という気分があった。この気分は、「百万人と言えども我行かん」という気負いでもあったが、同時にまた、今度も一人芝居かという諦めの心境でもあった。
ところが、自分で言うのも最早、面映ゆくはなくなったのだが、「徳は孤ならず」。
私がこのところ、かなりの「クオリティー雑誌」と評価する店頭販売なし、契約制の月刊誌『テーミス(THEMIS)』(1999.1)に、「特集・新聞&出版危機の研究」(4)「朝日元大記者vsフリー記者『新裁判』報告」と題するB5判で2頁の記事が出ていた。
すでに前回、疋田&本多が、それぞれ別人格で「反訴」を起こしたことを紹介したが、この『テーミス』記事では、「岩瀬氏の書いたことが『事実無根』だというなら、新たに訴訟を起こすべきだ」と批判していた。しかも、これに続いて、次のような問題を投げ掛けながら、記事を締め括っている。
「『言論には言論で応戦すべし』という議論もある。しかし、朝日新聞をバックにした著名な記者が声高に書き続ければ、フリーライターをジャーナリズムから追放することも可能だ。現に疋田氏と『連帯するつどい』には、岩見隆夫(毎日新聞元編集委員)、斉藤茂男(共同通信元編集委員)、下村満子(『朝日ジャーナル』元編集長)、筑紫哲也(TBSキャスター)、中江利忠(朝日新聞前社長)各氏らが『呼び掛け人』になっている。『言論の自由』とは何か。改めて考えさせられる裁判だ」
「12月25日」の裁判日程と「フリーディスカッション」方式に注目しながら「まったく新しい方式の裁判になりそうだ」とする記事内容から見て、「岩瀬vs疋田&本多」裁判の第1回口頭弁論以前に書かれたことが明らかではあるが、まとめ方は的確である。
『テーミス』は昨年、1998年8月にも、この「岩瀬vs疋田&本多」問題を背景とする内部告発的的な記事を載せていた。題は「社員・OB株主が相次いで糺した朝日新聞の株主総会で出た『あの問題』」である。本多勝一とは「同期」の元朝日新聞研修所長、本郷美則が、「『ゆるふん』に放置しておいたから、どんどん腐敗が進んできた」と批判するのに対して、本多勝一の方は、「朝日の恥。こんな野郎がね、ゴタゴタいっている」と汚い表現で罵倒しする。いかにも男優位社会の新聞界らしい下品な言葉の応酬だが、実感が溢れていた。「ウミを徹底的に洗い出すべきである」という意見が出たようだから、今や、この問題は、誇り高い「朝日人」の内輪庇いの習性を揺るがしていることになる。
何と言っても、事件の発端は、講談社発行の月刊雑誌『ヴューズ』(97.1)に連載された「株式会社朝日新聞社の正体」の第1章「リクルートの『接待旅行』」なのである。
私自身も、朝日新聞に電話して、次のような内容のファックスによる直接の返事を受け取っている。
「木村愛二様
1998.04.2 朝日新聞社広報室
『噂の真相』5月号に掲載の記事に関するご質問にお答えします。
ご指摘の部分は、リクルート社からの『接待旅行』とありますが、事実ではありません。1987年4月、本多記者や疋田記者らのスキーグループが安比高原スキー場へ、パック料金で出かけたのは事実ですが、きちんと料金を支払っており、『接待』は受けていないと判断しております。
以上です。」
このファックスを受けとってから、すぐに私は、また電話をして、「きちんと料金を支払っており、『接待』は受けていないと判断」した根拠は何かと質問した。それに対しては、しばらく時間を置いてから、やっとのことで、「本人が料金を支払った領収書を持っていると聞いております」という間接的な表現の「社内調査」報告が返ってきた。
ところが、その後、『創』の特集記事を見ると、筆者の岩本太郎の質問「領収書の現物はあるのですか」に対して、本多勝一は、「3年以内ならともかくね。10年前の領収書を捜すといっても」と逃げているのである。つまり、本多勝一は、自分の無実を証明する決定的に重要な証拠物件を、「持っている」と言ったが、実は持っていないのである。
これでも、本人が突っ張れば、迷宮入りになるのだろうか。
たとえば、これが重大な刑事事件の政治疑獄だと仮定すると、「供応を受けた」疑惑を立証する証拠物件は、すべて強制的に提出をさせられるか、ガサ入れで押収される。リクルートが接待したのかどうかなどという簡単な事実は、物的証拠に照らせば直ちに判明する。新幹線の切符代金には領収書がないだろうから、これは藪の中だとしても、リクルート所有のホテルが「供応」か否かの舞台なのだから、当時の帳簿を押収すれば、規定の料金を支払ったか否かは、一発で分かるはずだ。疑惑の的になった企業には、帳簿を廃棄したなどという言い抜けを許してはならない。
私は、前回の終りに記したように、「朝日新聞社と講談社」へも、電話取材と申し入れをした。私自身は、当然のことながら、自分と同じ「個人」の立場の岩瀬達哉に同情的である。しかし、同情で目が曇り、虚心担懐に事実を見る心を失ってはならないと思うから、両「大メディア企業」に、事実を明らかにする努力を求めた。「個人に負担を掛けるな」と要望した。
さらに私は、リクルートにも電話をした。「お宅の汚職が元々の原因なのだから、これは刑事責任がないとしても、積極的に事実を明らかにする社会的義務がある」と主張した。それに対して、「検討する」といいながら、結局、「係争中なので介入せず事態を見守る」という返事しか戻ってこなかった。ただし、「当時の帳簿はない」とはは言わなかった。私は、「証拠を保全せよ。これから、その要求をインターネットに公表する。今や、大手手メディアだけ押さえて置けば済む時代ではない」と通告してから、電話を切った。
朝日新聞社、講談社、さらには原因を作ったリクルート、この3つの大企業を、このまま「のほほん」とさせて置いて、それで良いのであろうか。
皆さんにも、電話で、責任を追及して頂きたい。すべて「広報」が担当である。
電話番号:
朝日新聞社:03-3545-0131
講談社:03-3945-1111
リクルート:03-3575-1111
以上で(その6)終り。次回に続く。