「反訴状」で蒼白の「ゾンビ」本多勝一登場の波乱万丈
1999.1.29
1999.1.27.10:30から上記事件の「第2回(?)」口頭弁論を傍聴した。
(?)の意味は、これからゆっくりと、詳しく説明する。
次回は3.17.16:00-17:00に予定されたが、そこに行き着くまでが、いやもう、一口で言うと大変な騒ぎだった。
前編、これ生、かぶりつきで見られるし、少しは野次を飛ばしても大丈夫な、この、ブッツケ本番の実演を見逃した人は、きっと一生後悔するだろう。裁判傍聴ではベテラン中のベテランの私が言うのだから、間違いなしの大変で、波乱万丈だったのである。
まず第一に、第1回には姿を現わさなかった本多勝一が法廷に現われて、本人陳述という形式の「イケシャーシャー嘘っぱち」を並べ立てた。しかし、この現われ方は、前回より少し減って開廷時に数えて13人の傍聴者すべてにとってと同様、私にとっても「突如」だった。この岩瀬達哉が提訴した事件の昨年12.25.第1回口頭弁論では、疋田&本多は、「被告」だったが、今回は、この両人が、被告であると同時に、原告にも化けて現われたのである。
どういうことかと言うと、実は、こういう裁判経過自体は、別に珍しくはない。
ところが、裁判長は、そういう事情を傍聴者に分かるように説明せずに、いきなりモゴモゴと隠語、符丁を呟いて開廷してしまうので、事情の変化を知らない傍聴者は、面食らってしまう。
ベテランの私でも、事情が初めて正確に分かったのは、裁判長が「反訴状」という言葉を使った時である。疋田&本多が、逆に、原告の岩瀬を被告にして名誉毀損の訴えを起こしたのである。双方が訴え合う関係になったのである。
そこで、傍聴者が前回に引き続いて、岩瀬提訴の事件だけの第2回口頭弁論が始まると思っていたのに、何の説明もなしに、実はまだ別件の疋田&本多提訴事件の第1回口頭弁論が、いきなり展開されたのである。これが冒頭の「第2回(?)」の意味である。
この日の法廷での最初からの経過を振り返ってみると、この「反訴」の兆候は確かにあったのだった。定刻ギリギリに入廷した本多勝一は、桑原弁護士にかしずかれるようにして、前列の普通の事件では弁護士だけが座ることの多い席に座った。何かしゃべる予定だなと思ったら、その通りだった。ただし、その前に、桑原弁護士が後ろから立って、「簡単に訴状の趣旨を口頭陳述を」と、蟹の横這いでしゃしゃり出た。反訴に至った経過の中で「原告のジャーナリストとして築き上げてきた高い評価を傷つけられ」という下りで、正直者の私は、失笑の爆発を押さえ切れなかったが、裁判長は別に注意はしなかった。
続いて、ご存じ白髪混じりの鬘を付け、顔色はますます蒼白の「ゾンビ」(私に対して『週刊金曜日』記事が使った言葉を返上)そのままの本多勝一が、「目には目を、……ができない私」とかなんとか、まるで言語も意味も不明瞭の本人陳述を行った。いずれまた、ご都合主義の「改竄」をほどこして『週刊金曜日』私物化記事にするのだろうから、その時に詳しく論評する。
御両人の反訴状提出の日付は、いったん帰宅してから午後になって、東京地裁の受付に電話をして確かめたのだが、疋田&本多の両人が別々の提訴で、本多が1.18.、疋田が1.20.、という順序である。他の部分でも匂っていたが、どうやら、二人は、素直に雁首を揃えて飛ぶ関係ではないらしい。
全体の概況を先に言うと、20分予定だった口頭弁論が約50分に延びた。原告であり同時に被告でもある3者が、それこそまさに入り乱れての白兵戦となり、そこへまた、実に口数の多い裁判長が高い席から身を乗り出して、本音丸だしの訴訟指揮をするといった状態だった。
この「入り乱れての白兵戦」の基本的な原因自体も、実に面白い構造なのである。簡単に説明するのは難しいが、まず、岩瀬側は、2段構えの主張を組み立てている。
第1は、たとえ発端の『ヴューズ』記事に間違いがあったとしても、特に、「講談社の飼い主にカネで雇われた番犬・狂犬の類」「売春婦よりも下等な、人類最低の、真の意味で卑しい職業の連中」などの、被告・本多が原告・岩瀬に投げ付けた名誉毀損の表現は、それ自体だけでも「不法行為」であるという主張である。
第2は、『ヴューズ』記事の「リクルート接待旅行」という記述にも誤りはないという主張である。
これに対して、疋田&本多側は、発端の『ヴューズ』記事の「リクルート接待旅行」という記述が間違い、捏造だと主張している。
疋田&本多側が提出した書面の「反訴状」という用語は、新しいキーワードである。
法文に明記された用語ではなくて、民事訴訟法146条「反訴」に基づいて、「関連事件」だから、具体的には「併合して審理せよ」という主張になるのだが、「訴状」でも構わない題名をあえて「反訴状」としたのは、「併合」でゴチャ混ぜにして、「争点」を「事実関係」に狭めようとする意図であることが、見え見えである。
これに対して岩瀬側は、「争点がボケる」として基本的には「併合拒否」の構えを見せ、裁判長にも「反訴の取り扱い」の「検討」を要請した。
裁判長は、岩瀬側「争点がボケる」という主張にも一応の理解を示しながら、右に乗り出したり、左に乗り出したり、双方の間に立つ姿勢を見せつつ、実は何度も、疋田ら一行が「リクルート所有のスキー場」に行ったのは「接待旅行」なのかどうか、「事実の確認、云々」と口走る。
簡単に言うと、裁判長は、右からこずかれ、左からこずかれ、ぐらぐらしている。本心は分からない。「ブラッフ」である。たとえば「自由な討論を」などと言って、自分の方から「質問」したりする。書証の記事を読み上げて、「リクルート所有のホテルだからオーナーの利用は無料とあるが」とか、「リクルート社員の家族もいたが無料では」とか言う。
少なくとも裁判長には、「併合」したい気分があることは明らかだ。その方が、流れ作業の裁判所としては、事務的にも面倒が少なくなる。そうと思える裁判長の発言の度に、疋田&本多側の代理人の弁護士の顔が、赤くなったり白くなったり、崩れたり引き締まったり、これはもう本当に大変な見物だった。
最後には、裁判官が背後の扉に消えた閉廷後に、私が、「本多さん、本多さん」と大声で呼び掛けた。蒼白の「ゾンビ」そのままの本多勝一は、半年間ながらも防衛大学校の毎朝起床直後の「号令調整」で喉を潰し、1960年安保改訂反対闘争以来の「シュプレヒコール」で鍛え上げ、どこでも「声が大きすぎる」といわれ続けている私の声が聞こえないはずはないのに、裁判長が消えた辺りをジッと向いたまま硬直して動かない。
「とぼけるんじゃないよ。自分の文章まで改竄してることがバレてるのに」などと親切に注意してやると、やっとこちらを向いたが、その目は完全に死んでいる。私の日本テレビ相手の不当解雇撤回闘争で弁護団の一人だった小笠原彩子弁護士が、真っ赤な顔になって、「ここは法廷ですから」などと、当たり前のことを言って止めに入る。書記官もきた。
私は、法廷のことは大抵知っているから、「もう閉廷している」「そちらこそ法廷の中で、あんな嘘っぱちを言い散らして」と言って、さっさと外に出た。
丁度そこへ、疋田も出てきたので、前回の注意の続きを言ってやった。
「あんなゴロツキとは早く手を切らないと、あんたも一緒に地獄に引き吊りこまれるよ」
疋田の顔は前回と同様に真っ赤になった。疋田はまだ、「ゾンビ」ではない。「天声人語」の疋田圭一郎は、まだ改悛の見込みがありそうなので、救ってやりたい。
この「岩瀬vs疋田&本多裁判」の次回、第3回(3回と2回の同時並行というべきか)口頭弁論の期日は、冒頭に記したように、3月17日午後4時から5時まで、東京地裁721号法廷である。「併合」か否かも、新しい興味の種となった。
最後に、この事件の背後に控える朝日新聞社と講談社にも、一応、取材の電話を入れた。双方ともに、長電話でクドクド弁明していたが、その件は別途、詳しく論じたい。
ともかく私には、ナベツネの新大阪駅駐車場の佐川急便への売却疑惑報道に発する読売新聞社とTBSの訴訟合戦に、資料提供などで関係し、『マスコミ大戦争/読売vsTBS』のブックレットを執筆した経験もあるので、朝日新聞社と講談社のそれぞれに、「本来は社なり編集側としての責任もあるのだから、個人のフリーライターだけに負担を掛けないよう善処されたい」と要望した。
以上で(その5)終り。次回に続く。