ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(]Z)
まさか、こんな茶番劇がイラク攻撃の根拠になるの?
「決定的証拠」出せず。ウソとはったりのパウエル国連報告
○「新決議」=「武力行使決議」に反対する!
○小泉政権はなぜこんな報告で戦争を支持するのか。
○対イラク皆殺し戦争への日本の加担を許すな!


はじめに

□パウエル報告のウソがばれるのを恐れて開戦を焦るブッシュ。逆恨みをして国連や世界を脅迫する。
 ブッシュ大統領は2月7日、「今は国連安保理にとって決断の時だ。独裁者のうそと欺きを許容した場合、国連安保理は弱体化する」と述べ、国連と世界に対イラク皆殺し戦争を決断するよう脅しつけました。要するに「俺の命じたことを早くやれ」、まさに脅迫です。イラクだけじゃなく、自分の思い通りに動かない欧州諸国、国連と世界に向かって苛立ち、どやしつけているのです。
※「米大統領、イラク問題で国連の早期決断を促す」(ロイター)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030208-00000144-reu-int
※イラク「決定的な瞬間」米が安保理に決断促す(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030208-00000103-yom-int

 ブッシュはなぜそんなに焦るのでしょうか。答は簡単、早くしないと国連と世界に向けて大見得を切ったパウエル報告が「新証拠」でも「決定的証拠」でもないだけではなく、“ウソのかたまり”であることがばれるからです。「ばれる前にやってしまえ」と言うわけです。またすでに開戦を決断し大兵力をイラク周辺に集結させているので、もう抑えが効かなくなっているという事情もあるでしょう。大義名分が立たず、国際法をも破壊する違法な戦争なので、放っておけば戦争できなくなることへの焦りでもあります。

□早くもボロが出始めたパウエル報告。墓穴を掘ったパウエル?

(ロイター/Ray Stubblebine)
 パウエル米国務長官は2月5日、国連安全保障理事会の外相会議において、イラクの大量破壊兵器開発疑惑に関する“機密情報”とやらを提示しました。欧州を中心に、または米国内でも反戦気運が高まってきたため、国連と世界をだまして「査察打ち切り」ムードを作り出し、早期開戦に持ち込もうとしたのです。いわば「ブッシュの賭け」でもあります。

 私たちは、深夜にやっていたパウエル演説のTV中継を見ました。しかし今から思い返せば、パウエルが大まじめに中断なしに語った80分近くの長い演説。批判一つもなく各国が静かにそれを聞き入る様。よくもまあすぐにばれるようなウソを延々と真剣ぶってしゃべり続けたものです。「茶番劇」としか言えません。

 しかしパウエル報告から日が経つ間に、早くもパウエル報告のウソとデタラメが明らかになってきました。ブッシュは1月28日、一般教書演説で「フセインは世界をだまそうとしている」と口を極めて批判しましたが、そっくりそのままこの言葉をブッシュに投げ返したいものです。パウエルもブッシュも、まずは自分の醜悪な姿を鏡で映すべきです。

 私たちの仕事は、パウエル報告のうそっぱちを徹底的に暴露することです。「しまった。墓穴を掘ってしまった」とアメリカを追い込むことなのです。確かに時間がありません。日本政府も大手メディアも「勝負は決まった」と見切り発車を容認し始めていますが、最後まであきらめてはなりません。

□「決定的根拠なし」。国際世論の大勢は「査察強化」。国連武力行使決議にも米英単独攻撃にも反対!
 現在のところ、国連安保理の大勢は査察継続、平和的解決です。フランス、ロシア、中国やドイツなどは、パウエル演説は何ら開戦の根拠とはならないと主張しています。少なくともパウエル報告で一気に国際世論を支持にひっくり返す目論見は挫折しました。カネに釣られた中東欧諸国やアフリカ諸国が“金魚の糞”のようにブッシュの尻に連なっているだけです。ブッシュの暴走と世界の反戦世論とのせめぎ合いはまだまだ続いています。

 私たちは米英の単独攻撃を阻止しなければならないだけではなく、国連安保理の新決議=「武力行使決議」を採択させてもなりません。安保理の多数派工作が非常に危ないところまで来ています。もしこんな決議が通れば、雪崩をうって一気に流れが変わるし、日本を含めてのどから手が出るほど支持したいのだが最終的判断を先送りし様子見をしている国々が一挙に加担する口実を与えるからです。

 以下に、パウエル報告のウソと矛盾を、欧米と日本のメディアにすでに暴露された事実と情報を中心に検討してみましょう。

★是非次の記事も参考にしてください。
 スコット・リッター招聘実行委員会緊急レポート
 「パウエル報告の問題点」 (文責: 星川 淳)
  http://www.ribbon-project.jp/SR-shiryou/shiryou-08.htm

 益岡賢のページ 「イラク戦争:パウエルの証拠」
  http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/

2003年2月9日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局


T.


□英政府の「証拠文書」は大学院生の論文を“盗用”。しかも10年以上も前のデータ。
 まずブッシュやブレアがどんなデタラメな「証拠」でイラクに攻め込もうとしているか、その典型的な事件からご紹介したいと思います。「機密情報」なるもののお粗末かつ恥ずべき実態が明らかになったのです。
 それは「イラク−隠蔽の基盤、詐欺と脅迫」という英政府の「証拠文書」です。パウエルも2月5日の国連演説で絶賛したもので、パウエル報告に先立って発表されたものです。しかしそれは実はカリフォルニア大学の大学院生イブラヒム・マラシ氏が湾岸戦争の時の情報に基づいて書いた論文を、綴りや文法の間違いも含めて丸ごと「盗用」したというのです。ロイター通信によると、英政府報道官は報道に対し、「文書の内容は正確だ」としたうえで「政府は諜報活動によってのみ情報を集めているわけではない」と弁明し開き直ったと言います。
※「<イラク問題>英政府の報告書が雑誌を盗用 つづり間違いも一緒」(毎日新聞)
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200302/07/20030208k0000m030033000c.html
※「文書盗作疑惑で誤り認める=英政府」(時事通信)。英政府は、マラシ氏の論文が雑誌に掲載されたのは昨年の9月だが、そこに使用されている情報が10年以上古いデータ(!!)であることも認めた。もうメチャクチャ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030208-00000624-jij-int
※米のウェブサイトCommon Dreams NewsCenterに、この重大な盗用問題を報道した「Downing St Iraq Dossier Plagiarized」(UK's Channel 4 News)が掲載されている。そこにはどれだけそっくりか、幾つかの事例が示されている。そしてマラシ氏が載せた「Middle East Review of International Affairs (MERIA)」なる雑誌には英政府から謝罪がなされていないと非難する声明もある。
http://commondreams.org/headlines03/0206-08.htm
※また英「証拠文書」にはもう一人軍事ジャーナリストシーン・ボイネ氏の論文からの盗用もあるのです。彼ははっきりと今回の戦争に反対し、侵略の肯定に利用されていることを憤慨しています。「Real Authors of Iraq Dossier Blast Blair」February 8, 2003 by the Daily Mirror/UK
http://www.commondreams.org/headlines03/0208-09.htm

□元査察団長スコット・リッター氏がブッシュとパウエルのウソを暴く。
 1991-98年の国連査察を現場で取り仕切っていたUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の元査察団長スコット・リッター氏が2月始めに緊急来日し、ウソとレトリックに基づいて侵略戦争に突き進むブッシュ政権を批判しました。彼は言います。「ブッシュ政権の主張に反して、イラク側の申告は総じて妥当であり、むしろ問題の本質は、査察官が立ち会わず文書記録のともなわない一方的廃棄について、グレーゾーンが残っている点にある。しかし、さらなる検証の必要性と、ただちにシロを実証しなければ叩くというアメリカの要求とは似て非なるものだ。米英当局の声高な主張にかかわらず、イラクの大量破壊兵器開発・保有を裏づける説得力のある証拠はいまだに提出されていない。ラムズフェルド国防長官の『証拠の不在は不在の証拠ではない』『見つからないのは存在する証拠だ』といった妄言は、その苦しさを表わしている。」また1月27日のUNMOVICの報告とブリクス委員長の姿勢をこう批判しました。「ワシントンに目配りしたブリクス報告は意図的なバイアスが強く、情報操作の謗りを免れない。イラクによる炭疽菌培地の申告に触れるだけで、UNSCOMがその製造施設を破壊した事実も、炭疽菌が3年で、培地が5年で無効になる事実も取り上げなかった。」と。
※スコット・リッター緊急来日講演予稿「兵器とレトリックと迫り来るイラク戦争」は、スコット・リッター招聘実行委員会が翻訳しており、講演会を聞けなかった人もHPで閲覧できる。
http://www.ribbon-project.jp/ritter.html
http://www.ribbon-project.jp/SR-shiryou/shiryou-index.htm

U.


□百歩譲って、もしそんなに何もかも知ってるなら、ジーッと写真ばかり撮らず、ジーッと電話傍受ばかりせずに現物を捕まえりゃいいじゃないの?パウエル報告は査察体制の強化を意味するだけでしょ。
 私たちは80分近くに及ぶパウエル報告を見ていて途中で馬鹿らしくなってきました。誰もが素朴な疑問を抱いたはずです。−−そこまで知ってるなら物的証拠をこの国連の場に持ってくりゃいいじゃないの!衛星写真、電話傍受で全部分かる訳なのだから、なぜ見てるだけなの?なぜ聞いているだけなの?おかしいじゃないか。

□CIAやペンタゴンが最もねつ造しやすい「電話傍受」記録。
 マスコミが「衝撃を与えられた」とかいう「電話傍受」記録は、専門家の間でも一番疑惑が大きいものです。強制的に作らせたものか、あるいはそのテープそのものが本当なのかどうかも疑わしいといいます。
※「Phone taps' credibility questioned 」February 7 2003
http://smh.com.au/cgi-bin/common/popupPrintArticle.pl?path=/articles/2003/02/06/1044498914535.html
※「Focus on Iraq: Powell's UN speech dissected」Ali Abunimah, The Electronic Intifada, 5 February 2003
http://electronicintifada.net/v2/article1140.shtml

□パウエルが大見得を切った「化学兵器貯蔵庫」は査察済みの古い兵器貯蔵庫であることが判明。
 例えば、スクリーンに映し出されたアル・タジ化学兵器貯蔵庫とやら。「私も分からなかったが、専門家なら分かる」とパウエル自身が前置きして説明しました。分からない人がなぜこんな重大問題をしゃべるのか。「化学兵器貯蔵庫」「除去された貯蔵庫」「警備」「汚染除去車両」等々が「矢印」で示されたものです。
 ニューヨークタイムズ紙は1月31日、すでにこの件については査察済みであり、査察官は「ここは古い兵器貯蔵エリアである」と結論付けていることを報道しているのです。
※「Blix Says He Saw Nothing to Prompt a War 」January 31, 2003 by the New York Times
http://commondreams.org/headlines03/0131-12.htm

 またイラクは「バグダッド近郊のヤシの木の中に生物兵器を搭載できるミサイルを隠し4〜5週間毎に移動させた」と非難し、「イラクの隠蔽工作は組織的なものだ」と主張しました。

 もはや結論は明らかでしょう。怪しげなことを色々言うなら「そこを査察すればいいじゃないの。」「いや、中身はすでに移動された。破壊された」とパウエルは言うでしょう。それじゃ私たちも言い返しましょう。「それじゃ、移動したところ、破壊されたものも査察すればいいじゃないの。」衛星写真と電話傍受で全部お見通しなのですから。

□1000km以上のミサイル開発をやっているはずの発射実験場は何回も査察された場所だった。
 イラク政府は2月7日、パウエル報告の「機密情報」の一つ、ミサイル開発実験場2箇所を報道陣に公開しました。パウエルが、得意げに衛星写真を見せながら、150km以上のミサイル製造禁止の国連決議に違反するものだと主張したものです。しかしパウエルが「実験台が大型だ」と主張したことに対して、施設責任者は「作業員の安全確保のためにミサイルを垂直ではなく水平に設置する仕組みにしたため」と答えました。コンクリートの枠組みとトタン屋根の廃屋のような粗末なもので、針金や折れ曲がったミサイルの残骸が捨てられていました。査察官がパウエル報告の前日に査察にやってきて、「何ら決議違反はない」とのこと。(2月8日の朝日、毎日、その他TV報道)
 またトラックによる不審な運搬作業があったというパウエルの発言に対して、「毎日のように部品の運搬がある」と答えました。パウエルはこれにどう反論するのでしょうか。仮にイラク側の主張に疑惑があるとしても、現に衛星で厳格に監視しているのですから、今すぐにイラク民衆を皆殺しする必要がある「侵略の切迫」には当たらないはずです。
※「イラクが“疑惑”工場公開」(読売新聞) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030207-00000017-yom-int

 なぜパウエルとアメリカは、そんな大げさな、すぐばれるようなウソをつくのか、私たちはむしろアメリカの側を追及すべきでしょう。パウエル報告こそ、全面的に真偽を調査し検証すべきです。しかしこれこそがアメリカがその情報をUNMOVICに提供しない本当の理由なのです。ズバリ信憑性がないからです。パウエルがイラクに対して1441決議違反云々を言いますが、決議を混乱に陥れているのはアメリカの側です。

□生物兵器製造用「移動車」って本当なの?国連査察の結果「食糧検査車」だったって報告したはずだよ。
 これもパウエルが得意げに大型スクリーンに映された単なるイラストを指し示しながら説明したものです。専門家でなくても「あの程度なら少し知識があれば書ける」とまず疑ってみるのが筋でしょう。
※イラク攻撃を支持している軍事評論家の江畑謙介氏ですら、移動車については「写真が出るのではと期待したが絵が出ただけ」「あの程度なら少し知識があれば描ける」「イラクの肩を持つつもりは毛頭ないが、音声はでっち上げようとすれば可能だ」「衛星写真についても、撮影時刻がないのが残念だ」「この程度の解像度では何か分からない」等々、疑問を呈しているのです。ところが見出しは「状況証拠『クロ』補強」(朝日2月8日)、なぜそうなるのか、意図的な見出しの付け方です。

 しかしこのエセ情報も、すでにUNMOVICの査察で確認済みのものです。翼賛報道でマヒし、自分で調べる意志も能力も喪失した欧米や日本のマスコミが、大々的に騒ぎ立てていますが、それは実はドイツのマスコミが「イラクが化学兵器の移動実験車を購入した」と報道したのに対して、イラク側が「食糧検査のためにイギリス企業から購入したが、査察団が査察済みだ」と答えたものなのです。
 
 ブリクスUNMOVIC委員長は、この問題が出されると聞き、パウエル演説の前日の2月4日、この問題について発言しました。そこで「2台の食糧実験車は査察されたが、何も見つからなかった」と反論しました。最近アメリカ寄りに傾斜したブリクス委員長がそう言うのですから信憑性は高いでしょう。
※「米の主張はブリクスによって一蹴された。」(US claim dismissed by Blix)Wed Feb 5, 2003
The Guardian http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,889135,00.html

□アメリカこそ生物禁止条約に違反して、密かに生物兵器の開発・製造を大幅に増やしているではないか。
 パウエルは、一昨年のアメリカの炭疽菌騒動を口にしながら、イラクが炭疽菌やボツリヌス菌を兵器化していると、小さなサンプルを大きく上に上げて説明しました。しかしあの騒動は米軍関係者が疑われたはずですし(米の諜報機関か軍部の自作自演かも知れないのです)、遂にアルカイダとの関係も明らかにできなかったではないですか。まるでイラクのやったことであるかのような、または近い将来イラクがあのような事件を起こすと、でっち上げるような説明は、でっち上げも甚だしいと思います。

 アメリカこそ、1995年以降、生物兵器を研究・開発する施設を急増させています。新たに14箇所の施設が増設されているだけではなく、ロス・アラモス研究所やローレンス・リヴァモア研究所など、核兵器研究所まで、生物兵器の研究施設に使用される予定だといいます。特に、9・11以降急ピッチに進み、大半が炭疽菌やボツリヌス菌、エボラ出血熱菌などの極めて危険な施設です。もちろん生物兵器禁止条約に違反する疑惑が指摘されています。
※『選択』2003年2月号。p18。

□かつては核兵器疑惑を騒ぎ立てたのに、今回はなぜそれが脇役なの。ご都合主義じゃないの?
 以上のように今回、パウエルは化学兵器や生物兵器疑惑を最大の眼目に据えました。なぜならこれまで大騒ぎしてきた核兵器開発疑惑が誰も信じてくれないからです。いわゆる「ウラン濃縮の遠心分離装置の部品になる高性能アルミ管」問題です。しかしこれはIAEAのエルバラダイ委員長によって退けられたのです。1月27日の査察団報告で、「このアルミ管はミサイル用だ」と示しました。

 しかも同委員長は、「あと数ヶ月あれば、イラクが核兵器開発をやっていないことが証明できる」と断言したのです。これじゃ、勝負にならないと判断したのでしょう。コロコロ変わるブッシュ政権のデタラメさを、なぜマスコミは批判しないのでしょうか。
※「イラクによる重大な違反みられない=個人的見解でIAEA事務局長」(ロイター)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030130-00000318-reu-int
※「イラクの核兵器開発計画再開、証明できず=IAEA事務局長」(ロイター)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030128-00000934-reu-int

□アルカイダとイラクが関係してたって本当はウソでしょ?米誌によれば取り上げた人物は「イランとの関係が強い」ってよ。
 パウエルはアルカイダのメンバーであるザルカウィがイラク北部で活動していると指摘しました。キャンプ地の写真まで見せて「本当のように見えるだろ」というわけです。しかしイラク北部はクルド人自治区であり、フセイン政権の直接の支配は及んでいないはずです。むしろ、飛行禁止区域を設けて米英が空爆をしている地域であり、クルド人の反フセイン勢力と結び付いている可能性が強いのです。とすれば彼らを傀儡政権に据えようと目論む米の「お友達」じゃないのでしょうか。

 現に、すぐさまウソ八百であることがブレアのお膝元で明らかになりました。「英BBC放送は5日、英米両国が対イラク攻撃の根拠の一つとしているイラクのフセイン政権とウサマ・ビンラディン氏の支援組織アルカイダの関係について、過去の関係は認めながらも『現時点は無関係』との最高機密文書を英国防省情報部門がまとめていたと報じた。だが、この日、英下院での答弁でブレア首相は『両者の関係は存在している』と機密文書の内容と矛盾した発言を行った。」
※<イラク>アルカイダと「現時点は無関係」英機密文書とBBC(毎日新聞)
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200302/06/20030206k0000m030145000c.html
 
 また最新号の「ニューズ・ウィーク」日本版(2月12日号)によれば、ズバリ、ザルカウィは「イラクよりイランの支援を受けている」といいます。「ずっこけスパイ大作戦」という特集でも、ネオ・コンの超タカ派ウォルフォウィッツが率いる国防総省の情報分析チームはフセインとアルカイダとの関係に飛びついているが、CIAはこれを疑問視していると言います。イラク北部のクルド人が持ち込む情報も「信憑性に疑問がある」と報告されています。現にアンサル・アルイスラムという原理主義組織のたれ込みをCIAもイギリスの情報機関も疑問視しているといいます。「有力情報源はペテン師」と言うのです。
※英の財界の雑誌も疑問を投げかけています。「米の主張、根拠に乏しい」=イラク・アルカイダ関係説−英エコノミスト誌 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030208-00000595-jij-int
※翼賛性が強い米の新聞報道でもイラクとアルカイダとの関連については、CIAとFBIの間で対立しているという。「Split at C.I.A. and F.B.I. on Iraqi Ties to Al Qaeda」By JAMES RISEN and DAVID JOHNSTON The NewYork Times February 2, 2003
http://www.nytimes.com/2003/02/02/international/middleeast/02INTE.html

V.


□イラクが大量破壊兵器でアメリカと世界を滅ぼしてしまう?世界最大最強の国家??そこまで言うと滑稽だよ。それはあんたたちでしょ?
 パウエルは、イラクをまるでアメリカやイギリスも小さく見える巨大な怪物のような存在に誇張して描きました。生物兵器は大量に作るわ、化学兵器は大量に作るわ、核兵器も作るわ、ミサイルは大量に作るわ、アルカイダと結託して世界中にテロを仕掛けるわ・・・等々。まるで怪獣映画みたいな話。話の途中でパウエルが真剣に演説するのを聞いてアホらしくなり滑稽にさえ見えてきたのは私たちだけでしょうか。

 パウエルは言います。「フセインは世界最大の脅威だ」と。しかし現実は全く逆です。ブッシュとパウエルのアメリカこそ世界最大の脅威であろうことは、ここで改めて言う必要もないでしょう。
 国土面積で22倍、人口で11.7倍、そして極めつけはGDPで2491倍もの隔絶した圧倒的格差、核兵器でゼロ発と1万発の無限大の格差、また軍事力と軍事費一般での勝負にならない圧倒的格差−−これには湾岸戦争以来の12年に渡る長期の経済制裁の影響は十分考慮されていません。国連人道調整局の責任者たちが相次いで内部告発をして辞任するほどの、非人道的な制裁なのです。国力も経済も軍事も疲弊し荒廃しきっているのです。イラクが世界最大の脅威などウソもウソ、大ウソです。
※「Is Iraq A Threat to the United States?」by Lawrence McGuire Dissident Voice January 27, 2003
http://www.dissidentvoice.org/Articles/McGuire_Iraq.htm

□「ゲームは終わり」だって?!軍事脅迫と皆殺し戦争をゲーム感覚でやる狂気の戦争屋ブッシュ。
 とにかくブッシュ政権は異常です。戦争と支配欲に飢えた狂気の政権と断言して良いでしょう。イラクを「悪の枢軸」に据え、戦争を示唆して1年、本格的に戦争準備に入って半年、現地に派兵を開始して数ヶ月、この間ブッシュはずっとイラク民衆を脅迫しているのです。6日にはブッシュは「ゲームは終わりだ」と言いました。(彼にとっては侵略戦争もイラク市民の皆殺しもゲームなのでしょう。全く軽蔑すべき人物です)それ以外にも「時間はもうない」「最後のチャンスだ」「我々は必ず勝利するぞ」「アメリカは強いんだ」等々。−−「さぁやるぞ」「どうだ怖いか」「これでも俺に逆らうか」と言わんばかり。イラク民衆の胸に銃を突き付け、ゲーム感覚で威嚇と脅しを楽しみ、戦争を弄んでいるのです。文字通り「ごろつき」です。こんなことが許されてなるでしょうか。
※「欺まんのゲームは終わりだ」=イラクに事実上の最後通告−米大統領(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030207-00000356-jij-int

□過去に大量破壊兵器を最もたくさん使ったのがイラクだって?アメリカじゃないの。ひどすぎるよ、そのウソ。
 パウエルは演説も終わりに近いところで奇妙なことを口走りました。これまで大量破壊兵器を最も使ったのはイラクだと言ったのです。こんなウソはありません。

 広島・長崎で人類史上初めて原爆を使用し何十万人もの罪なき一般市民を大量虐殺したのはイラクですか?朝鮮戦争やベトナム戦争で、核兵器使用寸前にまで至ったのはイラクですか?ベトナムで枯れ葉剤という正真正銘の化学兵器を大量に使用したのはイラクですか?それらは戦争犯罪であるにもかかわらず、知らぬ存ぜぬで、開き直っているのもイラクですか?

 湾岸戦争で劣化ウランという「新型の核兵器」を大量使用し、多くのイラク人と子どもたちを放射線障害で苦しめ、国土を放射能で汚染したのもイラク自身でしょうか?旧ユーゴでこの同じ劣化ウランを使ったのもイラクでしょうか?

 そしてまたこれだけ非難されたにもかかわらずあのアフガニスタンで再び劣化ウランを使った疑惑が浮上していますが、それもイラクの仕業ですか? 更にまた、差し迫るイラク戦争で、大量の劣化ウランを使おうとしているのもイラクなのですか?
 更に、マスコミがどこも取り上げないので闇に葬られている南米コロンビアでの枯れ葉剤の大量使用も、これまたイラクの仕業なのですか?


W.


□イラクがアメリカに攻めたわけでもないのに、なぜアメリカが「自衛戦争」と言えるの?それって正真正銘の侵略戦争じゃないの。
 一体イラクが何をしたというのでしょうか?かつてクウェートを攻めたように、隣国を攻めたわけではありません。攻めようとしているのでもありません。もちろんアメリカやイギリスを攻めてもいないし、攻めようとしているのでもありません。
 ブッシュやパウエルはしきりに、査察へのイラクの対応を「ウソばっかり」「信用できない」と言いますが、仮に「ウソをついた」としても、それが攻撃と大量殺戮の正当な根拠になるのか。もちろん、否です。

 国際法は、特定の国が他国に現実に侵略した時、あるいは侵略が差し迫った時に限って「自衛権」の発動を認めているだけです。これが2つの世界大戦の甚大な犠牲者と被害から引き出された人類最大の教訓なのです。ところがブッシュのアメリカは、今回のイラク攻撃で、この国際法と国際秩序を根底から覆そうとしています。イラクはアメリカも中東の周辺諸国もどこも攻めていない。「疑い」と「難癖」だけで一方的な攻撃を加えようとしているのです。「先制攻撃戦略」とか何とか言っていますが、要するに正真正銘の侵略戦争なのです。

□「疑惑」や「違反」ではイラク攻撃を正当化できない。アメリカに国連や国際法を力づくでつぶす権利などないはずだ。
 もし国連安保理が、安保理決議1441の「違反」だけで、あるいは新しい「武力容認決議」を強行すれば、それは安保理が国連、国連憲章、国際法全体を、アメリカの言いなりになって暴力的にぶっ潰したと言うことです。まさしく「国連の死」になるでしょう。

 「隠蔽工作」でも「科学者聴取の妨害」でも「偵察機使用の拒否」でも「査察への非協力」でも構いません。「重大な遺漏」でも「重大疑惑」でも構いません。百歩譲って仮に「証拠」があっても構いません。これが果たしてイラクの何の罪もない一般市民を何十万人、何百万人も犠牲にする正当な理由になるのか。政治と経済を根底から破壊し尽くす正当な理由になるのか、です。

□国際法を無視し国民を騙すマスコミの危険な論理:「疑惑に答えなければ開戦やむなし」。
 私たちは欧米の、また日本の大手メディアが「この疑惑にきちんと答えよ」と騒ぐことを厳しく批判します。なぜ「疑惑に答えなければ・・・平和的な道がなくなる」のか。むしろメディアこそが答えるべきです。大手新聞が主張する「疑惑に答えねば開戦やむなし」は、国連憲章と国際法のどこに依拠するのか?条文や条項を指し示して欲しいものです。まるでブッシュの侵略の論理そのものじゃないですか。

 まさにこうした主張や議論は、国民は国際法など何も知らないという彼らの思い上がりです。しかし国民は知っています。こんなことで一国を滅ぼすことなどできない、これだけでは攻撃できない、軍事制裁ができないというのが国連憲章であり、国際法の最も重要な原則なのです。

 私たちは、現在の国連査察の直接のきっかけになった安保理決議1441を真っ向から批判し、その危険性を訴えました。第一に、この決議がイラクの国家主権とイラクの人々の尊厳を全面的に否定するものだからですし、第二に、決議の随所に侵略への引き金になる文言・項目があるからです。しかし同時に、この決議は米英の「自動開戦」を容認するものではなく、単に安保理の「開催」と「報告」を結論とするに過ぎません。ここに国際的な反戦運動と反戦世論が反映しているということを指摘したいと思います。
※私たちの論評を参照:「ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(]W)国連安保理決議1441に抗議する−−ブッシュは「強制査察」を開戦の口実にするな」

 この1441の弱点を補おうと、ブッシュやパウエルやブレアは、「新たな国連決議」を作ろうとしています。私たちはこのような「武力行使決議」に断固反対します。もちろん米英の単独攻撃にも大反対です。

□なぜ北朝鮮と同じように平和的解決ができないの?全然理解できない。
 誰もが考える疑問、それはあれだけアメリカに挑戦的に振る舞っている北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に対しては、「平和的解決しかない」「軍事的解決は最後の手段」と言いながら、なぜイラクにはこれと同じように、粘り強く対話と平和的外交的解決を追求しないのか、です。

 私たちは、「イラク危機」も「北朝鮮危機」も、ブッシュ政権が作り出した「作り事」だと断じます。危機のないところに危機を人為的に作り出し、軍産複合体と兵器産業をがっぽり儲けさせたり、石油を奪おうとしているのです。この意味でも、ブッシュ政権のアメリカは21世紀を戦争と虐殺の暗い世紀に変えてしまう人類の敵なのです。

□肝心なことを隠してるよ、パウエルさん。本当の理由(石油と軍需、支配欲)を言わないなんて冗談きついよ。
 Znetというアメリカのウェブサイトで、パウエル演説の論評に面白いものがありました。本質をズバリと突く論文です。「昨日のパウエル国務長官が述べたことは世界中の注目を浴びたが、彼は決定的なことを言わなかった・・・それはオイルだ」と。
※「Powell Before the U.N.: Sale or No Sale? 」February 6, 2003 by the Philadelphia Inquirer
by Robert Jensen  http://www.commondreams.org/views03/0206-10.htm

 私たちも同感です。ブッシュやパウエルらの【本当の狙いその1】は“石油”支配と“軍需”で金儲けすることです。イラクの石油資源の略奪であり、中東石油を支配するという野望であり、軍産複合体にビジネスチャンスを与えることなのです。これじゃあまりにも露骨すぎます。だから「大量破壊兵器」の査察や武装解除を言い出したのです。元々アメリカは国連査察を拒否してきたのですが、国連を巻き込むには「石油が欲しい」では通用しないからです。
※詳しくは私たちのパンフレット「イラク:石油のための戦争−−ブッシュはなぜイラクを攻めたいのか」参照。

 【本当の狙いその2】は、世界を征服する、言いなりにさせるということです。「アメリカ帝国」と軍事的覇権は、ブッシュ政権の高官たち自身が正々堂々と主張しています。一昨年の同時多発テロ事件以来(この事件そのものもブッシュ政権は事前に知っていたのではないかと疑われている)、ブッシュ政権は、それを逆手にとって、世界中に侵略戦争を次々と拡大し、軍事力を振りかざし軍事的支配、軍事的征服の野望を露骨にしているのです。
※ブッシュ政権を乗っ取った核・軍産複合体の侵略的欲望の物質的基礎については私たちのパンフレット「ブッシュ政権と軍産複合体」参照。

 現にパウエルは2月6日、フセイン政権打倒の「成功により、中東が、非常に良い方向に根本から再編され、米国の国益増進につながる可能性がある」「中東和平にもつながる」と豪語しました。つまりアメリカとイスラエルが中東を征服することを歌い上げたのです。世界を「帝国主義と植民地主義の時代」へ100年以上も引き戻す歴史的反動の宣言です。
※「イラク攻撃、中東再編や国益につながる可能性=米国務長官」(ロイター)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030207-00000042-reu-int


X.


□パウエル報告の真偽を確かめようともしない堕落した日本のマスコミ。
 こんなウソとデタラメのパウエルの最大の応援団の一つが、日本のマスコミです。読売や産経などは論外として、朝日新聞ですらパウエル報告を、大きく「機密の山 強硬論共鳴」(2月7日)とほめるのですから。しかしこれまで見てきたように、「機密の山」どころか「ウソとはったりの山」だったのです。マスコミは、反戦と非戦の世論が根強い日本の国民意識からかけ離れた好戦的な論調を平気で垂れ流しているのです。

 パウエル報告直後の見出しをザッと拾えば、そのひどさがよく分かります。「推定有罪印象づけ」「米、イラク違反証拠提示」「米、査察継続論封じ込め アルカイダ関係言及」(以上朝日新聞)。「化学兵器移動車18両」「イラク違反 米が提示 査察前隠ぺい明白」(以上読売新聞)。「査察前に兵器隠匿 米、イラクの違反証拠提示 核兵器も開発」「イラク“釈明”限界か」「イラクの欺瞞 北部にアルカイダ/炭疽菌 米が糾弾」(以上産経新聞)等々。

□尻尾を振って「支持」したのはアメリカべったりの小泉政権の超タカ派たちだけ。
 小泉首相は2月6日、「疑惑はさらに深まった。国際社会の一員として、米国の同盟国として責任ある対応をしていかなければならない」と述べ、事実上イラク侵略「支持」を表明しました。福田官房長官も「我が国がどちらの立場に立つかは明白だ」と「支持」を示しました。川口外相はもっと踏み込んで、「多国籍軍への自衛隊派遣」を主張し、「ニーズはある。日本国としての議論が必要だ」と戦闘への直接参加をぶち上げました。外務省や防衛庁がブッシュの侵略に追随して「イラク参戦包括法」を策定中です。

 これらの動きは全て、イラク攻撃反対の国内世論に真っ向から挑戦するものです。小泉政権の体質そのものが、ブッシュ政権と同じような侵略的なものであることを如実に表しているのです。一刻も早く倒さなければ、日本をどこへつれていくか分からない。それが小泉政権です。

□今が日本と世界の反戦平和運動の踏ん張りどころ。武力行使決議に反対し、米英の単独攻撃にも反対する広範な世論を作ろう。
 もちろん今後どうなるか予断を許しません。フランスやロシアがアメリカと真っ正面から対決するとは思えないからです。ブッシュ政権のごろつき連中の本音は「ガツンとやればくっついてくる」ということです。最終的にブッシュの暴走を止める力は、世界中の民衆の反対運動だけです。最後の最後まであきらめずに、戦争を阻止する闘いを強めましょう。




ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢:

(T) カナナスキス・サミットと米ロ「準同盟」化の危険性
    −ブッシュ政権によるイラク攻撃包囲網構築の到達点と反戦平和運動の課題について−

(U) 米中東政策の行き詰まりと破綻を示す新中東「和平」構想
    −−ブッシュ政権がなかなか進まない対イラク戦争準備に焦って、
       「仲介役」の仮面すら投げ捨て公然とシャロンの側に立つ−−

(V) イラク攻撃に備え、先制攻撃戦略への根本的転換を狙うブッシュ政権

(W) 国際法・国際条約・国連決議を次々と破り無法者、ならず者となったブッシュのアメリカ
    −− 鏡よ鏡よ鏡さん。この世で一番のならず者はだーあれ −−

(X) [資料編] NHK ETV2000 より 「どう変わるのかアメリカの核戦略〜米ロ首脳会談を前に」

(Y) 米ロ首脳会談とモスクワ条約について
    −−米ロ「準同盟国」化で現実味増したブッシュの先制核攻撃戦略

(Z)「兵器ロビー」
    20年ぶりに復活する米軍産複合体

([)ブッシュ政権の露骨な戦争挑発行為と対イラク侵攻計画
        −−対イラク戦争阻止の反戦平和運動を大急ぎで構築しよう

(\)ブッシュのイラク攻撃と国連査察問題
        −−再び急浮上しようとしている国連査察の実態を暴く

(])イラク「無条件査察」受け入れ後の米の対イラク戦争をめぐる情勢について
        −−国連を舞台にした二転、三転の熾烈な外交戦、それと並行して進むブッシュの戦争への暴走

(]T)絡まり合うイラク情勢とパレスチナ情勢−−−
        イスラエル軍が再び議長府を攻撃

(]U)こんなウソとデタラメがイラク攻撃の論拠になるのか?
    −−国連と世界各国の民衆をバカにする9/12ブッシュ国連演説と9/24ブレア報告−−

(]V)なぜイラクの犠牲者について語られないのか?
    −−「10.7 一周年 ブッシュの対イラク戦争に反対する大阪集会」基調報告より−−

(]W)国連安保理決議1441に抗議する
         −−ブッシュは「強制査察」を開戦の口実にするな

 国連安保理決議1441に講義する(PDFファイル)

(]X)日本のマス・メディアと対イラク戦争−−−−−−−−
         ブッシュ政権に同調し対イラク戦争を煽り始めた日本のマス・メディア

(]Y)翼賛報道体制に抵抗する2人の気骨あるジャーナリスト