ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(]T) |
絡まり合うイラク情勢とパレスチナ情勢−−− イスラエル軍が再び議長府を攻撃 ○イスラエルはアラファト議長の監禁を即刻解除せよ。 ○外出禁止令を破って抵抗するパレスチナ人民に連帯を。 ○対イラク戦争阻止とパレスチナ人民連帯の結合を。 |
(1)はじめに−−ブッシュのイラク攻撃準備と絡まり合うパレスチナ情勢。パレスチナ人民連帯の闘いと対イラク戦争阻止の闘いを結合しよう!
■新しい情勢。イラク情勢とパレスチナ情勢が絡まり合う。
シャロンは、昨年12月から今年6月まで約半年間にわたり、パレスチナを徹底的に攻撃し破壊し焼き尽くし、殺戮の限りを尽くしました。パレスチナ民衆の抵抗もむなしく一旦は沈黙を強いられました。ブッシュが対イラク攻撃に本格着手を始めたのはこの時期以降です。ブッシュのイラク侵攻は、パレスチナ情勢の沈静化の下で初めて成功裏に進められるのです。
(ロイター)
しかし今回のシャロンの自治政府攻撃は中東全域に新しい情勢と勢力関係を出現させつつあります。イラク侵攻が切迫する中でのパレスチナ情勢の緊迫化は、ブッシュ政権の最も恐れることなのです。なぜか?それは中東全域で、反シャロン・反イスラエルのパレスチナ連帯の闘いの高揚と、反ブッシュ・反米の対イラク戦争阻止の闘いの高揚が合流し結合することになるからです。パレスチナ攻撃、それへのパレスチナ民衆の抵抗は、敵と味方を鮮明にふるい分けるでしょう。中東=石油支配の野望を隠そうとしない米・イスラエルの侵略者同盟を鮮明に浮かび上がらせるでしょう。
■対イラク戦争への参戦を狙うシャロン。
シャロンは、「イラクの大量破壊兵器の危険性」を煽り、細菌兵器へのワクチンの対応や毒ガス兵器へのガスマスク配布などのパフォーマンスを繰り返して、対イラク戦間近の緊張感を醸成することに奔走してきました。またイラクからのミサイル攻撃に対しては湾岸戦争の時のようには黙っていない、必ず報復すると繰り返し言明し、迎撃ミサイルの実戦配備を強化しています。シャロンは、イスラエル軍をイラク攻撃に参戦させようと挑発しているのです。
米のイラク攻撃はイスラエル・パレスチナ戦争だけではなく、イスラエル・イラク戦争をも勃発させ、中東戦争へ拡大する危険をはらみ始めています。
米の対イラク戦争をも自らの延命と野望に利用しようとするシャロン政権と、対イラク戦争実現という一点だけに集中し、イラク問題をパレスチナ問題や中東問題全体から切り離そうとするブッシュ政権との矛盾も露呈しはじめました。
※イラクから攻撃を受けた場合は報復する=イスラエル首相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020922-00000442-reu-int
現在、全世界の反戦平和運動は、ブッシュ政権による対イラク戦争を阻止するために力を結集しようとしています。パレスチナ連帯の闘いを、対イラク戦争阻止の闘いと結合することが今後ますます重要になっていくでしょう。
(2)アラファト議長殺害または追放を策謀した議長府破壊。
■シャロンはアラファト議長の殺害も辞さず。
9月20日、イスラエル軍はパレスチナ自治政府総合庁舎を攻撃し、アラファト議長の住居棟を除く大半の建物を破壊しました。ここ6週間なかった対イスラエル自爆テロが2件連続して起こったことへの報復と説明されていますが、事実は全く異なります。日本での新聞報道ですら、真の目的はアラファト議長の追放にあるのではないかと報じられています。
イスラエル軍は大型ブルドーザーで渡り廊下や正面出入り口を取り壊した後、本棟2階に戦車砲撃や銃撃を加えました。アラファト議長は直前まで2階におり、砲撃時には1階に降り土ぼこりをかぶったが無事だったと言います。しかしこの状況からすると議長殺害やむなしで脅しに掛かっていることは見え見えです。
考えてもみて下さい。「暫定自治政府」はれっきとした国家であり、アラファト議長は選挙で選ばれた元首です。このように軍事的に包囲しその中で元首や政府要人たちを逃げ回らせ、人間狩りをするように狙い撃ちにしてスリルを味わうかのような辱め方を、私たちは断じて許すことは出来ません。
※<パレスチナ情勢>イスラエル軍、議長府の本棟を攻撃
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020921-00001024-mai-int
シャロンの真の目的は、1)「戦時」を持続させて挙国一致政権を長期にわたり維持すること、2)如何なるパレスチナ国家の基盤形成をも妨害し叩き潰すこと、にあります。
しかし、事態はシャロンの思惑を越えて動き出そうとしています。まず第一に、パレスチナ人民の大衆的抗議行動が組織的に行われはじめました。それに力を得て、アラファト議長と自治政府は徹底抗戦の姿勢を鮮明にしています。第二に、それに即応してイスラエル国内のパレスチナ連帯行動が再活性化しはじめました。第三に、アラブ諸国で民衆の連帯行動が活発化しはじめて、アラブ諸国政府がイスラエル非難を強めています。第四に、イスラエルに対する国際的な圧力が再び強まりはじめました。
■ブッシュは再びシャロンを援護。国連安保理で非難決議を棄権。
ブッシュとシャロンはまたもや無法者同士見事な連係プレーを見せました。9月24日、国連安保理はイスラエル軍に対しパレスチナ自治区からの撤退と自治政府議長府包囲の中止などを求める決議案を賛成多数(14ヶ国)で採択したのですが、米国だけが棄権したのです。
一体これはどういうことなのでしょうか。経済制裁下にあり、現在まだどこをも侵略していないイラクが米英などから袋叩きに会い、武力制裁の脅しが加えられています。一方イスラエルはやりたい放題。元首殺害未遂もOKなのです。メチャクチャな「二重基準」ではありませんか。
※<国連安保理>パレスチナ議長府包囲中止を決議 米国は棄権
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020925-00000027-mai-int
■和平を望むパレスチナ。戦時を望むシャロン。
和平へ向けた真剣な努力は、パレスチナの側から行われ続けてきました。PLOと自治政府の中心勢力であるファタハは、イスラエル民間人に対する無差別攻撃停止を宣言しました。ハマスとイスラム聖戦は同調しないことを言明しましたが、事実上6週間にわたって、対イスラエル自爆テロが停止していました。これは、今回のインティファーダが2000年9月末から始まって以来最長の「自爆テロのない」「平穏な」期間でした。
(「SUSTAIN」HPより)
しかしその間、シャロンとイスラエル軍は、ガザ地区への部分的侵攻を繰り返し、自治区全域にわたる軍事封鎖の解除をさまざまな理由を付けて行わずにきました。日常的な小規模の軍事侵攻によるパレスチナ民間人の犠牲者の急増は、イスラエル国内でも問題視されるほどでした。
どちらが和平を望み、どちらが戦争状態を望んでいるか。それが手に取るように明らかな状況が6週間にわたって現出していたのです。
8月はじめ、ファタハを中心に、ハマスやイスラム聖戦も含めて、イスラエル民間人に対する無差別攻撃を一方的に停止しようとした直前に、F−16によるガザ地区住宅密集地域への1トン爆弾空爆が行われました。
それに対する国際社会のイスラエル非難は一時的なものにとどまり、封鎖解除や占領終結へ向けた真剣な努力は行われませんでした。
しかしその後、ファタハは、イスラエル民間人に対する攻撃停止を宣言し、和平へ向けた真剣な努力を継続しました。
その結果として現れた状況は、イスラエル市民の束の間の安堵と、「戦時」を呼号できなくなったシャロンの焦りと、国際社会の関心の低下と、それをよいことにイスラエルが軍事封鎖を解除せず、日常的に小規模の軍事侵攻を繰り返すという事態でした。そのたびにパレスチナ民間人の死傷者が出たのは言うまでもありません。
※「ガザの虐殺」
※9.10のファタハの宣言。イスラエル・インディミーディアより。
http://www.indymedia.org.il/imc/israel/webcast/37134
■如何なる形のパレスチナ国家の基盤形成をも叩き潰そうとするシャロン。
今回のイスラエル軍による議長府破壊攻撃は、イスラエルとアメリカが執拗に要求してきた自治政府の「民主的改革」が、重要な山場を迎えている時に行われました。6月に行われたアラファト議長による内閣改造に対してパレスチナ評議会が不信任をつきつけ、ついに9月11日、アラファト議長は閣僚全員の辞表を受理し、改めて組閣し直すことを余儀なくされました。限られた条件のもとではあれ、パレスチナ人民の民主的創意は、自治政府を真に民主的なものにしていく方向で一歩を踏み出しました。
イスラエル軍による議長府攻撃は、これまでアラファト議長が拒み続けてきた首相職を創設することを決定づけるファタハ中央委員会が開かれる直前であったのです。イスラエル政府とイスラエル軍の高官レベルでは、そのような状況にあることは知れわたっていました。したがって、今回の軍事侵攻は、自分たちの手下のような(例えばアフガンのカルザイのような)部分が出てきそうにないことを知り、パレスチナの自主的民主的な国家基盤強化の努力を封殺することにあったのです。
イスラエルとアメリカが要求してきた「民主的改革」とは、自分たちの思い通りになる「傀儡政権」を作るということでしかなかった以上、人民に依拠し支えられたパレスチナ国家の強固な基盤が形成されたり、真に自主的民主的な改革がたとえわずかでも進展しては困るのです。だからシャロンは親シャロン・グループが政権に着くまで(実際には現在のパレスチナ民衆の中から親シャロン勢力など出てくるはずがない)攻撃の手を緩めないでしょう。
※イスラエル・インディミーディアの by Akiva Eklar, Ha'aretz 9.22
http://www.indymedia.org.il/imc/israel/webcast/37911.html
(3)パレスチナ人民の反撃と中東全域に広がるパレスチナ人民連帯の大衆的諸行動
■外出禁止令を破って立ち上がるパレスチナ人民の大衆的抗議行動
9月21日深夜から、パレスチナ人民の大衆的抗議行動が、イスラエル軍による外出禁止令と軍事的締めつけの強化に抗して、西岸とガザ地区のあらゆるところで一斉に始まりました。いたるところで数千人から数百人の大衆が街頭に出て抗議のデモを行ない、イスラエル軍と対峙しました。
イスラエル軍は、平和的なデモによる抗議行動にも実弾で発砲し、少なくとも4人以上の死者と各地で数多くの負傷者が出ています。
9月22日の情報では、ラマラで約200人が議長府へ向けて行進し、イスラエル軍の実弾発砲でデモ参加者2人が死亡し30人以上が負傷。トゥルカレムでは、数千人がデモ行進し、1人死亡、数人が負傷。ナブルスとバラタ難民キャンプでは、数千人がイスラエル軍と対峙、1人死亡。ベツレヘムでは、数千人が教会とモスクの鐘の音が鳴り響く中をデモ行進。ヘブロンで数百人。その他西岸の都市、村、難民キャンプで同様のデモ。ガザ地区では、ジャバリア難民キャンプ、ベイト・ハヌーン、ベイト・ラヒア、テル・アル・ザタール、ジャバリア市、などで数千人が街頭デモ。ガザ地区南部のハン・ユニス、ラファでもイスラエル軍との緊迫した対峙。ラマラでは、24日に1000人以上が抗議のデモを行ない、イスラエル軍は遠巻きに監視するだけだったと伝えられています(9/24「朝日」)。等々。
※イスラエル・インディミーディアの Hear Parestine 9/22
http://www.indymedia.org.il/imc/israel/webcast/37910.html
■イスラエル国内の反戦平和運動の素早い連帯行動。
9月22日には、グッシュ・シャロムが約200人の平和運動活動家を結集し、テル・アビブで国防省までデモ行進する抗議行動を組織しました。これは、今回のイスラエル軍の軍事行動に抗議するイスラエル国内最初の大衆的行動です。グッシュ・シャロムには、8月初めから政府、軍、マスコミが一体となった「裏切り者」・「反逆者」攻撃が行われました。それを撃退しながら今回の事態にいち早く応じて、グッシュ・シャロムは、イスラエル国内の反戦平和運動の再活性化の先頭に立っています。
9月24日には、「ハダッシュ」が呼びかけてナザレで抗議行動が予定されています。25日26日には、「女性連合」がかねてから呼びかけ準備してきた討論会とイスラエル軍監視行動が行われます。グッシュ・シャロムは、27日に新たな抗議行動を呼びかけています。これらの闘争については、現地からの報告が発信され次第、「反占領・平和レポート」で報告していきます。
(「グッシュシャロム」HPより)
■アラブ諸国政府を突き上げるアラブ諸国民衆のパレスチナ連帯闘争と反イスラエル反米闘争
アラブ諸国人民のパレスチナ連帯闘争が再活性化しはじめ、アラブ諸国政府を揺さぶっています。
レバノンでは、パレスチナ難民キャンプでイスラエルヘの抗議集会が大衆的に行われました。モロッコのユースーフィ首相は、新聞インタヴューで「地域情勢の悪化がアラブ社会で指導者らに対する暴力行為を誘発する」可能性を指摘し、ヨルダンのアブドラ国王は、「治安悪化とイスラエルの軍事行動の激化」を食い止めるための外交努力を続ける意向を、アラファト議長に電話で伝えたと報じられました。エジプトのムバラク大統領は、イスラエルの軍事行動を止めるようブッシュ大統領に緊急メッセージを送ったと伝えられています。
アラブ諸国人民の闘争は乏しい情報の中で詳しくはわかりませんが、これらの親米アラブ諸国指導者たちの慌てぶりは、アラブ諸国で人民の大衆的動きがあることを推察させるに十分です。中東地域全域で反イスラエル・反米闘争が大きくなればなるほど、中東の親米政権や湾岸の王政諸国の為政者たちは、対イラク侵攻でブッシュに屈服しにくくなるでしょう。
2002年9月25日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢:
(T) カナナスキス・サミットと米ロ「準同盟」化の危険性
−ブッシュ政権によるイラク攻撃包囲網構築の到達点と反戦平和運動の課題について−
(U) 米中東政策の行き詰まりと破綻を示す新中東「和平」構想
−−ブッシュ政権がなかなか進まない対イラク戦争準備に焦って、
「仲介役」の仮面すら投げ捨て公然とシャロンの側に立つ−−
(V) イラク攻撃に備え、先制攻撃戦略への根本的転換を狙うブッシュ政権
(W) 国際法・国際条約・国連決議を次々と破り無法者、ならず者となったブッシュのアメリカ
−− 鏡よ鏡よ鏡さん。この世で一番のならず者はだーあれ −−
(X) [資料編] NHK ETV2000 より 「どう変わるのかアメリカの核戦略〜米ロ首脳会談を前に」
(Y) 米ロ首脳会談とモスクワ条約について
−−米ロ「準同盟国」化で現実味増したブッシュの先制核攻撃戦略
(Z)「兵器ロビー」
20年ぶりに復活する米軍産複合体
([)ブッシュ政権の露骨な戦争挑発行為と対イラク侵攻計画
−−対イラク戦争阻止の反戦平和運動を大急ぎで構築しよう
(\)ブッシュのイラク攻撃と国連査察問題
−−再び急浮上しようとしている国連査察の実態を暴く
(])イラク「無条件査察」受け入れ後の米の対イラク戦争をめぐる情勢について
−−国連を舞台にした二転、三転の熾烈な外交戦、それと並行して進むブッシュの戦争への暴走