ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(U)
米中東政策の行き詰まりと破綻を示す新中東「和平」構想
−−ブッシュ政権がなかなか進まない対イラク戦争準備に焦って、「仲介役」の仮面すら投げ捨て公然とシャロンの側に立つ−−


2002年7月5日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局


(1)カナナスキス・サミットと急場しのぎで打ち出された新中東「和平」構想。

 ブッシュ大統領は、サミット開催直前の6月24日にドタバタで新中東「和平」構想を発表し、それをサミットの中心議題に押し上げました。しかし、この新構想は、時間をかけてじっくり真剣に「中東和平」を推進することを目指すものではありません。対イラク戦争包囲網作りがなかなか進まなくて焦るブッシュ政権が、業を煮やして「仲介役」の仮面すら投げ捨てて打ち出した急場しのぎの構想なのです。

 アメリカは、サミットで対イラク戦争を直接中心テーマにすることはできませんでした。その前段階として、中東「和平」構想を発表し議論したわけですが、その中身も実現可能性も疑われるいい加減なものでした。かといってそれを正面切って批判する首脳も誰一人おらず、強引なアラファト排除だけが弱々しく「批判」されました。アメリカのユニラテラリズム(単独行動主義)を全世界が容認し、無理なこと不可能なことでも、表向きアメリカの主張を尊重し調子を合わせるという奇妙な「翼賛体制」が、サミットでも明らかになりました。

※イスラエルの平和運動家、グッシュ・シャロムのウリ・アヴネリ(Uri Avnery)氏はその論説「裸の王様」(The Emperor's Clothes)で、デタラメこの上ない提案であることを知りながら、ブッシュ王様には面と向かっては何も批判できず逆に賞賛さえする西側諸国の面々を痛烈に揶揄して、このアンデルセンの童話をもじりました。
http://www.gush-shalom.org/archives/article200.html

※G8、パレスチナには機構改革と公正な選挙が必要との認識で一致
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020628-00000810-reu-int

 しかし私たちの考えでは、この「翼賛体制」は一皮むけば非常に脆弱なものです。対アフガン戦争の大きな山場を越してからは、「9・11」以降の「テロ包囲網」にも綻びが見えてきました。そんな矢先、5月の米ロ首脳会談と今回のサミットでロシアを懐柔し取り込むことに成功し「テロ包囲網」を再構築しようとしたわけです。ブッシュ政権にとって、あとは中東・パレスチナ問題でアラブ諸国政府を黙らせることさえできれば、対イラク戦争準備が大きく前進すると考えているのです。とにかく強引に事を進めれば他の連中は後から付いてくるという経験則を身に付けてしまったのです。出てきたのはシャロンの言い分そのままのものでした。
 今はブッシュ政権のユニラテラリズムに西側諸国全体が渋々黙って付いて行っている状況に過ぎません。無理が通っている分だけ、一旦矛盾が噴出すれば崩れやすいのも事実です。


(2)新構想の目玉はアラファト議長の排除。国際法無視の植民地主義者の論理。

 ブッシュは、サミットでは欧州各国首脳が新構想を歓迎したと発表し、アラファト退任に同調できないとの声があるのは些末な問題だとして表面をとりつくろいました。
 パウエル国務長官は、6月25日の前言を翻し、舌の根も乾かない6月30日に、アラファト再選の場合の対応について「新しいアプローチは期待できない」と排除を要求しました。「テロに取り組まない政権は相手にできない」とのライス大統領補佐官の発言と合わせて、ブッシュ政権全体がアラファト議長追放で一致したのです。アラファト体制を前提とするこれまでの米の中東政策の根本的な転換です。

※米国はアラファト議長と今後も接触しない=国務長官
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020701-00000024-reu-int

 ブッシュ提案は次の通りです。
@パレスチナが新指導部を選び、新たな制度を導入し、イスラエル、エジプト、ヨルダンとの安全保障上の取り決めを確保できれば、米国は境界線と主権の一部について暫定的なパレスチナ国家の樹立を支持する。
A民主主義、市場経済、テロ反対を基本とする新たな政治・経済制度の確立など「表面的でない改革」を求める。立法権、司法権、地方行政権を独立させる新憲法の制定、年内の地方選挙やその後の国家レベルの選挙を要求する。
B最終的な国境線画定やエルサレムの取り扱い、パレスチナ難民の将来などはイスラエルとパレスチナの交渉に任せるが、「今後3年以内」に合意するだろう。
Cイスラエルに対しては、パレスチナとの一連の衝突が始まった00年9月末のラインまで軍を撤退させること。最終的には国連決議が求めている通り、67年の第3次中東戦争による占領地域からの撤退が必要。ユダヤ人の入植拡大の中止。
Dアラブ諸国には、イスラエルとの外交、経済関係の強化、パレスチナのハマス、イスラム聖戦やレバノンのヒズボラなど過激派組織への支援停止。

※<中東情勢>新和平構想を発表 ブッシュ米大統領
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200206/25/20020625k0000e030037002c.html

 しかし新鮮味のあるものは何もなく、ただこれらの構想全体の前提条件がアラファト議長の排除にあることが明らかになりました。つまりブッシュの新提案とは、アラファトの追放だということなのです。アラファトの親米親イスラエルでは不十分だ。もっと従属的、もっと服従する親米親イスラエルの指導者を選ばねば一切の対応を拒否するというのです。

 これのどこが和平なのでしょうか。こんな無法で理不尽なことが許されてよいのでしょうか。こんなものが新聞・雑誌やTVなどで和平構想として扱われること自体が異常で異様なことです。一昨年のクリントン政権末期に行われたキャンプデービッドでの和平交渉がまともに見えるほど、滅茶苦茶なものです。
 まず第一に、民族自決権の原則を完全に否定するものです。パレスチナ人の指導者はパレスチナ人自身が決める。こんなことは当たり前のことです。もしアメリカ大統領選出の権限を他国の指導者が指図すればブッシュは何と言うつもりなのでしょうか。他国にはそのような傲慢不遜は許されないが、アメリカだけは許されると言うつもりなのでしょうか。露骨な植民地主義者の論理です。
 第二に、シャロンの対パレスチナ全面戦争を全面的に肯定するものです。パレスチナ人を圧倒的な武力で攻撃し暴虐の限りを尽くしているイスラエル軍、その再占領、殺戮と破壊、封鎖、インフラと生活に対する破壊を支持するものです。イスラエルの暴虐をそそのかしながらパレスチナ人に「指導者を変えろ」「民主的改革をせよ」と要求するというのは、一体どういう神経なのでしょうか。
 第三に、根本原因である占領を事実上容認していることです。問題解決への唯一の道は1967年国境までのイスラエル軍の無条件撤退と入植地の完全解体撤去でしかあり得ません。これこそ公正な和平と恒久平和へ向けた話し合いが欺瞞的なものとならないための根本条件なのです。
 このようにブッシュの新提案は、問題の真の解決へ向けて前進できる内容は何一つなく、イスラエルの無法・暴挙を追認しシャロンの要求を受け入れて、その延命に手を貸し支援することで、対イラク戦争への強硬突破をはかろうとするものに他なりません。


(3)シャロンの満足とイスラエル世論の懸念。

 当然のごとくシャロンは、ブッシュ演説に大いに喜び満足感を表明しました。リブリン通信相は「リクード党員が書いたような演説」と評し、ナベ無任所相は「アラファト時代の終わりを告げるものであり、イスラエルの勝利である」とコメントしました。ベンエリエゼル国防相も歓迎声明を出しました。
 シャロンは、昨年12月初め以来、パレスチナ自治政府、アラファト議長、PLO諸組織との戦いを、アメリカのアフガニスタンでの「テロとの戦い」と同じだと宣言し、アメリカと世界にこの追認を要求してきました。今回のブッシュ演説は、シャロンに遂にアラファト体制打倒のお墨付きを与えたことになります。シャロンの喜びは、まさにこの点にあると言わねばなりません。

 イスラエルのメディアは、シャロン政権の外交上の勝利と報道し、「これ以上望むべくもなかった」とする政府筋の喜びを伝えました。しかし同時に、事態が解決に向かって進むかどうかということには、大きな懸念を表明しました。イスラエル世論が大きく分裂していることがうかがい知れます。「演説は、イスラエル、パレスチナ双方の拒否主義者を勇気づけるだけで、流血を止める努力について一切の言及がなかった」「まるでシャロン首相が書いたよう」(イディオト・アハロノト紙)。「明らかにバランスを欠いた演説は、状況を複雑化させるだけであり、シャロン首相にとって大きな一歩かもしれないが、和平にとっては極めて小さな一歩」(マ・アリヴ紙)。

 現在のシャロン政権を支えているのはリクード党と労働党との大連立です。これまでも絶えずシャロンの暴走に対して、労働党内で連立離脱をめぐる対立と論争が起こってきました。しかしその度にシャロンは軍事強硬路線を前に出すことで労働党の連立離脱を封じ込めてきました。そして今再び労働党内で連立政権から離脱すべきか否かの議論が激化し始めました。今のところ連立政権崩壊の危機には至っていませんが、今後の動向如何で矛盾の激化は避けられません。

 シャロンは、政権の延命のために軍事強硬路線に賭けています。おそらく立ち止まったとたんに、これまでの矛盾が一挙に噴出するでしょう。アメリカは、思うように進まない対イラク戦争準備を一挙に推し進めようとして、シャロンの強硬路線に賭けたのです。イラク攻撃準備が極めて脆弱なシャロンの路線の上に立てられたことになるのです。


(4)パレスチナ自治政府の反発・動揺とパレスチナ民衆の反発

 パレスチナ自治政府は、複雑な対応を余儀なくされました。すでにイスラエル軍の猛攻で自治政府の基盤とパレスチナ住民の生活基盤そのものが破壊尽くされたこと、そこに付け入るようにブッシュが援助打ち切りとワンセットで今回の新構想を打ち出したことなどが、その背景にあります。「歓迎」の声明と反発のコメントが入り交じったものでした。パレスチナの各レベルでアラファト体制の民主化の動きが出てきました。

 しかし全体としては言うまでもなくパレスチナ民族の誇りを毅然と前に出したものでした。エレカト地方行政相は、「パレスチナ人の指導者は米国から落下傘で下りてくるのではなく、パレスチナ人が決めるものだ」と批判し、指導部交代要求は「受け入れられない」と拒否しました。ナブル・シャース国際協力相は、「米政府はパレスチナ指導部を刷新する代理人ではない。指導部を選ぶことができるのはパレスチナの人々だけだ」と批判しました。アラファト議長は、「指導者を選ぶのはパレスチナ人だ」と述べ、アメリカの退陣要求に左右されないと強調しました。クレイ評議会議長は、「内政干渉だ」「高所から条件を付けただけで期待外れ」と評しました。アブドル・ラフマン内閣官房長官は、テロと反占領闘争を混同していると批判しました。
 財政基盤の弱い自治政府には、アメリカに対する期待や幻想が依然として根強くあって、反発しながらもアメリカと妥協しようとする傾向が根強くあります。しかし、自治政府がアメリカに屈服し妥協したとしても、パレスチナ民衆はそれを許さないでしょう。

※米中東和平構想はクーデターを要求するもの=パレスチナ幹部
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020703-00000238-reu-int


(5)アラブ諸国政府のまちまちな対応とアラブ民衆の反発

 私たちの感覚では、ブッシュ構想の露骨さに比べて中東の親米諸国の対応はアメリカの顔色をうかがい非常に抑制されたものでした。エジプトとヨルダンは、ブッシュの新構想を積極的に評価しました。ただし指導者決定はパレスチナ人に任せるべきだとの条件を付け加えましたが。サウジアラビアも、「いくつもの前向きな要素もある」と評価する姿勢も示しながら、アラファト退陣要求については「パレスチナの人々が判断すべき問題だ」と指摘し、距離を保った形だと論評されています。サウド外相は、仏外相との共同記者会見で、パレスチナの指導者を決められるのはパレスチナ住民だけだとする見解を示しました。総論賛成各論反対といったところでしょうか。

 しかしアラブ民衆の反応は新聞の論調に反映しています。「一方的で、緊張を高めるだけ」(ヨルダン、ドゥストゥール紙)。「ブッシュは、パレスチナ人とアラブ人に民主的に選ばれたアラファトの追放を要求した」(アラブ首長国連邦、アルバヤン紙)。パレスチナやアラブ諸国にばかり「実行不可能な条件」を課している(アラブ首長国連邦、ハリージュ紙)。「和平への具体策提示に失敗した。」「ブッシュ氏が、シャロン首相の主張を全面的に受け入れたことに強く失望した」(サウジ、アラブニュース紙)。等々。
 アラブの親米指導者がアメリカに妥協し協力しても、アラブ民衆が黙っているはずはありません。政府がアメリカに追従すればするほど、民衆の不満は自国政府に向けられていくにちがいありません。

※<中東和平>親米アラブ国から新構想批判の声強まる
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020702-00002037-mai-int

 6月27日のイスラム諸国会議機構(OIC)外相会議は、自治政府のアラファト議長の下で進められている闘いを改めて支持する、との声明を採択しました。イスラム諸国会議全体として、アメリカのアラファト排除方針に反対を表明したことになります。
 シャロン政権の強硬路線を全面的に支持し採用して、脅迫・恫喝で対イラク戦争の翼賛体制を構築しようとするアメリカの目論みは、対アフガニスタン戦争を開始した時ほどすんなりと実現する条件にはありません。根本的に条件が異なる最も主要な点は、アラブ民衆の怒りがアラブ諸国政府を根底から揺さぶりかねないということにあります。


(6)ブッシュ新構想をいち早く支持した小泉首相と破廉恥−−「YESの喜劇」

 サミット開始直前の二国間首脳会談は、米日、米加、米英と行なわれました。「中東問題で物わかりのよさそうな順に地ならしし、賛同を得る狙い」と日経紙が報じました。実際トップを切って、小泉首相はブッシュの新構想を無批判的に一も二もなく支持すると言明しました。
 カナダ、英国は、冷ややかな反応で、さすがに露骨なアラファト排除にまで支持を表明することができませんでした。日本だけが手放しで歓迎し全面支持したのです。カナダ、グレアム外相は、「カナダは依然アラファト議長を正当に選出された指導者と考える」と言明しました。イタリアがアラファト退任要求をしたのを除いて、EU諸国とロシアも、アラファト排除には異論を唱えました。それにあわてた日本政府は、官房長官をはじめ小泉発言の打ち消しと軌道修正に汲々としました。
 ブッシュ大統領に合わせて口をぱくぱくすればいいという破廉恥な外交政策の破綻がここにも端的に現れたのです。『サンデー毎日』7月14日号はこれを「YESの喜劇」と評しました。小泉首相は「イエス・サー」のサージェント(軍曹)であると揶揄したのです。

※<新中東和平構想>「対米追従」批判かわしに躍起 小泉首相周辺
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020627-00002053-mai-int


(7)アラファト議長排除にヨーロッパでも懸念が拡大。

 アナン国連事務総長は、「さらに過激な指導者を生み出す可能性がある」と懸念を表明しました。ソラーナEU共通外交・安保上級代表は、米国の関与を歓迎しつつ「指導者はパレスチナ人が選択する」として、意図的な“アラファト外し”は支持しない姿勢を示しました。人口の約一割がアラブ系であるフランスは、政府内に、「米国はイラクのフセイン大統領のことを言う前に、イスラエルのシャロン首相を何とかすべきだ」という声もあるほどです。シラク大統領は、テレビ会見で「指導者を選ぶのは結局、住民なのだ」と述べて異論を唱えました。ブロディ欧州委員長は、「選挙でアラファト議長が再選されたら、その結果を受け入れるべきだ」と主張し、デンマーク(7月からEU議長国)のラスムセン首相も、「パレスチナ人民が選出した指導者と対話する」と言明しました。ロシア、プーチン大統領も、6月27日の記者会見で、「パレスチナ自治政府のアラファト議長は傑出した指導者で、和平プロセスには欠かせない」と述べました。
 サミットの声明に、アラファト退陣要求は言及されず、サミット閉幕後の記者会見でもクレティエン首相(カナダ)は「すべての点で合意したわけではない」と述べ、アラファト議長排除で一致したわけではないと説明しました。


(8)強引に矛盾を封じ込め対イラク戦争準備を優先。イラク包囲網作りは一層行き詰まるに違いない。

 「対テロ戦で我々につくか、敵対するか」というブッシュ・ドクトリンが、今回の新構想の演説でも繰り返されました。「9.11」以降、国際法を踏みにじって無法な対アフガニスタン戦争を行なったこの論理を、中東パレスチナ問題にストレートに当てはめることについては、アメリカはこれまで躊躇してきました。それは、アラブ親米諸国への配慮によるものであり、もしこれを当てはめるとイスラエルの凶暴性からして壊滅的な結果が招来することが明確だったからです。
 しかしブッシュ大統領は、遂に一線を越えました。アラファト体制の下で親米中東諸国とイスラエルとの妥協点を図る中東政策を断念し、アラファト体制打倒を前提とする、完全にイスラエルの側に立った方針に転換したのです。

 これはこれまでことごとく失敗してきたブッシュ政権の中東政策の迷走と行き詰まりの不可避的な帰結です。まずは前政権の失敗の後をうけてシャロンの暴走を放置し、事態を悪化させました。それでパウエル国務長官を派遣しミッチェル報告を出し、事態の収拾に乗り出しましたが失敗しました。さらにテネットCIA長官提案による工作も失敗しました。3月中旬に、対イラク戦争へ向けた機運を高める世論操作をしてチェイニー副大統領がアラブ諸国を歴訪しましたが、対イラク戦争には反対する声が強く、アメリカの目論みは失敗しました。3月末に始まるイスラエルの軍事侵攻のさなかに歴訪したパウエル国務長官も、明確な方針提起もできずに、イスラエルの行動を追認するだけに終わりました。これらの失敗の連続の結果として、アラブ諸国に配慮していたら埒があかない、シャロンのように強硬姿勢でないと前に進まない−−一方的にアメリカに付いてこさせるという強引な路線に大きく転換したのです。

 ブッシュ政権は、このままではいつまで経ってもイラク攻撃の準備は完成しないと危機感を深めたのだと思います。アラブ諸国への配慮をかなぐり捨て、イスラエルとアメリカの圧倒的な軍事力と強硬路線を背景に、強引な「事態収拾」を行なって一時的にであれ「解決」したかのような形づくりをすること、それによって対イラク戦争への道を開こうとしたのではないでしょうか。

 アメリカが中東・パレスチナ問題での「仲介者」の仮面を投げ捨てた時、中東情勢は一体どのように展開するのか。シャロンは次なる暴挙にフリーハンドを得たと自信を深めるでしょう。中東の親米諸国の指導者たちは、更なるジレンマに追い込まれるでしょう。ブッシュがイラク攻撃に焦って打ち出した強引な政策が逆に、イラク包囲網作りを一層行き詰まらせることになるでしょう。