ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(])
イラク「無条件査察」受け入れ後の米の対イラク戦争をめぐる情勢について
−−国連を舞台にした二転、三転の熾烈な外交戦、それと並行して進むブッシュの戦争への暴走−−


[1]はじめに−−ブッシュ「最後通牒シナリオ」のどんでん返し
(1)ブッシュの対イラク戦争をめぐる米国内外及び全世界を巻き込んだ今夏の激しい権力抗争と外交戦。
 イラクのフセイン政権は、9/16に国連アナン事務総長に対して、突如「国連査察の無条件受け入れ」を表明した。このイラクの突然の方針転換で再び局面が変化した。今年の初夏、ブッシュのイラク攻撃が本格化して以降の情勢の激しい変転の中で、再びブッシュの暴走を阻止する希有なチャンスが到来している。
 もちろん危機感を強め巻き返しに転じたブッシュ政権が、国連抜きの暴走に傾斜する危険も同時に高まっている。
 何とかしてイラク攻撃阻止の世論を盛り上げ、ブッシュの暴走を止めたい。

★<イラク>国連査察再開を無条件で受け入れ アナン総長に書簡
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020917-00001006-mai-int

 一体何が起こったのか。この新情勢の意義を深く理解するには、激しく揺れ動く今夏の状況変化、とりわけ9/12〜9/16の間に生じた危険な状況を把握する必要がある。ざっと時期区分して12/16の突如の受け入れに至るプロセスを振り返ってみよう。

第一期(6月〜7月下旬):ブッシュがイスラエル・パレスチナ全面戦争が沈静化してから対イラク戦争の本格的準備を開始する。米英の単独攻撃のシナリオで。
第二期(7月下旬〜8月中旬):米政権と共和党から、議会から、軍中央から、欧州から、対イラク戦争の異論・慎重論・反対論が一斉に吹き出し収拾がつかなくなる。全体として米英単独攻撃への批判・牽制。8月中旬を境に米英単独攻撃論は行き詰まる。
第三期(8月下旬〜9月上旬):8/21ブッシュ政権の強硬派だけで「軍事会議」を開き、猛然と巻き返しに出る。一方で米英単独攻撃シナリオをちらつかせながら、他方で国連を巻き込んだシナリオ作りに動く。
第四期(9/9〜9/12〜9/15):仏が9/9突然豹変し米英の側に寝返り「二段階シナリオ」を打ち出す。9/12ブッシュの国連演説を頂点に「国連決議」シナリオが一気に多数派に転化する。
第五期(9/16〜):イラクの突然の査察受け入れで再び局面が変化。


(2)9/12〜9/16に一体何が起こったのか−−国連を巻き込んだ対イラク戦争の「最後通牒シナリオ」が現実味増す。
 9/12ブッシュの国連演説で開戦に向かって非常に危険な情勢が生まれていた。9/9にシラク大統領がニューヨーク・タイムズに語った仏案を基本に組み立てられた最後通牒的な「二段階シナリオ(無条件査察要求→武力行使決議)」が急浮上し焦点化したのである。

★<イラク攻撃>仏大統領、「2段階の安保理決議」を提案
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020910-00002059-mai-int

 安保理がこの勢いに流され、「二段階シナリオ」採択必至の状況が生まれた。後は時間の問題というまでになっていた。おそらくこのシナリオは8月中旬を頂点に高まった共和党重鎮や軍や欧州からの「単独攻撃慎重論」に配慮して8/21クロフォードで開かれた「軍事会議」で議論したのだろう。パウエルと共和党重鎮らの「国連工作」に一度だけチャンスを与えそれを見守る、それが失敗すればチェイニー=ラムズフェルド=ウォルフォヴィッツ=ライスらの政権内シビリアン・タカ派の米英単独攻撃論を採用する、等々という意思統一ではなかったか。現にその後、一方ではチェイニーが繰り返し強硬論をぶち上げ、他方でパウエルの活動が活発化する。

★米大統領、イラクに対する政策を再検討する方針
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020822-00000099-reu-int (転載

 9/12ブッシュ演説はパウエルや「慎重派」によって満を持して行われた。9月初め頃からパウエルの国連を舞台にした動きが活発になる。これに併せてまるで豹変したかのようなパウエルの強硬論がマスコミをにぎわす。このパウエルの動きと仏シラクの動きが連動していると推測される。同時並行的に仏の態度も急変し、シラク大統領が武力行使やむなしに傾き、ブッシュを側面支援する「二段階シナリオ」を打ち出したのだ。

 更にあの程度の欺瞞的な国連演説で、驚くほど簡単に国連内外の空気が急変する。サウジアラビアが基地使用容認の動きを見せ、中東親米諸国がイラクに「無条件査察受け入れ」を懇願し腰砕けになり始める。日本、カナダなど、これまで単独攻撃慎重論を主張してきた国々が「国連での解決」というブッシュの欺瞞的な方向転換で、一気に対米協力に傾斜する。等々。9/16までは、全てがブッシュとパウエルの思惑通りに進んでいた。

★イラク査察 期限付き決議合意 国連安保理 来週から協議本格化
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020914-00000070-nnp-int
★米国の同盟諸国、イラク問題で国連と協力する米大統領の姿勢を歓迎
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020913-00000530-reu-int



[2]イラクの「無条件査察受け入れ」で再び局面が急変。平和的外交的解決か侵略的軍事的解決か−−国連を舞台に2つの方向をめぐる熾烈な外交戦が始まった。
(1)イラクが「無条件査察」を突如受け入れ。ブッシュのシナリオが崩れる。
 ブッシュ政権には今現在、大別して2つのシナリオがある。どちらもイラク攻撃そのものが大前提である。大義名分の有無、国連利用の有無、軍事作戦の規模と方法、同盟国をどこまで協力させるか等々の違いに過ぎない。
a)チェイニー=ラムズフェルド=ウォルフォヴィッツ=ライスら「シビリアン・タカ派」の「米英単独攻撃シナリオ」。ブッシュ大統領自身は基本的にはこの線に乗ってきた。
b)仏型「二段階シナリオ」、あるいは「武力行使容認決議」のみの米型「一段階シナリオ」など、国連を侵略戦争の道具に利用するやり方、である。

 ブッシュは、a)が一旦行き詰まり、b)にチャンスを与えた。もしこれが失敗するとなるとどうなるか。いずれブッシュ大統領の決断でa)の復活は避けられないだろう。

 しかし少なくとも今現在は、ブッシュ政権は驚き、呆気にとられ、パウエル工作は混乱している。「無条件査察拒否」→「国連武力行使容認決議」という国連を政治的道具に使って戦争に持ち込むブッシュ政権の思惑は潰され出鼻は挫かれた。イラクの「無条件受け入れ」によって生じた束の間の条件を利用し、戦争阻止のために反戦平和運動が介入する道ができたのである。

★イラク査察、安保理承認あれば明日にも再開する用意=IAEA
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020917-00000910-reu-int
★査察団先遣隊、10月中旬にもバグダッドへ派遣
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020920-00000403-yom-int
★<米大統領>「安保理決議をイラクのまぬ」 査察要求で本音?
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020914-00000179-mai-int

 「ごまかされてはならない!」−−予想外の「無条件受け入れ」に対して、ブッシュ大統領は強硬姿勢を取り続けている。一方ではイラクの受け入れを「無視し」、あくまでも国連安保理の「武力行使容認決議」を追求し、決議の中に「武力行使容認」を明記させ、それを口実に戦争に持ち込もうとしている。他方では「敷居」をどんどん上げてイラクが拒否せざるを得ないようにし、「査察」を挫折させ、戦争に持ち込む機会を追求し続けている。

★米大統領、イラクの武器査察再開表明無視し国連に行動の必要性を強調
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020918-00000933-reu-int

 イラクの査察受け入れをめぐる外交戦の中で、再び誰の目にも明らかになったことは、アメリカとイラク、ブッシュとフセイン−−一体どっちが戦争を欲しどっちが戦争回避を欲しているのか。そして一体誰が戦争を欲し誰が平和を欲しているのか、である。ブッシュとその政権に巣くう戦争屋たちは「査察によって核兵器開発や大量破壊兵器開発を食い止める」ことに関心があるのではない。あくまでもフセイン大統領自身の暗殺と政権の打倒だけを追求し続けていると言うことなのだ。侵略戦争と民衆の大量殺戮を自己目的とし“業”とさえする残虐な政権−−これを“戦争中毒”、“ウォー・パラノイア”と言わずして何と言えばいいか。


(2)国連常任理事国の分裂。2つの方向をめぐる激しい国連外交。米英の軍事的解決と中ロの外交的解決。
 イラクの査察受け入れによって国連常任理事国が真っ二つに割れている。米英は強硬姿勢、何としても戦争に持ち込もうと躍起である。ロシアと中国は受け入れを歓迎している。ロシアはアメリカの「武力行使新決議」に反対し、イラクが査察を受け入れたから「新決議」は不要だとの態度を取っている。アラブ諸国も査察入れを歓迎している。
 一旦はブッシュの国連演説によって「二段階シナリオ」に引っ張られ引きずれらた諸国が、再び二つに割れた。無条件査察受け入れ=政治的解決と捉え、戦争回避を追求する国と、受け入れ無視=軍事的解決を追求する米英と。再び米英の孤立が強まっている。国連の権威を政治的に利用して対イラク戦争を目論んだが、一旦挫折を余儀なくされたのである。

★イラク査察新決議へ安保理駆け引き…米英の障害は露
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020920-00000501-yom-int
★ロシア外相、イラクに対する新たな国連安保理決議は不要との認識示す
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020918-00000932-reu-int



[3]「国連査察」をスパイ行為の手段とするな。経済制裁を解除せよ。−−なぜイラクは「無条件査察」を拒否してきたのか。
(1)これまでの「国連査察」の驚くべき実態。フセイン暗殺と軍事機密のスパイ行為。−−査察団から米英を排除せよ。空爆を中止せよ。
 「国連査察」はこれまで一貫してアメリカのイラク攻撃の政治的道具であった。なぜイラクは1998年に「国連査察」を拒否したのか。これまでなぜ繰り返しそれを拒否してきたのか。アメリカ側の、あるいは欧米のマス・メディアの宣伝と言い分を鵜呑みにせず、真実を知らねばならない。
 大きく2つの理由がある。第一に、「国連査察」がスパイ行為の隠れ蓑となってきたからである。第二に、受諾しても査察とワンセットだった「経済制裁」を解除しないからである。そして現在、これに第三番目の理由が付け加えられた。米英によるイラク攻撃の切迫である。そんな危険な状況下での「無条件査察」は明らかに賭けである。その意味でイラクの今回の決断は大幅な譲歩と言えるだろう。

 私たちは繰り返し米が言う「国連査察」の欺瞞と詐術を暴露してきた。ここでもう一度「国連査察」なるものが公平であり正当であり当たり前であるかのような風潮と世論操作を批判することが必要だ。

★ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(\)ブッシュのイラク攻撃と国連査察問題−−再び急浮上しようとしている国連査察の実態を暴く

 そもそもイラクに対する「国連査察」−「経済制裁」−「空爆」はいかなる関係にあるのか。結論を先に言えば、いずれもアメリカがイラクを封じ込め植民地的隷属状態に落とし込めておくための手段だったのである。イラクは1991年の湾岸戦争終結後、「大量破壊兵器を持たない、周辺国に脅威を与えない」ことを立証するために査察受け入れを余儀なくされた。その代わりに、イラクに課された経済制裁(=禁輸措置)は、その査察の継続によって解除されるはずだった。査察と経済制裁解除はセット。これが国際的合意だった。しかし査察に応じても制裁は解除されず、今も継続されている。

 同時に、「国連査察」はアメリカによるイラク空爆のための道具であった。アメリカはイラク爆撃の前に必ず、イラクの安全保障を危うくする場所(例えば大統領宮殿やバース党本部)の査察を強引に要求し、イラク側の拒否を口実に爆撃を実施したのであった。自由自在に「査察」を爆撃の口実作りのために利用したのだ。

 今回のイラクの「無条件査察」は誠実に、かつ公平に実施されるだろうか。否、である。しかし一旦「無条件受け入れ」というリスクを負わざるを得なくなったからには、世界の反戦平和運動がこの「国連査察」をブッシュの思惑通りに進まないよう監視し暴露することが必要不可欠である。

 曲がりなりにも「国連査察」が正常に機能するには、“戦争当事者”であるアメリカとイギリスを査察団から排除すべきである。アメリカは常任理事国で最大の権力を持っている。査察団の査察内容、団の構成などに決定的な影響力を持っている。今の国連の力関係では、公平な査察などあり得ない。間違いなく査察団員にCIAを初め多くの米諜報部員、軍関係者が含まれ、イラク攻撃の際に必須の軍事機密を探ろうとするだろう。しかも彼らにはフセイン大統領の暗殺司令が出されている。そんな査察団を大統領宮殿や軍関係施設などに自由に見せる訳にはいかないし、大統領に近づけることなどできるはずがない。イラク側が、アメリカがイラク攻撃をしないと保障しない限り、「国連査察」はイラク攻撃の前準備にしかならないのである。


(2)「無条件査察」を受け入れたからには経済制裁を解除せよ−−イラクの要求は当然。
 米主導で国連が加えた「経済制裁」も、その本質は査察受け入れを促すものではない。なぜいつまでも経済制裁を止めないのか。それはアメリカにとって経済制裁が自己目的であり人民を窮乏化させ経済を破綻させることによってフセイン政権の社会的、政治的基盤を掘り崩しフセイン政権を打倒することを追求し続けたからである。

 「飢餓戦略としての経済制裁」はそれそのものがすでに戦争犯罪である。それだけでなく経済制裁と国連査察に関する当初の国連決議さえ逸脱するものである。従ってイラク側の経済制裁解除要求は以下の点で全く正当である。
a)経済制裁解除の条件としての査察はすでに7年間にわたって行われた。解除されて然るべきである。
b)さらにイラクが譲歩して新たに国連査察を受けいれたのだから、制裁はその前提として無条件に解除されるべきである。
c)イラクの経済制裁によるこれまで、そして現在の深刻な非人道的被害状況からしても解除されるべきである。

★<イラク>査察受け入れで「制裁解除に道」 露外務省
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020918-00000121-mai-int
★国連査察、イラクは制裁撤廃に向けた包括的合意求める
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020909-00000046-reu-int



[4]ブッシュ政権の新たな巻き返し策と単独攻撃準備の加速。
(1)ブッシュは2正面作戦。「武力行使決議」の追求+国連抜きの米英単独攻撃。
 ブッシュは守勢に回りながらも、あくまでも「武力行使決議」採択に向けて、カネと脅しで国連外交に懸命である。同時にブッシュの意向をはねつけて進められている「国連査察」にも妨害の手を伸ばしている。査察に難癖を付け邪魔をしたり中止に追い込んだりするだろう。

 ブッシュは9/19に記者団を前に、国連の平和的外交的解決の動きに苛立ちと怒りを露わにして吐き捨てるように「国連が適切な対応をとらなければ、米国は行動をともにする同盟・友好諸国の支援を得てイラクの脅威に対処する」と言明、国連抜きの武力行使を強調した。また同日ブッシュは議会に対して武力行使決議を要請した。来月上旬にも決議されるとの見通しだ。
 いずれにしても国連を巻き込んだ開戦の手続きが失敗し、再び米英単独攻撃に傾斜し始めたているのだ。もともと国連など「屁」とも思っていないのだから、当然のことかも知れない。再び政権内シビリアン・タカ派が前面に出てくるだろう。次の新・新局面をも想定して活動しなければならない。

★国連がイラクに対処しなければ、米国と同盟国が対処する=ブッシュ大統領
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020920-00000206-reu-int
★<イラク問題>米大統領、武力行使容認の決議案を議会に提出
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020920-00000139-mai-int


(2)対イラク攻撃準備を加速する米軍。ある意味ですでに戦争は始まっている。
 一方米英は、国連の外でイラクに対する戦争準備を公然と進めている。すでに年明け開戦(場合によっては年末開戦)を念頭に着々と兵力の大増強・大集中を始めている。
−−8月から9月末にかけて4度にわたる海軍による大型船のチャーターと戦車など重装備の輸送(合計3千トンをすでに搬入)。
−−カタールへ中央司令部600人を移動。
−−ヨルダンへの2500名の配備:演習を名目にしたものだが、実際にはイスラエルの防空態勢の構築である。
−−クゥェートの米軍基地の増強。
−−キャンプ・ペンドルトンの海兵隊2万人の輸送(10月中旬)。
−−米英の特殊部隊の作戦開始。
−−空爆の大規模化、頻繁な繰り返しによる全面空爆の予行演習。新聞報道によれば、米軍はこの1ヶ月間、空爆の目標を「イラク軍の通信施設や飛行場など対空能力を低下させる施設」に変更しているという。従来彼らが言ってきた「攻撃されたから、狙われたから」「自衛のために反撃した」は全くのウソであった。
−−イギリス軍の物資の集積。9/24の議会審議以降にイギリス軍3万人の輸送を開始予定。等々(デイリー・テレグラフ)。
 米英はすでに戦争を始めているのだ。開戦に向けた戦争の歯車が回り始めている。

★米軍、イラクの対空防衛能力の引き下げに重点を移す=国防長官
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020917-00000789-reu-int
★<イラク問題>軍事行動に備え着々と準備 米国防総省
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020918-00001012-mai-int



[5]反戦平和運動が直面する新たな諸課題。
(1)情勢の複雑化、流動化。対イラク戦争阻止を鮮明に掲げよう。
 一時的かも知れないが現在の局面では再びアメリカの側が孤立している。戦争による軍事的解決ではなく平和的外交的解決を目指す動きが、国連と国際関係の中で高まっている。ブッシュ演説を境に一気に高まった米英による戦争への国連利用の流れが再び平和的解決に向かって揺れ戻したのである。だが国連や各国政府間の動きはあまりにも弱い。二転、三転している。ブッシュに楯突く国、イラク戦争阻止の断固たる態度を示している国が皆無に近いからである。

 ブッシュ支持が低落していた米国内世論が再び支持率上昇へ変化し、英国内でも7〜8割に上昇していた反戦世論が低落している。民衆の意識状況もまた複雑に揺れている。一旦一方向に流れれば一気に進んでしまう非常に危険な状況にある。

★<ブッシュ支持率>67%に持ち直す テロ1年、イラク対応支持
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020921-00000026-mai-int
★英国民、イラク攻撃への反対意見が減少=世論調査
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020917-00000870-reu-int

 だからこそ今声を挙げよう。ブッシュの対イラク戦争阻止−−今こそ全世界の反戦平和運動が一致団結し、下からの大衆的な声を組織すべきときである。市民一人一人が思い思いの声を出して結集する大衆的な運動だけがこうした政府間の動揺を引き起こしブッシュの対イラク戦争を阻止することを可能にする。

 私たちが直面する、イラクの「無条件査察」受け入れ後の新しい諸課題、諸要求は以下の通りである。
1.イラクの無条件査察受け入れを受けて、米英は即時無条件に、かつ全面的に戦争準備を中止すること。
○イラク周辺への軍備大増強、軍事演習を中止すること。
2.国連を対イラク戦争の道具にしないこと。
○米英による開戦口実作りの「国連武力行使決議」工作を即刻中止すること。
3.「戦争当事者」である米英を「国連査察」団から排除すること。
○「強制査察」「武装査察」など米英による「戦争のための国連査察」を断固排除すること。
○米英が査察団の構成、査察内容、実施方法などを一方的に決定し実行しないこと。
○「国連査察」を米英のスパイ活動の手段にしないこと。
4.米英による、国連決議と国際法に違反した空爆を即刻中止すること。イラクの独立と主権を侵害する「空域」設定を解除すること。
5.経済制裁を即時無条件に解除すること。
6.戦争による軍事的解決ではなく平和的外交的解決をめざすこと。


(2)日本でも高まりつつある対イラク戦争準備の動き。断固たる対米協力拒否の世論を作ろう。
 小泉首相は、9/12の日米首脳会談で「国際協力」要請をしたのに続いて、9/13には国連総会で「期限付き・無条件査察」を支持した。ご丁寧に川口外相は「期限付き・無条件・無期限査察」をイラク外相に要求した。要するに事態を次々と追認しているにすぎないのだ。どのようにして対米協力をスムーズにするか。小泉政権にあるのはそれだけなのだ。

★対イラク軍事行使は最後の手段、国際協調得ることが最重要=小泉首相
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020914-00000633-reu-int

 日本における対イラク戦争反対運動と世論作りはまだ始まったばかりである。戦争になるという危機感、関心は一般市民の間ではまだまだ低い状態と言わざるを得ない。だがブッシュの暴走が強まれば強まるほど否が応でも市民の関心と反応は高まらざるを得ないだろう。今から準備することが肝要だ。

 10月から始まる臨時国会では有事法制が問題になる。一部新聞で来春の通常国会への先送り観測が出ているが、まだ正式決定ではない。現に福田官房長官は有事法制制定を再び臨時国会の中心に据えると強調している。油断は禁物だ。

 ブッシュがイラク攻撃に踏み切れば、大義名分や正当性があろうとなかろうと小泉政権の性格からして、再び対米戦争協力が政治的争点になるだろう。現行の「テロ特措法」の延長による米英艦船への給油活動のなし崩し的継続か。あるいは突如暴露された「新テロ特措法」制定の動きか。それは、アフガニスタンの米軍特殊部隊がイラク攻撃に参加できるように、アフガン治安維持を自衛隊が引き受けるというものだ。とんでもない大規模な陸上部隊の海外派兵である。断固阻止しなければならない。

 沖縄や「本土」の在日米軍基地でも、イラク情勢の緊迫化とともに米軍の動きは緊張度を増し活発化している。対イラク戦を想定した軍事演習も激しさを増している。

 日本では現時点でイラク攻撃反対の世論が7〜8割を占める。この漠然とした反対世論をどこまで具体的でしっかりとした強固な反対世論にしていくか。これが秋の運動の焦点になるだろう。対イラク戦争の横暴と犯罪性、正当性と根拠の欠如、国連査察の危険な実態と本質、湾岸戦争以後のイラク民衆、特に子どもたちの被害実態、特に劣化ウラン弾被害の深刻さ。ブッシュの暴走の危険性、なぜここまでブッシュとブレアは侵略に固執するのかその背景と原因。等々。−−どれもこれも日本の一般商業新聞やTVではねじ曲げられているものばかりである。私たちが暴き宣伝しなければならないテーマはヤマほどある。

1.小泉政権は米の対イラク戦争に反対せよ。新「テロ特措法」反対。
○小泉政権がイラク攻撃そのものへの反対を公式に表明するよう要求する。
○新「テロ特措法」に反対する。イラク攻撃への一切の協力拒否を明確に表明せよ。
○現行の「テロ特措法」を廃棄せよ。インド洋に展開している米艦船への給油活動を即刻中止し、自衛隊の全艦船を無条件で引き揚げよ。
2.イラク攻撃に拍車をかける有事法制を廃案にせよ。
3.在沖、在日米軍のイラク出撃・攻撃を即時停止せよ。
○対イラク戦を想定した演習をただちに中止せよ。
○在沖・在日米軍基地の機能強化・新増設反対。
4.駐韓米軍による少女轢殺事件、新たな衝突即死事件糾弾。韓国と日本の反基地運動の連帯を。
○米軍は、裁判権を韓国政府に委譲せよ。
○SOFAを改定せよ。ブッシュ大統領は謝罪せよ。
5.イスラエルによる対イラク戦争挑発に反対する。
○アラファト議長と議長府への攻撃を今すぐやめろ。
○ヨルダン川西岸、ガザ地区の軍事包囲=アパルトヘイト体制を倒そう。
○パレスチナ人民の民族自決権の確立。完全な独立国家樹立の闘い、民族解放闘争を支持する。
6.全世界の反戦平和運動と連帯して、ブッシュの対イラク戦争阻止のために全力を挙げて闘おう。


2002年9月20日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局


(既に削除された記事の転載)

 米大統領、イラクに対する政策を再検討する方針
   http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020822-00000099-reu-intより
ブッシュ米大統領は記者団に対し、イラクに対する政策について、同盟国とともに再検討することを明らかにしたが、フセイン政権打倒の方針に変更はないと述べた。
このなかで、国家安全保障問題担当スタッフとの協議について、「イラク問題については協議しなかった。米政府はいかなる脅威に関しても真剣に対応し、友好国や同盟国との協議を続ける」と述べた。
そのうえで、「私は忍耐強い人間だ。あらゆる政策上の選択肢について検討し、外交や情報活動でとりうるかぎりの策を講じる方針だ。しかしフセイン大統領の存在が脅威であり、政権転覆が世界にとって利益になるという点で、政府部内の認識が一致している」と述べた。



ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢:

(T) カナナスキス・サミットと米ロ「準同盟」化の危険性
    −ブッシュ政権によるイラク攻撃包囲網構築の到達点と反戦平和運動の課題について−

(U) 米中東政策の行き詰まりと破綻を示す新中東「和平」構想
    −−ブッシュ政権がなかなか進まない対イラク戦争準備に焦って、
       「仲介役」の仮面すら投げ捨て公然とシャロンの側に立つ−−

(V) イラク攻撃に備え、先制攻撃戦略への根本的転換を狙うブッシュ政権

(W) 国際法・国際条約・国連決議を次々と破り無法者、ならず者となったブッシュのアメリカ
    −− 鏡よ鏡よ鏡さん。この世で一番のならず者はだーあれ −−

(X) [資料編] NHK ETV2000 より 「どう変わるのかアメリカの核戦略〜米ロ首脳会談を前に」

(Y) 米ロ首脳会談とモスクワ条約について
    −−米ロ「準同盟国」化で現実味増したブッシュの先制核攻撃戦略

(Z)「兵器ロビー」
    20年ぶりに復活する米軍産複合体

([)ブッシュ政権の露骨な戦争挑発行為と対イラク侵攻計画
        −−対イラク戦争阻止の反戦平和運動を大急ぎで構築しよう

(\)ブッシュのイラク攻撃と国連査察問題
        −−再び急浮上しようとしている国連査察の実態を暴く