− パンフレット案内 −

ブッシュ政権を乗っ取った核・軍産複合体。
 両者の関係を実証的に暴く。
 「ブッシュ政権と軍産複合体」

[翻訳報告]
『回れ右:20年にわたるアメリカの核政策のブッシュ政権による根本的転換、そこにおける兵器ロビーの役割』(世界政策研究所・武器取引情報センター ウィリアム・D・ハートゥング (2002,5)),他。


 ブッシュ政権の極度に好戦的な性格と政権の基盤との間にはどのような関係があるのでしょうか。このパンフレットはこうした疑問を解きほぐすものです。
 ブッシュ政権は、誕生するや否や、中国敵視政策への転換、ミサイル防衛(MD)推進、ABM条約破棄、京都議定書の離脱とCO2削減の一旦合意された義務の放棄、原発推進への転換とアラスカ油田開発等々の政策を次々と打ち出しました。今や有名になった「ユニラテラリズム」です。いずれも軍需産業や石油産業の利益を最優先にした露骨な政策です。

 訳出したハートゥング氏の報告書は、ブッシュ政権の現状を暴いているだけでなく、90年代初め、ソ連崩壊によって衰退と縮小・再編の危機に陥った核・軍産複合体が、「新たな敵」を見つけ出し核戦略の転換を推進し、MD、小型核兵器開発等々へシフトし、ついにはブッシュ政権を乗っ取るに至る過程も生き生きと描いています。

 私たちは、核・軍産複合体と「死の商人」をボロ儲けさせただ肥え太らせるためだけの戦争を断固拒否します。石油メジャーの利潤追求と石油利権のためだけの戦争を断固拒否します。核・軍産複合体の利益のためなら人殺しも国際法無視も何でも平気でやる汚い戦争を断固拒否します。対イラク戦争阻止のため、世界平和を希求する全ての市民の皆さんの間でこのパンフレットが活用されることを願ってやみません。読者の皆さんのご意見、ご批判、ご鞭撻をいただければ幸いです。


 頒価 1部800円+送料

 お申し込み、お問い合わせは署名事務局まで。e-mail: stopuswar@jca.apc.org
      *パンフレットご希望の方は、宛て先と希望冊数をお知らせください。
         パンフレットと振り込み用紙をお送りします。代金は後払いで結構です。




  目 次  


発行にあたって――核・軍産複合体のボロ儲けのための戦争に反対する

序 章 ウィリアム・D・ハートゥング氏のプロフィールとメッセージ

第1章 翻訳特別報告
 ○ 「回れ右:20年にわたるアメリカの核政策のブッシュ政権による根本的な転換、
      そこにおける兵器ロビーの役割」

     世界政策研究所・武器取引情報センター
        ウィリアム・D・ハートゥング、共同執筆者ジョナサン・レインゴールド
     “About Face: The Role of the Arms Lobby In the Bush Administration's
      Radical Reversal of Two Decades of U.S. Nuclear Policy”
           (http://www.worldpolicy.org/projects/arms/reports/reportaboutface.html)

第2章  解説と研究
 ○「 ブッシュ政権と核・軍産複合体の復活
   ――その異常な好戦性の基礎としての特異な権力構造――」

     アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局

第3章  関連論文(翻訳)
 ○「 9・11以降の軍事支出と安全保障援助の増大
   ――世界政策研究所・武器取引情報センター 事実一覧表――」

    ミシェル・シアロッカ、ウィリアム・D・ハートゥング
    “Increase in Military Spending and Security Assistance Since 9/11”
    An Arms Trade Resource center Fact Sheet
        (http://www.worldpolicy.org/projects/arms/news/SpendingDOD911.html)

 ○「兵器ロビー  ――20年ぶりに復活する米軍産複合体――」
    『The Nation』所収 ウィリアム・D・ハートゥング
    “The Arms Lobby” 
        (http://www.thenation.com/doc.mhtml?i=20020624&s=hartung20020613)

 ○「イスラエルに対するアメリカの武器譲渡と安全保障援助
   ――世界政策研究所・武器取引情報センター 事実一覧表――」

    ウィリアム・D・ハートゥング、フリーダ・ベリガン
    “U.S. Arms Transfers and Security Assistance to Israel”
        (http://www.worldpolicy.org/projects/arms/reports/israel050602.html)

第4章  アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局の報告
 ○ ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(V)
   イラク攻撃に備え、先制攻撃戦略への根本的転換を狙うブッシュ政権
 ○ ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(])
   イラク「無条件査察」受け入れ後の米の対イラク戦争をめぐる情勢について
    ――国連を舞台にした二転、三転の熾烈な外交戦、
             それと並行して進むブッシュの戦争への暴走――

[English]



発行にあたって−−

核・軍産複合体のボロ儲けのための戦争に反対する


(1) ブッシュ政権の極度に好戦的な性格と政権の基盤との間にはどのような関係があるのか。私たちは、この疑問に答える資料を探し求めてきました。ブッシュ政権と軍需産業や石油産業との結びつきについてはすでに指摘され多く語られていますが、しかしそれはまだ具体的実証的に、また包括的に明らかにされているとは言えません。
 ここに発行するパンフレットは、こうした私たちの疑問を解くために取り組んだ最初の成果です。大きく3つの部分から構成されています。まず最初は、ブッシュ政権と核・軍産複合体および兵器ロビーとの密接な結びつきを具体的かつ包括的に暴いた米研究所の報告書の翻訳です。次は、核・軍産複合体復活についての私たちの一定の研究成果です。そして最後は、関連論文と事務局報告からなる資料編です。

 ブッシュ政権は、誕生するや否や、中国敵視政策への転換、ミサイル防衛(MD)推進、ABM条約破棄、京都議定書の離脱とCO2削減の一旦合意された義務の放棄、原発推進への転換とアラスカ油田開発等々の政策を次々と打ち出しました。今や有名になった「ユニラテラリズム」です。いずれも軍需産業や石油産業の利益を最優先にした露骨な政策です。
 ブッシュ政権の軍国主義的で反動的な性格は9.11後の対アフガニスタン戦争で牙をむき出し、熱病のようなしつこさで突き進む対イラク戦争準備の暴走の中でいよいよ許し難いものになっています。差し迫るイラク侵略を阻止するために、ブッシュ政権の戦争への衝動力を深いところから把握し、厳しく批判することが緊急に必要になっています。

(2) 私たちは、ブッシュ政権と軍産複合体との結び付きに関する研究とインターネット検索の作業を今年の春、はっきりと戦争の矛先がイラクに向き始めた頃に開始しましたが、当初から壁にぶち当たりました。日本語の文献やレポートはもちろん英語サイトでもこの問題に触れているものが殆どなかったからです。正確に言えば、小論はたくさんあるのですが、詳細な実証的研究と事実に裏付けられた暴露がなかったのです。

 そのような中で私たちがついに行き当たったのが世界政策研究所・武器取引情報センターの「激増する武器商人」に関する一連の報告書でした。本パンフレットで訳出した『回れ右:20年にわたるアメリカの核政策のブッシュ政権による根本的転換、そこにおける兵器ロビーの役割』はその中でももっとも詳しい分析です。
 この報告書の執筆者であり、世界政策研究所・武器取引情報センターを主宰するウィリアム・D・ハートゥング氏は、武器取引と軍事費に関する専門家であり、1980年代から重要な諸論文、諸著作を発表し続けています。

 2002年5月に発表されたこの報告書は、ブッシュ政権の現状を暴いているだけでなく、90年代初め、ソ連崩壊によって衰退と縮小・再編の危機に陥った核・軍産複合体が、「新たな敵」を見つけ出し核戦略の転換を推進し、MD、小型核兵器開発等々へシフトし、ついにはブッシュ政権を乗っ取るに至る過程も生き生きと描いています。
 ハートゥング氏によれば、現在のブッシュ政権を実際に動かしているチェイニー、ラムズフェルド、ウォルフォウィッツ、ボルトン、ライス等々の超タカ派のイデオローグたちは、クリントン政権の下で干されていたのですが、彼らの凋落は米ソ間で核軍縮交渉が始まった第二期レーガン政権の頃、つまり1980年代後半には早くも顕著になったといいます。

(3) なお、「解説と研究」は、ハートゥング氏のレポートに触発されながら、私たちが試行錯誤の中で核・軍産複合体のスケッチを試みたものです。署名事務局内部で強く疑問を抱いてきた素朴な問題−−なぜブッシュはここまで異常な侵略欲に駆り立てられるのか、なぜここまで異常な軍事冒険主義に走るのか−−、すなわちブッシュ政権の戦争政策の物質的基礎を明らかにしようとしたものです。
 
 特に、ソ連崩壊からクリントン政権時代へ、更にはブッシュ政権へ−−この歴史的な流れの中で、核・軍産複合体が衰退と縮小・再編の過程から勢いよく復活した過程を描こうとしました。また復活したこの核・軍産複合体の最新の姿をできるだけ多様な側面から量的質的に捉えようとしました。調べたことをそのまま全部盛り込んだためか論旨が乱れ不明確になったかも知れませんが、それぞれの章を資料のように読み進めていただければ幸いです。

(4) 私たちは現在、対イラク戦争阻止を当面する最大の課題として取り組んでいます。ブッシュ政権による対イラク戦争準備が推し進められていく中で、私たちが署名運動を強めるためにその時々の内外情勢を評価した事務局報告シリーズの中から、特に本パンフレットに関連した2本を選び掲載しました。併せてご検討いただければ幸いです。

 私たち日本と世界の反戦平和運動の役割は、今非常に大きくなっています。来るイラク戦争は、かつての湾岸戦争とも、対アフガン戦争とも、更には旧ユーゴスラビア空爆などとも様相が異なります。空爆だけでも、砂漠戦だけでも、洞窟や人口非密集地での戦闘でもないからです。400万人が密集する都市部での市街戦が中心になります。イラク側の抵抗が大きければ大きいほど人口密度の高い都市住民の被害は甚大なものになるでしょう。あのジェニンの大虐殺があちこちで再現されることを何よりも恐れます。
 かつての砂漠地帯ではなく都市周辺に劣化ウラン弾(DU)がばらまかれると一体どうなるのか、心配です。湾岸戦争後の経済制裁下ですでに50万人とも100万人とも言われる弱い立場の子どもたちが犠牲になりました。都市部で市街戦が始まると一体どうなるのか。私たちはブッシュのイラク攻撃を絶対阻止しなければならないし、自国政府にこのブッシュの残酷極まりない、無謀で無法な侵略戦争への加担をさせてはなりません。

(5) ハートゥング氏の研究と私たちの一定の研究からつかんだ強い確信は、こうです。−−ブッシュ政権と核・軍産複合体、ブッシュ政権と石油メジャーは不可分一体のものであるということ。兵器メーカーのカネ儲けのためならイラクの民衆、イラクの子どもたちがどうなろうと知ったことではない、飢えと貧困で苦しむ中東やアジアやアフリカや中南米の、全世界の途上国の住民の命や生活などどうでもいい、石油メジャーのカネ儲けのためなら地球温暖化で人類と地球が滅んでも構わない、つまりブッシュ政権は、世界平和と地球環境、人類の生存への最大の脅威、最大の敵であるということ。従ってまずはブッシュ政権を打ち倒さなければ、世界平和も人類の生存も決して訪れない、また地球環境の破壊からも免れないということ。

(6) 最後になりましたが、ハートゥング氏は、論文を翻訳したいとの私たちの申し出に対して、快く許諾してくださいました。深く感謝するとともに、氏と世界政策研究所・武器取引情報センターの米国内での粘り強く系統的な研究・暴露活動に敬意を表します。

 このパンフレットは、アフガン戦争の被害を暴いたパンフレット『アメリカはアフガニスタンで何人の人々を殺したのか』の続編をなすものであり、未曾有の戦争犯罪を引き起こした政権中枢の張本人たちを弾劾するものです。同時に、私たちはこのパンフレットの作成過程でブッシュ政権の好戦性を明らかにするためには石油・エネルギー産業との関係を研究することが不可欠であることをますます痛感するようになりました。第3弾として近く取りまとめ発行する予定にしています。
 
 私たちは、核・軍産複合体と「死の商人」をボロ儲けさせただ肥え太らせるためだけの戦争を断固拒否します。石油メジャーの利潤追求と石油利権のためだけの戦争を断固拒否します。核・軍産複合体の利益のためなら人殺しも国際法無視も何でも平気でやる汚い戦争を断固拒否します。対イラク戦争阻止のため、世界平和を希求する全ての市民の皆さんの間でこのパンフレットが活用されることを願ってやみません。読者の皆さんのご意見、ご批判、ご鞭撻をいただければ幸いです。

2002年10月
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局

[English]