ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(]W) |
国連安保理決議1441に抗議する −−ブッシュは「強制査察」を開戦の口実にするな ○「強制査察」はイラクに対する露骨な主権侵害であり武力行使に道を開く「戦争挑発決議」である。 ○しかし決議は「自動開戦」を認めていない。「即時開戦回避」を平和運動強化の機会にしよう。 ○小泉政権はなし崩し的に対イラク戦争に加担するな。 |
■ 国連安保理事会は11月8日(日本時間9日)、米英が提案したイラクに「強制査察」を押し付ける決議1441を全会一致で採択しました。そして13日、フセイン大統領はやむを得ざる決断としてこれを受諾しました。
私たちは1441に強く抗議します。なぜか。1441は国際法違反、国連憲章違反の疑いが濃く、全く転倒した決議だからです。考えても見てください。どちらが戦争を仕掛けどちらが仕掛けられようとしているのか。マスコミ報道はこの根本的な問いを避けています。マスコミはまるで示し合わせたようにがなり立てます。「国連決議違反も甚だしい」と。しかしそれがブッシュの戦争を正当化する理由になるのですか。ぜひ答えて欲しいものです。
なぜ国連は戦争に突き進むアメリカの側を止める決議をしないのか。なぜ戦争を仕掛けられるイラクの側が「強制査察」、つまり懲罰されなければならないのか。なぜ戦争を仕掛ける加害者アメリカの側が何の義務も遵守事項も一切ないのに、攻め込まれる被害者のイラク側が一方的で全面的な義務と遵守事項を負わねばならないのか。世界最大の大量破壊兵器保有国でありかつそれを脅しの道具とするだけではなく実際に広島・長崎で使ったアメリカが、一体如何なる資格で大量破壊兵器を理由にイラクを攻撃することができるのか。全く不当極まりないもので、まさに不正義と不公正の極致です。
※昨年の9.11までは、湾岸戦争以来のイラクの大量破壊兵器の武装解除は基本的には終了しており、経済制裁についても解除に向かって大きく前進しようとしていました。10年以上も前の国連決議を持ち出して、今回のイラク攻撃を正当化することなどできるはずがありません。
■ 私たちはこれまでも、国連査察が、米国によるスパイ行為であり国家主権を侵害する挑発的なものであることを批判してきました。アメリカこそ都合の良い時だけ国連決議を持ち出し、都合が悪くなれば拒否権を行使したり無視したり。もう横暴の限り。アメリカこそ国連決議違反の常習者ではないですか。
今回の1441の根幹である「強制査察」は、これまでの査察とは質的に異なる非常に露骨な戦争挑発行為、独立国家の主権を踏みにじる行為です。明らかに米の武力行使に道を開く、戦争の口実作りのための決議と言えます。
※「ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢(\)ブッシュのイラク攻撃と国連査察問題−−再び急浮上しようとしている国連査察の実態を暴く−−」
■ なぜブッシュはここまでイラクに執着するのか。それは大量破壊兵器でも査察問題でもありません。親父への復讐でも、イラク国内の人権侵害でもありません。全部取って付けたウソ、屁理屈です。真の狙いは、“石油”です。“石油支配”であり“石油支配のための中東支配”です。軍産複合体の金儲けのための戦争です。各国政府や国連は本当は分かっていながらなぜ非難しないのか。石油資源を略奪するための侵略戦争に、国連は、いわゆる「国際社会」は、更にはマスコミはなぜ目をつむるのか。歴史を100年以上も昔に引き戻す資源略奪の野蛮極まりない植民地戦争をいつから認めたのでしょうか。
※ブッシュ政権が軍産複合体の経営者やロビイストから成り立つ特異な政権であることについては、私たちの新刊パンフット『ブッシュ政権と軍産複合体』をぜひご覧下さい。
■ 1441決議は「自動開戦」を認めていません。これを認めているかのように主張するアメリカはウソを付いているのです。「決議不履行」→「開戦」ではないのです。フランスやロシアがそう言っているからだけではありません。国際法および国連憲章の上で法的原理的に「侵略行為」がないのに「自衛権行使」もあり得ず、「開戦」も何もあり得ないのです。この点、日本の新聞やテレビ、マスコミを見る限り全くいい加減で、まるでこんなバカなことが可能であるかのようにデタラメな報道をしています。だまされてはなりません。
根本的欠陥を持つこの決議にも複雑な力関係が反映しています。ブッシュ政権の対イラク攻撃を先導する超タカ派のネオ・コンサーバティブとパウエルら伝統的タカ派との間の、米とそれ以外の常任理事国との間の、イラクとその周辺の中東諸国の間の、そしてアラブ諸国の民衆の反発、それぞれの国内の反戦世論、急速に拡大する反戦平和運動などの力の。等々。
そして8週間もの予想外の長い交渉期間を費やさせ、当初案を軌道修正させた、その焦点こそが「自動開戦」条項の除外だったのです。国際的な反戦平和の世論が反映したことは間違いありません。だから利権一つでいつ米に寝返るか分からないフランスやロシアに任せてはならないのです。反戦平和運動こそが民衆の下からの総意として「自動開戦あり得ず」の声を広げ国際世論に定着させて行かねばならないのです。
■ ブッシュ大統領や閣僚たちは、「決議は米大統領の手を縛らない」、国連決議に関係なく「決議不履行」をもって開戦する、あるいは元々国連決議とは無関係に単独行動するとの発言を行っています。この決議が必ずしも全面的にはブッシュの思惑通りに行かなかったことを示しています。自ら提案しながら、自分は関係ないと言っているわけです。全くヒトをバカにしたような発言です。
国連ばかりに気を取られてはなりません。出し抜けに開戦する危険性の方が大きいとも言えるからです。「強制査察」で自分の指図や横やりが思惑通り行かなかった時、単独開戦に踏み切るでしょう。予断は許しません。
■ 「強制査察」をめぐり、これから非常に複雑で緊張した政治過程が始まります。12月8日が最初の節目です。「大量破壊兵器がない」という「申告」に難癖を付けるはずです。ブッシュ政権のタカ派たちが、開戦を叫ぶでしょう。他の国連理事国との間で何回も政治交渉が行われるはずです。いずれにしても査察団がイラク国内に入り一定の期間査察活動をすることは、ごくわずかの期間ですが、即時開戦を後ズレさせました。その後も決議が示した節目(査察再開:45日以内、査察の最新情報の安保理への報告:105日以内)のそれぞれの段階とそれぞれの過程で、開戦のきっかけが訪れます。
いよいよこれからが私たち反戦平和の市民運動の正念場です。日本を含む反戦平和運動の前進だけが1441の曖昧で危険な本質を抑え込むことができるのです。私たちは、一方で、「自動開戦」させないために、この「強制査察」を開戦の口実にさせないために、その不当性、その主権侵害を厳しく監視し徹底的に暴露し批判するキャンペーンの期間として取り組みます。他方で、イラクが受け入れ査察団が入ることで即時開戦は少しだけ後ズレしました。私たちはこの束の間の猶予を、反戦平和運動強化の機会と捉え、様々な反対の取り組みを強めたいと思います。皆さんと一緒にブッシュの対イラク戦争阻止を勝ち取りましょう。
■ 翼賛体制にある米紙は言うまでもありませんが、日本のマスコミも全くひどいものです。1441についての各紙の社説や紙面は、まるでブッシュさながらに、イラクに向かって「これは最後通牒だ」「即時・無条件・無期限に受諾せよ」「問題はフセインの方だ」と一斉に迫っているのです。あれ、いつから日本の新聞は主戦論に傾いたのか、と目を疑わせるほどの過熱ぶりです。イラクに向かって守れ、遵守せよはおかしな話です。問題は戦争に走るアメリカの方でしょう。紙面はフセイン糾弾で埋め尽くされていますが、その実はイラク民衆とアラブ民衆に対する侮蔑と民族差別です。また湾岸戦争後のわずか10年程度の歴史も知らず書き立て、公平な報道、真実の報道を完全に放棄しています。
私たちは、以下で1441と国連憲章の条項に当たり、歴史的事実と付き合わせてその問題点を具体的に明らかにしたいと思います。
2002年11月15日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
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(1) 国連安保理事会は11月8日(日本時間9日)、米英提案の対イラク決議1441を全会一致で採択しました。この決議はアメリカがイラクに戦争をしかけるために安保理に提案し採択させたものであり、国連の歴史の中でも最も危険で、最も愚かなものです。私たちはこのような理不尽、不条理、横暴に断固抗議します。
かつてこんな国連決議があったでしょうか。実際に侵略もしておらず、侵略をする意志もない国に、突然法外で一方的な条件を突き付け、呑まなければ武力制裁もあり得ると迫るような決議が。これは「戦争挑発決議」です。イラクが到底受け入れられないような「強制査察」=主権侵害行為を押し付け、「これが最後通牒だ」、違反すれば「重大な結果に直面する」、すなわち武力行使すると言うのですから。「国連の死」を意味するほど重大な過ちだと言えます。
※注釈1.【イラク問題に関する決議1441 13項】は「安全保障理事会がイラクに対し、義務違反が続けば重大な結果に直面するであろうと、再三警告してきたことを想起する。」このように“重大な結果”の表現でアメリカの武力行使を容認した。ただし「自動的承認」でないことは後述。
(2) ブッシュ大統領はこの安保理決議の前にすでに戦争計画を承認しました。米マスコミは今や「大本営発表」一色です。曰く。「着々と進む兵器・物資の大量輸送」「続々とイラク周辺に米軍が集結」。「攻撃はこのように行われる」「(決議に従わないなら)開戦は12月8日」「10日間の空爆の後に6−8万人の地上軍が侵攻」等々。ライス大統領補佐官に至ってはまるでヤクザまがいの発言をしました。「銃口を頭に突き付けてやる」と。これら全てがイラクへの圧力となっているのです。戦争は秒読み段階に入っています。今やアメリカは暴走する凶暴な「戦争マシーン」と化しているのです。
(3) 1441の最大の問題は、その前提条件そのものです。自動的ではないにしろ武力行使に道を開くこの決議には根本要件−−“侵略行為”とそれに対する“自衛行為”−−が欠如しているのです。武力行使につながる「重大な結果に直面する」という表現がなぜ盛り込まれたのか。その問題です。この点については第U章で詳しく触れます。
そもそもブッシュがなぜ戦争したがっているのか。なぜ平和的解決ができないのか。その正当な理由が何一つ示されていないのです。国連は何を根拠に、このような危険な決議を審議し決議までしたのか。それ自体がまず第一に非難されるべきです。何の罪もないイラク民衆の生存と生活、一国の独立と尊厳がかかっているのです。ブッシュがごり押しするから、では済まされません。ブッシュが何を理由に、何を根拠に戦争するかを明確に述べていないのに、決議に賛成した国々は何を根拠に何を判断したのでしょうか。教えて欲しいものです。
(4) 次の問題は、運用次第で即時開戦の口実を与えかねない「強制査察の内容」の準戦闘行為、戦争挑発行為の危険性です。そもそもなぜ今、従来型の「一般査察」ではなく、「強制査察」「武装査察」なのか。全く正当性がありません。イラクが大量破壊兵器を保有する新証拠は何も明らかにされていません。どこが差し迫ってイラクにそうした兵器で攻撃されようとしているのか。決議はその急迫性と必要性を何一つ述べていません。開戦の危険をはらむ「強制査察」の非常に強圧的で暴力的な、イラク側にとっては屈辱意外の何物でもない実態については、第V章で詳しく触れます。
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(1) ブッシュ大統領は、国際法と国連憲章に照らして「自衛権行使」あるいは「その切迫性」を国際社会の前に、何よりもイラク国民の前にはっきりと示す義務があります。1万q近くも遠く遠く離れたアメリカにイラクが一体どんな脅威を与えたというのかを。
あるいはイラクはサウジを攻めたでしょうか。再びクウェートを攻めたでしょうか。アメリカが戦争を仕掛けるまで切羽詰まったイラクの脅威とは一体何なのか。1441はこれらの素朴な疑問に何一つ答えていません。
湾岸戦争の際の国連決議で「武力行使」が正当化されたのはイラクのクェート侵攻という厳然たる事実があったからです。今回とは全く異なります。湾岸戦争後の安保理決議はイラクによる大量破壊兵器の廃棄・査察を決めましたが、従わなければ戦争をしかけ、政権を打倒をすることなどを認めていません。これも今回とは全く違います。平和的・政治的な交渉で解決すべきことを、一切交渉もせず一挙に戦争で片づけるようとすることなど絶対許されません。
国際法の根本原則はこうです。「武力攻撃が発生した場合にしか武力行使を認めない」(国連憲章第51条)−−1441はこの国連憲章に違反するものです。また「国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限はない」、(国連憲章第2条)−−つまりイラクの国家主権を制限するような露骨な「強制査察」、「武力で威嚇する査察」を押し付けることも国連憲章では認められていません。私たちは、果たして国連憲章や国際法そのものに反するこのような安保理決議が有効なのか、安保理にその資格があるのか深刻に疑わざるを得ません。
※注釈2.【国連憲章第51条】は「武力行使が現実に発生した場合」を除き自衛権の行使を認めていない。「この憲章のいかなる規程も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置を取るまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」
※注釈3.【国連憲章 第2条 4.】には、はっきりと明記されている。「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と。
※注釈4.【国連憲章 第2条 7.】には、「強制査察」や「武装査察」を否定する条項が明記されている。「この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基づく解決に付託することを加盟国に要求するものではない。」
(2) 今回の決議が、もし武力行使につながれば、アメリカが今年9月に「先制攻撃戦略」を公式の国家戦略として打ち出して以降、初めての実例になります。国際法と国連憲章をあからさまに破壊する行為なのです。なのに誰もこの危険性を非難していません。
1441には「強制査察」の具体的なあれこれの方法と手順は書かれているのですが、「自衛権行使」の概念は出番すらないのです。まさに「自衛権行使」がない場合でも侵略を可能にする、やってはならない決議なのです。それとも国連は、アメリカの、攻められてもいないのに攻める「先制攻撃戦略」を国連憲章と国際法に照らして正しいと認めるのでしょうか。あるいは攻められてもいないのに先手を打って攻めるという「無法状態」を新しい基準として認めるとでも言うのでしょうか。インドとパキスタンなど、ありとあらゆる民族紛争や地域紛争の基準とするのでしょうか。あるいは「二重基準」を設け、アメリカだけにこの特権を与えるのでしょうか。アメリカを国連の上に立つ“例外者”として認めるというのでしょうか。ブッシュは、国連憲章や国際法に違反しても、やりたい時に、やりたい相手と戦争すると主張しているに等しいのです。こんなやりたい放題を認めたのは国連の歴史的汚点と言わねばなりません。
V
(1) フセイン大統領は11月13日、最終的に1441受け入れを決めました。国民会議は受け入れ拒否を決めましたが、フセイン大統領は戦争を回避するためにやむなく受け入れたのです。そもそも最初からイラクの選択肢は2つしかなかったのです。即時開戦か、「強制査察」を受け入れるか。イラク民衆の屈辱ははかり知れません。
問題はブッシュの侵略的暴走です。理屈抜きに戦争したがっていることです。査察を受け入れたところで、申告(30日以内)、査察再開(45日以内)、査察の最新情報の安保理への報告(105日以内)のそれぞれの段階とそれぞれの過程で、アメリカが難癖を付け戦争を仕掛けようとするでしょう。
(2) 大量破壊兵器とその査察−−これまでは、これが「経済制裁」、および「飛行禁止区域設定=空爆」と併せて、米英にとって「イラク封じ込め政策」、つまり中東支配=石油支配の最も好都合な手段でした。しかしその大量破壊兵器が1990年代の国連査察で徹底的に破壊され、事実上存在しなくなった現在では、この「査察」という手段は”虚構”でしかありません。アメリカが難癖を付けて空爆に踏み切り前回の査察が中断する1998年の時点で、イラクの大量破壊兵器は殆ど破壊されました。これは国連のUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の正式報告ですし、スコット・リッターという米海兵隊出身の主任査察官もこれを繰り返し言明しています。少なくとも隣国に深刻な脅威を与えるものは今は存在しないというのが、今や常識になっているのです。
現に米英も何一つ証拠を提示しておりません。「確かに大量破壊兵器は存在しない。」「しかし今はないというだけで、材料を手に入れれば数年で保有する」だの、「証拠が見つかった」と騒ぎ立て古い偵察衛星写真を持ち出したが、すぐにそれがウソだと指摘され赤恥をかいたりだの、何の説得力もないというのがこれまでの経緯です。多くの人々は気が付いているはずです。ブッシュの真の狙いは、大量破壊兵器云々などではなく、イラクと中東の石油資源の略奪であり、軍産複合体の金儲けであることを。
今や“虚構”でしかない「査察」を「大義名分」にするような行為は全面的に中止すべきです。「経済制裁」「飛行禁止区域設定」を含めて、「イラク封じ込め政策」を全面的にやめるべきです。
(3) なのに、今なぜ「強制査察」「武装査察」なのか。眼目は「査察」にではなく、「強制」「武装」にあるのです。イラクはこの9月段階ですでに国連査察の全面・無条件受け入れを表明しました。この時米が横ヤリを入れブリクスUNMOVIC(国連監視検証査察委員会)委員長が一旦は査察再開に動き出したものを中断させたのです。米は公式の査察機関UNMOVICが主導したのに何も出ないという事態を恐れたのです。
そこで考案されたのが、大量破壊兵器が出なくても開戦に持ち込める方法、つまり徹底的にイラクに屈辱を味わわせ国家主権を侵害し、挑発してイラクに先に手を出させる−−これが「強制査察」「武装査察」なのです。以下、その卑劣なやり方を具体的に見ていきましょう。
a)これは「査察」ではなく「戦争の下準備」に他ならない。
疑わしい施設への「即時・無条件・無制限の査察」が何を意味するのか。すでにアメリカの大兵力がイラク周辺と湾岸地域一帯に結集し、トルコやアフガンの米軍も即応態勢に入っており、イラク南部や北部では空爆をしまくっています。いつでもイラクを攻撃できる態勢で包囲していることを考えれば「強制査察」は極めて危険で重大な意味を持ちます。12月には周辺で軍事演習も強行というではありませんか。
米軍は、必ず「査察」そっちのけでフセイン大統領と政権指導者およびバース党幹部の居場所を「無条件・無期限に」執拗に探し回すでしょう。米大統領がフセイン大統領の暗殺をCIAに認めている下で、米軍や米CIA要員がUNMOVICの顔をして自由にイラク国内に入れば彼らの最優先の仕事は「査察」などではありません。大統領と政府首脳の居場所、軍と政治の指揮命令系統、軍事基地と工業の中枢を自由に偵察することなのです。
全く呆れ果てます。米英の戦争当事者を「無条件・無期限」にイラク国内に大量に入れることを「査察」の名の下に義務化するのですから。どこを、そして誰を攻撃すればよいか、その実地調査を、国連の承認でやらせるというのですから。少なくとも戦争当事者米英を査察団からのぞかない限り、査察の指揮権から排除しない限り、「強制査察」は「戦争の下準備」にしかならないでしょう。こんな当たり前のことをどのTVもどの新聞も報道しないのです。
※注釈5【安保理決議1441 5項】「イラクが、UNMOVICとIAEAに対し、両機関が査察を希望するあらゆる地下、地域、施設、建物、装備、記録、輸送手段への即時・無妨害・無条件・無制限の立ち入り・入手を認めること」
※注釈6【安保理決議1441 7項】「UNMOVICおよびIAEAは、イラクに出入国する無制限の権利、査察場所への、および査察場所からの自由・無制限・即時の移動の権利、あらゆる場所と建物を査察する権利を持つ。これには、決議1154(1998年)の規定にかかわらず、他の場所と同等に大統領施設に即時・無妨害・無条件・無制限に立ち入ることが含まれる。」
b)「武装部隊」を随行させることができる。
さらに危険なのは「査察団の安全性」のためと称して「国連保安要員」という「武装部隊」のイラク入国と武装警備を認めていることです。当初米英決議案に記された「米軍を引き連れた武装査察」につながる内容がそのまま残っているのです。
※注釈7【国連安保理決議1441 7項】「・・・UNMOVICおよびIAEAの施設の安全は、十分な国連保安要員によって確保される。」
c)軍事的な「封鎖地域」を作ることができる。
さらに決議は、査察団が査察対象施設について陸上、空中からのイラク側の接近を禁止する権限を持たせています。しかもアメリカは査察中は上空から監視すると宣言しています。査察団は航空機やヘリ、果ては無人偵察機まで飛ばして偵察してよいことになっているのです。いうまでもなくこんな禁止措置を強制できるのは米軍だけです。そのことは、この決議が米軍にイラク国内での軍事行動の自由を与えかねず、そのまま武力挑発につながりかねない危険性があることを示しています。「武装部隊」と「封鎖地域」設定は、イラクの部分的地域的な「軍事制圧」につながり、なし崩し的にそのまま開戦につながりかねない危険があるのです。
※注釈8【国連安保理決議1441 7項】「・・・UNMOVICおよびIAEAは、査察場所を凍結する目的で、周辺地域や通行回廊を含めて立ち入り禁止区域を宣言する権利を持つ。・・・・立ち入り禁止区域において、イラクは地上および空中の移動を中止する。」
※注釈9【国連安保理決議1441 7項】「・・・UNMOVICおよびIAEAは、有人・無人偵察機を含め、固定翼および回転翼の飛行機の自由で無制限の使用並びに着陸の権利を持つ。」
d)米英が必要と認めた人物を家族共々拉致ないし強制収容し国外で尋問・拷問することも可能。
決議は、科学者などを外国に連行して事情を聞くことも可能としました。しかし「科学者」だけではありません。条項によれば「面接を希望する全ての公務員」「その他の人物」への「即時・無妨害・無期限の」強制収容が可能になるのです。
※注釈10【安保理決議1441 5項】「・・・・UNMOVICまたはIAEAが・・・面接を希望するすべての公務員その他の人物への即時・無妨害・無制限の、かつ個人的な接触を認める・・・UNMOVICおよびIAEAはイラク国内および国外で自己裁量で面接を行い、イラクの国外で面接した人およびその家族の旅行を円滑にすることができ・・・こうした面接がイラク政府の立ち会いなしで行うことができると決定する。」
e)国連憲章違反の空爆を徹底的に行い、これに対する自衛権行使を口実に、決議違反をでっち上げる危険。
第8項には「いずれかの加盟国のいかなる代表もしくは要員に対しても、敵対行為を行ったり、行うと脅したりしてはならない」とあります。米はこれを逆手に取ることができるのです。例えば、米がイラクの南部と北部に設けた「飛行禁止区域」は国連憲章に違反する違法なものです。米がこれまでにない大規模な空爆をやったとしましょう。イラクは国連憲章第51条に基づいて自衛権を行使できるわけですが、米は1441第8項に違反すると騒ぎ立てるでしょう。
※注釈11【安保理決議1441 8項】には「イラクが、国連またはIAEAのいかなる代表もしくは要員、あるいは、いずれかの安保理決議を支持して行動しているいずれかの加盟国のいかなる代表もしくは要員に対しても、敵対行為を行ったり、行うと脅したりしてはならないと決定する。」とあります。
W
(1) 1441の論理はこうです。@イラクは安保理決議を不履行してきた。A大量破壊兵器や長距離ミサイルの拡散は世界の平和と安全に対する脅威である。Bだから即時・無条件・無期限の査察(強制査察)を行う。C決議に違反すれば安保理に「報告する」「安保理を開催し完全履行の必要性を検討する」。−−ここには武力行使を容認する文言は一切含まれていません。かつて湾岸戦争の時、武力行使を容認した文言は「あらゆる必要な手段を取る」という表現でした。修正前の米英案(10月初め)には、この文言があったのですが、フランスやロシアの反対で削られたのです。この点を過小評価してはなりません。
これに対して米の1441解釈は、@イラクは国連決議に「重大な違反」をしてきた。A新決議を受け入れないなら、また履行しないなら「更なる重大な違反」になる。Bその場合「重大な結果に直面する」。−−「重大な結果に直面する」という表現で武力行使をやろうとしているのです。
しかし米英解釈には重大な問題があります。「決議違反」といういわば「微罪」では侵略戦争は起こしてはならないというのが国際法の根本原則だからです。国際法や国連憲章で「自衛権」が認められる原則については、すでに第U章で詳しく述べた通りです。従って「重大な結果に直面する」が、即開戦にはなりえないということも、そこから必然的に出てきます。決議は「自動開戦」を認めていない、「決議不履行」→「開戦」ではないのです。
※注釈12【安保理決議1441 4項】「本決議の実施に伴ってイラクが提出した申告における虚偽や脱落、および、イラクによるいかなる時点での本決議の順守不履行や、本決議の全面実施への非協力は、イラクの義務に対するさらなる重大な違反を構成するものであり、以下の第一一項および一二項に沿った評価のため、安保理に報告するものと決定する。」
※注釈13【安保理決議1441 11項】「UNMOVIC委員長およびIAEA事務局長に対し、査察活動に対するイラクのあらゆる妨害、ならびに、本決議の下での査察についての義務を含め、軍備解除義務の順守に対するイラクのいかなる不履行についても、直ちに安全保障理事会に報告するよう指示する。」
※注釈14【安保理決議1441 12項】「国際の平和と安全を確保するため、状況ならびにすべての関連安保理決議の全面順守の必要性について検討するため、上記第四項あるいは第一一項に基づく報告の受領に際しては、直ちに会合を開くことを決定する。」
※注釈15【安保理決議1441 13項】「これに関連し、安全保障理事会がイラクに対し、義務違反が続けば同国は重大な結果に直面するであろうと、再三警告してきたことを想起する。」
(2) 要するに、1441とは「強制査察」決議なのです。「武力行使決議」ではありません。私たちは「自動開戦」を認めているかのように主張するアメリカを厳しく非難しなければなりません。もちろん、「重大な結果」は曖昧であり、ブッシュ政権はこれをもって、武力行使容認を騒ぎ立てるでしょうし、現に騒ぎ立てています。しかしその曖昧さをブッシュ陣営の得点にさせてはならないのです。
フランス、ロシア、中国の国連常任理事国のうち、イラク攻撃に走る米英を除く3ヶ国が、1441採択当日、共同声明を発表しました。明確に次の3点を宣言しています。
@ 武力行使における全ての自動性を排除する。
A 決議に違反した場合は、第4、11、12項を適用する。つまり上述した「報告」と「安保理開催」だけである。
B 第11項冒頭に「UNMOVIC委員長およびIAEA事務局長」と書かれているように、「義務不履行」の解釈をするのは、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)と国際原子力機関(IAEA)である。米英ではない。
フランスやロシアだけではありません。殆ど全ての国連加盟国、世界中の国々が「自動的開戦」を断固否定しているのです。私たちもここをきちっと評価しなければなりません。多くの国々が「重大な違反は安保理に報告される」「どう対応するかは安保理で判断する」、だから新決議は「アメリカの一方的武力行使への歯止めだ」と主張しています。「2段階決議プロセス」(two-resolution process、あるいはtwo-step process)、「武力行使自動装置ではない」(no automatic mechanism in using force)のです。
確かにフランス・ロシアなど当初米英決議案に反対していた諸国は、最後の最後に、武力行使に道を開く米英案を結局支持しました。これは平和を求める国際世論に対する裏切りであり背信行為です。アメリカの戦争意志が固いと見、これに反対してイラク国内での自分の石油権益を失うことを恐れ、あるいは対米協調を壊したくないとの判断で妥協を選んだのでしょう。
しかしフランスやロシアや中国は、米英を除く圧倒的多数の国々や国際世論の方も無視できませんでした。決議には、様々な複雑な力関係が反映しているからです。ブッシュ政権内の「2つのタカ派」の対立、米英とそれ以外の常任理事国との間の対立、米英とイラクとその周辺の中東諸国の間の対立等々。更にその背景には、最近急速に高揚し始めた欧米の反戦平和運動や、中東現地のアラブ民衆の激しい怒りや反発があります。
※なお、Z-netには、この1441をめぐる討論が紹介されている。
・「Resolution 1441」by Justin Podur; ZNet Sustainer Program; November 11, 200
http://www.zmag.org/content/print_article.cfm?itemID=2613§ionID=15
・「Discussion of UN 1441 continued a discussion regarding Justin Podur's recent article」by Justin Podur and Rob Wheeler; November 14, 2002
http://zmag.org/content/print_article.cfm?itemID=2620§ionID=15
X
(1) 今回の1441によって、まるでイラクの「強制査察」が中東での、更には世界での最大の争点であるかのようにデッチ上げられてしまいました。元々はブッシュ政権内の「2つのタカ派」の間の対立の中で、チェイニーやラムズフェルドらウォルフォウィッツやフェイスらのネオ・コンサーバティブ(新保守主義者)の単独開戦論を抑えるために、パウエルを筆頭とする共和党の伝統的保守派が、できるだけ多国籍軍を組織しフセイン打倒後にもできるだけ多くの国々を巻き込みカネと兵力を出させるため、国連を抱き込まねばならないという計算からです。いわばブッシュ政権が人為的に作り出したものなのです。米とその翼賛的マス・メディア、それに追随する日本のマス・メディアが、当たり前であるかのように報道していますが、本当にイラクへの「強制査察」が世界政治の本来の中心点なのか、もう一度よく考えなければなりません。
実は今年3月、イラクはクウェートとの間で国境線を確定させ和解が成立、善隣友好関係強化に大きく踏み出しました。イラクはかつて侵略したクウェートと和解するほど隣国との関係改善に踏み出していたのです。アラブ連盟は一致して経済制裁の解除を呼びかけました。湾岸情勢は改善され、湾岸の当事者たちが自らの地域の平和と安定に向かって一致団結して前進しようとしていたのです。
ブッシュ政権が恐れたのはこの湾岸の平和と安定だったのです。米の中東支配の根幹だった対イラク経済制裁が解除されれば、ブッシュの中東戦略が崩壊してしまうからです。イラク封じ込めが崩れれば、中東の石油支配が大きく崩れるからです。
(2) 日本のマスコミで全く報道されない事実があります。イラク経済制裁下での「大量殺戮」です。湾岸戦争後10年以上にわたる経済制裁の下で、罪もない子どもたち、女性や老人たちが犠牲になっていることは、反人道行為ではないのでしょうか。現に国連の人道関連部局で働いていたトップが抗議の辞任をするほどの深刻な事態が起こっていることが、なぜ指弾されないのか。10年で50万人、100万人という大勢の5歳以下の子どもたちが殺されているのです。世界的な人権団体が「民族の抹殺」「ジェノサイド」と非難するほどの米英による犯罪行為がなぜ罰せられないのか。
イラクに関して言えば経済制裁解除こそが、中東政治の、更には世界政治の最大の争点にならなければならないのです。米英による「イラク封じ込め政策」は終止符を打つべきです。アラブ連盟が自主的に行おうとしていた湾岸の平和と安定、政治的軍事的緊張緩和の過程を促進すべきです。国連を無視して勝手に「空域設定」を行い、空爆と殺戮を繰り返している米英の反人道行為は即刻中止すべきです。
(3) もう一つ、中東において、本来中心的争点にならねばならない現実が、米欧系の巨大マス・メディアの報道からすっぽり抜け落ち、闇に葬られようとしています。イスラエルの侵略と蛮行を即刻中止させる問題です。今や中東地域最大の争点、否、世界政治における最大の争点、今すぐに解決しなければならないのは、イスラエルの対パレスチナ全面戦争、とどまるところのないパレスチナ市民への虐殺です。
国連決議違反を言うならば、パレスチナに軍事侵攻を繰り返し、何の罪もない人々を虫けらのように次々と虐殺し続けている侵略者イスラエルとシャロン首相こそ弾劾すべきです。大量破壊兵器を言うなら、100個の核兵器保有が公然の秘密になっているイスラエルこそ「強制査察」すべきです。庇護者アメリカが絶えずイスラエルを擁護し支えているから、見過ごされているだけなのです。
(4) 大量破壊兵器の武装解除を言うならば、かつて広島・長崎で大量破壊兵器である核兵器を歴史上初めて実際に使用した国、現在もなお世界最大の核戦力・生物兵器・化学兵器を保有し、更には核を含めて先制攻撃戦略を掲げて他国を威嚇している国、世界中で軍事介入、軍事行動を繰り返している国、そして今まさに何の正当な理由もなしにイラクに侵略しようとしているアメリカこそまず武装解除されなければならないはずです。しかし常任理事国アメリカは拒否権を持つが故に、アメリカに不都合なことは議題にすらならないのが現状です。アメリカにも、イスラエルにもイラクを批判する資格などありません。
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(1) 世界最大最強の国アメリカの理不尽な横暴と暴虐に、真正面から異を唱える国がなければ、国連は一体どうなるかを、1441は示したと言えます。色々問題があったとしてもソ連や社会主義体制が存在し健在であった時代、民族解放運動や非同盟運動が前進していた時代の国連と、ポスト冷戦後の現在の「アメリカ一極支配」の時代の国連は大きく変わろうとしています。
(2) こんなバカな決議はありません。戦争をしたくないイラクの方を「強制査察」で徹底的に痛めつけながら、戦争で暴走状態に突き進んでいるアメリカにはフリーハンドなのです。またイラクには主権を放棄させるほどの武力を背景にした暴力的な義務が課せながら、アメリカは全く守る義務がないのです。現にアメリカ自身が、自分で決議を提出しながら、決議には縛られず戦争をすると公言してるのですから。自国に都合の良い部分だけを利用する「使い捨て多国間主義」と揶揄されるのも当然です。
(3) 私たちが危機感を持つのは、1441がアメリカの武力行使や、「フセイン後」の軍政への軍事的経済的協力の「大義名分」にされてしまうことです。各国の対米戦争協力について、必ず思い出される言い訳が「国連決議」なのです。
1441をブッシュの武力行使の口実にさせてはなりません。各国が加担する手段にさせてはなりません。また「フセイン後」のカネや兵力の手段にさせてはなりません。
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(1) 日本のマスコミはひどいものです。「イラクはいさぎよく協力せよ」(朝日)。「全面履行が戦争回避の道だ」「ブッシュ大統領が・・・粘り強く国連を通じて解決を進めた努力を評価したい」「日本政府も真剣な対応を迫られることになった」「これが最後の機会である」「武力行使の回避はイラクの決断にかかっている」(毎日)。「イラクの時間稼ぎはもう許されぬ」(日経)。「イラクに与えられた最後の機会」それが「戦争を避ける唯一の道である」「イラクの対応次第である」(読売)。「最後通告と受け止めよ」「ブッシュ政権・・・この努力は評価されてよい」「イラクにはもはや逃げ道はない」「日本も・・・米国の同盟国としての役割、対処方針を決断するときがきた」(産経)。−−「よくやったブッシュ」「いざ決戦へ」。主戦論のオンパレード。戦争を煽っているとしか思えません。いつからブッシュ断固支持、対イラク戦争断固支持に変わったのか。クビをかしげざるを得ません。
(2) 私たちにとって何よりも重要なのは小泉政権の態度です。小泉首相は安保理決議を直ちに歓迎し、イラクに即時・無条件・無制限の受け入れを迫りました。そして直ちに対イラク戦争への協力を具体的に検討し始めました。
当座はアフガン戦争への協力拡大による「側面支援」で対応する構えです。しかし、戦争が始まれば、主戦論で勢いづくマスコミの高ぶりと重なってそんなものでは済まないでしょう。
アメリカはイージス艦、P3C派遣などイラク戦争に直接関与する部隊の参加を要求しています。しかしこれらの攻撃兵器を派遣することは、対イラク戦争への参戦そのものです。「テロ特措法」の際の滅茶苦茶な対応を想起すれば小泉首相は、あるいはタカ派石破防衛庁長官は、なし崩しでこれに応じようとするでしょう。
私たちは、「テロ特措法」反対の闘い、有事法制反対の闘いと同じように、もう一度平和憲法擁護を前面に出して闘いに備えなければなりません。日本政府には自衛隊もヒトもカネも一切出させてはなりません。対イラク戦争には一切の協力拒否を押し付けなければなりません。
(3) 戦争を阻止するチャンスはまだ残っています。アメリカの反戦平和運動は、新しい発展を遂げようとしています。10月6日、10月26日へ至る大衆行動が次の段階に進もうと模索し始めたのです。民主党と議会が戦争権限をブッシュに白紙委任し中間選挙でも共和党が勝利しました。ならば、民衆自身が自らの反戦平和の意志を直接「人民投票」という形で、あるいは直接的な街頭行動の形で示す段階に入っていると位置付けているのです。
「強制査察」をめぐり、イラクとアメリカの間で、イラクと国連との間で、あるいは国連の内部で、これから様々なレベルで対立が生じ緊張した政治過程が始まります。ブッシュ政権のタカ派たちが、あるいはパウエルが、ブッシュ自身が何かあるたびに開戦を叫ぶでしょう。他の国連理事国との間で何回も政治交渉が行われるはずです。いずれにしても査察団がイラク国内に入り一定の期間査察活動をすることは、ごくわずかの期間ですが、私たちに闘いの猶予を与えてくれました。
いよいよこれからが私たち反戦平和の市民運動の正念場です。確かに日本ではまだ欧米のように数十万人者人々が反戦の意志を強く示すには至っていません。しかし私たちの運動は、世界で前進する反戦平和運動の一翼です。
ブッシュ政権には何一つ真実はありません。ブッシュに追随し加担する欧米の巨大マス・メディアにも、更にそれに追随する日本の巨大マス・メディアにも真実はありません。私たちは、「強制査察」を開戦の口実にさせないために、その不当性、その主権侵害を厳しく監視し徹底的に暴露し批判するキャンペーンに全力を挙げて取り組みます。世界中の独立系メディアの情報、世界中の平和運動の仲間からの情報を可能な限り皆さんに明らかにしていく決意です。
イラクが受け入れ査察団が入ることで即時開戦は少しだけ後ズレしました。私たちはこの束の間の猶予を、反戦平和運動強化の機会と捉え、様々な反対の取り組みを強めたいと思います。皆さんと一緒にブッシュの対イラク戦争阻止を勝ち取りましょう。
ブッシュの対イラク攻撃準備と国際情勢:
(T) カナナスキス・サミットと米ロ「準同盟」化の危険性
−ブッシュ政権によるイラク攻撃包囲網構築の到達点と反戦平和運動の課題について−
(U) 米中東政策の行き詰まりと破綻を示す新中東「和平」構想
−−ブッシュ政権がなかなか進まない対イラク戦争準備に焦って、
「仲介役」の仮面すら投げ捨て公然とシャロンの側に立つ−−
(V) イラク攻撃に備え、先制攻撃戦略への根本的転換を狙うブッシュ政権
(W) 国際法・国際条約・国連決議を次々と破り無法者、ならず者となったブッシュのアメリカ
−− 鏡よ鏡よ鏡さん。この世で一番のならず者はだーあれ −−
(X) [資料編] NHK ETV2000 より 「どう変わるのかアメリカの核戦略〜米ロ首脳会談を前に」
(Y) 米ロ首脳会談とモスクワ条約について
−−米ロ「準同盟国」化で現実味増したブッシュの先制核攻撃戦略
(Z)「兵器ロビー」
20年ぶりに復活する米軍産複合体
([)ブッシュ政権の露骨な戦争挑発行為と対イラク侵攻計画
−−対イラク戦争阻止の反戦平和運動を大急ぎで構築しよう
(\)ブッシュのイラク攻撃と国連査察問題
−−再び急浮上しようとしている国連査察の実態を暴く
(])イラク「無条件査察」受け入れ後の米の対イラク戦争をめぐる情勢について
−−国連を舞台にした二転、三転の熾烈な外交戦、それと並行して進むブッシュの戦争への暴走
(]T)絡まり合うイラク情勢とパレスチナ情勢−−−
イスラエル軍が再び議長府を攻撃
(]U)こんなウソとデタラメがイラク攻撃の論拠になるのか?
−−国連と世界各国の民衆をバカにする9/12ブッシュ国連演説と9/24ブレア報告−−
(]V)なぜイラクの犠牲者について語られないのか?
−−「10.7 一周年 ブッシュの対イラク戦争に反対する大阪集会」基調報告より−−