少年鑑別所子ども白書96年版(日本子どもを守る会)より 「観護」と「鑑別」の二つの役割審判の上で必要がある場合に少年の身柄を確保する「観護」のための収容施設である少年鑑別所は、また同時に少年の資質を、医学、心理学、教育学、社会学の専門知識にもとづいて調査する「鑑別」のための施設でもあります。現在、少年鑑別所は原則として各県に1施設づつ、全国で支所を含め53の施設があります。主な職員としては観護に携わる教官と鑑別に携わる技官とがあり、全国で計1221人が働いています。 収容観護の動向観護の措置として少年法17条1項が規定するのは、家庭裁判所調査官による在宅観護と少年鑑別所への収容観護の二つですが、現実には在宅観護はあまり利用されていません。一方収容観護の人員では94年度の新収容者(入所しかつ退所した者)が14,170人。84年をピークとしてこの10年間一貫して減少傾向にあります。収容された少年たちの非行名別人員では、概ね前年よりも減少しているものの、強盗や恐喝などがやや増となっています。これは少年保護事件の推移とも一致しています。 少年法上は勾留に替えての観護措置や、やむを得ない場合の勾留場所として鑑別所を指定することができます。しかし現実には、鑑別所に収容されるのは本来の収容観護が86.9%とほとんどで、勾留にかわる観護の措置は11%にすぎません。つまり、94年中で13,066人(受理事件総数の8.7%)にのぼる身柄付送致人員のほとんどは鑑別所ではなく、代用監獄である警察留置場で身柄確保されていることになります。人権保障上、また冤罪防止の観点からも、重大な問題です。なお、収容期間は原則二週間、特に理由がある場合には4週間までとなっていますが、延長が恒常化しているとの批判があります。 鑑別をめぐる動向鑑別には、収容観護の対象少年に対する収容鑑別の他、在宅のままおこなわれる在宅鑑別、また法務省の関連機関(検察官、少年院や保護観察所など)からの依頼でおこなわれる依頼鑑別、保護者や学校などの相談に応じる一般少年鑑別などがあります。なお、在宅鑑別の88%、依頼鑑別の99%は交通事犯が占めています。 総数の25%を占めるのは、観護措置中の少年に対する収容鑑別です。これは、普段の集団生活の中で少年たちに対する行動観察をおこなうとともに、心理検査等によって少年の資質を調査する意図的行動観察を実施し、「少年を明るく静かな環境において。」「ありのままの姿をとらえて資質を鑑別」するものです(少年鑑別所処遇規則)。 鑑別結果は、各鑑別それぞれの目的に応じて利用されます。収容鑑別と在宅鑑別の場合、鑑別所が付けた鑑別判定はその少年の行く末を占う上で大きな意味を持ちます。しかし鑑別意見と実際に選択される処分とは一致しないことも多く、試験観察のように、中間処分として在宅のまま保護されることもあります。しかし近年、少年非行全体のなかで審判不開始、不処分が減少していることと呼応するように、在宅保護の判定が減少しています。 |
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