『読売新聞・歴史検証』(14)

「特高の親玉」正力松太郎が読売に乗り込む背景には、王希天虐殺事件が潜んでいた!?
四分の三世紀を経て解明される驚愕のドラマの真相!!

電網木村書店 Web無料公開 2004.2.9

あとがき

 読売vsTBSの訴訟合戦そのものは、わたしの予測通りに、裁判所の職権和解で終った。

 TBS側は「表現方法に誤りがあった」とだけ認め、読売の顔を立てたのだが、読売は紙面(95・1・14)で「覆されたTBS側主張」などと、デカデカ大見出しの「手前味噌」報道をした。しかし、TBSの関係者は現在でも、「取材した事実には確信を持っている」と明言する。

 TBSが取材でえた情報によれば、読売が佐川急便に売った六三〇坪の土地の当時の相場は約一五八億円、読売新聞が大阪市に届け出た売買価格は約二〇二億円である。佐川急便会長、佐川清の肉声談話によれば二六〇億円で売ったことになっている。この数字をTBSは撤回していない。

「渡辺社長は、[中略]今回のわたしどもの記者の取材にたいしては、佐川だからといってなんでも報道するのは『魔女狩りだ』と語気を強め、そして、ここで申し上げるのははばかられるような言葉をいわれたそうです。記者は『一生の間に、こんなに沢山罵詈雑言を浴びたことはなかった』とこぼしております」というのが、TBS「ニュース23」のキャスター、筑紫哲也のコメントである。

「こんなに沢山罵詈雑言」の真相に関しては、「チンピラ!」とか「貴様なんか殺してやる!」というのがナベツネこと渡辺恒雄社長の常用語だという情報があった。これについても、わたしは、拙著『マスコミ大戦争/読売vsTBS』の中で読売への公開質問の主要題目として明記し、本人からの回答を求めたが、返事はない。ある雑誌記者は、「ナベツネにインタヴューしたときには、ファッシズムを感じた」と語っている。ことが自分自身の問題ともなると、さらに本性がむきだしになるのではないだろうか。

「魔女狩り」という台詞は、前にも出てきた。児玉フィクサーとの疑惑を突かれた際にも、渡辺は、これを使っている。これが渡辺の「哲学」的学識の一端なのであろうか。渡辺の居直りは、ヨーロッパ中世の「魔女狩り」の歴史を歪めて利用している。まさに犯罪的な悪質さである。

 おりから政府は、一九九六年度予算案に、「住宅専門金融会社」(住専)のバブル処理費、六七五〇億円の支出を盛りこみ、これに反発する世論が沸騰中である。バブル崩壊後、こともあろうに政界疑惑の中心的存在だった佐川急便に自社の土地を売った企業、それが現在の読売なのである。そんな汚れたメディアに、疑惑企業やバブル処理の政財界の批判ができるはずがない。

 かつてはNHKが、「電波が空中に消え失せる」のを良いことにして、一般視聴者からの批判を「小石のごとく無視する」といわれた。たとえ短期間であろうとも、多数派の大衆を「大本営発表」でだましおおせ、「聖戦」を継続することができれば、それで与えられた任務は果たせるのだ。

 それこそが大手メディアのデマゴギー的本質の露骨な表われであろう。読売も、渡辺自身も、そういう姿勢の世渡りを続ける気なら、こちらは「一寸の虫にも五分の魂」または「点滴岩をもうがつ」という精神で、いずれ必ず勝利する「歴史の真実」を、書き続けるまでのことである。

 昨年は戦後五〇年だったが、今年からも毎日を、日本のメディア検証の本番と心得ている。

 一九九五年一月五日

木村 愛二


(15)資料「まぼろしの読売社説」