イラク爆撃「飛行禁止区域」ではアメリカ報道よりも日経記事

イラク爆撃報道批判 空爆現地体験 UNSCOMスパイ疑惑 他

「米軍機とイラク交戦」(日経98.12.29)

1999.1.8

 前回は、イラク爆撃の評価に関して、日本政府と日本の大手メディア報道の腰抜け振りを批判した。その際にも、「場合によっては」の留保を付けたが、イラク爆撃に継続して起きた「飛行禁止区域」での「米軍機とイラク交戦」(日経98.12.29)に関する報道では、日本の大手メディアの日経の記事の方が、私の耳情報によるアメリカのラディオ報道よりも、具体的かつ客観的だった。

 この「飛行禁止区域」は、国連の決定ではなくて、湾岸戦争後の1991年にイラク北部の少数民族クルド人を保護すると称して、アメリカ、イギリス、フランスの3か国が独自に設定したものである。

 上記の「交戦」を報じた日経記事の場合、一面では単に「現場はイラク北部の飛行禁止区域」としていたので、ありゃりゃと思った。しかし、その一面短い記事の中頃に「関連記事8面に」とゴシックで記されていたので、めくってみると、そちらには「米英が設定した」とある。フランスはどうしてくれるのだと思っていたら、翌日、「96年にはフランスが『人道的な目的がなくなった』として北部の監視飛行から撤退」(日経98.12.30)と記していた。

 この間も、その後も、在日米軍向けのA.F.N.(Armed Forces Network.昔のF.E.N.:Far East Network: が、通信衛星で国際的に結ばれて改称)では、毎日のように各種ネットワークが「飛行禁止区域」問題を報じていた。

 気を付けて聞いていると、「国連の決定」という嘘は付いていないが、フランスの撤退にはまったくふれない。「同盟国」(Allied Forces)と言う紛らわしい表現をしたり、「アメリカとイギリス」とはっきり言ったりするが、ともかく、やはりイラクとは戦争中の国という感じが強くにじみ出ている。

 手元にある復刻版、Falsehood Wartime(戦時の嘘)は、第一次世界大戦後にイギリスの下院議員だったArthur Ponsonby が書いた本だが、その冒頭の名句引用の二番目には、

 “When war is declared, Truth is the first casualty.”とある。

「戦争が布告されると最初に損害を受けるのは真実である」といったところだろうか。

 以上。

Falsehood in Wartime:
Propaganda Lies of the First World War
by Arthur Ponsonby


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