武蔵野版『不祥事隠し』独自捜査シリーズ(その2)

36億余円の滞納にシドロモドロの隠蔽答弁

2000.1.7

 武蔵野オンバー、木村愛二です。

 この不祥事件の刑事裁判が、きたる12月20日(月)午前11時20分から12時まで40分間、東京地裁八王子支部の203号法廷で開かれます。傍聴席が16人分しかない狭い法廷なので、私は、早めに入廷する予定です。午前10時から3つの事件が同じ法廷で続けて審理されるので、10時から入廷できます。この公判で、少しは新しい情報が得られそうです。ご興味のある方、ご近所の方は、是非、ご参加下さい。終了後には食事をしながら、意見交換しましょう。

 さて、前回、武蔵野市元職員Hが税金の滞納分を不正に臨戸徴収し、横領した金額を、2,000万円以上と記しましたが、この2,000万円「以上」自体からして「異常」事態(たまたま出てきたワープロ駄洒落)なのです。記者会見での発表と、その後の議会でのやり取りが、食い違い、矛盾だらけになるのです。何か重要なことを隠しているようです。

 以下、まずは事件発生の実感を出すために、新聞記事を紹介します。


『日本経済新聞』(1999.7.2)

元市職員が2,000万円横領

武蔵野市が告訴

 東京都武蔵野市で、4月に依願退職した保険年金課の元主事(48)が、前任の納税課在職中から退職までに、税金など少なくとも約2,000万円着服していたことがわかり、同市は、武蔵野署に業務上横領容疑で告訴した。

 同市によると、元主事は税全の滞納者に納めるよう催促したうえ、受け取った現金を着服。1995年8月から退織までに、4人と2つの法人から市民税や都民税、固定資産税、廷滞金など約2,000万円を着服していたという。同市の場合、滞納金は郵使振り込みなど自主納付。今年5月、「納めたのに差し押さえ通知書が来た」と問い合わせがあったことから発覚した。


 このように、「約2,000万円着服」を、「業務上横領容疑で告訴した」という発表になっています。ところが、市長の土屋正忠の彦は、議会の答弁で、「3,000万円というよう数字もないわけじゃない」などと、実に「わけ」の分からないことを平気で言っています。「4人の市民と2つの法人」と報道されているのですから、市当局または武蔵野署が、そう発表したはずなのなのに、6人とか6件とか、紛らわしい答弁に終始し、議員が何度も「2つの法人」ではないかと確認を求めるのに、税務部長が渋々認め、「プライバシー」を盾に取って、以後も6人と表現すると突っ張っただけで、市長は、一貫して、この質問に返事をしません。「法人」、つまりは企業の名前を、隠し通したいという感じです。

 被害金額についても、元市職員が臨戸徴収した金額が分かっているはずなのに、「その内に明らかにする」と言ったまま、とぼけ通しです。なぜ、とぼけるのでしょうか。

 そこで一応、被害金額を3,000万円に値上げして、この絶対的金額の相対的位置付けを探ると、これまた、「アッと驚くタメゴロー!」(古い! 古い! か)なのです。

何と、36億2,237万6,394円。

 この巨額が、武蔵野市の『事務報告書』の「納税課」の項目によると、1998.4.1.現在の「滞納繰越額」なのです。書式が次第に変更されているので、直接の比較が難しい部分があるのですが、ほぼ同じ形式の『事務報告書』の一番古い年代は11年前の1987年度のもので、「滞納繰越額」は、約10億円、以後、着実に滞納額が増えています。

 収入の方を直接反映する年度財政規模の方は、バブル崩壊以後、縮小を続け、600億円から500億円そこそこまで落ち込んでいるのですから、その逆の滞納額の上昇の影響は非常に大きいのです。しかも、「不能欠損額」と称する1年分の不良資産処理分が、やはり毎年急増し、10年前の1989年には3,908万6,958だったものが、1999.4.1.現在の1年分は6億5,257万4,001円。20倍に近くなっています。こういう滞納の実情は、毎月2回各戸配布される『広報むさしの』には載っていません。市民個々人が詳しく知れば、納税意欲が減退することは確実です。

 税務部長の説明では、「バブル崩壊」の影響が大きいとのことですが、細部は後に詳しく見ることにしましょう。まず、3,000万円は、36億円の120分の1に当たります。1%以下ですが、個人の不正行為の額として結構、大きな比率です。しかも、36億円、正確には36億2,237万6,394円から上記の「不能欠損額」を差し引くと、30億円弱になりますから、こちらと比較すると、1%以上になるのです。

 ところが、ここでまた、議会答弁では、上記の新聞記事と違う話が出てきます。記事では、「4人と2つの法人から」「廷滞金など約2,000万円を着服していた」ことについて、「業務上横領容疑で告訴した」ことになっているのですが、市長は、むしろ胸を張って、「武蔵野署と相談して、納税課にいた時期の2人からの170万円について告訴し、余罪については武蔵野署の捜査に委ねた」と言うのです。

 この「2人からの170万円」に限った理由については、「納税課にいた」時には「職務権限があった」と言うのです。ここが議会でも揉めた点なのですが、私が直接警視庁に確かめたところでは、あっさり、「告訴がなければ受理しない」との返事でした。

 しかも、すでに市民有志が情報公開で得た当局資料によれば、武蔵野市秘書課の「食糧費」には、警視庁や武蔵野署との「警察との懇談」などで、1人1万円以上の支出が、何度も出てくるのです。とてもとても仲良しのようなのです。

以上で(その2)終わり。(その3)に続く。


(その3)箝口令と隠蔽越工作は厳然たる事実
武蔵野版『不祥事隠し』独自捜査シリーズ一括リンク
『憎まれ愚痴』49号の目次へ