武蔵野版『不祥事隠し』独自捜査シリーズ(その1)

矛盾だらけの「元市職員の不祥事件」ご報告とお詫び

1999.12.9.mail再録。

 武蔵野オンバー、木村愛二です。

 注:「オンブズマン」は差別だから「オンブズパーソン」にせよとの声もあり、「オンブズ」だけにすると、聞き間違えられて、「ブズ」とは何よと言われそうなので、古語の隠亡に発音が似ることも構わず、略称、「オン」いないいない「バー」にします。

 さて、この事件、奇々怪々、謎だらけ。市議会でも押し問答の野次のと大騒ぎ。しかし、市長は、事実経過の細部を正確に公表しようとはしません。そこで、ガス室の嘘、ユーゴ戦争の嘘、東海村臨界事故の嘘、日本軍戦闘機墜落事故の嘘、神奈川県警不祥事隠しマニュアルの嘘、などなど、世界中、日本中、嘘だらけの超多忙をも省みず、わが自称「嘘発見」名探偵は、仮住まいの足元でも、やむなく独自捜査開始に踏み切ったのです。

市長が署名入りで「ご報告とお詫び」

 神奈川県警のマニュアルに因み、『不祥事隠し』と題したのですが、一応の報告はなされています。1999.8.1.『市報むさしの』1565号の1面トップの右側、しかし、左側の話題集中、『Y2K対策ニュース』の扱いと比較すると、横幅では3分の2、見出し文字は4分の1ぐらいの地味な囲み記事で、『元市職員の不祥事件について、ご報告とお詫びを申し上げます……武蔵野市長/土屋正忠』とあり、2面に『元市職員による不祥事件の概要、原因、再発防止策、関係者の処分について』の順序になっています。でもでも、大事なことは「隠し」ているのです。矛盾だらけなのです。

 第1に、「元市職員」の「元」という文字は、神奈川県警の各種事件で、「元巡査部長」などとなるのと、とてももとても、よく似ています。いえ、同じ字でした。神奈川だけのことではなくて、警察官の不祥事件は、解雇処分後に発表されるのが常なのです。

 武蔵野市の「元」市職員の場合には、発覚以前に自己都合で今年の4月に退職し、その後、「事件が発覚した」と報告されています。当然、普通の自己都合退職の場合と同じ計算の退職金を受け取ってから、退職しています。「地方公務員法上さかのぼった処分はできません」のだそうです。

 犯行事実は、「滞納整理の業務に従事していた元納税課職員Hが、平成7年8月から退職するまでの間、各種の領収書を使い、納税者から徴収した2000万円を超える市税を、市の金庫に納めることなく着服横領した」と説明されています。「発覚したきっかけは、5月17日に納税者から『税はすでに納めているのに差し押さえ通知が来た』との連絡があったことです」、と説明されています。

 ところが、まず、何人もの市民や市議会議員が、「ずっと前から分かっていたが、箝口令が敷かれていて、しゃべったのが分かると首が危なかった」という市職員からの直接垂れ込み情報を得ているのです。「ずっと前」の意味は、特に、今年の4月25日が全国一斉地方選挙の投票日で、その日の選挙結果で辛くも現市長の当選が確保されたという、まさに際どい日程を考慮に入れると、非常に重大、かつ、キナ臭い匂いを放つのです。現職の市長が不利になるネタだったから、選挙が終わるまで「隠し」ていたのではないかとの疑惑が、パッと広がっているのです。

 そこで最早、この事件は「元市職員の不祥事件」の域を超えて、市長の「不祥事隠し事件」に昇格したのです。すでに、市議会でも、その疑いが提出され、日頃は強気一本槍の市長も、「疑いをお持ちになっても結構です」と答弁せざるを得ませんでした。

2つの小道具、「差し押さえ通知」「催告書」

 さて、先に「矛盾だらけ」と指摘した市長署名入りの「ご報告とお詫び」の、矛盾点の細部の検討に入ります。

 上記のように、「発覚したきっかけは、[中略]『税はすでに納めているのに差し押さえ通知が来た』」と説明されています。重要な小道具の第1は「差し押さえ通知」なのです。ところが、この「差し押さえ通知」を受けて「連絡」をした市民は、1人だけなのです。市長の署名入りの「ご報告とお詫び」では、「納税者から徴収した2000万円を超える市税」の内の「納税者」が、単数か複数なのかが不明なのですが、2面の「概要」説明では、6人になっています。

 ではでは、1名が「差し押さえ通知」を受けて「連絡」をしたとすると、「元市職員H」が、残りの5名の「納税者から徴収した」事実は、どういう経過で発覚したのでしょうか。市長は、この経過を、次のように説明しています。

「[前略]その後、他の納税者からも相次いで問い合わせがあり、6月上旬にはこの元市職員の横領が確実となりました」

 では、「他の納税者」たちが、最初の1人が連絡してきた「5月17日」から「6月上旬」までの期間に、「相次いで問い合わせ」した「発覚のきっかけ」は、一体全体、何だったのでしょうか。いかなる小道具の刺激が加わったのでしょうか。しかし、市長署名入りの「ご報告とお詫び」のどこを見ても、この方の小道具についての情報は、ひとかけらもありません。

 そこで2面の概要説明を、目を皿のようにしてよく読むと、「発覚のきっかけ」ではなくて、むしろ逆に、「発覚が遅れました」理由として、「元職員が該当の滞納者の催告書を抜き取り、送付をしなかったため」と説明しています。ここで、わが名探偵は、ハハンと唸るのです。もう1つの小道具は「催告書」なのです。

 さらに、この「催告書」と関連するもう1つの問題点は、「元市職員」の在職中の経歴を、「納税課および保険年金課」としている点です。これも、『市報むさしの』には期間の説明がありませんが、直接調べてみると、元職員Hは、退職までの1年間、保険年金課に移動していたのでした。この間の業務との関係についてもやはり、『市報むさしの』には何の説明がありませんが、この1年間には、「滞納者の催告書を抜き取り、送付をしなかった」と説明されている行為は、不可能だったのです。「滞納者の催告書」の発行は、納税課の仕事だからです。

 つまり、少しくどくなりますが、この1年間、元職員Hに滞納分を直接納めた「該当の滞納者」、特に、市当局の説明によると、元職員Hが納税課勤務の間に滞納分を直接「臨戸徴収」した「該当の滞納者」の2人には、おそらくは泣く泣く納めた記憶も色鮮やかな金額に関して、1年間に発行された数の「催告書」が、全部届いていたはずなのです。

 市議会での税務部長の答弁、および直接の確認によると、前年度からの繰越の滞納者への「催告書」の送付は、毎年、7月と12月、一斉に行われています。つまり、元職員Hが保険年金課に在職していた1年間に、2度の機会があります。職員Hに直接納めた滞納分の税金についての「催告書」発行は、2人の「該当の滞納者」に対しては、確実に2度です。その他の4人については、市当局が徴収時期を公表しないので、特定できないのですが、その内の何人かは、2度または1度の「催告書」を受け取っていたはずなのです。

 その時には、「該当の滞納者」たちが皆、納めた金額を「滞納」として「催告」されながら、なぜか黙っていたのに、今年の「5月17日」から「6月上旬」までの期間、たったの半月の期間になって、なぜか急に、「相次いで問い合わせ」したことになるのです。これは、とてもとても、おかしいですね。まさか、太陽の黒点現象の影響とか、ノストラダムスの予言の世界破滅の前だったからとか、言い出すのではないでしょうね。

以上で(その1)終わり。(その2)に続く。


(その2)36億余円の滞納にシドロモドロの隠蔽答弁
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