『湾岸報道に偽りあり』(38)

第三部:戦争を望んでいた「白い」悪魔

電網木村書店 Web無料公開 2001.5.1

第七章:世界を動かす巨大ブラックホール 1

百億ドルのクウェイト復興特需を開戦前に受注した秘訣

 今度の戦争で一番唖然とした話は、クウェイトの復興特需受注争いの露骨さであり、その始まり方のあまりの早さだった。バグダッド爆撃開始が一月十七日だが、すでに一月末には早くも、うわさが流れ始めた。

 日経産業新聞(91・3・13)のルポルタージュ特集「ポスト『湾岸』ビジネス戦士走る」(9)によると、復興事業の受注戦争はクウェイト侵攻の八月二日直後から始まっており、米陸軍工兵隊が請負契約したのは、実に地上戦争突入の二日前だったという。

 日本経済新聞(91・2・28)はさらに具体的に「米ベクテル社が復興事業受注」の見出しで報じた。

「米建設大手ベクテル・グループは二十七日、クウェイト国営石油から油田や製油所の復興を総合的に監督するプロジェクト・マネジメント(事業管理)契約を受注したと明らかにした。ベクテルがクウェイト復興事業で大きな役割を果たすとのうわさは流れていたが、同社自身が確認したのは初めて。業界筋は石油施設関連の復興経費を百億ドル余と見積もっており、ベクテルは五千人近くの技術者を現地に投入するとみられている」

 この「百億ドル余」という金額は、日本の国会であれほどもめた「九〇億ドル」の分担金よりも大きい。また、最新の統計数字で見ると、一九八九年度のベクテルの総受注額が約一二〇億ドル、そのうち海外受注額が約六六億ドルである。ベクテルはクウェイト復興特需だけで、かれこれ通常の一年分に相当する仕事を確保した勘定になる。

 ここでは、すでに本書第一章の終わりで紹介したアメリカの労働組合関係者の発言を、思い出していただきたい。彼は、アメリカ軍の爆撃が「ベクテルの仕事を増やす」ために行なわれたと、確信を持って語っていたのだ。


(39) 王の早逃げ三手の得か。イラクから退去した極意の早業