声明:個人情報保護法の改悪に反対する―コミュニケーションの権利運動の観点から (団体・個人の賛同を募集中)

個人情報保護法の改悪に反対する―コミュニケーションの権利運動の観点から

下記の声明に賛同される団体・個人の皆さんの賛同署名を募集しています。下記のフォームに記入してください。後日このページにて、お名前のみ公表します。

https://pilot.jca.apc.org/nextcloud/index.php/apps/forms/s/N45tZ7bEfwTyB6j9TWALYWDM

以下に述べる理由から、今国会で審議中の個人情報保護法の改正案(以下改正案とのみ記す)に反対する。

本改正案の意図するところは「個人データ等の第三者提供及び公開されている要配慮個人情報の取得について、統計情報等の作成にのみ利用される場合は本人同意を不要とする」点にある。本法案の「本人同意を不要」とする方向性は、現在かろうじて規定されている歯止めを将来的には更に形骸化する方向へと促すための第一歩であり、警戒する必要がある。JCA-NETはこの「本人同意を不要とする」という条文は個人情報を保護するどころか、保護そのものを脆弱にすることに法が積極的に加担するものになっており、反対である。

そもそも個人情報保護法には、自己の個人情報(以下自己情報と記す)保有が基本的人権であることの位置づけがない。自己情報の保有は、その本来の保有主体である私たち一人ひとりが有している侵すことのできない基本的な権利である。個人情報保護法には、個人情報保護の看板を掲げながら、本人以外の第三者による利活用に有利な法的枠組みを導入することを意図した法律という性格も合せ持っている。法案は、この第三者利活用の促進を意図しており、私たちの基本的人権としての個人情報の権利を侵害する法案になっている。

人間は他者とのコミュニケーションのなかで生きる存在である。だから、コミュニケーションの前提をなす自己情報を「私とは何者なのか」について自分で決定するための情報であって、基本的人権であると位置づけられるべきものである。自己情報の権利は、憲法の基本的人権に関わる条文全てに横断的に関係する普遍的な権利であり、奪うことも侵害することもできない権利である。すなわち、自己情報は、現在だけでなく将来においても、侵すことのできない永久の権利であると理解すべきものである。法案が意図する本人の同意なしの利活用は、歯止めのあるなしにかかわらず、この原則に反する。

ビッグデータとAIによる解析が支配的になりつつある現在の民間投資や政府の政策においては、同意を不要とすることで収集される膨大なデータは、自分の意思とは無関係に自分が何者であるのかを恣意的に決めつけるための仕組みとなり、自らの意思に反して、分類・選別システムに組込まれ、自分に帰属するはずの個人情報が事実上奪いとられることになる。たとえば、名前、性別、年齢、国籍、住所から医療情報など様々な情報は、いずれも自分に帰属する情報だが、これらから自分の意思と無関係に、時には自分にとって不利益となったり権利侵害となるように自分が何者なのかが構築されうる。こうした情報が自分の存在を誤解させる可能性があり、同意なしに利活用が可能になった場合の不利益は明白である。

私たちは、法案とは逆に、今まで以上に、政府や民間が保有する全ての個人情報について「本人同意」を実効性あるものにすべきであることを主張する。現在の個人情報保護の体制は、難解で錯綜した法律、規則、ガイドラインなどさまざまな文書類を通じて文言上の規制をすることで済ませており、結果として、「本人同意」そのものが形骸化している。「本人同意」を実効性のあるものにするためには、法だけではなく技術的な手段によって個人情報の政府や民間による利活用に歯止めをかける必要がある。たとえば、政府や民間企業は暗号化された個人情報しか保有できず、これを利用するためには、本人のみが保有する復号鍵で復号しなければならないなど、すでに実用化可能なものから将来の開発に委ねられているものまで、様々なプライバシー技術の開発が欠かせない。こうした分野での技術が疎かにされたり規制され、個人情報を大量に収集し利活用するための技術の開発ばかりが促される技術政策それ自体が、人権侵害政策であって、こうした政策の転換が不可欠である。

今回の改正案によって、日本の個人情報保護法はEUのGDPRの「十分性認定」を充足しなくなることは明らかだ。私たちは、本改正案が、EUのGDPRを日本同様の方向で形骸化させる外圧としての効果をもつことも危惧する。世界中で、個人情報をめぐって、自由な利活用か人権か、という厳しい闘いが続くなかで、改正案は、現在審議中のGDPRの改悪や世界中の人権侵害を合法化する流れに加担しかねないという点についても、深く憂慮するとともに警鐘を鳴らしたい。

2026年6月28日

JCA-NET

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