「テロ」か? 自作自演の戦争挑発謀略か?
アメリカ=イスラエル=世界支配構想の核心を突く
電網木村書店 Web無料公開 2006.2.2
第4章 右往左往「テロ糾弾」合唱と条件反射の
基底にアメリカ発テレヴィ動画
(文中のURLは書籍発行当時のものです。繋がらない場合があることをご了承ください)
テレヴィ映像の強烈な影響については、今後、9・11事件の報道の送り手、受け手の双方に起きた事実経過の確認に基づく徹底検証、徹底的な研究が不可欠である。
テレヴィ業界出身の私は、人間と称する「裸の猿」の条件反射的行動の今日的な鍵として、テレヴィ映像と音声の影響を重視する。極彩色の動画の氾濫は、少なくとも一時的に、頭脳を麻痺させてしまうのである。
極彩色の動画は、当世流行の片仮名語の「ディジタル」として数学的に計算すると、活字の数千倍の情報量になる。
このディジタル情報量の桁外れの巨大さの程度に関しては、電網の文字だけの「テキスト」と「動画」の情報量の桁違いの状況を実感している人々には、もはや説明は不要である。従来の電話回線からADSLだの、ケーブルだの、光ファイバーだの、大容量だのという大騒ぎになっているのである。人間の神経のニューロンとかに関しても同じことである。
視覚が捉えた映像と聴覚が捉えた音声の情報の意味を、抽象化して論理的に理解し、比較、分析、総合するためには、かなりの時間がかかる。日頃の訓練が必要である。普通の鍛え方の視覚的および音声的な機能しか持ち合わせず、訓練を受けていない頭脳の場合、極彩色の動画の氾濫は、少なくとも一時的に、頭脳を麻痺させてしまうのである。
9・11事件のテレヴィ報道は史上空前の衝撃度
しかも、あの双子ビルへの飛行機突入と崩壊の状況は、史上空前の衝撃度であった。
9・11事件の当日、私は、電話で事件の発生とテレヴィ報道状況を教えられ、まずは、我が家で受信契約しているケーブルテレビでCNNを見た。アメリカの状況は戦争さながら、しかも、これは史上空前のメディア戦争の様相と判断し、即座に録画を始めた。
だから、その時の第一印象、その衝撃的な効果、その後の経過などについては、具体的な実感がある。
私は、その後の「右も左もテロ糾弾」合唱状況について、その基本的かつ初動的原因と出発点を、CNNを初めとするアメリカの大手メディア、具体的にはテレヴィの報道の仕方にあると断言する。「テレポリティックス」(テレヴィ政治)という造語もある昨今、その象徴的現象として、ほとんどの視聴者は、史上空前の衝撃的な映像を繰り出すテレヴィに命令され、即座にマインド・コントロールされてしまったのである。
一般にも女性の方が早口だが、この時の放送では特に、アメリカの女性キャスターの威圧的な発音の「テロ」(terror)とか「テロリストの攻撃」(terrorist attack)の決めつけ方が、強い印象として残っている。録画を確認してみても、その通りである。
映像の編集にも「報道の仕方」または「報道の意図」があらわれるものである。当日のアメリカのテレヴィ放送は、世界貿易センタービル破壊の同じ画面を何度も繰り返しながら、その合間に、同ビルが1993年に爆破された時の映像を挟み込み、ウワン、ウワン、ウーウーとサイレンの効果音を入れ、「ビンラディン」「アルカイダ」を連呼していた。女性のキャスターが、それに異議を唱えたら、それこそ、ぶっとばされそうな勢いで叫び、男性のキャスターが、深刻そうに重々しく気取って、合いの手を入れていた。
以下は、日本国内における前述のごとき検証作業、「9・11事件の報道の送り手、受け手の双方に起きた事実経過の確認」の出発点の事実経過である。
「同時多発テロ」の「ネイミング」を、あの「大本営発表」NHKが今度は自認
アメリカの威圧的な発音の「テロ」(terror)が、日本では異口同音、「同時多発テロ」となった。ほとんどの論者が、これを鸚鵡返しに使った。この件では、以下のように、NHKが「ネイミング」を自認した。日本人の大部分は、NHKを通じて、「米=日」連合のテレヴィに命令され、見事にマインド・コントロールされてしまったのである。
http://www.asyura.com/2002/war11/msg/641.html
『亜空間通信』243号(2002・4・27)
【NHK部長が戦争犯罪荷担の「同時多発テロ」「ネイミング」自慢で新聞も追随か】
9・11の翌年、2002年4月26日、電話情報が入った。その日の午後11時からNHK教育テレビが「同時多発テロ」に関する番組をやるというので、新聞の番組欄を見ると、『金曜フォーラム』の題が「同時多発テロとテレビ報道」となっていた。
どうせたいしたことは出てこないだろうと思いながらも録画しておいて、 翌日、朝飯を食いながら見始めたら、案に相違して、これが実に面白いのである。矛盾だらけなのだが、または、それだからこそ、NHKの得意の「バランス」の取り方の滑稽さ、もしくは薄汚さが、ありありと、すけすけに、見えてしまうのである。
ここでは、その「すけすけ」の中から、これまでに私が何度も痛罵してきた鍵言葉、「テロ」の「根源」に関しての証言のみを取り上げる。
外国の記者の個人名は必要ないので省くが、出演者は、ABC、BBC、アルジャジーラからと、NHKから報道局国際部長の佐藤俊行の4人で、「コーディネーター」の高島肇久は、「国連広報センター所長」と字幕で紹介されていたが、実は、元NHKの著名キャスターである。
〔註〕高島肇久は現在、「あの」外務省の「外務報道官」となっている。ここにもNHKの社会的位置が示されている。以下が2002・9・8入手の電網情報抜粋である。
[全言語のページから高島肇久、NHKを検索しました。約412件中1~100件目・検索にかかった時間0・11秒]
http://www.sankei.co.jp/news/020730/0730sei071.htm
「外務報道官に元NHKの高島氏」
政府は30日の閣議で、外務報道官に元NHKキャスターの高島肇久・国連広報センター所長を充てる人事を決めた。発令は8月2日付。
放送内容の事件の日時や場所は、お馴染みのことなので省く。意味のある台詞の最初は、「同時多発テロが発生しました」であった。つまり、最初から「同時多発テロ」と決めつけている。なぜか。その理由が説明されるのか否か。興味津々。
さて、中身に入ると、9・11当日、午後9時頃、NHK報道局国際部長の佐藤俊行は帰宅していたが、「ニュース10」の途中から特別編成で夜中も中断しなかったというNHKの放送で、事件発生を知り、直ちに「タクシー呼んで」駆けつけた。以下、佐藤の台詞の肝心のところだけを、点検のために、正確を期し、実は、かなり苦労して、文字化した。
「ええ、準備していたところ、ですね、ええ、2機目が、ええ、目の前で、ええ、タワーに突入したと、まあ、それは、あの、ええ、民放が最初、あの、このニュースを流し始めたのは早いんですけども、ええ、肝心の2機目が、ああ、突入するところはNHKしか、ええ、放送していなかったと、ということで、極めて、まあ、歴史的な瞬間を放送できたと考えております(無邪気に嬉しそうな表情)」
「で」とか、「ペンタゴン」「ペンシルバニア」「字幕は一つしか出せない」「いろいろ混乱はありました」などの台詞が続く。
「ええ、字幕をどうしようか、ということで、まあ、どういうふうに、この事件を説明するのか、ということで、まず、まあテロであると、それから、まあ、同時に起きていると、しかも、まあ、何か所かで起きているということで、すぐ、同時多発テロ、ということで、まあ、私が(自慢の照れ隠しで細めた両目が咄嗟に上の看板の方に向く)ネイミングをしまして(画面が上の看板の文字の「同時多発テロ」に切り替わる)、ええ、本質的に、まあ、それが、今でも訂正せずに使っているということは、最初に起きた、こう、事件のインパクトが、ですね、今でも、まあ、続いていると、というかまあ、本質的には間違わなかったのかなと、ええ(苦しい表情で目をつむって無理に言い切る)、間違って、は、なかったと、思います」
「ええ、うんん、で、まあ、テレビでもって、こうしたあ、事件を伝えるということは、ああ、新聞と全然違うわけで、われわれとしては、ああ、まず、何が起きたかということを、伝えなければならないと思いました」「今、何が起きているか、を、そのまま伝えるということが、まず第一義であると思います」
その後、「テレビ的」とか、「テレビの中で起きた事件」とか言う。
(報道の)「スタンス」についての質問に答えて――
「公平に」、「アメリカ側と、バランスを取るのかということを、腐心いたしました」
質問/「ルート・コーズ(根源的な原因)」の字幕説明あり。
「まあ、あの、論理的に言えば、(語気を強める)論理学的に言えばですね、ええ、ルート・コーズというのは、あの、おう、因果関係がはっきりしてなければいけないん、で、え、今回の場合には、ええ、ああ、犯人が本当に、ビンラディン、氏であるかどうか、それから、アルカイダが本当に、すべてのテロを、ええ、監督したのかどうか、というふうなことが、まだ正式には証明されていませんので、ルート・コーズというわけにはいきませんが、え、しかし、[中略]彼らの主張のところにあるだろうと、推論は立てまして、[中略]主張というものは、客観的に取り上げたつもりです」
以上を見れば、「今、何が起きているか、を、そのまま伝えるということが、まず第一義であると思います」と言うくせに、実は、いきなり、「まあ、どういうふうに、この事件を説明するのか、ということで、まず、まあテロであると」決めつけるのであるから、矛盾も甚だしい。やはり、「公平に」どころか、「アメリカ側と、バランスを取るのかということを、腐心いたしました」というのが本音なのである。
「いろいろ混乱はありました」というのは、実に意味深長である。私は、NHKを厳しく批判はするが、9・11を謀略だと疑いもしない馬鹿ばかりの集団とは思っていない。詳しくは1981年に出した拙著『NHK腐蝕研究』に譲るが、NHKは伏魔殿なのである。この「混乱」という言葉の背後に何かが漂うのである。少なくとも政策的な暗黙の合意を促す圧力があったに違いないのである。
で、私も、「ああ、ええ、まあ」、NHKの「視聴者ふれあいセンター」とやらに聞くと、「ニュース10」は定時番組だが、定時ニュースではないのだそうで、文字化の発表はしていない。だから、時間的な細部は確認できない。しかし、以上の自慢から、真夜中前には、NHKが「同時多発テロ」の「ネイミング」とやらを発表し、翌朝一斉に『しんぶん赤旗』に至るまでの「新聞」が、その真似をしたのだろうと断定できる。
「犯人が本当に、ビンラディン、氏であるかどうか、それから、アルカイダが本当に、すべてのテロを、ええ、監督したのかどうか、というふうなことが、まだ正式には証明されていません」のであるから、それでいて、「まあテロであると」決めつけるのは、これまた矛盾も甚だしい。[後略]
もう一度、特徴的な部分を繰り返すが、このように、「バランスを取る」ために「アメリカの行為に関しましては、CIAパキスタンの諜報機関を使って、ソビエトと戦争しているアフガニスタンの一派を、ですね、財政的にも軍事的にも支援した」などと解説している。これは、すでに私が電網通信で、それまでに何度も厳しく批判した問題である。本書では終章に再録して説明するが、CIA謀略の挑発の方が先行していて、それに乗ってソ連が侵攻したというのが歴史の事実経過なのである。それを調べもせずに、アメリカの嘘の宣伝の通り、逆にしたままなのである。つまり、常に「アメリカ側とバランスを取る」報道の「嘘」の繰り返しの自認でしかないのである。
テレヴィ映像の魔術に引っかかった著名な論者たち
ところが、ところが、なのである。「あの」大本営発表のNHKの「この」でたらめ放送の命名、「同時多発テロ」が、さらには翌日の大手紙の一斉の超々大見出しとなって紙面を飾り、以後、いわゆる一般大衆だけではなくて、日本の大手新聞、大手総合雑誌のトップを飾る「著名な論者」にまで、甚大な影響力を発揮してしまったのであるから、これは実に恐るべき事態、極彩色動画と「鍵言葉」の魔力発揮なのである。
これまた、分かりやすくするために、典型的な事例を選ぶ。「著名な論者」も、二人の大先輩だけに絞って、その「胸を借りる」が、これは、相撲で言えば、「横綱への恩返し」なのである。この二人は、今回の事件の展開の中では、アラブ・イスラムに同情的な立場を表明していた。そこが重要なのである。ブッシュやら小泉やらの提灯持ちの役割などは、まるで論ずる価値もない。
アラブ・イスラムに同情的な立場な人々までもが、9・11事件はアラブ・イスラムの「原理主義者」が起こした「テロ」なのだと思うという主旨で語れば、その反対の立場の発言よりも、数倍の効果があがってしまうのである。だから、専門家の責任は重いのである。
そういう意味では、程度の差こそあれ、「テロと認めるか否か」を迫るアメリカ帝国の手に、素直に乗ってしまった論者たちが、あまりにも多すぎた。私の表現では「ジャーナリスト」の最良の部類と言える論者たちも、いわば「枕を並べて討ち死に」である。
彼らを「討った」凶器は、他でもない。あの事件を伝えたテレヴィ動画である。
以下に紹介する大先輩も、自ら記しているように、事件の直後、テレヴィを見てから、以下の文章を綴ったのである。
『朝日新聞』(2001・9・15)15面(「オピニオン」頁)
(opinion@news project:opinion-page@ed.asahi.com)
メディア・テロの背景さらに究明を原寿雄(はら・としお)
ジャーナリスト、元共同通信編集主幹11日夜、テレビ朝日の「ニュースステーション」で事件の発生を知った。NHKの総合とBS、その後中継を始めた他の民放局を含め、テレビを見ながらさまざまの思いに駆られた。テロは圧倒的な軍事力の差が生み出す戦争の一形態と言える。今度は武器も使っていないようだ。超大軍事力の米国が、こんなにもテロに弱いことをどう考えるべきか。ジャーナリズムの上でも課題は多い。「自由と民主主義の擁護者」を自他ともに認める米国がなぜこれほど憎まれ、恨まれ、敵視されるのか。どこで、だれに、どうして恨まれているのか。今なお自殺特攻隊が後を絶たないのはなぜか。[後略]
今、改めて読み返すと、実に慎重な練達の文章なのだが、惜しいかな、やはり、テレヴィ映像の強烈な影響のせいであろうか、この記事の中でも自ら記しているように、「べトナム戦争の米軍北爆」を現地で取材していたこの大先輩ですらが、その「北爆」に先立つ「東京(トンキン)湾事件」を思い出してもいないのである。何度もアメリカが謀略で戦争を仕掛け、拡大してきたことを、まったく忘れてしまっていたのだ。
http://www.asyura.com/2002/war13/msg/494.html
『亜空間通信』298号(2002・7・10)
【アメリカが口実捏造で弱い者いじめ爆撃の国である証拠が38年前べトナム北爆】
http://www.mekong.ne.jp/directory/history/tonkinwanjiken.htm
現代史・ベトナム戦争編・第1次トンキン湾事件
1964年8月4日、更に“第2次トンキン湾事件”
[以下は、その「第2次トンキン湾事件」の要約]
1964年8月4日、第2次トンキン湾事件が起こり、これを理由に米国のジョンソン政権は、「報復」と称して「初めての」米軍機による北ベトナムの魚雷艇基地4か所に爆撃を行った。さらに8月7日には、米国上下両院で「東南アジアにおける行動に関する議会決議」(トンキン湾決議)が可決され、軍事に関する強力な大統領権限が認められ、南ベトナム政府と南ベトナム解放民族戦線の直接対決が、米国と北ベトナムの直接対決という構図に移りベトナム戦争が、このあと一挙に拡大していく。(第2次トンキン湾事件については、発生当時から米国側の説明に米国内からも疑問の声があったが、後に米国による「でっち上げ」事件であったことが明らかにされた)[後略]
次の例は、東京大学名誉教授、中東史の大御所と言うべき立場の板垣雄三さんである。掲載紙は同じく『朝日新聞』である。同紙は、いわゆる「心情左翼」の読者が多い。
9・11事件直後の9月29日、私も参加した大衆集会で、板垣雄三さんは講師として登壇し、非常に慎重な言い回しで、サウジアラビアの大手紙『オカーズ』が、「ユダヤ人4000名がWTCにいなかった」旨を報じたと語り、「ユダヤ陰謀説と言われるだろうが」と断った。つまり、断言こそしないが、その可能性への疑いをほのめかした。
ところが、その後、資料の新聞切り抜きを整理してみると、それ以前に、以下に抜粋紹介する寄稿をしていたのである。正直に言うと、私は、この切り抜きを発見して一読した時、内心、「がくっ」となったのである。
ここでは、板垣雄三さんは、『オカーズ』記事のことにはまったく触れずに、次のように、犯人が「イスラム原理主義」の関係者であるかのような具体的な表現までしていたのである。必然的に、結論部分も違ってくる。
『朝日新聞』(2001・9・20)
(opinion@newsproject)
私の視点/◆同時テロ/日本はイスラムとの仲立ちを板垣雄三(いたがき ゆうぞう)
東京大学名誉教授(中東・イスラム研究)イスラム原理主義はイスラムの本道を逸脱し、その対欧米対決主義の二分法は欧米オリエンタリズムの裏返しでしかない。ハイジャックした旅客機を乗客もろともビルに激突させる行為は、悪と戦う善は目的に照らして手段を正当化できるという思想に立っている。[中略]
日本の発信は、国際テロ包囲網の形成に向かって、中国・ロシアをも含むイスラム世界の協力を必須のものとしている米国を最も強力に助けるものだ。[後略]
テレヴィ業界出身の私としては、これらの事態を、二人の先輩の判断の誤りとしてだけでなく、自らも関わってきた「テレヴィの犯罪」として告発せざるを得ない。
日本のテレヴィ放送の草創期の裏話に関して、私は、徹底調査し、拙著『読売新聞・日本テレビ・グループ研究』(汐文社、筆名・征矢野仁、1979、絶版)の中で詳しく記した。簡単に言うと、日本のテレヴィ放送の創設は、アメリカの上院で、謀略放送VOA(ヴォイス・オブ・アメリカ)の推進者、ムント議員が、「共産主義との戦い」の一環として、「B52爆撃機2台分の予算」で可能と演説したのが発端である。
この項目の見出しは「『武器』として建設された日本のテレヴィ放送網」になっている。
私には、その当の企業で長年働き、16年半の不当解雇撤回闘争までした経験の実感がある。だから、私の目と頭脳には、いわば高性能の「対ウィールス・ソフト」が入っているような状態である。
特にアメリカ発情報は、すべて、このソフトのフィルターにかけて、何度も濾過してから吟味する習慣が身についている。しかし、残念ながら、それができない論者が実に多いのである。
以上のような「論壇」の状況であってみれば、体制派はもとよりのこと、大方の政党から「反体制派」までが、9・11を「テロ」と思い込み、茫然自失の「テロ糾弾」合唱を始め、その状況が市民運動の末端にまで浸透したのは、無理からぬことであった。
私は、この状況をさらに、「またか」症候群と名づける。
なぜ、私が「またか」と言うのか。その理由を簡略に述べると、基本的に同じ状況が、湾岸戦争でも、カンプチアPKO出兵でも、ユーゴ戦争でも、すでに起きていたからである。この十数年というもの、旧ソ連の崩壊後の状況を反映し、「反体制派」は「貧すれば鈍する」状況の坂道を転げ落ち、その一方で、大手メディア報道の影響、または犯罪は、何度も繰り返され、さらに、そのあくどさを増してきたのである。
しかし、一応の影響力を持つ組織や個人が間違えると、その影響は、坂道を転げ落ちる勢いで増幅されるから、実に危険なのである。
いわゆる「反体制派」の中でも「老舗」の位置にある日本共産党は、ソ連崩壊後に何度も露呈した長年の習慣通り、何も調べもせずに、「テロリスト糾弾」に走った。同党は、湾岸戦争では「独裁者サダム・フセイン」、カンプチアPKOでは「ポル・ポト派」、ユーゴ戦争では「独裁者ミロソヴィッチ」に対する「糾弾」に余念がなかった。いずれの場合も、本音は明らかだった。ソ連が崩壊に向かい、ついには完全に崩壊した状況下の退勢をくい止めるために、右顧左眄し、目先の票確保のために「良い子」ぶったのである。今回も「全党を挙げて」「テロ糾弾」の先頭を切り、思い切りの暴走をしてしまった。
9・11事件直後から、同党は、NHKの命名による「同時多発テロ」を超々大見出しで使用し続けた。しかも、そればかりか、事件の犯人として「ビンラディン」の容疑が濃いとまで主張し続けたのである。
問題は常に、事実の徹底的検証の有無にあるのだが、実は、9・11事件に関しては、前代未聞の極彩色のテレヴィ動画のさらに背後に、普通の目を「節穴」にしてしまうような、巨大なブラックホール、黒雲状の星雲が漂っていた。欧米の主要諸国から始まり、今や世界中のメディアに支配力を及ぼす「ユダヤ人・ロビー」または「シオニスト・ロビー」の存在を抜きにしては、9・11事件報道の流れ方と受け取り方を真に理解することはできないのである。