Racak(ラチャク)村「虐殺報道」検証(15)

ユーゴ戦争:報道批判特集 / コソボ Racak検証

市民を汚染する作為情報

1999.7.9

1999.7.4.mail再録。

 わがホ-ムペ-ジ情報を簡略にまとめて下さった『アジア国際通信』記事の一部紹介です。自分では次々に情報を入れながら、筋を追う物語展開にまで手が回らない状態なので、非常に有り難く、感謝しています。

『アジア通信』の神保隆見さんとは、カンプチアPKO出兵反対運動の場で知り合い、インターネット上で再会、そして地上の下記集会で面会、2次会で隣席懇談の関係です。


From: "Jimbo Takami" <jin@smn.co.jp >
(以下、通信情報など省略)

アジア国際通信 第205号1999/06/19

(前略)

「第150回 一水会現代講座のお知らせ」と題したメールが、筆者に転送されてきたのが6月9日朝であった。
[週刊『憎まれ愚痴』(http://www.jca.apc.org/~altmedka/yugo.html)]というホームページを主宰している木村愛二さんが転送主であった。

(中略)

 転送されてきたメールにはこの日の夜、一水会主宰の「講座案内」が記されていた。ユーゴ大使館のヨービッチ公使からお話を伺うというもので、その日の夜、高田の馬場駅近くのホテルの一室には、約50名が集まった。(中略)

●真相解明前に「虐殺」と断定した米国人団長

(中略)

 木村愛二さんは、上記した「週刊『憎まれ愚痴』」を軸に、独自のスタイルを確立してマスコミ報道の虚構を暴き続けている。日本をはじめ世界のマスコミ報道に目を光らせ、報じられた記事の事実関係の確認を通じて、「虐殺報道」などを追求している。

 日経が6月11日付で次のような記事を掲載した(『憎まれ愚痴』に、同記事誕生の背景が書かれていて興味深い)。

「NATOが空爆に至った重要な契機は、コソボのラチャック村で1月初旬に起きた事件だった。多数の遺体がコソボ解放軍ゲリラか一般住民か解明される前に、米欧のテレビは『セルビア治安部隊が村民を大量虐殺』と報道し、情緒的な“世論”を喚起した。米欧政府はこれに応じて強硬姿勢を強め、根回し抜きで作った和平案を『受諾しなければ空爆する』とユーゴに突き付け、軍事・外交専門家が疑問視した空爆に進んだ」。

 もっとも、この日経の記事は「ユーゴ空爆は、映像メディアの報道に左右されがちな冷戦後の国際政治を象徴する出来事でもあった」と結んで、映像メディアに責任転嫁することで、新聞を“無罪”にするためのものという、うがった見方ができないこともない。「虐殺」に関しては、今年の1月段階で、通信・新聞社などには「虐殺」を疑うに足る情報が、少なからず伝わっていたからである。日経とて知らなかったはずはない。

●第1に疑うべきはアメリカ発の情報

 木村愛二氏から送られてきたメールの受け売りだが、1月17日付読売新聞は「ラチャク村の『虐殺』事件、真偽めぐり論争/欧米メディア」と報じ、朝日新聞は1月29日、ローマ発で、「ユーゴスラビア・コソボ自治州南部のラチャク村でアルバニア人住民45人の遺体が見つかり、欧州安保協力機構(OSCE)停戦合意検証団のウォーカ一団長がセルビア当局による虐殺だと断定した事件について、『虐殺』の真偽をめぐる議論が欧米のマスコミなどを巻き込んで続いている」と報じた。

 湾岸戦争の時もまったく同じような仕掛けがなされたが、このウォーカーという米国人が団長の椅子に座り、真相が明らかになる前に「虐殺」と断定した

 これを契機に、アメリカの新聞、とりわけテレビが、一斉に堰を切ったように「虐殺」が疑いのない事実であるかのように報じ、「悪役ユーゴ」のイメージが出来上がった。そんな経過など知る余地もない世界中の人々のあいだには、「ミロシェビッチ憎し!」の世論が形成されていった。

 一方、フランスのルモンド紙は、遺体発見前後に村を訪れた合意検証団のメンバーの証言などから、一部の遺体が実際の死亡現場から発見現場に動かされていたと指摘するなど、「アルバニア人側による偽装の疑いがある」との見方を伝えていた。

 やがて日本の共同通信も、以下のような記事を配信した。「セルビア側の報告書は40遺体のうち37遺体から、銃を撃ったことを示す化学物質が見つかったほか、すべての遺体の傷が、処刑の際にみられる至近距離のものではなかったと指摘」(1999.03.10.)。「ユーゴスラビアの政府系紙ポリティカは、[中略]欧州連合(EU)調査団が、事件は虐殺ではなく、セルビア警官との銃撃戦によるものだという報告書をまとめた、と伝えた」(1999.03.16.)。

「欧州連合(EU)調査団は17日、州都プリシュティナで、ユーゴ側の虐殺かどうかを断定できなかったとする最終報告書を発表した。[中略]
 会見したランタ調査団長は、[中略]適当な司法機関による調査を待つべきだと述べた」(1999.03.17.)。ユーゴへの空爆は、この「司法機関による調査を待つ」ことなく、会見(3月17日)の一週間後に開始された。

 司法解剖に当たったフィンランド人専門家が、「隠ぺい工作が行われた可能性も排除できない」ということも報じられており、本誌201号で取り上げた毎日新聞の笠原記者の3月31日付記事へと続く。まずもって疑うべきは、「アメリカの発表」なのであり、あくまでもマスコミの目は鋭くそこに向けられなければならない。マイケル・ディーヴァーが誇らしげに語ったように、情報操作の確信的常習犯であるからだ。

 第一情報源としてのイニシャティブを握って離さないアメリカ政府が垂れ流す、作為的な汚染された情報(巷には『権威』の仮面を被って最も多く流通している)に対して、深く疑問を呈することなく、それ以外の情報には事実確認を厳しく追及する悪癖(弱い者イジメ)が、日本のマスコミには染みついている。また、マスコミだけにとどまらず、多くの「市民」にも染みついているから始末が悪い。

 木村愛二氏は、「すでにラムゼイ・クラークらもNATOを告発しているそうですが、私も現在、つぎのURLで、ユーゴ戦争の戦犯としてNATO、BBC,CNNなどを告発し、Web国際戦争犯罪法廷を呼び掛けています」とやる気満々で、追求の手を緩めないという。

(後略)


以上。


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