《あなたのNHK》の腐蝕体質を多角的に研究!
《受信料》強奪のまやかしの論理を斬る!
電網木村書店 Web無料公開 2003.10.20
はじめに
《腐蝕》ということばから、わたしがすぐに連想するのは、《腐蝕応力割れ》といわれる現象だ。[注]
[注] 2003年10月28日:木村愛二注:この本の執筆当時には、「腐蝕」という言葉が流行っていたので、本の題名にも本文にも使った。「食」の方よりも、当用漢字から排除された「触」の方が、当時も好まれたのである。こちらは、日食と日蝕、月食と月蝕の双方が一般にも使われており、「つくり」に「虫」が入っていて、漢字の感じが良い。当用漢字の統制を嫌う向きには、なおさらのことである。
しかし、「金属学の用語」(平凡社刊『世界大百科事典』)として「応力割れ」を起こす金属の変化については「腐食」がもっぱら用いられている。当時もそうだった。国語辞典では、「腐食」と「腐蝕」が一緒の項目になっている。説明は一つである。和英辞典では、英語はともにcorrosion,erosionとなっている。私は、この種の学術用語の日本語訳の「権威」にこだわる気がなかったので、むしろ、議論になれば面白いから、わざと、「腐蝕応力割れ」としておいたのだが、その後、どこからも疑問は聞こえてこなかった。
レッドパージや朝鮮戦争に突き進んだ戦後の反動期に、いくつかの謀略事件が発生した。北海道の白鳥警部射殺事件では、謀議の証拠として、土中から掘り出されたと称するピストルの弾丸が、検察側から提出された。だが、射撃訓練の行なわれたという山中に、長い間埋まっていたはずの弾丸なのに、なぜか腐蝕の後がない。通常は、かすかな傷跡から腐蝕が進み、応力割れという現象を伴うのだそうである。
この他の事件でも、つぎつぎと、検察側のデッチ上げ証拠が重大な矛盾を示しはじめた。証拠の偽造を命じられた下級警察官は、やはり、その場限りの仕事しかしていなかったのだろう。長野県の辰野事件では、警官派出所の爆破をデッチ上げたのだが、この偽証が見事に崩れた。目撃者と称する警察官が、導火線の「シュルシュル」という音を聞いたと自信あり気に強調したのだ。ところが、この「シュルシュル」という擬音の発明者は、映画かラジオの効果マンらしい。ともかく、本物の導火線は、音無しで静かにもえていくものだった。
しかし、これらの謀略事件が起こされ、一方的な政府発表がまかり通った時、マスコミは何をしていたのだろうか。そして、わが主役NHKは、何をしていたのだろうか。NHKでも、放送ゼネスト弾圧やレッドパージがあった。いまや一万七千名にも達するNHK職員には、それぞれの人生があり、仕事への夢もあるだろう。だが、やはりNHKの戦後は終ってはいない。十五年戦争から朝鮮戦争、ベトナム戦争と続いた時代は、まだ清算されてはいないのだ。
《腐蝕応力割れ》を起こした弾丸と、NHK放送センターの映像が、わたしの脳裏では重なっている。本書では、小さなスキャンダルをひろい集めることはやめた。具体的な事件の掘り下げから、NHKの本質的な《腐蝕》へ、やがては地方別なり、職業別なりのチャンネルへと、全国的に法則的な《応力割れ》を起こすべき傷跡を探ってみた。
一部に『噂の真相』誌と『創』誌既載の文章を加筆の上使ったが、読者の御了解を求めるとともに、転載の快諾をいただいた両編集部に感謝したい。また、汐文社編集部の岡田治氏には、本書の企画の始めから、一方ならぬ御世話になった。あわせて、資料提供等の御協力をいただいた皆様にも、御礼申し上げる。
(扉)
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