第2部 ODAの諸問題:ODAにおける環境アセスメント

1.なぜ環境配慮について考えるのか


 1992年にリオデジャネイロにおいて国連環境開発会議(地球サミットUNCED)が開かれました。この会議において地球規模の環境を保護し、かつ、「持続可能な開発」を実現するために緊急に行動を起こす必要があるという合意が形成されました。

 この目標を達成するために、各々の国がそれぞれ努力することが必要ですが、先進国にはそれだけでなくもう一つの活動が期待されます。すなわち、開発途上国への援助です。開発途上国も前記の目標を達成するように努力する必要がありますが、さまざまな問題を抱えていて開発途上国のみではそれを達成することが難しい場合が多いのです。

 その意味で援助の一形態であるODAは非常に重要かつ必要なものです。しかしODAを与えれば良いというものではありません。全てのODAが地球規模の環境を保護し、「持続可能な開発」を実現するという前記の目的を達成するためのものではないかも知れませんが、できるかぎり前記の目的の達成を助けるものでなければいけません。環境保護に関していうならば環境ODA(環境保全など直接環境のためになるようなODA)を行なうこと、ほかのプロジェクトにおける環境配慮のためのメカニズムの制度などが必要となると思われます。

 これら、特に後者は、日本のODAについて特に必要とされるものです。これまで見てきたように、日本のODAは経済インフラの割合が多くなっています。このような経済インフラプロジェクトは大型のものが多く、環境に与える影響が大きいと考えられ、そのため環境への配慮がより重要であると考えられるからです。

 もっとも、上記の会議がなくても、環境配慮が必要なのは言うまでもありません。

 よって、以下では主に日本における環境配慮メカニズムについて述べていくこととし、それの問題点なども合わせて述べたいと思います。なお、「環境への影響」と言った場合、社会的な影響(例えば住民の立ち退き問題)も含まれますが、今回の研究発表では「狭義の環境への影響(自然環境への影響)」をメインにします。

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第1部 ODAの基礎知識
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第2部 ODAの諸問題
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