第1部 ODAの基礎知識
Q.ODAは税金で払われている、と聞きますが、正確にはODAのお金はどこから来るのですか?
A.確かに、税金も使われています。その他にもこのようなところが資金源になっています。
下の図を見てください。
郵便貯金などは大蔵省を通じて円借款としてのみ使われることになります。
Q.ODAの予算はどこの機関が使うんですか?
A.ODAの予算は19省庁に存在します。多くの予算を持つのは外務省と大蔵省で他省庁の予算は主に技術協力のための予算です。実際にODAの実施の業務を行うのはJICAとOECFなどです。
外務省の予算は主にJICAを通じて使われ、大蔵省の予算は主にOECFを通じて使われます。
Q.ODAはどんな分野に使われているんでしょうか?
A.グラフを見てもわかる通り、他国と比べても経済インフラ(ダムや道路など)の分野に最も多くの資金が使われており、日本のODAの特徴の一つとなっています。また70年代に入って、60年代の開発中心の非効率性・非有効性の反省から、BHN分野(この図では社会インフラと農業分野を足したもの)に対する援助の重要性が認識されました。そして日本もこの分野の援助を拡充し、96年には全体の35.7%を占めており、更なる拡充が期待されます。
Q.日本のODAの質はどうなのでしょうか?
A.ODAの質を図る尺度にはさまざまなものがあります。ここでは贈与比率、グラントエレメントについて外国との比較も含めてみていきたいと思います。
贈与比率とは援助全体に占める贈与部分(無償資金協力・技術協力など)の割合のことです。一般にこの割合が高いほど開発途上国の負担が軽いと考えられます。これは特にグラントエレメントについて言えると思われます。
グラントエレメント・贈与比率共に日本はDAC諸国の中でも最下位となっています。
Q.ODAの量はどのくらいになっているのですか?
A.日本のODAは世界で最も多く、しかも拡大の一途をたどっていました。では、量的に日本は先進国としての責務を果たしているといえるのでしょうか?
ODAの量の目標として2つの数値が挙げられます。1つは1970年国連総会で採択されたODAを対GNP比0.7%以上とする、というものです。しかしグラフを見てもわかるとおり、この目標を達成している援助国は少なく、日本も達成できていません。2つ目は20:20条項と言うものです。これは先進国はODAの20%を教育・保健衛生・人口などの基礎的社会プログラム分野に向け、開発途上国は国家予算の20%をその分野に出すという、95年のコペンハーゲンにおける社会開発サミットで採択されたものです。日本はこの分野に全体の20.9%のODAを出しています。
なお、量については、98年度予算でODAの額が97年度の90%以下となることが決められています。
Q.ODAはどこの国に供与しているんですか?
A.全体を見るとODAがアジアに対する賠償から始まったために、アジアの供与の割合が当初から多く、現在でも多くの割合を占めています。近年ではLLDC(後発開発途上国)を優先するという観点からアフリカへの援助も増加してきていますが、まだまだアジアに比べると少ないものとなっています。
Q.ODAにはどのくらいの人が携わっているんですか?
A.日本のODA関連職員数は右下のグラフの通りです。表を見て分かる通り人員の増加よりもODAの増加の伸びのほうが多く人員の面ではまだ不十分な体制と言えます。職員1人当たりの担当額を見ても他の援助国に比べて格別に多くなっています。またこの職員数というものには企画立案のみしか携わらない人も含まれているため実際のODA業務に携わる人の担当実績は更に大きいものとなっています。更なるODA担当職員の増加が必要なのですが、行財政改革の流れなどでそれも難しい状態となっています。
Q.ODAに対する理解促進のために外務省はどのようなことを行なっているのですか?
A.ODAは納税者たる国民の支持が必要であるとの認識のもと、そのために情報公開や広報などを行なっています。情報公開について後で少し問題となるのでここで少し現状について触れておきたいと思います。ODAに関する情報は原則として公開されます。例えば今まで出てきたような贈与比率とか対象分野などの実績に関する統計などは「情報公開の一環」として出版される刊行物(例えばODA白書など)を通じて知ることができます。
しかし、一方で、個別のプロジェクトに関しての情報はほとんど知ることができません。公開されないものの例としては借款契約(L/A)などがあります。公開されているものは交換公文(E/N)、事業最終報告書、事後評価報告書などのみとなっています。詳しくは、第2部の ODAに関する情報公開の項を参照してください。
Q.どのようなプロセスでODAは行われるんですか?
A.次の図を見てください。大体次のような流れでODAは供与されます。
−難しそうな言葉だけ説明します。
交換公文
(E/N)わが国政府と被援助国政府との間で、ODAの協力内容を取り決めた文章。無償資金協力の場合は、これに基づいて資金が供与される。 討議議事録
(R/D)望ましい技術協力の実施計画、双方の遵守すべき義務等を明示し、双方の政府に勧告することについて同意し、署名すると言うもの。 借款契約
(L/A)借款の金額、条件、プロジェクトの範囲・内容のみでなく、調達手続き、貸し付け実行手続きなど借款の実施・管理に必要な手続きが記載されている。 以前は日本が開発途上国側から要請があった案件についてのみ、審査して援助を行なうという「要請主義」をとっていましたが、97年版のODA白書から「共同形成主義」をとることを明確に打ち出しました。共同形成主義とは、援助国側も自らの援助方針を示し、開発途上国政府と共同して援助計画と適切な案件を探っていくもので、プロジェクト形成促進調査や開発調査を要請前に行なうこともこの「共同形成主義」の現れとして位置づけられます。
第1部 ODAの基礎知識
.[1.ODAとは] [2.歴史] [3.現状] [4.批判] [5.改革に向けて]
第2部 ODAの諸問題
[医療分野のODA] [情報公開]
[ODAにおける環境アセスメント]