第1部  ODAの基礎知識

1.ODAとは何か


Q.最初に、根本的な質問ですが、ODAとは何なんですか?

A.ODA(Official Development Assistance−政府開発援助)とは次の3つを満たす資金の流れを指します。

  1. 政府ないし政府の実施機関によって供与されるものであること。
  2. 開発途上国の経済開発や福祉の向上に寄与することを主たる目的としていること。
  3. 資金協力については、その供与条件が開発途上国にとって重い負担にならないようになっており、グラント・エレメントが25%以上であること。

 DAC(開発援助委員会−OECD(経済協力開発機構)の下部機関)の定義による

 1.については日本の場合「実施機関」はOECF(海外経済協力基金)とJICA(国際協力事業団)などです。有償資金協力(円借款−貸し付けるものです)についてはOECFが担当し、贈与の部分についてはJICAが担当しています。

 2.について、軍事的な援助などはODAとは呼びません。

 3.について、グラントエレメントとは貸し付けの度合いを表わす数値で、無償資金協力(無償で相手国政府に供与するもの)を100%、市中銀行と同じ金利(10%とされています)で貸し付けるものを0%として、計算されたものです。グラントエレメントが低くなると、開発途上国側の負担が重くなることになります。

 

Q.日本のODAには理念がない、という批判を聞いたことがあります。日本はどのような理念を持ってODAを行っているといえるのでしょうか。

A.92年にODA大綱が閣議決定され、次の4つの理念が打ち立てられました。

  1. 人道的考慮
  2. 相互依存性の認識
  3. 環境の保全
  4. 自助努力の支援

1.人道的考慮というものは、端的に言えば困っている人がいるからその人を助けてあげよう、ということです。

2.相互依存性の認識は、日本は他国との関係がなければ発展することは不可能である、という認識です。現在の世界においてはどこの国もそうでしょうが、特に日本は資源小国であり貿易を重視しなければならないこと、平和国家である日本にとって世界の平和に貢献するために経済的支援が大きな役割を果たすこと、などの理由から開発途上国への援助を行なう、ということです。

3.環境の保全とは世界中の共通課題である地球環境の問題を重視する、ということです。

4.自助努力というものは、途上国側が主体となり開発を行なうことで、その国の本当に必要なニ−ズにあった開発ができ、それが経済発展につながる、という考え方です。日本としては途上国が真に努力をする、という条件で援助を行なうことになります。

 また、日本のODAは無償資金協力に比べて円借款が多い、ということはこの概念によって説明されます。つまり、円借款は返還の義務が生じ、その義務を果たすために途上国側は努力を行なうので、円借款が多いことは非難されることではない、という説明がなされるのです。

「ODAの理念」は社会状況に応じて変化しています。この理念の変遷については第2章の理念の歴史のところで取り上げます。

 

Q.ODAはどんな条件で運用しているんですか? 特に条件は付けずにどこの国でも要請があればODAを供与しているのですか?

A.そんなことはありません。

 ODA大綱4原則として次のものが掲げられています。この4原則に従ってODAを運用することになります。

  1. 環境と開発の両立
  2. 軍事的用途及び国際紛争助長への使用の回避
  3. 開発途上国の軍事支出、大量破壊兵器の開発・製造、武器の輸出入の動向に注意
  4. 開発途上国の民主化の促進及び市場志向型経済導入の努力、基本的人権や自由の保障状況に注意

 実際にミャンマ−に軍事政権ができたときや、中国が核実験を行なったときにはこの原則に基づいてODAの供与を一部中止しています。

 

Q.ODAって聞くとダムや橋を作ったりするものを思い浮かべるんですけど。

A.それは分野で分けるとプロジェクト借款というものですね。

 その他にもODAにはさまざまな分野があります。

 次のODAの内訳の図を見てください。

 

oda1.gif (5976 バイト)

 

 難しそうな言葉だけ説明しますね。

無償資金協力
一般無償プロジェクト無償   医療・保健、教育・研究、農業、民政・環境改善、通信・運輸という対象分野に施設の建設や機材の供与を行うものです。お金が儲からない基礎生活分野や人づくりに貢献する案件が主になります。
経済構造改善努力支援無償  開発途上国が世銀・IMFの指導のもとで行う構造調整を推進する上で必要な物資の輸入に必要な資金を供与するものです。
草の根無償資金協力  開発途上国で活動しているNGOや開発途上国の地方公共団体や医療機関などからの要請に対して援助を行うものです。
技術協力
プロジェクト方式技術協力  研修員受け入れ・専門家派遣・機材供与を組み合わせたものです。
有償資金協力
プロジェクト借款  プロジェクトに対する借款。電力・ガス、運輸、灌漑、農林水産業、鉱工業などを含みます。
ノンプロジェクト借款  具体的には商品借款などを指します。商品借款は途上国が農業機械や工業資本などが早急に必要となったときに商品で供与する円借款のことです。

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2.日本のODAの歴史へ

 

第1部 ODAの基礎知識
.[1.ODAとは] [2.歴史] [3.現状] [4.批判] [5.改革に向けて]

第2部 ODAの諸問題
[医療分野のODA] [情報公開] [ODAにおける環境アセスメント]

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