(訳者前書き)ここに訳出したのは、カナダのCitizen Labとthe International Consortium of Investigative Journalists (ICIJ)による報告書「Tall Tales:How Chinese Actors Use Impersonation and Stolen Narratives to Perpetuate Digital Transnational Repression」の報告書です。JCA-NETはこれまでも米国がクローバルに展開してきた監視社会化や米国籍のビッグテックによる監視技術や戦争犯罪の問題に注目し、その日本で暮す人々への影響に強い関心をもってきました。こうした関心は今後も持ち続けますが、同時に、中国やロシアなど新興諸国を中心とした国・地域の台頭とともに、サイバー領域をめぐる監視社会化の課題も、新興諸国の動向を無視できなくなっています。この意味でも、このCitizen Lab/ICIJの報告書は重要な意味をもつと考えています。
サイバー領域は、人々がどこで暮すとしても、一人一人の(国境を越えた)コミュニケーションの権利を最優先で保障されるべき領域です。したがって、コミュニケーンの権利運動もまた、国益や企業の利益に従属したり国家の安全保障を優先する政策に与すべきではありません。むしろ、移民や難民など国境を越えて生活を確立しようと苦闘する人々のコミュニケーションの権利のための闘いに連帯することが重要な課題です。
他方で、日本政府は、スパイ機関創設とともに民間事業者に協力させて通信情報を収集するなど、サイバー領域への監視を強化しようとしています。本報告書に記載されているような中国政府の越境弾圧の手法については、日本政府が「だからスパイ防止法ガ必要なのだ」と自らの都合に合わせて主張しそうです。しかし、こうした罠にかかるべきではありません。日本政府は、自国政府の迫害を逃れてきた外国籍の人々やその家族を保護するどころが、時には強制退去を強いてもいます。これは米国のトランプ政権の下でのICEによる暴力とも共通するものです。また、本報告書が明らかにした技術は、日本政府もまた利用しうる技術であり、私達が気づかないところで利用されうることを危惧する必要があります。
本報告書は、この深刻な越境弾圧に対して、当事者の保護を居住地の政府に依存するのではなく、当事者が人権団体とともに自力で防御する可能性を具体的に提起しています。一人一人のサイバーセキュリティは、国家安全保障では保護しえない民衆の安全保障領域でもあるのです。
今私達は、米国を中心とする従来のグローバルな監視社会化と新興の中国などを中心とするもうひとつのグローバルな監視社会化、という二重のグローバル監視システムに直面しています。これらは、いずれも私達にとっては受け入れがたいものです。前門の狼、後門の虎との対峙のなかで、民衆が真にその権利を行使しうる国境を越えたコミュニケーションの場所の構築は、私達にとって重要な課題になっています。
なお本報告書の翻訳には、様々な皆さんの協力を得たことを感謝します。(としまる、JCA-NET理事)
報告書本文は下記からお読みいただけます。


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