ラダイトからボルサまで むすび

~労働組合運動の地域的&産業的組織の国際的経験と原理を探る~
1976年

むすび

 以上、ヨコ組織の歴史と現状の、典型的な部分のみを、駆け足でみてきた。

 平織りの布が、タテ糸とヨコ糸でつくられているように、タテとヨコの関係は、組織の根本にふれる問題である。とうてい、このような小論で問題点を出しつくすことはできない。資料収集の不充分さを痛感しつつ、諸賢の御批判、御教示を仰ぐものである。


(2008.6.6 注は該当箇所に挿入。以下は再掲)

●注1:「ヨコ組織」ないしは横断的組織、CGTでは地区連合などをhorizontal(ヨコ)、産業同盟をvertical(タテ)と形容している。本稿では、連合や結合の度合いにかかわらず、一国、一地方、一都市、一地区などを単位とする労働組合ないしは労働者の、職業・産業をこえた連合もしくは結合体に対して、総称として用いる。ただし、引用文中のものはそのままとし、誤解を生む場合には注記した。

●注2:後述する歴史に照らせば「産業別」という表現はIndustrial Unionismの訳語としては、むしろ誤訳に近い。「別」の意味は、直訳的にも意訳的にも全くないのであって、「産業的」の方がよい。しかも、現実の歴史的な運動をみると、Industrialそのものも、せまい用語である。本稿では、引用文以外は「産業組合」などの表現を用いる。

●注3:日本の労働組合のほとんどは、国際的な歴史と基準に照らせば、およそ労働組合の名に値せず、企業内の「本工のみの親睦会」でしかない。戦前から戦後に掛けての経過など、論ずべき点は多いが、本稿では割愛し、後日を期す。

●注4:Jean-David Reynaud, Las Syndicat en France, Libraire Armand Colin, Paris, 1963, p134.

●注5:「労働組合が、情勢に適合した真に効果的な組織と戦術の諸形態を自己のものにすることができるかどうかということは、労働組合運動の死活を制する重大問題なのである」。
 WFTU金属インター書記長、A・ザバーニの報告。堀江正規「現代資本主義と労働運動」『労働組合運動の理論』第1巻、大月書店、1969、85ページより再引用。

●注6:『世界労働組合運動史』(W・Z・フォスター、塩田庄兵衞他訳、大月書店、1957.
Outline History of World Trade Union movement, William Z. Foster, New York, International publishers, 1956. 上巻、25頁)

●注7:『労働組合運動の歴史』(シドニー&ビアトリス・ウェッブ共著、荒畑寒村監訳、日本労働協会、1973.原著:History of Trade Unionism, Sidney and Beatrice Webb.旧版・1894.新版・1920)。ウッブ夫妻は、後の労働党の理論的指導者。この大著への批判も、いくつか出されているが、いまだに、これを超える労働組合運動史は現われていない。

●注8:「一般的」(general)は、「すべて」の意味であって、この場合にも、すべての労働者の組織化を意味する。後に「一般労働組合運動」などの表現がなされるのも、この意味であって、具体的には、職業別組合(craft union)とは根本的に異なる出発点なり主張なりを、最初から表明していた組織運動である。

●注9:後出「アメリカの場合」:「大工、石工、石切り工、裁縫師、艤装工、沖仲仕、指物師」。つまり、現代の意味の機械工は含まれていない。よって、「機械工組合」と訳すのは、まさに機械的な誤訳であり、ましてや、現代の日本の金属関係の産業「別」労働組合の先駆けと位置付けたりするのは、我田引水の曲訳と言わねばならない。

●注10:「共産主義という妖怪」を自称したこの宣言の文書は、1848年にロンドンで発表された。日時と場所からして、上記の1834年の『タイムズ』紙の時評欄の「妖怪」のパクリである可能性が高い。

●注11:「全国労働組合大連合」の訳語は『労働組合運動史』によるが、原語は、Grand National Consolidated Trades Unionである。Consolidateは、「合併」「統合」であり、「連合」ではない。この新組織は、単位組合の連合ではなくて、複数形の諸職業、トレイズ(Trades)を組織対象とする全国規模の単一組合なのである。これ以前にも、建築関係を中心とするGeneral Trades Unionがあり、その中に各職業別の支部が作られていた。

●注12:『労働組合運動の歴史』の「訳者解題」には、すでに「ゼネラル・ユニオン」(1818~1834)への注目、「巨大な一般組合の成立史」などへの関心がのべられている。そして、この側面からの研究が、最もおくれているのである。

●注13:Richard Hyman, The Workers Union, Clarendon Press, Oxford, 1971.

●注14:Philip S. Foner, History of the Labor Movement in the United States, International Publisher, New York, 1947.

●註15:出典は、John R. Commons and Associates, History of Labor and the United States, New York, 1918. とあるが、原著に接することは出来なかった。

●注16:なお、フォーナーによれば、これより4年前の1823年に印刷工の同職組合がニューオーリンズで結成されていた記録があり、その結成会場は「メカニクス・ホール」であった。つまり、この1823年以前から、メカニクスを名乗る幅広い手工職人たちの共同のホールが設立されていたことになる。

●注17:4フォーナーによれば、1823年に印刷工の同職組合がニューオーリンズで組織された記録があるが、その結成会場は、メカニクス・ホールであった。つまり、それ以前に、幅広い手工職人の共同のホールが設立されていたようである。

●注18:『黒人の歴史』では、「43の地方同盟、11の同業者会議、4つの8時間同盟、1つの全国組合と1つの国際組合を代表する68名の代議員」となっている。

●注19:Labor Dictionary. P. H. Casselman, Philosophical library, New York, 1949.

●注20:Bourse du Travail. Bourseの日常的な意味は「財布」である。そこから「取引所」の意味が生じている。

●注21:(A) GRAND LAROUSSE encyclopdique, Librairie Larousse, Paris, 1960, "Bourse du travail".
 (B) Exquisse d'une Historire de La C. G. T.(1895-1965), Jean Bruhat, Marc Piolot, Confdration Gnrale du Travail, Paris, 1966.
 労働運動史――労働総同盟小史」、小出俊訳、合同出版社、1958、同年の旧版の訳)。
 (C) Histoire des Bourse du Travail, Fernand Pelloutier, Paris, Ancienne Libraire Scleicher, Alfred Costes, Editeur, 1946.

●注22:La Coutume Ouvrire, Tome I, Syndicat, Bourse du travail, Fdration Professionalles, Coopratives, Doctrine et Institutions par Maxime Leroy, M.Giard & E.Briene, Libraires-diteurs, Paris.

●注23:カンデローロ『イタリア労働組合小史』石黒寛・代久二訳、国民文庫、1955

●注24:前掲『世界労働組合運動史』下巻、232ページ。

●注25:G・ナポリターノ、F・J・ホブズボーム『イタリア共産党との対話』、山崎功訳、岩波新書、1976、26ページ。

●注26:『トレーズ政治報告集』未来社、140ページ。

●注27:イタリア労働総同盟『労働運動と構造改革』家里春路編訳、合同出版社、1963。

●注28:中林賢二郎「資本主義のもとでの労働組合についてのマルクス・エンゲルス・レーニンの理論」、『労働組合運動の理論』第一巻、229~230ページ。

●注29:W・Z・フォスター『三つのインターナショナルの歴史』、インターナショナル研究会訳、大月書店、1957、175ページ。

●注30:『ソ連共産党史』1959年版、日本共産党出版局、1962、第2巻、506~507ページ。


「ラダイトからボルサまで」労働組合運動の地域的&産業的組織」に戻る
労働組合運動 論説集に戻る
憎まれ愚痴60号の目次