第2部 ODAの諸問題:情報公開

2.情報公開の現状


 日本のODAの情報公開の状況はどうなっているのでしょうか。次にあげる項目に分けて外務省・JICA・OECFごとに考えてみたいと思います。

 なお、大きく分けると、外務省は無償資金協力、JICAは技術協力、OECFは円借款を担当しています。

1.ODAに関する情報公開全般について

 ODAに関する情報の公開について、それぞれの機関はどのように考えているのでしょうか。

2.プロセスごとの情報公開の現状

 プロジェクトが進むごとにそれぞれ資料が存在します。それらの公開の有無を調べました。次のような段階に分けて考えます。

全体として

3.いつの段階でプロジェクト内容がわかるか?

 プロジェクトの内容が国民に知らされないまま、いつのまにか決定されていることに関する批判が数多くなされます。では、どの段階で私たちはプロジェクトの内容を知ることができるのでしょうか。

4.情報公開ガイドライン

 例えば、どのような資料は非公開にして、どのような資料は一定期間後に公開するか、といった情報公開に関するガイドライン策定について、各機関はどのように考えているのか、聞いてみました。

5.異議申立て機関

 情報公開がなされなかったときに、それに対する不服を申し立てる機関が必要です。そのような機関は存在するのか、作ることは考えていないか、ということについて。

6.現地語/英語での公開

7.インターネットでの情報公開

 

  外務省 JICA OECF
ODAに関する情報公開全般についてそれぞれの見解 国民の税金を利用していることがあるので原則公開 税金を利用しているため、説明責任がある。また、国民には知る権利、監督する権利があるので情報公開すべきだ、と考え、情報公開に取り組んでいる。 国民の理解と協力なくしては経済協力の推進は図れないという理由から、政府の指示と了解のもと、“広報活動”の強化に努めているということである。
全体として “原則公開”としつつも、入札評価報告書、事業進捗報告書(事業の実施状況の報告書)、 事業最終報告書、事後現況評価報告書などについては「内部資料」であるとして、非公開となっている。公開しているものは基本設計調査報告書と交換公文(E/N)などのみとなっている。 入札の公平性を損なうもの、相手国から安全保障に関して注文がつけられたとき(例えば相手国が安全保障の観点から海岸線などの地図を公開しないでほしい、と言ってきた場合)、については一定期間公開を控えたり、秘文書扱いとすることがある。それ以外はほぼ全て公開。 借款契約の概要のプレスリリース、事後評価報告書のみ公開している。その他は全て非公開となっている。外交にかかる事項、金融機関として借り入れ人との関係上公開すべきでない事項については公表する立場にはないとしている。
案件発掘段階の資料 基本設計調査報告書については事業後に公開している。事業の実施中に公開すると外部から注文が出るためそれを避けたいという認識を持っている。

【事業後に一部公開】

案件発掘の調査団の報告書以外は公開。案件発掘のための調査団の報告書については表に出せるようなものではないため、公開していない。なお、この調査団の報告書は次に派遣される事前調査団の報告書に反映される。

【一部非公開】

所有権がJICAにある資料についてはJICAで公開している。それ以外のOECFが所有権を持つ文書は非公開となっている。

【非公開】

審議段階の資料 議事録のようなものは存在しないため、非公開。

【非公開】

公開に値するようなまとまったものではないため非公開。

【非公開】

金融機関として、借り入れ人との関係上公開すべきではないと考えているため、非公開。

【非公開】

契約内容の情報 『国際協力プラザ・ニュース&データ』で交換公文(E/N)を公開。案件名、締結日、金額、プロジェクト概要などを紹介。

【公開】

R/D(討議議事録)S/W(作業領域合意書)を公開。『JICAサテライト』に案件名、締結日、機関、担当部署などを公開。

【公開】

L/A(借款契約)の概要を海外経済協力基金年次報告書で公開(E/N調印日、案件名、金額、金利、調達条件など)。プレスリリースとしてプロジェクトの内容を公開。『OECFニューズレター』で案件概要などを紹介。契約そのものについては、非公開。

【概要については公開】

入札に関する情報 原則として非公開。相手国と日本企業で契約するため、日本政府として公開する立場にない。案件名/受注企業名などについては年次報告で公開。

【入札評価報告書自体は非公開。受注企業名などは公開】

案件名/入札企業/落札企業/落札価格は公開(国際開発ジャーナル−JICA調達情報)。入札価格は非公開

【入札評価報告書自体は非公開。入札企業名・受注企業名・落札価格は公開】

相手国(コントラクター)と企業との関係なので公開できる立場にない。案件名/金額/金利/調達条件/落札企業などについては海外経済協力基金年次報告書で公開。入札価格は非公開。

【入札評価報告書自体は非公開。受注企業 落札価格は公開】

事業の進展状況に関する情報
事業進捗報告書
内部資料であるので、公開していない。

【非公開】

そもそも存在しない。

【存在しない】

公開していない。

【非公開】

評価に関する情報 評価に関しては二つのものがある。「経済協力評価報告書」は一般公開(外務省経済協力局評価室に請求すれば手に入る)。モニタリングに関する資料(事後現況評価報告書)は内部資料のため、非公開。

【一部公開】

「事業評価報告書」は公開(JICAに請求すれば手に入る)。

【公開】

「円借款案件事後評価報告書」は公開。

【公開】

プロジェクトが完了した後の報告書
事業最終報告書
内部資料であるため公開していない。

【非公開】

JICA図書館にて公開。

【公開】

公開していない。

【非公開】

いつの段階でプロジェクト内容がわかるか 交換公文(E/N)発表段階。 順次発表。 交換公文(E/N)発表段階。
情報公開ガイドライン 行政全般で決めるものであって、外務省経済協力局として策定するつもりはない。 情報公開法ができたらガイドラインを作ることを検討する。 そのようなガイドラインは持っていない。
異議申立て機関 そのような機関については考えていない。 情報公開法要項案に書かれた不服審査会(ここを参照)をもって異議申立て機関とする。 日本政府に照会してほしい、ということで回答せず。
現地語/英語での公開 調査報告書は英語でも公開している。E/Nは英語とフランス語などでも公開している。全ての資料の現地語・英語での公開は予算の関係もあり、難しい。 事前調査報告書、開発調査報告書などについては英語でも作られているが、それは相手国が所有しているため、日本においては日本語のみで公開している。全ての資料の現地語・英語での公開は予算の関係もあり、難しい。 発行する広報資料については、ほとんど全て英語版が作成されている。年次報告書をはじめとする多くの資料がフランス語、スペイン語にも翻訳されているということである。
インターネットでの情報公開 ODA白書・経済協力評価報告書の概要版、「21世紀に向けてのODA改革懇談会」の報告などが載っている。個々のプロジェクトの情報は評価報告書を除いては、ほとんどと言っていいほど、ない。 JICAの事業紹介、お知らせ、青年海外協力隊についてなど。個々のプロジェクトに関する情報はほとんどない。JICA図書館の検索システムがネット上で公開されており、この検索システムを使ってJICA図書館に資料があるかないかを調べることができる。 三者の中で一番インターネットによる情報公開が進んでいると思われる。OECFの活動概要に加えて、業務統計、資金業務の中期展望、円借款業務の各種ガイドラインなどを掲載している。また、「プレスリリース」として、借款契約が調印された案件についての概要が詳しく載っている。

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1.情報公開はなぜ必要か 3.海外の情報公開の状況

 

 

第1部 ODAの基礎知識
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第2部 ODAの諸問題
[医療分野のODA] [情報公開] [ODAにおける環境アセスメント]

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