鯨が増え過ぎて生態系を破壊する「反捕鯨」の大嘘(その16)

環境保護運動の育成は「新道徳武装」CIA謀略だった!

『産経』21世紀/まずこれをやろう/捕鯨再開/土俵広げて論議の場を

2001.2.7.mail再録

 わが地元、武蔵野市役所の情報公開担当者は、わがホームページの熱心な読者なので、私が昨年末から捕鯨再開運動を展開していることを知っています。まさか、私の市政批判の矛先を逸らす狙いではないでしょうが、下記の記事の存在を教えてくれました。

 一般にも、「正義」を騙る「お涙頂戴」型の政治的な欺瞞に引っ掛かる間抜けな事例は、非常に多いのですが、捕鯨禁止運動の怪しさについては、日本人ならすぐ分かる問題でしょう。米国のグリーンピースの“活動家”は典型な雇われ左翼政治ゴロでした。いわゆる市民運動や政治運動の怪しさの典型として、その実態の暴露のための好材料となります。ですから、私は、安い鯨肉を食べたい一心からだけではなくて、この問題に一役買う気になったのです。

 日本の歴史にも、この種の「生類憐みの令」がありました。肉食を必要とする動物の人間こと、裸の猿の「原罪」を問題にするのは、いわゆる宗教的支配の共通した手口です。平凡社の『世界百科事典』によると、「7~8世紀に牛馬屠殺祈雨風習の禁令」の存在が確認され、以後、江戸時代には「在村鉄砲統制」による百姓一揆の武器取締に利用されるなど、やはり、騙しのテクニックになっていたようです。しかし、いくらなんでも、捕鯨禁止の法的な動きは、「7~8世紀」の日本に始まるなどと主張するような間抜けは、いないでしょう。

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『産経新聞』(2001.1.31)

21世紀/まずこれをやろう(7)

捕鯨再開

土俵広げて論議の場を

「鯨は全人類の三倍から六倍の魚介類を食べるんですよ」

 巨大な口を開けて、ニシンの群れを丸のみするナガスクジラの写真を示しながら、水産庁漁政部の小松正之参事官は言った。「増えすぎるクシラを人間が食べなければ、海の生態バランスは崩れてしまう」

●増えた鯨

 二十一世紀に人類が取り組まなければならない問題の筆頭は、環境問題と食料問題だろう。一部では、今世紀半ばに世界人口百億の時代が到来するとも予想されるが、人口を養うだけの穀物と家畜を調達するには、世界中の森林、密林を切り開かなければならない。その結果、大地は砂漠化し、地球温暖化が加速される。行き着く先は破滅しかない。  人々はクローン家畜やバイオ農業など、科学の力でこの難局を乗り切ろうと躍起だが、現にある食糧資源を最大限活用する方策も着目し直す必要がある。鯨は海洋生物の食物連鎖の頂点にいる世界最大のほ乳類だが、現在の保護一辺倒から再活用することもその一つだろう。

 一九八二年に国際捕鯨委員会(IWC)で商業捕鯨一時停止(モラトリアム)決議が採択され、八六年から日本では沿岸小型捕鯨以外の商業捕鯨は一切行われていない。「鯨類は絶滅の危機にさらされているから」というのが表向きの理由だ。だが、IWC科学委員会の認める調査結果では鯨類約八十種のうち絶滅寸前の種はほとんどない。ミンククジラは南氷洋だけでも七十六万頭、種によっては増えすぎて餓死しているクジラもいることが分かっている。

●水掛け論打破

 IWCは四八年、「鯨類資源の適切な保存と捕鯨産業の秩序ある発展」を目的とした国際捕鯨取締条約を機能させるための国際機構として発足した。当時は捕鯨国の集まりだったが、鯨油や鯨骨などの代替品が開発され、捕鯨から撤退する国が相次いだ。

 現在は加盟四十ヵ国中、二十二ヵ国が反捕鯨を掲げている。捕鯨再開など重要な決議には加盟国の四分の三の賛成が必要だが、現状では賛成決議を得ることはおろか、捕鯨再開を議論の場に出すことすら容易でない。

 ならば、捕鯨再開のため、反捕鯨国に牛耳られているIWCから脱退してはどうか。その場合には、それこそ「野蛮な国」として国際世論の猛烈な非難を浴びるのは間違いない。他の交渉ごとへも影響が及ぶことも覚悟しなければない。あくまでIWCで再開について議論できる雰囲気を作り出していくことが求められる。

 このため発展途上国にIWCへの加盟を呼びかけては、という意見がある。現行メンバーは反捕鯨国も含め、少なくともかつては鯨を利用し、鯨の恩恵を享受してきた“当事者”である。ここに、新たな仲間を募って、人々は野生動物の恩恵によって生活するという、より幅広い視点を導入することで、両極端の立場から水掛け論に終始しがちな現状を打破しようというわけだ。

 IWCが行う海洋調査や国際会議の運営費用は現在、加盟国一律の拠出金によってまかなわれている。加盟しようとする途上国にとっては大きな財政的負担となる。費用の分担を国連方式とし、先進国の拠出金を増やして途上国の負担を逆に軽減すれば、新たな加盟国が出てくることも期待できる。

 また、舞台をIWCに限定せず、国連食糧農業機関(FAO)や、野生生物の保護と持続的利用を目的としたワシントン条約(CITES)の場に議論を広げるのも手だろう。食糧や野生動物の持続的利用の問題としてとらえ、その議論を逆にIWCに持ち込むのである。

●海の恵み感謝

 約四百年の歴史を持つ日本の捕鯨は一頭、一頭を大切にし、肉、皮、骨、ひげ、体内の老廃物まで完全に利用し、その恩恵に感謝した。網取式捕鯨発祥の和歌山県太地町には、子育て中の鯨の捕獲をいましめた「セミ(鯨)の子連れは夢にも見るな」ということわざが残っている。宮城県牡鹿町など捕鯨の伝統を持つ土地に必ずある鯨供養や鯨祭りの習慣は、人々がいかに鯨を大切にし、まもりながら利用していたかを示している。近代捕鯨が始まり、遠洋に乗り出すようになっても、鯨への思いや態度は変わらなかった。

 日本鯨類研究所の大隅清治理事長は「たとえ日本が捕鯨を再開したとしても、かつて米国やオランダが行っていたような利益追求の乱獲とは全く達う。海の恵みに感謝しながら鯨を完全利用する日本式の捕鯨だ」といい、「大切なのは海の自然を象徴する鯨との密接なかかわりを失わないことだ」と強調する。

 島国日本は捕鯨や漁業の伝統からみても、世界の海洋資源保護政策のリーダーたる責務がある。来年のIWC年次総会は下関で開催されるが、それまでに国民の支持をまとめ、国際世論の一定の理解を得なければならない。捕鯨再開へ向けた議論にすら道筋を開けないなら、国際社会で軽んじられるのも仕方のないところである。

(福島香織)

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(その17) 日本でも狂牛病の恐れ/欧州委が通知/農水省「安全性高い」?
「反捕鯨」の大嘘の目次
『憎まれ愚痴』63号の目次