イラク戦争被害の記録

1.私たちは一昨年のブッシュによる対アフガン侵略を告発するために「アフガン被害報道日誌」を付けました。ブッシュの新たな対イラク侵略に際して、今回も被害実態を明らかにすべく、記録を付けたいと思います。もちろん米英の許し難い蛮行、人類に対する犯罪を再現するためです。

2.ここに記録される情報は、米英軍の侵攻によるイラクの「民間人被害の実態」に関するものです。日本と欧米のマスコミに報道されている民間人の被害情報を中心に取り上げ、米英軍の軍事侵攻によって民間人に甚大な被害が現れている現実を追跡していきます。

3.イラク軍兵士の犠牲者数については、差し当たり問題にできませんでした。しかし今回の戦争は、国連憲章と国際法に違反する無法なものです。当然、米英の侵略によって殺害され、傷ついた兵士も犠牲者です。米英軍の圧倒的な軍事的優位と最新兵器によって、おそらく大量虐殺され続けている彼らの記録も本来ならなされるべきです。実情が分かり次第、ここでも取り上げていきたいと思います。

4.私たちの情報源は、邦字新聞・英字新聞を参考にしますが、可能な限りインターネット情報を重視します。主要メディアは全く信用できないからです。とりわけ米系メディアは恐ろしいほどの翼賛新聞、「大本営発表」になっており、犠牲者報道はねじ曲げられたりタブーになったりしています。

5.私たちはまた、犠牲者の数字だけではなく、その数字の裏にある悲惨な現実、生々しい真実を、可能な限り目を見開き情報をキャッチしていきたいと考えます。商業マス・メディアのように現場からの情報は欠如していますが、欧米の反戦系ウェブサイトには「イラク・ピースチーム」のようなNGOが現地から生々しい報道を寄せています。この点については、随時別途「翻訳報道」をしていくことにしたいと思います。

6.また犠牲者の概算については、イラクにおける戦争犠牲者を記録し戦争の悲惨さを世界に発信している英の市民団体「イラク・ボディ・カウント」(Iraq Body Count)(http://www.iraqbodycount.net)のものを転載することにします。

2003年3月25日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局

 *なお、本ページに紹介する翻訳記事などの再利用にあたっては、各記事等の出典サイトの"FAIR USE NOTICE"などの規定に従ってください。




<Body Count が概算した民間人犠牲者の数> 開戦以来(03.3/20以降)

今もなお増え続ける犠牲者の数
Body Count のデータより作成

(クリックすると開戦以来のグラフが表示されます。)


www.iraqbodycount.org
日毎の民間人犠牲者数の一覧表
(Body Count のページへのリンク)





イラク戦争被害の記録を冊子にしました。
(第1集 3月20日から5月16日まで
第2集 5月20から9月1日 の掲載分を簡易印刷。A4判57ページ)

頒価 300円 (+送料)

問い合わせは、署名事務局まで。
stopuswar@jca.apc.org



被害報道日誌


今も続く “ファルージャの大虐殺”−−飢餓、無差別射撃、避難民

※ファルージャに関しては、益岡賢さんといけだよしこさんのウェブ・ブログ(http://teanotwar.blogtribe.org/)にも詳しい情報があります。

※山本史郎 さんが「イラク情勢ニュース」で、最新のファルージャ情報を提供されています。



1月26日

■拷問政策継続を内外に表明するに等しい犯罪行為。ラムズフェルドを留任させると同時に、アブグレイブ拷問の法的正当化を指導したゴンザレスを司法長官に指名!−−自らの責任を闇に葬り去ろうとする第二期ブッシュ政権。

 米上院司法委員会は26日、ゴンザレス大統領顧問の司法長官指名を可決した。ゴンザレスの司法長官就任は、アブグレイブにおける第一級の国家犯罪に深く関与した政権中枢の人物を法の番人のトップに据える暴挙である。今回のブッシュによるゴンザレスの重用は、アブグレイブに最も重い責任を負っているラムズフェルドの国防長官留任と並ぶ犯罪的行為である。この一連の挑戦的・挑発的な人事は、あのアブグレイブの恥ずべき拷問・虐待・虐殺を公然と今後も続けることを第二期ブッシュ政権が表明したに等しい。被害を受けたイラク人は、アブグレイブにおける恥辱を決して忘れないだろうし、許しもしないであろう。もちろんブッシュ政権に、「民主主義」や「自由」を語る資格はひとかけらもない。

1.ゴンザレスの司法長官指名を批判する。
 米上院司法委員会におけるゴンザレスの司法長官就任の採決は、10対8の僅差での可決である。民主党の上院議員全員が反対に回ったのである。通常、指名をめぐってこれほど多くの反対が出ることはない。米議会の中においてさえも、彼が司法長官に相応しくない人物と見られていたことは明らかである。

 ゴンザレスがアブグレイブにどれほど深く、そして直接関わっていたのか。この点について私達は、パンフレット『アブグレイブ:ブッシュ政権中枢の第一級の国家犯罪』において明らかにした。
 それによれば、2002年1月末、ゴンザレスは、対テロ戦争で「敵の戦闘員」にジュネーブ条約を適用しないよう大統領に助言したのである。戦時下における最高司令官である大統領が宣言すれば(法的にも)“正当化”できるとの“入れ知恵”を大統領に進言したのだ。悪人には悪人が寄り集まってくるものである。そしてブッシュは翌月の2月、「アルカイダとタリバンに対してジュネーブ条約は適用されない」との声明を読み上げたのである。この大統領の声明はその後さまざまな形となって具体化・拡大され、アフガンでの拘束者への拷問・虐待の強化、そしてアブグレイブへとつながっていくのである。ゴンザレスは政権中枢において、大統領法律顧問として「ジュネーブ条約無視」の進軍ラッパを吹き鳴らし続けた人物である。率先して国際法、米国内法(拷問禁止法等)を破ることを進言してきた人物が、法の番人たる司法長官の座に就任するということは、ブラックジョークを通り越している。本当に恐ろしいことである。
『アブグレイブ:ブッシュ政権中枢の第一級の国家犯罪』(署名事務局)

 ゴンザレスは狡猾で破廉恥な人物である。指名公聴会では、一転して「ジュネーブ条約を時代遅れとも古風とも考えていない。」まるで他人事のように、アブグレイブに関して「写真を見て気分が悪くなり、憤慨した」と発言。「この政権ではいかなる拷問も虐待も許されない」とまで、心にもないことを平気でしゃべりまくった。もちろん議会の支持を得るためのウソ八百である。現に、別の所では本音を明け透けに語っているのである。アルカイダ兵士をことさら取り出して強調し、彼らへの処遇については、「正規軍兵士ではなく、テロリスト」との理由から同条約の「戦時捕虜」の身分を与える必要はなく、「そうしなければ米軍の勝利がより困難になっていた」として自らの判断を正当化したのである。

 法律家達からもゴンザレスの司法長官就任に対して、強い懸念の声が挙がっている。ニューヨークの「憲法人権センター(CCR)」は、次のような反対声明を出し、指名に反対している。「アルベルト・ゴンザレスを司法長官のポストに就けることは茶番ではないか。違法で非道徳的な政策の構築者を登用し、我々の人権を守るべき立場の地位に置くことになる。ゴンザレスが作成した文書は拷問を正当化し、アブグレイブへの道を舗装するようなものだ」(CCR会長で弁護士のマイケル・ラトナー氏)。
※「捕虜虐待許されない」 次期米司法長官が条約順守方針(朝日新聞 
 http://news.goo.ne.jp/news/asahi/kokusai/20050107/K2005010701220.html
※「初のラテン系司法長官、アメリカ」(ラテンアメリカから見ると)
 http://la-news.cocolog-nifty.com/lanews/2004/11/238_1.html
※添付翻訳記事『ゴンザレスは語る。拷問(禁止)条約は“残虐な、非人道的”手法を排除していない。』


2.ゴンザレスだけではない。指名公聴会においてライスもアブグレイブを擁護した。

By Iraj Yamin Esfandiary
iranian.com より
 新たに国務長官に就任するライスもまた、アブグレイブにおける拷問・虐待に対するブッシュ政権の責任回避を公然と擁護した。18日の指名公聴会においてライスは、アブグレイブ収容所での出来事を“拷問”と呼ぶことを拒否した。また彼女はゴンザレスと同様に、アルカイダに関係している個人にジュネーブ条約は適用されないと主張した。要するに、アブグレイブでの出来事は一部の兵士の暴走であり、軍による組織的な行為ではないということを主張したいらしい。(事件が明らかになって以降、ライスはこの考え方を一貫して堅持している) そしてジュネーブ条約の無視も、やむを得ないと宣言しているのである。
 アブグレイブにおける国家犯罪の最大の責任者であるラムズフェルドは国防長官に留任し、政権中枢で深く関与したゴンザレスが司法のトップに就く。新たに国務長官に就くライスもまた、ブッシュ政権による国家犯罪の責任回避に一役買おうと名乗り出ているのである。第一期ブッシュ政権によって実行されたアブグレイブの拷問・虐待を人的にも政策的にも第二期ブッシュ政権全体が引き継ぐということである。
※「ライスはアブグレイブの囚人虐待を拷問と呼ぶことを拒否」(Rice Refuses to Describe Detainee Abuse at Abu Ghraib As Torture 2005年1月19日  デモクラシー・ナウ)原文 http://www.democracynow.org/article.pl?sid=05/01/19/159259 益岡氏による翻訳文 http://teanotwar.blogtribe.org/entry-e5eb0df6b41de1022634656422fb118c.html
※18日の上院外交委員会公聴会におけるライスの数々の失言(本音)にも注目したい。彼女は津波災害について次のように本音を吐いた。「(スマトラ沖大地震の)津波は米国政府だけでなく、アメリカ国民のハートを示すための素晴らしい機会となったことはまちがいありません。私達にとって大きな見返りをもたらすことでしょう」。要するに、米軍の活動の目的は被災民のためではなく、自分(米国)の利益に沿ったものだと素直に告白したのである。


3.次々と判決が下る末端兵士の「責任」をめぐる軍事裁判−−すでに最終的な幕引きが進められている。
 1月15日、アブグレイブ拷問の「主犯格」と目されたチャールズ・グレーナー技術兵に対する軍法会議が行われ、不名誉除隊処分、禁固刑10年が下された。今後、アブグレイブ内のA1地区において拷問・虐待行為に加わった憲兵部隊兵士に順次判決が下されるだろう。
 しかし、憲兵部隊に拷問・虐待行為を指揮した第205情報旅団への責任追及はどうなっているのか。情報部員による取り調べを許可した元イラク駐留軍司令官サンチェスの責任問題はどうなったのか。アブグレイブにグアンタナモの手法を持ち込んだ人物ミラー少将の責任問題はどうなったのか。国防総省においてイラクの情報部隊を指揮したと見られるケンボーン次官の責任問題はどうなったのか。ケンボーンを直接指揮したラムズフェルドはどうなのか。拷問を許可した証拠が挙がっている最高司令官ブッシュの責任はどうなったのか。今回の軍法会議による判決は、命令に従っただけの兵士、直接手を下した兵士だけを裁いたものであり、軍の命令指揮系統からして当然責任が負わなければならない連中は、全く免罪され、頬被りしたままである。彼らは、今なお、堂々と、以前とは変わらぬ地位に居座り続けている。まさに憲兵部隊兵士への裁判と判決は、「トカゲの尻尾切り」であり、アブグレイブ問題の幕引きを図る最終的な儀式に過ぎない。

 私達は、前述のパンフレット『アブグレイブ:ブッシュ政権中枢の第一級の国家犯罪』において、昨年8月に出された2つの報告書(特別調査報告書、米陸軍報告書)のいずれもが、政権・軍上層部の責任逃れ、末端の兵士への責任転嫁に貫かれていることを指摘した。そして再びアブグレイブを繰り返させないためにも、責任を追及し続けることが重要であると指摘した。この課題は、第二期ブッシュ政権を迎えた今となっても、変わらず私達に提起され続けている。否、むしろ、先の大統領就任演説においてブッシュは、第一期目の反省−−アブグレイブ、イラク戦争等々−−なしに、第二期目に、「自由拡大」=米国の軍事覇権の拡大に向けてさらに突き進むことを宣言したのである。ライスは公聴会にて具体的国名を挙げ、新たな攻撃の標的を明かにした。アブグレイブを繰り返ささない闘いは継続している。ブッシュ政権に対して、より厳しく、その責任問題を突きつけていかなければならない。
※主犯格兵士に禁固10年 虐待事件で米軍法会議(共同通信) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050116-00000024-kyodo-int
※「ブッシュ就任演説とイラク戦争・占領支配の破綻−−イラク反戦闘争を継続・強化しブッシュをさらに追い詰めよう!」(署名事務局)


4.次々と明らかにされる虐待の事実。アブグレイブの追及は続く。
 アブグレイブをめぐる新たな問題が、今なお次々と明らかにされている。人権団体による告発は今なお続いている。12月、全米市民自由連合(ACLU)は、米連邦捜査局(FBI)が2002年11月段階において、グアンタナモ、イラクの米軍基地において拷問・虐待の事実を把握していたことを明らかにした。FBIは2002年中において、国防総省にその事実を伝えていたらしい。タグバ報告書が作成された2003年末よりもはるか以前から、国防総省=ブッシュ政権は事実を知りながら長期にわたって放置し続けたのである。要するにブッシュ政権は、収容者への拷問・虐待を容認していたのである。

 英軍とデンマーク軍のイラク人虐待が欧州で大きな問題となっている。英軍事法廷の場において、英軍兵士の虐待映像−−イラク人を裸にしてフォークリフトでつり上げる、性行為のまねごとをさせる−−が公表され、あまりにも野蛮の行為に対する批判の声が新たに高まっているのである。
英軍の拷問・虐待写真が新たに発覚。
イラク人に対する拷問は米軍だけはなかったことが改めて明らかになった。
     
(ガーディアン紙のサイトより http://www.guardian.co.uk/gall/0,8542,1393803,00.html)
 デンマークでも兵士ら5人が拷問・虐待の罪で訴追されている。拷問・虐待問題は米国のみならず、同様にイラク占領支配に加担する「有志連合軍」諸国にも波紋を広げている。自国軍兵士によるイラク人拷問・虐待の事実は、イラク派兵の正統性に大きな疑問を沸き起こしているのである。

 そして、イラク国軍による拘束者への拷問・虐待といった新たな事実が浮上している。米人権団体「ヒューマン・ライッツ・ウォッチ」によると、サダム時代と変わらぬ残虐な拷問、不法な拘束、そして政敵の拘置、このような米国の占領支配下で米軍が行ったのと同様の行為が、傀儡イラク暫定政府と国軍によって日常的に行われているというのである。明らかに米国はこの事実を知っていながらも黙認している。むしろ彼らの後ろ盾となり、煽っているのである。

 私達がパンフレット『アブグレイブ:ブッシュ政権中枢の第一級の国家犯罪』の中で、再三強調した点、「アブグレイブは過去の問題ではなく限に今も続く問題である」という指摘は今なお妥当である。似非議会選挙に向けた「掃討作戦」、米軍の占領支配の破綻、暴走するイラク暫定政府の支配下において、“人間狩り”、不当拘束が急増しており、間違いなく拷問・虐待がエスカレートしている。ファルージャで明らかになったように、民間人の保護を求めるジュネーブ条約を遵守することなど、全くブッシュ政権の眼中にはない。だからこそ私達はイラク侵略と増大する民間人犠牲者、ファルージャの虐殺、アブグレイブの拷問・虐待、これらの事実を明らかにし、その責任問題を追及していかなければならないのである。
※イラク人虐待写真 英軍のイメージに傷、デンマークも 欧州に波紋広がる(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050124-00000009-san-int
※02年に米基地の虐待把握 FBI、国防総省に報告(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041222-00000045-kyodo-int
※「New regime faces claims of abuse as bad as Saddam's」(英Times紙)
 http://www.timesonline.co.uk/article/0,,7374-1455417,00.html
※「イラク虐待 米軍捜査 大半に幕 人権団体「重大な疑問」(朝日新聞1月29日)


■翻訳記事
ゴンザレスは語る。拷問(禁止)条約は“残虐な、非人道的”手法を排除していない。
Torture treaty doesn't bar `cruel, inhuman' tactics, Gonzales says
フランク・デービス(Knight Ridder Newspapers)2005/1/25
http://www.realcities.com/mld/krwashington/10732654.htm

ワシントン−アルベルト・ゴンザレスは、司法長官指名審査のための上院委員会に対して、米軍による国外収容者への厳しい取り扱いについて証言した。

指名に関して水曜日にも投票が行われる上院司法委員会のメンバーへの回答として書かれた200ページ以上にもおよぶ文書の中で、ゴンザレスは上院議員に対して、諸法律ならびに諸条約は、例外なく、いかなる米国の職員による拷問も禁じていると証言した。

しかし彼は、上院で批准されている「拷問等禁止条約(Convention Against Torture)」は、イラクあるいはその他の国外で拘束された非米国市民に対する“残虐な、非人道的あるいは恥ずべき”手法の使用を禁じていないと語った。

ホワイトハウスの法律顧問であり、ブッシュの側近の顧問でもあったゴンザレスは、最近の収容者虐待の報告を「ショッキングかつ深刻な問題」と述べた。しかし彼は、FBI職員が証言した尋問手法が不法かどうかという上院議員からの質問に答えることを拒否した。

彼は、尋問手法についてのどんな公開の議論も、捕らえられたとき何を予想すべきかという“手引き”をアルカイダ・テロリストに与えることによって、彼らを助けるであろうと警告した。

彼はまた、政府は、すべての実例における包括的な法的再検討を行っており、これまでのところ、司法省はこのやり方が合法的であると結論付けていると語った。

10人の共和党と8人の民主党から構成される委員会は、水曜日にもゴンザレスの指名を上院総会に送ると予想される。彼は、月曜日司法省に分かれを告げる司法長官ジョン・アシュクロフトと交代する予定である。

委員会において数人の民主党議員は、ゴンザレスに反対している。彼らは、ゴザレスが責任を回避し、2002年の政府決定が米軍兵士による虐待に寄与したとは考えようとしていないと語っている。

民主党の委員であるバーモント州のパトリック・リーヒ上院議員は、1月6日の公聴会を受けた上院の質問に対してゴンザレスの書いた回答を、“あいまい、鈍感、あるいは無許可職務離脱(AWOL)”だと述べた。

公聴会で発言したようにゴンザレスは、ブッシュ大統領は米軍あるいはCIAが拷問を使用しないよう命じていたと語った。彼は、米国の法令に定められた拷問の定義、すなわち“深刻な肉体的、精神的な苦痛あるいは苦難を負わせることを明確に意図する”行為という定義を援用した。

しかし彼は、拷問を禁じた米国の諸法令と、拷問には及ばないかも知れない“残虐な、非人道的あるいは恥ずべき”行為を防止することを諸国に対して求めている国際的な「拷問等禁止条約」の間の相違点を指摘した。

上院がその条約を批准した時、修正条項5条、8条、14条の違反のような取り扱いを定義した。この条項を理由に、司法省はこの条約が米国の司法権下にある行為に対してのみ適用され、「国外での外国人に関する処遇」には適用されないと決定した、とゴンザレスは語った。

彼は、拷問を構成するであろう手段の議論に引き込まれることを拒否した。マサチューセッツ州の民主党上院議員エドワード・ケネディは、最近公表されたFBI職員からの報告書について彼に質問した。収容者が手足を縛られ、18〜24時間にわたって自らの尿と便の中に横たえられていたというものである。

「私は、これらのe-mailがショッキングで非常に困った問題であるとわかった」とゴンザレスは答弁した。「私が、報道で論じられている尋問の慣行の報告書を扱うこと、このような報告されている慣行が合法かどうか解析を試みることは、適切なこととは思わない」。

拷問を臓器不全や死につながる苦痛を与えることと矮小に定義した、重要な2002年の司法省メモについて尋ねられて、ゴンザレスは、CIAがそれを要求したかどうか、あるいは彼が司法省にそれを作成するよう依頼していたかどうか、思い出せないと述べた。


彼は、司法省弁護局から彼に宛てられたメモが、「あなたは我々の事務所の見解を求めている」との文章から始まることを認めている。

ゴンザレスとブッシュがテキサスにいたころから彼らについてきた憲法学者のカル・ジルソンは、ゴンザレスはブッシュ政権の基本的な政策−−ミスを認めたり決定の再評価をするな−−に従っていると語った。

「9・11の影響が残っている中で、彼らは行為について再考することが嫌だった」と、南メソジスト大学の教授であるジルソンは語った。「そのメッセージは、大統領が決して拷問を認めていないというものであったが、問題となるのは、定義をもてあそぶことで、ほとんど何をやっても拷問とは見なされないという状況を作り出したのではないのか?ということである」。

デューク大学の「法律、倫理、国家安全保障に関するセンター」の代表であり前空軍弁護士のスコット・シルマンは、ゴンザレスがいくつかの議論を機密扱いにしておくことについて重要な成功を収めていると語った。しかし彼は、虐待の拡散についての最近の報告書は議会による監視を必要とすると語っている。

「すべての報告書が出され、また何が許されているかという事についての混乱と曖昧さが全て表面化したことに伴い、議会はこれを取り扱う筋道を見つけなければならない」とシルマンは付け加えた。何が許容され、何がそうでないのかを審査するための非公開聴聞会の開催も示唆しながら。

最近のインタビューにおいてブッシュは、いかなる尋問方法を彼が再検討し承認したのか、あるいは拷問が行われている国々への収容者の移送を彼が許可したのかどうかについての質問をかわした。

「私がこれまで命じてきたのは、拷問はだめだというだけだ。それは政府の政策である」と彼は「ナイト・リッダー(Knight Ridder)」の記者に語った。「そして、私たちは拷問していない。もし拷問があれば、私たちは彼らの責任を問うだろう」。



2005年1月14日

■華やかなブッシュ就任式とそのブッシュによって廃墟にされたファルージャ

ファルージャの民は告発する−−

私は世界に問いたい。
なぜこうなるのだ?
私はアラブの指導者とムスリム国家に問いたい。
目を覚ませと!

どうか目を覚まして欲しい。
私たちは殺されているのだ。
私たちは家を追われた難民なのだ。
子供達には何もない。
靴さえも、衣服さえも!
目を覚ませ!目を覚ませ!
暴虐を食い止めろ!
一人の人間であれ。
そして米国の人形になるな!


 1月20日、ブッシュ大統領の二期目の就任式が行われる。1万数千人を越える軍・警察による警備。見込まれる式典への参加者は50万人。1対30、1対40の異常なまでの警備体制である。首都には兵士が溢れかえり要塞の中での式典になるという。
 ブッシュ大統領は、何を恐れているのだろうか。この異常な式典の姿は、言うまでもなく世界中を戦場に変え恐怖に陥れた自らの戦争政策の代償である。そして4千万ドルにものぼるお祭り代。この金額は、舞踏会やコンサート、キャンドル・ディナー等の、馬鹿騒ぎ、まったくの無駄遣いに浪費されるのだ。しかし軍・警察が取り囲む中での政治ショーは、華やかさより異様さを現すだけだろう。

 しかし私たちは、第2期ブッシュの行方を見るには、ワシントンの見せかけの「政治ショー」ではなく、イラクの悲惨な現実、とりわけ住民大虐殺の現場となり今や廃墟と化したファルージャの現実を対比させなければならない。ブッシュ政権の本質はここにこそあるからだ。ブッシュ政権がこの4年間になしたことを端的に表現するならば、米国の新たな軍事覇権の拡大、全世界を戦場に変えたことである。その最たる実例がイラク戦争であり、ファルージャ侵攻なのである。

 ブッシュ就任式に浮かれる者たちよ。汝らの手が、汝らが虐殺したイラク民衆、とりわけファルージャ市民の血に染まっていることを思い知るがよい。−−ブッシュ政権はファルージャで何をしたのか、そして今ファルージャはどのような状況にあるのか。この間私たちは、微力ながらも米軍のファルージャ侵攻と市民虐殺の告発を行ってきたが、今回あらためて確認することは無駄ではない。ブッシュ就任式に対して私たちは、彼の罪状を改めて告発したい。
※私たちは一度ファルージャの現状を整理した。「餓死の危機”から5万市民を救え!」(署名事務局)参照。

−−何よりもまず第一に、何の罪もない数多くの民間人を殺害した。米軍・傀儡軍は、1000〜2000名の「武装ゲリラ」を殺害したと胸を張ってその“戦果”を誇示したが、実際に彼らが「戦った」相手は、ファルージャに住む武器も何も持たない子どもや女性だった。非武装の子どもや女性を皆殺しにしたのだ。そればかりか、その無差別虐殺を“戦果”と誇ったのである。現に市内に入った医師たちが確認した700の遺体の内550体、何と8割が子供、女性であった。圧倒的多数が子ども、女性の犠牲者だったのだ。しかもこの数は氷山の一角に過ぎない。6000人という数字が明らかにされている。
※「イラク戦争被害の記録」2005年1月9日参照。
−−米軍は無差別銃撃で皆殺しにしただけではない。繰り返し繰り返し、毎日毎日行われる爆撃・砲撃によっても無差別に殺害した。手足がもげ、バラバラになった民間人の遺体が数多く発見され、葬られることなく道路などに放置され死臭を漂わせるに任せた。ブッシュはファルージャを地獄に変えたのだ。
−−ブッシュに屈服せず粘り強く抵抗するイラク人民への見せしめとして、ファルージャから成人男性が避難することを許さず、男性全てを「テロリスト」呼ばわりし、町中で無差別に殺害した。
−−町の病院・医療施設全てを破壊し、負傷した市民が治療を受けることができないようにした。負傷者をジワジワと殺したのである。これは時間をかけた計画的虐殺である。現に、市内にとどまり命からがら脱出した市民からは、血を流し、傷を負いながらもごく基本的な治療すらも受けられずに多くの命が奪われていった悲惨な実態が報告されている。
−−町を封鎖し、救援団体、支援団体が入ることを拒否した。負傷した市民、食糧を絶たれた市民が次々と犠牲となったのである。栄養失調の赤ん坊の遺体も発見されている。食糧不足による犠牲者か。母親が殺されて取り残されたのか。このような例がどれ程に上るのかは現段階では不明だ。しかし、病人や負傷者の治療そのものを禁止することは、虐殺に値する戦争犯罪である。
−−米軍・傀儡軍はもっと卑劣な、おとりをを使った虐殺も行った。赤新月社や国際赤十字など支援団体にわざと市内に入らせ、物資を取りに来たところを狙撃するという方法である。彼らは支援物資をエサに市民をあぶり出し、そして惨殺したのである。
※エマン・ハーマスさんの講演「メディアから隠された”大量虐殺”を告発−−ファルージャとアブグレイブ、大量殺戮と拷問・虐殺の実態を生々しい証言で語る−−」(署名事務局)参照。
−−ファルージャを徹底的に破壊し、「居住不能」な町に変えた。町の60〜70%の家屋が完全に破壊され、文字通りの廃墟と化した。
−−生活基盤である発電所、送電網、給排水システム破壊し、町を「居住不能」にした。現地に入った国際赤十字委員会(ICRC)は、「ファルージャの浄水施設4ヶ所がいまだに稼働していない」と発表した。
−−破壊された医療拠点をいまだに放置したままにしている。二ヶ月を越える難民生活を通して、多くの住民の健康状態は悪化している。最も抵抗力のない子供たちの間には、伝染病の流行すら見られている。しかし町にはまともな医療施設はないのである。
−−町の出入り口に検問所を設け、出入りする市民を厳重に監視している。検問所に「網膜スキャン」を導入し、市内に入っても良い住民と入ってはいけない住民を選別し管理している。ファルージャは現在、米軍の完全な管理下にあるのだ。まさに「強制収容所」である。
−−20万人とも言われる避難民が発生している。彼らは“難民キャンプ”でテント生活を余儀なくされ、医療・食糧・生活など十分な援助を米軍・傀儡軍に妨害され、極寒の冬の生活を無理強いされている。
−−しかし、米軍・傀儡軍がここまで滅茶苦茶なことをしても、彼らは完全制圧できないのである。屈服しない住民が今なお抵抗し続けている。

 以上のように徹底的に破壊され蹂躙されたファルージャは現在どうなっているのか。下記の紹介記事『ファルージャ:未来なき都市か?』は、ファルージャの最新の状況を伝えるものである。ファルージャ攻撃をめぐる米国の思惑と狙い、ファルージャの被害の実状、当初の思惑とどれだけ異なった結末となったのか、この結末を見て住民とイラク民衆はどう思ったのか、そして今住民は如何に抵抗しているのか、これら多岐にわたる側面を取り上げている。
 筆者はファルージャ侵攻の無差別性、残虐性、計画性(計画的大量虐殺)等々、国際法やジュネーブ条約を踏みにじる戦争犯罪であることを批判すると同時に、この侵攻がブッシュと米国に刃向かう者への“見せしめ”であるという側面を強調している。
 また筆者は、米軍が想定したシナリオが如何に自分勝手で傲慢なものなのか、つまり「いまやゲリラは一掃されており、再建されたファルージャは、その他の国内地域において感嘆、模倣される模範される」と夢想していたことを暴露する。何と彼らは、ファルージャを徹底的に蹂躙した後、これを再建し、「イラク復興のモデル」にしようとしていたのだ。そして住民を皆殺しにし都市全体を破壊しても、黙って住民はブッシュと米国に付き従い「再建」に協力するものと思い上がっていたのである。信じがたいことだ。
 そして筆者は、米国による「再建」の「空約束」とデタラメを数字を挙げて批判し、最後にこう結論する。−−再建は米国の下では出来ない。「再建は、米軍が去った後に開始されるであろう」と。
※<米大統領就任式>空前の警備に 約1万3000人投入(毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050119-00000030-mai-int
※ブッシュ大統領の2期目就任式、華美に過ぎると批判の声(Excite Japan)
 http://www.excite.co.jp/News/world/20050118104630/JAPAN-167385-1_story.html
※Instability in Fallujah keeping Marines busy(azcentral.com.)
 http://www.azcentral.com/news/articles/0115iraq-fallujah15.html#



[翻訳紹介]
「ファルージャ:未来なき都市か?」
Falluja: City Without a Future?
ミッチェル・シュワルツ 2005/1/14 TomDispatch.com
http://www.tomdispatch.com/index.mhtml?pid=2124

11月の「精密誘導爆撃」から3週間後、1万の米軍兵士と2千のイラク国軍兵士がファルージャに侵攻した。彼らには5つの目的があった。

第一に、最も重要な点は、武装勢力の支配からファルージャを解放すること。そして市民を1月30日の選挙への参加させること。
第二に、「安全な隠れ家」にいるゲリラ指導者を捕獲あるいは殺害すること。特に、抵抗勢力の黒幕として非難されているアブダル・ムサブ・アル・ザルカウィ。
第三に、「2005年を通して封じ込めることのできるレベル」にまで弱体化させるだけの「ダメージを武装勢力に与える」こと。
第四に、ファルージャ市民(およびイラクのその他の人々)に対して、ムジャヒディン抵抗勢力を「かくまう」と、米軍は全兵力をもってのぞむことを教えること。(この点については、匿名のペンタゴン高官がニューヨーク・タイムズ紙の記者トム・シャンカー氏とエリック・シュミット氏に対して次のように語った。「攻撃と破壊で死ぬ市民が出るとしても、現地軍(the locals)はある時期に決断を下さなければならない。彼らが武装勢力をかくまい、それに伴う結果を引き受けることを望むのか、あるいは武装勢力から離れ、そこに奴らをいさせないことの利益を享受するのか?」と。)
第五に、いまやゲリラは一掃されており、再建されたファルージャは、その他の国内地域において感嘆、模倣される模範となる。(軍事作戦を練るジョン・R・バラッド大佐がニューヨーク・タイムズ紙に対して、「モデルタウンを導入する最適な場所はファルージャである」と語った。)
ファルージャへの攻撃は、このような野心的目的を達成しただろうか?

「結果を引き受ける」

不幸なことに、ファルージャ作戦における唯一の成功は、ゲリラをかくまったことに対する町への懲罰という「結果」を示しただけに過ぎない。ファルージャは全焼した。侵攻から二週間後、ニューヨーク・タイムズ紙のエリック・エクホルム記者は町の様子を次のように形容した。「骨組みだけとなった建物、タンクの破壊された家屋、垂れ下がった送電線、折れたヤシの木。この荒廃した世界」。少なくとも1/4の家屋が完全に破壊された。おそらく、ほとんどの家屋が深刻なダメージを受けた。窓が吹き飛ばされ、家具が砕けている。壁には3フィートもの穴が空いている。そして米軍部隊が冗談にも「魚(FISH)」戦略(Fighting in Someone's House;”誰かの家屋内での戦闘”の頭文字)と言っているものを容赦なく適用したことを明示している崩壊した扉。その「魚」戦略には、「敵を恐れて、事前に各部屋に手投げ弾を投げ入れる」ことが含まれている。「(サッター准将の発言)どの家もこの家も」調べ上げたので、ほとんどが生存していないだろう。

戦闘期間中とどまり続けた市民は、自らが動く物なら何でも撃ってもよい地域にいることを知った。1月、最初の医療チームが到着した時、彼ら(医療チーム)は埋葬されておらず腐敗している700を越える遺体を収集した(噂によると、その中には女性と子供の550の遺体が含まれていた)。それは町の1/3に過ぎない地域においてである。そして、明らかにこれらは、既に戦闘中に埋葬されたか、あるいは瓦礫の下に隠されている死体を含んでいない(アルジャジーラは、「黒こげになった建物内部の遺体の臭いは周辺に充満している」と報道している)。米軍が主張する2000人殺したというのが正確ならば、それは少なくとも3000人(かつて評価された町の人口の1%)もの人々が死んだことを意味する。間違いなく、正確な数値ははるかに大きなものであろう。

しかし、生き残った者たちはどうなったのか?20万人を越える住民が、戦闘を逃れたと見られている。イラクが冬に入ろうとしているのに、ほとんどの人々が替えの衣装すら持っていない。恵まれた人々は、時には狭い一室に30人にもなる場合もあるが、友人や親族の家の世話になっている。恵まれない人は、実質的には不法に居座っているその場しのぎの難民キャンプを形成する。大部分は訪れることのできるいかなる施設もない。ある家族は、うち捨てられた遊園地の一角のバンパー・カー(小型電気自動車)競技場内にテントを設営した(最低限、屋根だけはあった)。独立記者であるダール・ジャマイル氏は、彼らの日常生活は「食料、医療、暖、清潔な水を探し求める」ものであることを報道している。「私達は犬と同じように生活しており、子供には十分な衣服がない」と、難民の一人はジャマイル氏に語った。その他の人々は、ラマダン後のご馳走について食糧不足を熱心に語った。「私達は、取り巻く状況が悲惨なものであるために、今年はラマダン後のイード(祭り)を実感できない」。米占領軍とイラク暫定政府は、これら「目に入らない」犠牲者への援助を提供していない。明らかに、故意であろうとなかろうと、ゲリラをかくまった人々を見舞うことになる「結末」を強調したいのである。

あるブッシュ政権の高官は、ニューヨーク・タイムズ紙の記者に対し、ファルージャの人々は猛攻に応えて、「O.K. No mas! 私たちは何をすればよいのですか。アラウィ首相、この種の戦争を阻止するために私達はあなたと一緒にどうやっていけば良いのですか」と言うだろうと予言した。

しかし、「No mas!」と叫ぶ代わりにファルージャの市民は町の入り口において、米軍が立ち去ることを要求する数千人のデモを行い怒りの声をあげた。他の者たちは、攻撃を止めさせる国際的介入を要求した。「私は世界に問いたい。なぜこうなるのだ?私はアラブの指導者とムスリム国家に問いたい。目を覚ませと!どうか目を覚まして欲しい。私たちは殺されているのだ。私たちは家を追われた難民なのだ。子供達には何もない。靴さえも、衣服さえも!目を覚ませ!目を覚ませ!暴虐を食い止めろ!一人の人間であれ。そして米国の人形になるな!」

そしてファルージャを越え怒りは拡大している。ラマディでは、40歳のアブダル・ラナン氏は断じた。「米国人はイラクのすべての町をファルージャのようにしようとしている。奴らは、私たち全員を殺そうとしている。奴らは、私たちの生命を奪おうとしている」。彼の友人は、容赦のない指摘を行った。「ここの誰もが、米国人を憎んでいる。奴らはサダムさえ上回る早さで墓場を作り上げているのだ!」

まがりなりにもゲリラは、攻撃によって民間人に戻ったのか?11月の半ば、ファルージャの海兵隊司令官ジョン・サッター中将は、作戦が成功したことを断言した。攻撃によって「武装勢力の背後を破壊した。・・・私個人、国全体にわたり、(武装勢力が)行動することが困難になることを確信している」と記者に語った。

彼は誤っていた。アブダル・ムサブ・アル・ザルカウィは(仮にファルージャにいたとしても)、その他のゲリラ指導者全員と、実質的には攻撃前に町を去っていた。戦闘員のほとんどが、住民とともに去った。明らかにゲリラの比較的小さな兵力だけが残った。彼らは、米軍に対してできる限りの損害を負わせる古典的なヒット・アンド・ラン戦法を採用した。多くが命を犠牲とし、その他はトンネル、瓦礫をすり抜け、繰り返し攻撃を実行した。それから8週間後、町の中からワシントン・ポスト紙のアンソニー・シャディド記者との電話インタビューで占領をあざけり続けている指導者は、戦闘が「数ヶ月、継続するであろう」と主張した。

米軍がファルージャ市内に縛り付けられている間、ゲリラはイラクのスンニ派地域全体に強烈な攻撃を仕掛けた。彼らは、タル・アファとサマラにおいて、米軍の攻撃を押し返した。モスルとティクリットでは支配権を握った(以前は占領当局にとってのショーケースだった)。バグダッドの周辺の地域において米軍支配に挑んだ。首都の「グリーン・ゾーン」において米軍司令部に日常的に砲撃を行った。そして米軍基地への攻撃をエスカレートさせた。11月、1/4の米軍の補給輸送トラックが待ち伏せに遭った。補給物資輸送のために航空機を増大させることを余儀なくされたのである。

12月、米中央軍の次官であるランス・スミス中将は、攻撃が「より効果的になっている」ことを認めた。「1月初旬、イラク情報局の責任者は、(バグダッドを含む)4つのスンニ派が多数を占める州は、そこはイラク全土の40%の人口を抱えているが、「安全ではない」と今や見なされている、--要するにそこは、ムジャヒディンと米軍兵士の間で戦闘が継続する地帯なのである。

武装勢力を壊滅させる代わりに、ファルージャの攻撃は、(抵抗勢力の)深みと範囲を拡大しただけののようだ。一方では、(ゲリラへの)支持を拡大しながら。

ファルージャを掃討する。

米軍はファルージャを破壊したが、市内の抵抗勢力をいまだ完全に制圧できていない。侵略軍がファルージャ全体に直ちに展開し、また早期に勝利を宣言したにもかかわらず、低強度の戦闘が12月から1月の間継続した。

双方とも、継続する戦闘での優位を主張している。ムジャヒディンは、衛星電話とインターネット接続を有している(ジハード・アンスパンのように英語の店舗すら有しているのである)。「米軍はファルージャの一部に押し戻されている」との見出しで勝利に次ぐ勝利を主張するプレス・リリースを発表している。その一方で米国メディアは、---「偶発的な銃撃と狙撃を除いて」、町は平穏であると宣言した。

裏に潜んだ事実は、瓦礫の中での古典的で低強度の都市ゲリラ戦だということだ。ゲリラは適度な打撃を負わせることができると考えた時にだけ立ち上がり戦い、米軍は圧倒的な火力−戦車、火砲、爆撃のような−で攻撃を受けた建物すべてに応戦する。遭遇が時々であろうと頻繁であろうと、恒常的に優性になのが米軍であろうと武装勢力であろうと、その結果は確かに継続的な戦闘であった。1月の国連の派遣団は、27地区の内の9地区だけが医療チームにとって入るのに十分安全だと報告した。すなわちその報告者達はその町においては、“彼ら自身の安全のために”許可されなかったのだ。あるロサンゼルス・タイムズ紙の報道は、その町における“散発する戦闘”を問題にしている。しかし、その後“ファルージャのある地区だけが帰還するのに十分安全だと考えられる”が、その町の中にある臨時米軍基地には、奇妙だがはっきりと書かれた警告“止まれ、さもなくば米軍が銃撃する”が掲げられていたと述べている。

継続する戦闘の意味は、その町において最初の、そして唯一の、夜の帰還を語ったある避難民からの報告(“ファルージャ難民キャンプからの報告” Free Speech Radio News 2005年1月6日)に反映されている。「私の周辺の家々は、すべて破壊されていた。私達の家は煙で一杯だった。家はめちゃくちゃだった。私達は家を掃除し、その晩そこで過ごした。しかし夕方の7時には爆撃が始まりそして朝まで続いた。そこには、ありとあらゆる爆弾があった。私の子供たちは眠ることができなかった。」「戦闘の本当の終わりは見えなかった」ので、彼らは再び去ることを選び、避難民として“一日一日を生き延びること”に専念している。

瓦礫と化した一帯すなわち現在のファルージャは、おそらく無制限にゲリラを隠すことができるため、戦闘は米軍が撤退することでしか終わらない可能性がある。そうこうするうちに、ファルージャでの闘いと占領支配に非常に多くの前線の兵士達を張り付けているため、米軍は他の場所での武装勢力の行動に対して中途半端な対応しかできなくなっている。車列やパトロールのルートに沿って仕掛けられた手製爆弾、守りが固められた基地やグリーン・ゾーン、モスルの陸軍食堂で起こった自殺攻撃に対する脆弱性は残されている一方で。

無意味な選挙?

一月までに、現実は、米軍がファルージャを“選挙のために安全に”するだろうという攻撃前のブッシュ政権の呪文をあざ笑っている。住人達のとても小さな一団は、米軍の検問所において戦時下の居住不可能な町に戻るために5時間の待ち時間を耐え抜いた。少なくとも90パーセントのファルージャの人々は、選挙が訪れた際、投票しない被災民になったであろう。

しかし、ファルージャにおける攻撃が決定的にファルージャの人々の公民権を奪ったと言うことは、さらに大きな現実をないがしろにすることになるだろう。つまり、選挙は、イラクのスンニ派(地域)でまず実施されないだろうということだ。モスル州やアンバー州において登録した選挙人がほとんどいなかったという事だけではない。暫定保安局の責任者が安全に関する懸念事項が4つのスンニ派多数の州の選挙を妨げるかもしれないと警告していた事でもない。機能している選挙人登録センター(そしてそれらはゲリラの標的になった)がほとんどなかった事でもない。アンバー州における選挙委員会のメンバー全員が、選挙が不可能な時に彼らの命を危険にさらす価値はないと主張し、辞職した事でもない。

もっとも重大な要素は、選挙は、米国の政策を運営する売国奴のいずれかのグループを選ぶように要求されているひどい見せかけだと、ファルージャや他のスンニ派の人々の大きな一群が−おそらく多数派が−信じていることだ。リバーベンドは、若いスンニ派の女性のペンネームで、彼女のウェッブサイトはイラクに関心のある人々にとって必須の読みの物になっているが、一月はじめに、この心情をエレガントに表現した。
「スンニ派のアラブ人達は選挙をボイコットするでしょう。それは宗教、ファトワにかんするものではないし、あなたが占領下にいる間選挙を行う原則のようないかなるものでもない。欧米のメディアがほのめかしているように、人々はこれが民主主義への最初の布石であると本当に感じていないのです。多くの人々は、これが実に悪い芝居の最後の演技のようなものであると感じています。それは私達が、手渡されてきた‘民主主義の小包み’のリボンの結び目です。それは、選挙を通して’合法性’のラベルを貼られた占領政府を押しつけるものです」。
スンニ派の投票がなくては新しい政権は明白に代表的なものにはならす、15万の外国軍隊に依存し続ける存在である政府の命取りとなる新たな要因になるだろう。

再建に関する偽りの約束

攻撃以前においても米軍は、新しく解放されたファルージャは華々しく再建されるだろうと約束した−「社会的、物質的工業技術の偉業…は反米主義の砦を慈悲深く機能的な大都市に変える事を目的としている」と。しかし、行動は常に言葉よりも雄弁である。勝利宣言後の6週間その町における唯一の新しい建造物は、一連の検問所(そこでは兵士が指紋と帰還した住人の網膜スキャンを記録している)と、新たに整地されたメイン・ストリート(その使用は米軍車両に限られていた)であった。この警察国家的やり方は、イラク・プロジェクトと契約事務所の責任者であり、その町の再建をあずかっている人物であるチャールス・ヘス氏が「目先は…安全対策に集中しろ」と電話していたことを反映している。

しかし最も深い悲劇は“直近”にあるのではなく、約束された再建が決して行われないだろうというほぼ確実な見通しにある。それは、ブッシュ政権がそのような事業に対して必要とされる膨大な資源を割り当てることなどありえそうもないことからだけでも明らかなことである。米軍当局者によってあげられた財政上の確約は、攻撃前の5000万ドルから一月初旬の見積もり2億3000万ドルに膨れ上がった。しかしヘス氏が、その事業に対して適正であると主張したこの費用は、実際には、ある程度機能する町を再建するために必要とされるほんの一部であり、“慈悲深く機能的な大都市”を作るための不可欠の合計金額の内のごくわずかな一部である。

配分の不適切さは、インフラの修復を考えると判断することができる。壊滅寸前の打撃をうけたバグダッドのサドル・シティの水道システムの修復コストの見積もり4億ドルを根拠にすれば、ファルージャの下水道と処理場の修復は、それだけでも、議論されてきた2億3000万ドルの割当全体を使い尽くすだろう。電気システムは、“引き剥がし、ひっかき傷から再建”する必要があったが、少なくとも下水道と同じ額の費用がかかるだろう。医療システムの回復や学校の再建や通りの清掃、再建には、おそらくそれぞれ1億ドルかそれ以上を要求するだろう。

そしてこれには住居の修理を考慮に入れていない。イラク暫定政府は家族達に、ダメージを受けた住居それぞれに2000ドルから1万ドルを約束した。ファルージャの5万の住居の内1万2000から2万が事実上壊滅したため、この(額)にもう2億ドルの約束が加算され、商店主達への政府の約束を果たすために別にもう1億ドルが必要となった。

そしてファルージャは“モスクの町”であり、今でははっきりしないが、100あまりのモスクがほぼ壊滅し、半分以上がダメージをうけるなど、(被害が)甚大であることを思い出して欲しい。クリスチャン・パレンティ氏はインディペンデント紙の博識な記者だが、それらのモスク中たった2つでも修理におよそ8000万ドルが必要となるだろうと見積もった。従って、おそらく総額は10億ドルを越えるだろう。

これを計算すると、ファルージャの再建のために約束された割当金は少なくとも20億ドルまで当然必要とされることが分かるだろう。そして去年一年間、米国人達が発表した再建資金の実績をみると、2億3000万ドル(の拠出で)さえ明らかに疑わしい。

言い換えれば、“慈悲深く機能的な大都市”という約束は、よくても非情な悪ふざけであることが分かるだろう。ファルージャの人々がまったくそれを信じていないという事実によって、その約束はほんの少し価値を下げているだけだが。

「我々はすべてを破壊した。」

もし米国占領権力が彼らのやり方を通すならば、おそらくファルージャは、抵抗が抑えられるまで不毛の地のままであろう。自由や選挙や慈悲深い都市といった約束はすべて中身のないものだった。12月に、再建を担当するチャールス・ヘス氏でさえ、先に同じスタイルの解放を受けたナジャフ、サマラでも「再建はほとんどなされていない」ことを認めた。そしてファルージャは、他の二都市よりも反感を持った地域と見られているため、その二都市の“幸運”さえ得られないだろう。

最近帰還した避難民達の多くが、検問所から戦いを見聞きし、町に入ることなく戻ってきた。別の人たちは、ダメージを受けたり破壊された自らの家屋を見てそれから立ち去った。さらに別の人たちは一夜を過ごし、町に残された住居を離れてホームレスとしての放浪を選んだ。

しかし、数人がとどまった。そして彼らは、再建のプロセスを開始しようと試みていた。またここには、まったくあまりにも多くの悲劇が存在した。人間精神の奇跡は、例え荒廃させられた不毛の土地であっても、回復することができる(そして最終的には回復するだろう。)しかしこの贖いは待たなければならない。なぜなら、網膜スキャン、町境界内の非軍事車両すべての禁止、絶えることのない監視、脅しや死に至る武力の使用、すべての資源の独占、とりわけ抵抗を抑えつけるための非現実な行動を取る米軍の存在が、再建の開始さえ不可能にしているからだ。

21歳の海軍衛生兵のデリック・アントニー氏は、荒廃したファルージャの眺望を見渡し、語った。「最悪だ。私達はすべてを破壊した。しかし、少なくとも彼らに新たなスタートの機会を与えたのだ」。

彼は誤っている。再建は、米軍が去った後にはじめて開始されるであろう。



2005年1月9日


■モスル近郊でまたもや「誤爆」という名の虐殺 市民の死者14人
 モスル近郊で米軍機の空爆により民間人14人が死亡する痛ましい事件が起こった。事件が起こったのは8日未明。米軍の爆撃を受けた住宅の所有者によると、犠牲者の内7人が子供であった。
 昨年5月のシリア国境付近における結婚式「誤爆」事件(50人もの参列者が犠牲になった)では、米軍は自らの責任を一切認めなかった。今回は「誤爆」であることを認め、形だけの遺憾を表明した。明らかな状況証拠の数々、間近に迫る選挙のためこれ以上住民感情を悪化させることは得策ではないと考えただけのことだ。「あら、間違っちゃった。」というだけのこと。これは謝罪とは言わない。本当に憤怒に耐えない。
 今回230キロの誘導爆弾を使用したことからも、米軍がモスル近郊における武装勢力への「掃討作戦」を強化していることは明らかである。昨年末にモスル米軍基地が攻撃され多くの米兵に犠牲者が出て以降、空から、陸からの住民虐殺作戦をヒートアップさせており、多くの市民が犠牲となっている。今回の虐殺事件は、ほんの氷山の一角に過ぎない。
※<イラク>民家の14人死亡、米軍が誤爆認める(毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050109-00000021-mai-int
※「US military admits it hit wrong target after bomb kills 14 Iraqis」(ニコラス・パイク インディペンデント紙 2005/1/9) http://news.independent.co.uk/world/middle_east/story.jsp?story=599108


■米軍がイラクでエルサルバドル型「殺人部隊」という正真正銘のテロ部隊を組織−−エルサルバドルでもここイラクでもネグロポンテ米国大使が陰の指揮官。
 また、『ニューズウィーク』の最新号(英語版2005年1月19日号、日本版は「Periscope」欄に掲載)が、米軍の闇の部分を暴くスクープを行った。それによれば、米国防総省がイラクでの新しい戦略を検討しており、それが「サルバドル方式」だというのである。
 かつて1980年代中南米の反米武装闘争を壊滅させるために、反革命テロル、すなわち虐殺・暗殺・拉致・拷問などを専門とする特殊な「殺人部隊」を組織し、何千人、何万人もの住民を殺しまくった作戦だ。レーガン政権時代、中米のエルサルバドルにおいて、左翼ゲリラ(ファラブンドマルチ民族解放戦線)の進出に苦しめられた米政府が、そのゲリラ部隊だけではなく、親米軍事独裁政権に反対する民主活動家、労組活動家、知識人、学生、キリスト教会・人権団体関係者等々、ありとあらゆる良心ある人々を皆殺しにした、あの恐怖の「殺人部隊」である。恐怖を起こさせるのが目的なので、殺し方も尋常ではなかった。言葉に尽くせない猟奇的な虐殺、身体の一部を損傷する、バラバラにするなどの異常行為が平気で実行された。実行部隊はエルサルバドル軍と世界中から集められた傭兵、それを米軍特殊部隊やCIAが訓練した。同じやり方は、ニカラグアやホンジュラス、グアテマラなど反米民族解放闘争の息吹が現れていた中南米一帯で行われた。現在もコロンビアで米軍が、反米・反政府武装勢力を壊滅させるために「殺人部隊」を使っている。

 ブッシュは、この汚くて血まみれの「殺人部隊」の活用を今度はイラクでやろうというのだ。そして身の毛がよだつのは、当時ホンジュラス大使に就任し、国連大使カークパトリックと共に、ニカラグアで「コントラ」(反革命テロ部隊)を組織し、「殺人集団」を指揮していたのが、現在の在イラク米国大使であるネグロポンテその人なのである。

 当時と同様、殺すのはスンニ派の反米武装勢力指導者だけではあるまい。ありとあらゆる陰謀と謀略をやるだろう。ニューズウィークの記事はペンタゴンの今後の計画としてスクープされたが、しかし私たちは、米軍特殊部隊とCIAは、もうとっくに「殺人部隊」「暗殺部隊」を使っていると考えている。「計画」や「新戦術」ではなく、すでに実行されているという疑惑を持っている。昨年来、頻繁になった人質事件、とりわけ人権団体、反米・反政府NGOの活動家、労組活動家などを狙い打ちにするかのような拉致・拘束、むやみに首を切断する残忍な殺し方には、疑問が投げかけられ、幾つか不可解な点が指摘されてきた。ザルカウィなる人物も不可解極まりない。またわざとスンニ派とシーア派の分裂を煽るような無差別テロ攻撃なども怪しい。
※「‘The Salvador Option’−The Pentagon may put Special-Forces-led assassination or kidnapping teams in Iraq」(MSNBC)http://www.msnbc.msn.com/id/6802629/site/newsweek/
※イラクで暗殺作戦検討か 米、武装勢力指導者狙い
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050109-00000028-kyodo-int
※「Who seized Simona Torretta? −This Iraqi kidnapping has the mark of an undercover police operation 」Naomi Klein and Jeremy Scahill Thursday September 16, 2004 The Guardian
http://www.guardian.co.uk/comment/story/0,,1305523,00.html
※「シモーナ・トレッタを誘拐したのは誰か? −この誘拐には、警察の秘密活動の痕がある」ナオミ・クライン&ジェレミー・スカヒル ZNet原文 益岡賢のページ http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/iraq0409b.html


■「世界はファルージャの真実の絵図を知るべきだ。」−−米・傀儡軍が必死に隠すファルージャ大虐殺の一端が暴かれる。
 昨年11月8日の米軍・傀儡軍によるファルージャ攻撃から2ヶ月が経った。新たな年を迎えたが、ファルージャにおける真実はいまだに米軍とイラク暫定政府によって隠されたままである。一方では、戦闘が今なお続き米軍が町を完全制圧できないことを示していると同時に、他方では、過去の米軍侵略史上でもまれに見る大量破壊、大量虐殺の凄惨な現場を少しでも長くイラク国内と世界の目から覆い隠すためでもある。今月末には似非議会選挙があるため、余計にイラク民衆の怒りを買うような非人道的行為は隠さねばならない。
 しかし徐々にではあるが、その恐るべき一端が明らかになっている。今回紹介したIRINの報道記事『医師は語る。ファルージャにおける死者総数は増え続ける。』には、現地に入った医師達の証言を引証しながら次のような状況に触れている。
−−子供、女性の犠牲者が圧倒的に多い。医師達が確認した700の遺体の内、550、何と8割が子供、女性であった。バラバラになっているものも多い。(これは、爆撃による犠牲者が多かったことの証拠だと思われる。米軍はこの子供と女性達が反米武装ゲリラといういうのであろうか。米軍・傀儡軍はファルージャ攻撃後に、1000〜2000名の武装ゲリラを殺害したと、その“戦果”を誇示したが、子供・女性を虐殺してその強さを誇示したのである。これはもはや軍事作戦というものではない。単なる大量殺人である)。
−−この数は、医師が確認できた一部地域(ファルージャ18地区のうちの9地区)のものに過ぎないこと。しかも既に埋葬され、確認できない遺体も多いことから、ファルージャ全域の犠牲者総数は遙かに多いはずである。
−−栄養失調の赤ん坊の遺体も発見されている。(食糧不足による犠牲者か。このような例がどれ程に上るのか、現段階では不明。)
−−記事では戦闘の様子に言及されているが、米海兵隊の報道官は依然として戦闘が継続していることを認めているらしい。ファルージャはいまだ戦闘状態にあるというのである。−−またジャーナリストに対する厳しい通過制限があることも取りあげられている。許可証がなければジャーナリストは入れず、ファルージャの真実が避難している市民や世界に伝えられていないのである。

 この悲惨な状況を、米軍とイラク暫定政府は否定している。できるだけ長い間、この大量虐殺の真実を隠し続けたいというのが彼らの狙いである。私たちは今後も引き続いて、数は少ないが、この記事のような報道を出来る限り丁寧に伝えていきたい。


★翻訳
“医師は語る。ファルージャにおける死者総数は増え続ける。”
Death toll in Fallujah rising, doctors say” IRIN(国連統一地域情報ネットワーク)  2005/1/5
http://www.irinnews.org/print.asp?ReportID=44904

2005年1月4日 ファルージャ ― 「まさにこれは、悲惨な状況だ。破壊された家屋から遺体、とりわけ子供たちの遺体が片づけられている。戦争が始められて以来、私にとって最も気の滅入る状況だ」。バグダッド西方60kmに位置するファルージャ市内の中央病院の責任者であるラファー・イサウェ医師はIRINに語った。

イサウェ医師によると、病院の緊急チームは700以上の遺体を瓦礫の中から見つけた。かってそこは家屋、商店が建ち並んでいた所だった。

さらに彼は、550を越える遺体が女性と子供であったことを付け加えた。彼は、この場所で見つかった男性はわずかであり、その大半が年配者であったことを語った。

病院の医師達は、多くの遺体はバラバラの状態で発見されたこと、その中には脚と腕が無いものもあったことを主張している。病院の専門家によれば、2人の赤ん坊が住居で発見され、その死因は栄養失調であると思われるとのことである。

イサウェ医師はさらに、その遺体数は町の近接する9地区におけるもののみであり、その他の18地区はいまだに把握されていないことを付け加えた。医師たちが入りやすいようイラク赤新月社(IRCS)からの救助を待っている状態だからである。

およそ3週間前米軍の許可を受けて、遺体の多くがファルージャのガーマ(Garma)地区とアミリア(Amirya)地区の市民によって埋葬されたこと、そしてこれらの遺体がカウントされていないと、彼は語った。

IRCS事務局はIRINに対して、町が完全に居住不能であることを付け加えつつも、正確な死者総数を得るためにはさらなる時間が必要であるとを語った。

イラク保健省はIRINに対し、ファルージャにいる医師の発言に反して、死者数に関しては調査中であるが、殺された女性と子供はごくわずかだと主張している。さらに彼ら(イラク保健省)は、市内における保健システムの修復を目指し、米軍とともに作業中であることを付け加えた。

何時間も待って町に入ることを許可され自宅に戻った住民達は、一ヶ月前に始まった米軍と、イラク政府によって指名手配されているヨルダン人テロリストであるアブ・ムサビ・アル・ザルカウィに支配されたと喧伝されている武装勢力との間の戦闘によって、(町が)完全に破壊されている様を目撃した。

「6時間以上にもわたってこの場所に私は居るが、私達の住んでいた地域の戦闘が終わっているにもかかわらずいまだに町に入ることができない。市民には何ら希望もない」と、7人の子供の母親であるサミラー・アル・ジュマイルさんはIRINに語った。

ファルージャの状況はいまだ不鮮明である。米海兵隊の報道官であるクラーク・マシュー大佐によると、町の複数の地域では、まだ夜間攻撃が続いているとのことである。米軍は、18時〜6時の外出禁止令のために、住民達に対して自宅を離れないように通告している。

マシュー大佐は、攻撃の大半が町の治安を回復させようとしている基地を設営している地域において行われているが、今月末までには町を支配下に置き、ファルージャの再建が開始されるであろうと説明している。「まもなくファルージャの再建が開始され、家族は新たな生活を実感するであろう」とマシュー大佐は付け加えた。

「ファルージャがすぐにでも再建されると米軍は言っている。私は、一年間は最低の生活状況も提供されないだろうと信じている。私は、民主主義だと語られているものを、いまだに探している最中だよ」とファルージャ市民のムハマド・クバイシィーさんはIRINに語った。彼の自宅と二つの商店は、戦闘によって破壊されてしまった。

「彼らは私達に、自由をもたらした。しかしすべてのイラク人は、今では自宅に閉じ込められた虜囚だよ」と彼は付け加えた。

「ファルージャに住むことなどできない。水もない。電気もない。下水処理施設もない。病院でさえ、町の全家庭への最低限の保障すら提供することができない。十分な薬もなく、遺体の悪臭を感じるのだから」とイサウェ医師は付け加えた。

ファルージャの住民はイラク政府に対して、(町の)真実を明らかにするためにジャーナリストとTV報道者が町に入るのを認めるよう要求している。

政府は、安全のために、特別認識証を持ったジャーナリストの訪問のみを許可すると見られている。多くのジャーナリスト達が、米守備軍の許可を得ることができずにファルージャから引き返してきた。

「私達はファルージャの真実を明らかにするために、誰かがここに留まることを必要としている。数人のジャーナリストがここにいた時でさえ、彼らは海兵隊に従わされた。私達には、私達を支援してくれる人物が必要だ。世界はファルージャの真実の絵図を知るべきだ。」と、シェーク・アッバス・アル・ズベイニ氏はIRINに語った。



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