イラク戦争被害の記録


被害報道日誌(5月14日〜7月21日)


●7月21日(124日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 相変わらず米軍はイラク各地で「掃討作戦」を展開している。この間の「掃討作戦」で1200人以上のイラク民衆を拘束したと米軍は発表したが、その裏で果たして何人の民間人が虐殺されたのか、まったく分からない。しかしこのような武力によるイラク民衆の抑圧、弾圧はさらに怒りをかきたて、事態を混迷させるだけである。
 またイラク全土が「戦場」であることが、ますます明らかになっている。これまで米軍への攻撃がほとんど見られなかったイラク北部も例外ではなかった。20日、モスル近辺で米軍は攻撃を受け、米兵士が2人が死亡した。バグダットでの米軍襲撃も相次ぎ、もはや「非戦闘地域」がイラクには存在しない。このことは明白である。米中央軍司令官は「古典的なゲリラ型の戦闘が米軍に対して行われている」ことを認めざるを得なかった。イラクのどこの「非戦闘地域」に自衛隊を派兵するというのか。もはや自衛隊派兵の議論の前提は、根底から破綻している。


○国際支援機関の職員の犠牲
・(内容)バグダッド近郊で20日、イラクで人道支援を行っている国際移住機関(IOM)の車両が銃撃を受け、1台がバスに衝突、イラク人運転手が死亡、外国人職員1人が負傷した。(下の共同通信記事より)
・国連の様々な援助団体からは、イラクはいまだに「戦場」であり援助活動もままならないとの声が上がっていた。例えば最新の国連世界食料計画のレポート“WFP Emergency Report No. 29 of 2003”には、イラク国内の情勢について次のように述べられている。「治安のたいへん悪化した状況は続いており、子供の誘拐、強盗、破壊活動、夜間の銃撃、犯罪行為は増えている。モスルにあるWFP事務所は、14日に手榴弾の攻撃を受けた。またモスルとキルクークの国際機関のスタッフは、アービルに移転した」と。また6月初旬には、米軍とともにWFPも狙われている状況が職員から報告されていた。国際機関の関係者が攻撃され犠牲者が出たのははじめてではあるが、極めて危険な状態で援助活動が実施されていたのである。決して偶発的な事故ではない。
・米軍はイラク各地で「掃討作戦」を繰り広げ、それに対してイラク民衆は、様々な方法によって抵抗している。イラク民衆のことを思い活動を続けてきた支援団体の犠牲は悲しい出来事である。しかし、イラクに居座り続け、民衆の拘束、殺戮を繰り返す米軍こそが、国際機関の支援活動すらままならない危険な情勢を生み出しているのである。今回の事件の責任の根源は、イラクを武力をもって占領し続ける米軍にある。イラク民衆の「人道支援」、「復興支援」の前提は、米軍のイラクからの無条件、即時撤退である。

※(共同通信)“国際機関に初の犠牲者 米軍にも銃撃、計3人死亡”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030720-00000120-kyodo-int
※“UN condemns attack on Migration Organization” (21 Jul 2003)
http://www.reliefweb.int/w/rwb.nsf/480fa8736b88bbc3c12564f6004c8ad5/5e4548045474aabac1256d6a00524348?OpenDocument
※WFP Emergency Report No. 29 of 2003
http://www.reliefweb.int/w/rwb.nsf/480fa8736b88bbc3c12564f6004c8ad5/6ad5cf3bca10fcc185256d6700690b38?OpenDocument


○不発弾による子供たちの犠牲
 米英軍は大量のクラスター爆弾を使用した。不発弾となった子爆弾によって今なお多くのイラクの子供たちが傷つき、命を奪っている。子供たちの命を守るためにも、戦闘を終わらせること=米軍の即時撤退が必要である。

記事紹介(抄訳)
“不発弾は子供たちの遊び道具となっている”
  クラスター爆弾、放置された弾薬と地対空ミサイルがイラクの子供たちへの大きな脅 威になっていると、ユニセフは述べている。
ユニセフ “Unexploded munitions become child's play” (17 July 2003)
http://www.reliefweb.int/w/rwb.nsf/480fa8736b88bbc3c12564f6004c8ad5/27bc1c3deded7254c1256d6600480e41?OpenDocument
・7月17日:戦闘は終了したにもかかわらずイラクの子供たちは毎日、戦争の残骸によって負傷したり、殺されたりしていると、ユニセフは述べている。
・戦争が終わって以来、1000人以上の子供たちが同盟軍によって投下されたクラスター爆弾や、イラク軍によって一般の建物に保管、廃棄された数千トンにものぼる爆弾によって、負傷している。
・イラクのユニセフ代表カレル・デ・ルイ氏によると、子供たちに備わっている好奇心はしばしば、不発弾の犠牲を引き起こしているという。
・「クラスター爆弾はとても面白い形状をしており、子供たちにとって興味深い物なのです」、「ボールのような形をした輝く金属物を見つけるとそれを拾い、遊び道具にしてしまうために、多くの子供たちが負傷したり、殺されたりしているのです」と、カレル・デ・ルイ氏は語った。
・子供たちの遊ぶ近所には、短いリボンが付いてたり、黄色い紙のパラシュートが付いている缶のような形状をしている小さなクラスター子爆弾が、庭や屋根に散在している。より重い不発弾は、どこかよそへ避難している住人の家屋の床下近くにしばしば埋まっているのである。ユニセフは現地の状況をこのように伝えている。・・・・

※時事通信「イラクの子供1000人以上死傷=不発弾の暴発で−ユニセフ」 (2003.7.18)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030718-00000699-jij-int
 

○人道的危機の現状
<コレラの拡大の危険性>
・電力不足、排水・給水システムはいまだに破壊され、気温が高くなり始めるともに水を介した疫病が拡大する兆しが現れている。バスラでは70のコレラの症例が報告されている。バグダットは1症例のみにとどまっている。5月、6月から着実に増加傾向にある。幸いなことに、これを原因とする死者は報告されていないという。WHOはバスラの状況を次のように報告している。バスラにおける主要な4つの病院において下痢の症例は1549にも達しており、飲み水が原因であると。

※UN“Iraq: Water-borne diseases increase with summer temperatures”(17 July 2003)
http://wwww.reliefweb.int/w/rwb.nsf/480fa8736b88bbc3c12564f6004c8ad5/7c0e3bc87b0cdfe449256d6700103ee1?OpenDocument


○高まる占領軍に対する批判
 米軍の占領統治を批判するイラク民衆の声を伝えるBBCニュースの抜粋。
“イラク北部で攻撃を受ける米軍”
 BBC“US forces hit in northern Iraq”(20 July 2003)
 http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/3081135.stm
(関連部分)

米軍の撤退を求め叫び声を上げるイラク民衆(ナジャフ)。(middle-east onlineから)
・米を中心とした占領軍に向けられたイラク民衆の敵意は強まる気配を見せている。バグダットの南方のシーア派の聖地ナジャフでは、1万人を超える反米の集会が開かれた。
・集会参加者は、町中の米軍司令部に向けて行進しようとしたが、米軍部隊によって阻まれた。衝突に関しては報告されていない。
・米によって新しく設立された「イラク統治評議会」を批判し、イスラム軍の創設を求めたシーア派の重鎮であるアル・サドル師による金曜礼拝に引き続きデモ行進が行われた。バグダットでは土曜日、アル・サドル師の家を包囲し襲撃した米軍を非難する行動が行われた。
・「イラク統治評議会」は代表者を選出することができなかった。このことについてBBCの記者は、代表者を選出できなかった「イラク統治評議会」の弱さを象徴と見なせるであろうと、語っている。・・・・

(参考)またスンニ派の指導者からも、米占領軍に抵抗する呼びかけがなされている。
※Middle-east online “Iraqi imam praises resistance” (17 July 2003)
Imam al-Dari urges worshippers to cooperate with their brothers to end occupation, slams Governing Council.
http://www.middle-east-online.com/english/?id=6437


○記録 イラク各地における戦闘
<12−17日>
・大規模な「掃討作戦」
 米軍、1210人のイラク人を拘束。
 犠牲者は不明。

<20日>
・モスル近郊
 第101空挺師団。ロケット弾や小火器の攻撃を受ける。米兵2人死亡。1人が負傷。
<19日>
・バグダット西郊外 アブグレイブ
 ロケット弾攻撃。米兵1人死亡。
<18日>
・バグダット
 パトロール中。米兵1人死亡。
・ファルージャ
 米軍の車列に地雷。米兵1人死亡。
<16日>
・バグダット
 走行中の車列に手榴弾。米兵1人死亡。3人負傷。
<14日>
・バグダット
 パトロール中の米軍部隊、ロケット弾の攻撃を受ける。米兵1人死亡。6人負傷。

※掃討作戦で1200人拘束 イラク駐留米軍
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030720-00000013-kyodo-int
※北部でも襲撃、米兵3人死傷=イラク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030720-00000170-jij-int
※<イラク>米兵銃撃され1人死亡 バグダッド
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030720-00002037-mai-int
※米軍への襲撃相次ぐ=爆発で兵士1人死亡−イラク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030719-00000968-jij-int
※襲撃で米兵4人死傷=死者、湾岸戦争時に並ぶ−イラク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030716-00000265-jij-int
※<イラク>ロケット弾で米兵7人死傷 バグダッド中心部
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030715-00000134-mai-int



●7月12日(115日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 イラクに駐留する米軍の苦境を伝える記事が日々流れている。一日に10〜25件といわれる日常的な米軍襲撃、兵士の犠牲。拡大する駐留経費(39億ドル/月)。今後の長期駐留の可能性(2〜4年)。新聞の見出しには、米軍の戦況を“quagmire”(泥沼化)、“Vietnam”(ベトナム化)、米軍兵士の苦境を“rock bottom”(どん底)と表現した言葉が踊っている。また、戦争の「大義」であった「大量破壊兵器の廃棄」についての明確な証拠もなく戦争をけしかけたと、ラムズフェルド国防長官自らがぬけぬけと言ってのけている。展望もなく、その「大義」すらも疑わしい戦争の後処理のために、「戦場」であるイラクに自衛隊は派遣されようとしているのである。自衛隊はすでに、事前調査を目的にアンマンに入っている。
 しかし上記で表現されているイラクの現状の絵図は、占領軍からの視点のものである。米軍が駐留し続ける限り、イラク民衆は抑圧され続け、人命が奪われるのである。ここでは出来る限り、イラク民衆に近い視点からの情報を提供してきたい。


○イラク・ボディ・カウント 民間人犠牲者6000人以上(Min)
・イラク戦争における民間人犠牲者について。“イラク戦争の犠牲者は6000人を超えた”(7 July 2003)ロイター通信。6月13日の「被害記録」では、病院記録が明らかにされるにつれ、民間人犠牲者数が急上昇している状況を報告した。そして最新の犠牲者数は、Minで6000人(7月12日:6058人)を超えた。
・イラク戦争において多くの民間人を殺害した事実、これは、ウソとデマに基づき戦争を仕掛けた米英に対する批判の根本である。民間人犠牲者をめぐる数字は、米英の戦争犯罪の大きさとその責任の重さを表している。米英は、多くの罪なきイラク民衆を殺害したこと、国土を破壊したことを謝罪し、無条件賠償を実施しなければならない。

“イラク戦争の犠牲者は6000人を超えた”
 ロイター “Iraq War Civilian Death Toll Past 6,000 - Group” (9 July 2003)
 http://reuters.com/newsArticle.jhtml?type=topNews&storyID=3059764
(記事抜粋)
・イラクの遠隔地からの新たな情報によって、米軍を中心とした戦争による民間人犠牲者の総計は、先月500人加わり少なくとも6000人以上に達したことが、欧米系の監視団体によって水曜日に明らかにされた。マスコミ報道と10を超えるイラク外の独立系の調査団体の結果に基いたIBC(Iraq Body Counter)の最新の民間人犠牲者に関する数字は、最小で6055人、最大で7706人に上ると見ている。
・IBCの研究員であるジョン・スロボダ氏は、ロイター通信に対して次のように述べている。「米と英は、民間人犠牲者を最小にするためのあらゆる努力を尽くしてきたし、また最新の精密誘導兵器を使用してきたと述べてきた。そのようなことを聞かされると誰もが、民間人の被害を極めて少なく抑えたクリーンな戦争を思い起こすであろう。しかし5000人から7000人が極めて少ないなどとは、決して言えない。それは政治的な戯言である。」(また)「これまで語ることの出来なかった、戦争の結果として生み出された栄養失調や脱水症状によって亡くなった犠牲者もいる。」


○人道的危機の現状
<バグダットで継続する電力不足と断水>
・バグダットにおける人道的危機の現状を伝える記事。イラク各地における電力と水道は復旧しつつあるが、首都バグダットではいまだに完全復旧の目途が立っていない。必要な電力の40%しか供給されておらず、ある地区では、一日20〜23時間の停電もごく普通のことであることが報じられている(関連記事 “バグダットは石器時代に戻った”)。停電は、安全な水の供給、汚水処理施設にも影響を及ぼしている。温度が上昇し続けている現在、バグダットではイラク南部の地方とともに、子供たちへの下痢、コレラなどの伝染病の拡大が懸念されている。

“電力と水の供給は、サボタージュと略奪によって先細りになっている”
 IRIN “Electricity and water supplies dwindle due to sabotage and looting ”(4 July 2003)
 http://electroniciraq.net/news/941.shtml
(要旨)

 イラク人は、明かりのない時間をランタンを使ってしのいでいる。(IslamOnline.net)
 首都バグダットへの電力と水の供給は、サボタージュと略奪によって40%以上も低下していると国連は述べた。
 イラク人道調整室のスポークスマンは、都市に対する電力と水の復旧業務は、多くの労力を要するだけではなく、50℃近くまで上昇する気温の対する深刻な懸念もともなっている。
 「住民は、生活がますます困難となるであろう深刻な(電力)不足に直面している」とバグダットにおける記者会見で述べた。それらを復旧させる業務は、部品が盗難にあったり、危険なために業務につくことが出来ないなどの事情がある。
 「水と電気の供給不足は人々の不満を増大させている」と述べた。
 民間人の中で余裕のある人々は発電器を購入するが、しかし大部分の人々は、いつ電力が止まることになかで生活している。そして、電力のこない長い時間を何とか切り抜けようと格闘している。
 連合軍暫定当局(CPA)と共に国連開発計画(UNDP)は、電力の復旧に向けての業務を行っている。最大の問題の一つが、ケーブルを盗もうと、イラク北部の発電所とバグダット間の鉄塔を略奪者たちが押し倒してしまうことである。
 1700MWの電力が必要なバグダットは、最近では750MWを満たしているに過ぎない。電力の不足は、水の供給の停止と汚染された水の排水を止める。UNDPと国連児童基金は、汚水を処理ポンプ施設への燃料の提供し続け、それらの施設の修理と復旧に取り組んでいる。

関連記事
※“バグダットは石器時代に戻った”
 IslamOnline “Baghdad Back To Stone Age” (6 July 2003 )
http://www.islamonline.net/English/News/2003-07/06/article08.shtml


<民間人の負傷者への治療を拒否する米軍への批判>
 この記事は、負傷した民間人の近くにいたにもかかわらず、彼らへの治療を拒否する米軍の実態を批判している。「掃討戦」の名の下に、イラク民衆の殺害、拘束を今なお繰り広げる米軍には、人道的配慮などは二の次の問題なのである。

“残虐かつ違法:米はイラク人負傷者を治療もせずに放置している”
 Electronic Iraq “Crue and illegal:U.S. leaves injured Iraqis untreated ” (7 July 2003)
 http://electroniciraq.net/news/946.shtml
(要旨)
 イラクの米占領軍は、負傷したり、病気にかかったイラク人を治療することを拒否している。それらの患者が米による直接的な被害者でない場合には。このようなショッキングな行為は、ジュネーブ条約に反している。
 6月30日、バグダット260km北方のハディサでの廃棄された武器の集積所における大爆発によって、数十人のイラク人が死亡し、多数が負傷した。犠牲者たちは、スクラップとして売るための薬きょうを拾っていた。
 BBC放送によると米中央軍司令部のスポークスマンは、集積所は米軍ではなく、イラク人のものであり、この地区の米軍は負傷者を搬送する義務はなかったと述べている。
 しかし米軍は、あらゆる面でそのことへの責任を負っている。
 第一に、米軍は占領軍として、イラク民衆に安全を保障する義務を負っている。(注:イラク中部ツワイサの核施設が略奪されたことによって周辺住民が被曝した問題も同様に、米軍にその責任がある。)
 第二に、米軍は法的にも、人道的にも、負傷者に対する支援を提供しなければならない。ジュネーブ条約には、そのことが明記されている。・・・・占領から3ヶ月経過しようとしているが、いまだに米軍は、破壊されたイラクの医療施設の復旧に関する法的な義務をほとんど果たしていない。6月26日、WHOのスポークスマンはロイター通信社に対して、イラクの医療システムは「極めて逼迫して」おり、公衆衛生が悪化し始めてからは、その機能の30〜50%以下しか稼働していないことを述べた。子供に対する疾病、伝染病、そして不発弾の脅威が存在しているのである。
 第三に、薬きょうの回収によって食いつながなければならないほど、イラク民衆の生活は困窮している。占領軍である米は、イラク民衆が必要とする十分な食料と就労の機会を提供しなければならない。
 このような、米軍の負傷者に対する法的義務の拒否、また占領軍として民間人に負っている全般的な義務を、米は果たしていない。このような実例は、その他にも多くある。・・・・・


○高まる占領軍に対する批判
“イラク占領に対する怒りが高まっていることをイスラム教徒は警告する”
 ロイター“Muslims Warn Anger Mounting Over Iraq Occupation”(11 July 2003)
  http://www.commondreams.org/headlines03/0711-11.htm
 イスラム教シーア派、スンニ派の双方の指導者は金曜日、イラクに駐留する米軍への怒りが高まりつつあり、何者かによって6ヶ月以内に聖戦が宣言されるであろうと述べた。また、イラクの全人口2千6百万人の中の65%を占めるシーア派の中には当初、米軍を歓迎する空気も存在していた。しかし今では、イラク人による政権が樹立される目途もなく、宗派を問わず米軍に対する怒りの声が高まっているという。

“米軍の襲撃はイラク人の感情を傷つけている”
AP “US Raids Offend Iraqi Sensibilities” (7 July 2003)
http://www.commondreams.org/headlines03/0707-04.htm
 米軍は、サダム政権の残党の捜索と違法な武器を摘発するために、一般人の家への急襲=不法侵入を繰り返している。ここ数週間、バグダット北部と西部への急襲の回数は目立って増加しているという。イラク人にとってこの急襲は、女性を侮辱するものとして、子供を怖がらせるものとして、怒りの対象になっている。また、鍵を開ける前に扉を蹴破る、プライベートな部屋へ侵入する、家族の前で家長に恥をかかせる等、米軍のやり方は、住民の間にますます怒りを高めているという。

・米軍は、ファルージャのイラク人警察から町を出ていくことを要求された。その理由は、イラク人警察が米軍と共に行動をしていると、格好の標的にされるからだという。それほどまでに現地住民の反米感情は強い。また、町に駐留していた米軍は相次ぐ攻撃に耐えられなくなり、ついに撤退した。

※“Iraqi Police Tell U.S. Troops--Get Out of Town”(10 July 2003)
 http://www.occupationwatch.org/article.php?id=160
※“U.S. Troops Withdraw From Fallujah As Attacks Continue” (11 July 2003)
 http://www.islamonline.net/English/News/2003-07/11/article01.shtml


○苦悩する占領軍兵士 
・武力による占領政策がうまく機能せず兵士の犠牲が増大している中、兵士自身の不満の声が伝わり始めた。このような状況を表現している言葉が“bottom rock”(どん底)であり、現地の様子を伝える記事にはこの言葉が散見されるようになった。このような情報が流れ始めたこと自体、戦況の悪化にともない兵士の間に厭戦気分が強まっている証左である。しかし彼らが今なお現地で行っている行為は、イラク民衆の殺害渡拘留、弾圧である。即座に、イラクから出ていかなければならない。

※The Christian Science Monitor
 “Troop Morale in Iraq Hits 'Rock Bottom'”(7 July 2003)
  http://www.ccmep.org/2003_articles/Iraq/070703_csm.htm
※The Occupation Watch Center(11 July 2003)
 “U.S. Soldiers Talk about Conditions in Occupied Iraq”
http://www.occupationwatch.org/article.php?id=162


○イラク占領をめぐる論争
・米政権内部においても、イラク占領をめぐり不協和音が広がってきた。長期駐留の必要性、拡大する駐留経費、米軍兵士犠牲者の増大と高まる国内からの非難。また戦争の正当性を覆すような言葉が、戦争をけしかけた張本人ラムズフェルドから発せられている。

<駐留米軍サンチェス司令官>
(相次ぐ米軍襲撃を受けている現状に対して)「戦争はまだ終わっていない。すべての米兵はこのことを理解して任務に当たっている。」(10日,現地記者会見)
<フランクス前米中央中央軍司令官>
「われわれはイラクの将来にかかわっているが、それが2年になるか、4年になるかは分からない。」(9日,下院軍事委員会公聴会)
<ブッシュ大統領>
「イラクで治安問題を抱えているのは疑問の余地がない」、「個々に対処していかなければならない。タフであり続ける必要がある」、「(治安回復と復興は徐々に前進しており、)規定の方針を押し進めることが重要である。」(10日,歴訪の最中)
<ラムズフェルド国防長官>
「イラクにおける米軍駐留費は一ヶ月当たり39億ドルにのぼる。アフガニスタンは7億ドル」,「同志諸国軍の追加派遣の獲得により多くな成功を収めれば米軍の規模は縮小される」,「(イラクの大量破壊兵器についての)決定的な新証拠が見つかったから行動(開戦)したのではない。」(9日,下院軍事委員会公聴会)
<議会>
(民主党ケント・コンラード議員)
 「明らかに、イラク占領は泥沼に入り込んでいる。必要な経費は、私たちが聞いていたものよりも大幅に増大している。問題は山積しており、戦後計画の欠如について的中したことについて、兵士の家族からの嘆きを聞かされている。」
(共和党チャールズ・グラッセリー議員)
「(もう忍耐の限界に達しているとの言葉の後に)少なくとも数ヶ月間はお金が出ていくことについては、迷いはない。しかし今の時点で私は、数年間のことを述べることは望まない。数年間のことは私の関心事ではないが、この数ヶ月に関してははっきりと許容できる。」

※イラク、治安問題あるが既定の方針推進=米大統領
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030711-00000538-reu-int
※<イラク駐留>米軍費用は月39億ドル 駐留軍「国際化」へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030712-00000038-mai-int
※NY タイムズ “New estimate of Iraq costs startles some in Congress”(11 July 2003)
http://www.ccmep.org/2003%20Articles/071103_new_estimate_of_iraq_costs_startles_Congress.htm


○記録 イラク各地における戦闘
<9日>
・ティクリット
 夜間に襲撃。米兵2人死亡。1人が負傷。
・首都南方 マハムディア
 米軍車列に小火器による攻撃。米兵1人死亡。
<6日>
・バグダット近郊
 米軍、武装勢力間で交戦。米兵1人死亡。イラク側1人死亡。1人負傷。
・バグダット市内
 米軍車両が攻撃。米軍兵士1人死亡。
・バグダット大学
 米兵1人死亡。
<5日>
・英国人のフリージャーナリストが銃撃。米軍の協力者や欧米などの一般人も標的になっている。

※バグダッド大学で米兵死亡、ラマディでも米軍襲撃事件
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030707-00000138-reu-int
※イラクで米軍襲撃事件相次ぐ、米兵2人死亡
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030707-00000172-reu-int
※米兵2人死亡、犠牲者30人超える=新組織がまた名乗り−イラク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030710-00000204-jij-int



●7月6日(109日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○イラク各地における戦闘
<4日>
・バグダット北方100km バラド
 米軍 ロケット弾などで攻撃を受ける。米軍兵士に犠牲者なし。攻撃したイラク人11人死亡。
<3日>
・バグダット
 米軍への2件の襲撃。米軍兵士1人死亡。10人以上が負傷。
※“相次ぐ襲撃、米兵1人死亡=反撃で武装集団の11人殺害も−イラク”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030704-00000035-jij-int


○イラクの治安悪化を伝える情報
 米軍への攻撃は相変わらず続いており、イラク現地における反米感情はさらに高まっている。ブレマー文民行政官自身は、「着実に情勢は改善している」と述べているが、ブッシュ大統領は一向におさまらない米軍への攻撃に怒り、「(刃向かう者たち)かかってこい」との言葉を吐いた。そしてブッシュ大統領は、イラクが「戦争状態」にあることを明言した。自衛隊はまさに、米軍が戦争状態にある地域に派遣されるのである。
 7月5日付の「The Guardian」において、イラク民衆の米軍感情を紹介した記事が掲載された。“イラク民衆は米軍が去ることを待ち望んでいる(Iraqis wait for US troops to leaves)”と題する記事(http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,992038,00.html)の中において、「スンニ・トライアングル」−スンニ派、バース党支持者が集中しているイラク中央部に位置するバラド市における住民の反米軍感情を伝えている。フセイン政権崩壊直後、復興に向けて一種の期待感があったが、それも変わらず続く治安悪化と失業などの住民の経済的苦境によって消え去ってしまった。米軍が6月中旬に行った掃討作戦(『砂漠のサソリ作戦』等)は、住民感情を反米に向けてしまった。「サダム支持者のみが米軍を攻撃しているというのは正しくない。彼らだけだということは、信じられない。仕事、電気、燃料、飲み水、このすべてを失ってしまったら、誰でも米軍への敵愾心を強めるだろう。また、襲撃に対する米軍の反撃は、暴力であり、残忍でさえある」(地元医師)。そして記事は、イラク情勢を不安定化させている最大の要因が、経済問題にあることを強調している。戦前、石油・食料交換プログラムによって食料の配給が実施されており、人々は何とか食べることができた。しかしフセイン政権崩壊後そのシステムが崩壊し、食べることもできなくなっているという。そして市民の切実な声が紹介されている。「一年前の生活の方が良かった。米軍と国連はサダムを取り替えたが、私たちは彼らが約束を守り、仕事を提供すること、経済を立て直すことを望んでいるのだ」。
 一方7月1日付の「The Christian Science Monitor」(http://www.csmonitor.com)には、“イラク人は米軍のプレゼンスを支持し始めた(Iraqis begin warming to US presence)”と題する記事の中において、バグダットでは2/3の住民がイラクの治安が安定するまで米軍の駐留を望んでいるとの世論調査の結果を報告している。この記事の問題点は、たとえばファルージャの情勢を一例にとると、住民の声ではなく市長に代弁させるなど、米軍に近い筋の情報に基づいてイラク情勢が評価されている点にある。地域によって差異があるとはいえ、この評価は今のイラク民衆の本音からはほど遠いものと言えよう。
※<イラク>治安情勢は戦争終結直後よりもむしろ悪化
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030705-00002058-mai-int
※“米、イラク駐留軍への襲撃に動揺=米兵の死者増加、治安も悪化”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030702-00000542-jij-int
※“「かかってこい」と大統領 イラク治安悪化にいら立ち”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030703-00000046-kyodo-int
※“イラクで地雷除去作業中の米兵ら5人が死傷”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030703-00000203-yom-int


○劣化ウラン弾 市民調査団帰国
※“市場でも放射線確認 劣化ウラン弾調査団帰国”(中国新聞) 5 July 2003
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn03070604.html


○新たな情報ソースの紹介 IOWC(International Occupation Watch Center)
    (http://www.occupationwatch.org
 IOWCは、占領軍と外国企業の監視、イラクへの国際派遣団の受け入れ、ウェッブサイトを通して占領軍に関する最新の情報提供を目指し、ここ最近、新たに設立された団体。「Global Exchange」も設立に関与している。サイトの提供する情報には、最新のイラク情勢と並んで、民間人犠牲者、占領軍の行動、企業の侵略、民主主義と自決権、環境、人道危機、メディアと自由に関する討議、石油、占領に対するレジスタンス、女性問題等、内容別に整理された情報も提供されている。




●7月2日(105日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 週内にも「イラク特措法」が衆院を通過しようとしている。しかし今のイラクは、まさに「戦場」である。バグダットでは、米軍は連日襲撃されている。1日には、5人の米軍兵士が死亡した。また米軍は、イラク中部において、新たな「掃討作戦」を実施した。自衛隊が派兵される「非戦闘地域」は、イラクのどこにあるというのか。イラクに自衛隊を派遣することは、「掃討作戦」の名の下に民衆への弾圧、殺戮を繰り広げる米軍を公然と支持することである。私たちは自衛隊のイラク派兵に、断固反対する。そしてイラクに絶え間なく紛争をまき散らす米英軍の、イラクからの即時撤退を要求する。

○米軍 新たなる「掃討作戦」(6/29)
・バグダット北方などイラク中部における新たなる「掃討作戦」を開始。この地域はスンニ派が多数を占め、反米、反植民地感情が極めて強い地域。
・180人を拘束したと米軍が発表。
・先月の中頃に実施された「掃討作戦」以後、最大の規模。今回の「掃討作戦」では、どれほどのイラク民衆が犠牲となったのか、まったく分からない。米軍は、差し障りのない情報を小出しに流しているに過ぎない。彼らが明らかにした事実は、米軍兵士員犠牲者はいない、多数の武器と文書を押収した、180人を拘束した、これだけである。以前の「掃討作戦」では、多くの民間人(200人以上との評価もあり)が殺害された。今回も同様に、「掃討作戦」によって罪のない多くの民間人が米軍に殺害されたに違いない。このような軍事作戦によって米占領に抵抗する勢力が「掃討」され、根絶されることなどあり得ない。反抗する者たちへの見せしめとして、残虐な作戦を実施しているのか。事件の詳細が分かり次第、あらためてこの「掃討作戦」の実態を問題にしたい。
・抵抗勢力からの連日の襲撃、長期にわたる駐留によって疲れ果てた米軍兵士は、自分たちを支持しない民衆のすべてが敵に見えているのではないか。7月1日、バグダットの検問所では、車を運転していた男性が米軍兵士の発砲を受け、殺害されている。
※米軍、イラクでの抵抗勢力掃討作戦で180人を拘束
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030701-00000576-reu-int


○イラク各地における戦闘
<1日>
・バグダット
 3件の襲撃。一部はロケット弾による攻撃。米兵士5人死亡(情報:アルジャジーラ)
<29日>
・バグダット
 爆発物による攻撃。米兵士2人負傷。市民1人死亡。
※首都各地で襲撃、米兵5人死亡=軍車両にロケット弾−イラク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030701-00000350-jij-int


○拘束したイラク人に対する非人道的取り扱いへの抗議  アムネスティー・インターナショナル
・30日、アムネスティー・インターナショナルは、「拘置所において、イラク人収容者たちを“残虐な、非人道的な、劣悪な”環境下に置いている、米軍の国際法違反に該当する証拠が集まっている」と述べた。拘置所の環境はひどく、収容者にはまともに、食料も、飲み水も与えられていないという。「拘置されたその晩、我々は校舎の床で寝かされた。トイレに行くことも許されず、水も、食料も与えられなかった」(拘束さらたイラク人の証言)。当然のこと、弁護士との接見などの法的な対応は、まったく保証されていない。
・米軍の人権意識とは、この程度のものである。その彼らが、イラクに自由と民主主義をもたらすと宣言しているのである。笑止千万。彼らは過去、アフガニスタンで拘束した「アルカイダ容疑者」を「鶏小屋」に収容した。その際、15歳以下の未成年者も収容し、国際的に非難された。占領した地域の民衆など、米軍にとっては対等な人間ではないということなのか。

※AP “Amnesty International: U.S. Iraqi Detentions Violate Law”(30 June 2003)
http://www.commondreams.org/headlines03/0630-02.htm
※BBC“US condemned over Iraq rights” (30 June 2003)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/3033538.stm
※<アムネスティ>拘束イラク人の劣悪環境で待遇改善求める
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030701-00002138-mai-int


○イラク復興をめぐる対立
・米議会の中から、現地駐留軍の犠牲の拡大とともに、イラク復興が停滞していることへの批判の声が高まりはじめている。米のマスコミも、「連合軍暫定当局」(CPA)を「人材不足」と批判し、ブッシュ政権の見通しの甘さを非難しはじめた。またブッシュ政権は今頃になってクリントン政権時代の高官をイラクに派遣し、復興事業を後押ししようとしている。しかし事実は明白である。ブッシュとラムズフェルドをはじめとするネオコンたちは、当初から明確な対イラク(復興)政策を持ち合わせていなかった。戦争による破壊、イラクの弱体化、石油を盗み取ること、彼らの眼中にあったのこれだけであったことが、今明らかになっているのである。イラクの「復興支援」のために派遣されたORHAの元顧問は、「米主導の占領軍当局は、復興に向けた明確な方針を持ち合わせていなかった」ことを認めている。また「復興」の大前提は“平和”のはずである。しかし米軍は今なお、戦闘に明け暮れている。そして「戦局」は、泥沼化している。イラクにおける米軍の苦闘を表現する言葉として、「ベトナム化」が使われるようになっている。破壊を続けておいて何が「復興」か。戦闘状態の中で、どのようにして「人道支援」を行うというのか。
※仏独のイラク復興参加を 米議会、現行体制に異議
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030630-00000035-kyodo-int
※<イラク復興>クリントン時代の高官派遣 米国防総省
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030628-00003004-mai-int
※戦後イラクは泥沼化していない=米国防長官
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030701-00000614-reu-int
※<イラク復興>70カ国に軍派遣を要請 米国防長官明示
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030701-00001086-mai-int



●6月28日(101日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 5月1日の戦争終結宣言以降、イラクの「戦場」において、すでに20人以上の米兵が死亡している。ここ最近、米軍が攻撃を受ける頻度は激増しており、23日と24日の2日間で25回もの攻撃を受けたことを、米軍は認めている。また、これまで比較的情勢の安定していた南部バスラ近辺において、英兵6人が死亡した。相次ぐ占領軍兵士の犠牲と攻撃の増大が示している事実は、イラク全土がいまだに「戦場」であり、イラク民衆の、占領軍に対する怒りが渦巻いていること、である。自衛隊が派兵されようとしている「非戦闘地域」など、今のイラクには存在しないのである。
 米英兵の犠牲者に関する情報は多いが、罪なきイラク民衆の犠牲者も相変わらず増えている。バグダットで攻撃された米軍は応戦し、屋根に登っていた11歳の少年が殺された。バスラ近辺で6人の英兵が死亡した事件においても、英兵は住民と銃撃戦を繰り広げており、その際に住民側に犠牲者が出ている(2人が死亡したとの情報もあり)。米英軍の「残党狩り」の名目によるイラク民衆のレジスタンスへの弾圧、殺戮も、イラク各地で続いている。イラクの「復興支援」が声高に叫ばれているが、その大前提は“平和”のはずである。また、イラク「復興支援」のために派遣された元顧問は、「米主導の占領軍当局は、復興に向けた明確な方針を持ち合わせていない。」と述べる等、米はイラクを軍事的に支配する意志はあるが、イラクの「復興」を支援する意志がないことが明らかになっている。米英軍のイラク駐留が、「終わりなき戦争状態」の根源であり、彼らは即座にイラクから撤退しなければならない。

○イラク各地における戦闘
<26日、27日>
・バグダット南西部にて
 特殊部隊が待ち伏せ攻撃を受ける。米兵1人死亡。8人負傷。
・空港付近の道路沿いにて
 手榴弾によるとみられる爆発。米兵1人死亡。1人負傷。
・バグダット南方約130km クーファにて
 海兵隊1人死亡。
・米軍とイラク電力当局職員らの車列に手榴弾。イラク職員2人死亡。
・バグダット南方約20km ユースフィーヤにて
 軍車列にロケット砲。米兵2人が負傷。

<25日>
・バグダット北方約80km バラドにて
 陸軍兵士が四輪駆動車や装備ごと消息を絶つ。後に兵士2人死亡を確認。

<24日>
・バスラ北部約200km アマラ市南部にて
 宗教、習慣をめぐる対立から住民が英兵に抗議。銃撃戦となり、住民側も犠牲者数人。英兵6人死亡。8人負傷。
注)現地住民は、「武器狩り」を強行する英軍に不信感を抱いていた。家屋への強制捜索に地元住民は怯え、住民への、特に女性へのボディーチェックは「尊厳を奪いさる」ものとして、住民の怒りをかっていたい。また英兵に帯同する捜索犬は宗教上の理由から、住民の怒りの対象となっていた。
※“米特殊部隊員が攻撃で死亡 8人負傷、バグダッド南西”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030627-00000036-kyodo-int
※“南部で英軍兵士6人が死亡 武装組織の攻撃受ける”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030625-00000155-mai-int


○石油輸出の再開と相次ぐパイプラインの爆破
 6月22日、イラク原油の輸出が再開された。イラク北部キルクーク油田からパイプラインによってトルコに送られたもの。「戦争が終了」しておらず、また生活基盤が破壊され、絶望的な日々の苦しみに満ちた生活から抜け出ることができないイラク民衆の存在下において、石油産業だけの突出した「復興」はまったく異常である。米は、石油産業だけは復興させたが、「復興支援」、「人道援助」には関心はないことを示している。相次ぐパイプラインの破壊は、イラク民衆による、石油=国富を盗み取る米に対するレジスタンスである。パイラインの爆破をめぐる地元住民の思いは、次のように報じられている。「(現地住民は)イラクのものである資源を米国が奪取していると見ている」と。
※“原油輸出が3カ月ぶりに再開 戦後復興に弾み”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030623-00002060-mai-int
※“イラクの石油パイプライン、3度目の爆発”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030626-00000154-reu-int
※“反米勢力がパイプライン攻撃 戦後復興に暗い影”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030626-00001048-mai-int


○復興支援   復興支援会議 10月開催 
 イラク「復興支援」をめぐる国際的枠組みの話し合いが行われることになった。本格的な「復興支援」の国際的討議の場はどんどん先送りされ、なんと10月になった。エビアン・サミットでは、米は「復興支援」を議題にすることを認めなかった。そして今まで、放置し続けた。「復興資金」をどの国が負担するのか。イラクを破壊しつくした米は、自らが資金を負担する気など全くない。米には、イラクを「復興」させる意志などない。米は自らの意に沿った「復興」を目指し(米傀儡政権を支えるために)、各国、国際機関から資金を拠出させようとするであろう。日本にも莫大な負担が求められるに違いない。必要な資金は、1000億ドルにものぼるといわれている。人的犠牲、湾岸戦争後からの破壊のすべてを評価したならば、このような金額では満足な金額ではないであろう。しかし各国の財政状況が厳しい中、これだけの資金であっても簡単には集まらない。またそこには、債務放棄の問題が絡む。米は、長期にわたりイラクを破壊している。その罪を反省し、無条件に、率先して、イラクに対して補償すべきである。
※“イラク復興支援国会議、10月開催で合意”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030625-00000304-yom-intt


○人道支援  国連 人道支援で305億円追加支出要請
 米英軍は「泥沼の戦争」を続け、自らが、イラク民衆の「人道支援」に積極的に関与するつもりはない。このような状況の下、国連をはじめとする諸団体は、支援の最前線に立つことを余儀なくされている。戦前においても「国民の5人に1人が慢性的貧困にあった」(WEP報告)、5歳の子供の100万人以上が栄養不良に苦しんでいたといわれているイラクにおいて、戦争によって破壊されたものの代価の大きさや、イラクを再建するのに必要な「復興支援」、民衆の生活状況を改善するための「人道支援」と現実の貧弱な対応とのギャップを痛感している。この305億円は、地雷除去、教育の再建に拠出される予定であるが、本当に必要な額と比較したならば、あまりに少ないものであろう。米軍はさらに駐留軍を増強させる計画である。米軍は3月に、626億ドル(約7.5兆円)の駐留費を追加した。さらに増大される予定である。305億円対7.5兆円。この隔絶した差は、米の関心の焦点を如述に表現している。彼らはイラクの支配=破壊には、いくらでも拠出する。しかし、「復興」や民衆への支援には、極めて冷淡なのである。
※“イラクへの人道支援で305億円追加拠出を要請”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030624-00003018-mai-int



●6月18日(91日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○米軍 デモ隊に発砲 2人を殺害(バグダット)
・18日、首都バグダット。米軍がデモ隊に向けて発砲。デモ参加者の2人が死亡。その他に多数の負傷者が出た模様。
・数百人の元軍人を中心とするデモ隊は、復職や未払い給与の支払いを要求していた。デモ隊が米軍の居座る大統領宮殿に押し寄せようとしたために、発砲したという。
・事件直後、「デモ隊は石を拾い、私たちに投げてきた。装甲車に乗った仲間がそれに応戦した」と米軍は語った。発砲は、防衛的措置だったというのである。投石に対して銃撃だと!いい加減にせよ!今回の事件は、白昼における公然たる虐殺行為である。
・ここ数週間、米軍はイラク民衆の組織的なレジスタンスに遭遇し、兵士の犠牲、損失を拡大させてきた。そして大規模な反撃−「半島打撃作戦」「砂漠のサソリ作戦」なるものを実行し、多数のイラク人を殺害、拘束した。今もその作戦は継続中である。祖国を荒らし回り、自国民を次々と殺害する米軍に対する怒りは、全土で相当高まっていたはずである。元軍人たちをはじめとするイラク民衆のデモは、バグダットにおいてもこれまで平和的に行われてきたという。民衆の怒りは極限に達していたのであろう。米軍の姿を目の当たりにし、自然発生的に投石が行われたのかもしれない。今回のバグダットにおける虐殺事件は、イラクに居座り続ける占領軍=米軍に対する怒りをさらにかき立てるものとなろう。
・何度も繰り返すが、米軍がイラクから出ていかなければ平和はおとずれない。
※(BBC NEWS)“Three dead in Baghdad violence”(18 June 2003)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2999594.stm
※(共同通信)“デモ隊に発砲、2人死亡 バグダッド中心部で米軍”(18 June 2003)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030618-00000178-kyodo-int



イラク民衆の米軍に対する抵抗は、強まっている。
“Two US soldiers killed in Baghdad”
http://www.middle-east-online.com/english/?id=6012)から



●6月13日(86日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○米軍、イラク抵抗勢力に大規模攻撃 100人以上のイラク人を殺害 多数を拘束
・米軍が大規模な攻勢に出た。
*バグダット北西150km:12〜13日にかけて、第101空挺師団約4000人が「掃討作戦」を実施。今回の攻撃は「旧支配政党のバース党支持者や民兵組織を撲滅する取り組みの一環」であり、「テロリスト」養成キャンプを狙ったものであることを、米軍は主張。
*北東のバラド:13日、米軍戦車が待ち伏せ攻撃を受けて応戦し、イラク人27人を殺害。米兵1人負傷。
*モスル:74人を拘束。米軍は、拘束した者たちはアルカイダの支持者であることを、米軍は主張。
・イラク全土で殺害、弾圧を繰り広げる米軍を糾弾する。今回殺害されたイラク人も、占領軍=米軍による虐殺の犠牲者である。まだ情報としては伝わってきていないが、一連の戦闘において相当多くの民間人も巻き込まれたはずだ。
・バグダット侵攻後も米軍は組織的な攻撃を受け、その期間における米兵の死亡者は40人を超えるまでになった。危機感を強めた米軍は、今回大規模な反撃に出た。対象は「テロリスト養成キャンプ」、殺害された者たちは「サダム支持者」であった、米軍はこのような主張をもって今回の攻撃を正当化しようとしている。しかし、米軍こそが侵略者であり、本来ならば、「掃討」されるべき対象である。不当な戦争を、イラクに対して一方的に仕掛けたのは米軍である。戦争の大義名分であった「大量破壊兵器の破棄」は、実はでっち上げであったことが暴かれようとしてる。反抗するイラク人を「掃討する」権利など、米軍にはない。また不当にイラクを支配し続ける米軍は、多くのイラク人を路頭に迷わせた。彼らの生存権を奪い去ったのである。これに対する抗議を、武力をもって弾圧する権利など、米軍には一切ない。占領軍である米軍は、即座にイラクから出ていかなければならない。
・「イラク特別措置法」に基づき自衛隊を現地に派遣するということは、この米軍の蛮行に共に責任を負うということである。何としてもこの法案を阻止しなければならない。

※(Gurdian)100 Iraqis killed in violent clashes 13 June
http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,977038,00.html
※(BBC NEWS)US hunts down 'Saddam loyalists' 13 June
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2986810.stm
※(毎日新聞)米軍がテロリスト養成キャンプ攻撃 依然戦闘状態 13 June
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030614-00000090-mai-int


○民間人犠牲者“Body Count”をめぐる報道 AP通信 3240人以上の民間人犠牲者
・10日、AP通信は独自の調査結果に基づき、戦争にともなう民間人犠牲者が少なくとも3240人以上にのぼることを発表した。イラク国内の大半の60の大病院における記録を基に算出された数値である。
・この数値は、“Iraq Body Count”が推定した民間人犠牲者数と矛盾しない、妥当なものである。現段階における“Iraq Body Count”が推定する民間人犠牲者数のMaxの数値は、7207人である。私たちが“Iraq Body Count”にある一覧表から、病院で亡くなったことが確認された犠牲者数の記録分のみを集計したところ、犠牲者のMaxの数値は4120人であった。AP通信が推定した数値には、民間人か軍人かを区別できなかった遺体は集計に含めていないこと、また早々と埋葬されたり、がれきに埋もれてしまった遺体が多数あることなどから、実質的には差がないと見てもよいだろう。その意味でも、AP通信が算出した3240人以上といった数値は、“Iraq Body Count”の推定の正しさを裏付けるものである。
・13日の電子版“Gurdian”に、「戦争は1万人の民間人を殺したと見られる。研究者はそう語る。(War may have killed 10,000 civilians, researchers say)」と題した記事が掲載された。“Iraq Body Count”が公表している数値算出の根拠とその精度の高さが実証されつつあることが紹介されている。またAP通信の算出した数値については、先に述べたように“Iraq Body Count”がほぼ完全に網羅していると評価している。この記事の翻訳を後に付けた。
・今回の戦争における民間人犠牲者の総数は、湾岸戦争に迫る、あるいは大きく超えようとしている。民間人に多くの犠牲者が出ている点にこそ、今回の戦争の特徴−地上戦と戦場における無差別・大量破壊兵器の使用−があらわれている。まさに犠牲者の総数を確定する作業は、米英軍の戦争犯罪を暴くための重要な作業の一つである。

※(共同通信))“民間人死者3240人以上 イラク戦、米APが独自調査” 11 June
http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2003/iraq2/news/0611-1141.html
※(Common Dreams)“AP Tallies 3240 Civilian Death in Iraq” 11 June
http://www.commondreams.org/headlines03/0611-06.htm


記事翻訳
Guardian 13 June
戦争は1万人の民間人を殺したと見られる。研究者はそう語る。
War may have killed 10,000 civilians, researchers say
http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,976392,00.html

イラク侵略の間、少なくとも5000人の民間人が殺害されたと見られる−独立系調査団体はこのように主張している。さらなる証拠が照合されるにつれ、その数は1万人に達するであろう、と伝えている。

イギリス、アメリカの大学教師と調査員たちのボランティア・グループである“Iraq Body Count(IBC)”は、メディア報道に基づき民間人犠牲者の統計をまとめ上げ、戦闘において5000〜7000人の民間人が死亡したと推定している。

それらの数値を14のその他のカウント(そのほとんどがイラク国内で実施された)と比較した最新の報告は、その結論を確証している。

複数のグループの調査団は、イラク国内の病院や遺体安置所を訪問したり、死亡者の親族に対する聞き取りを行った。その中の二、三の団体は、主要都市における実地調査を実施している。

三つのまとまった調査結果は、戦闘期間においてバグダットだけで1700〜2356人の民間人が死亡したことを示唆している。

キール大学の心理学の教授でありIBC報告の著者でもあるジョン・スロボダ氏は、イラクにおける調査結果は、彼らのグループ(IBC)の数値を支持していると、述べている。「私たちが批判されてきた一つが、ある人から言質を取るジャーナリストのものを引用するといった点です。しかし今私たちが気が付いていることは、いつ何時ある団体がイラクに行き、プレスを通じて得られるデータの細部を検証したとしても、私たちのデータには間違いがないということだけではなく、しばしば低いサイドの数値であるという事なのです。」

「その全体像は、イラクにおいて多くの民間人の死亡者の地獄があったという、確固たる絵図を現在再構成しているのです。」

IBCの報告を立証するいかなる素材も認識していないと、国防省のスポークスマンは述べている。また「戦闘の最中、我々は、民間人間の犠牲者を最小にすることに心を砕いてきた。我々は、軍を標的にしてきた。民間人犠牲者がx人いることを示す一連の数値に対して、一切の手引き、あるいは信頼性を付与することができない」と。

今週AP通信社が発表した、3月20日から戦闘が終息した4月20日の期間におけるイラク国内の60の病院の調査結果に基いた、少なくとも3240人の民間人死亡者に関する数値を、IBCの全体は網羅している。しかし多くの遺体が、イスラム教の習慣に従い早々に埋葬されたり、がれきに埋まっている。

スロボダ教授は、次のように述べている。原則的には、9月11日の攻撃による死者総数の評価に用いられてきた方法と同様の科学捜査法が援用された(犠牲者)総数のカウントを妨害するものは何もないと。それは、政治的な意向と手段についての問題である。

民間人の死亡に関する不完全な記録であってもまとめあげる価値がある。民間人犠牲者がほとん存在しないとされている戦争に先だって、それは補償金の支払いと主張を判断する助けとなる。このように、彼は述べている。

米軍のスポークスマンのジェームス・カシーラ中佐は、次のように述べている。ペンタゴンは犠牲者を数えない。その理由は、彼らの取り組みは、市民を狙ったのではなくむしろ敵軍を打ち負かすことに照準を合わせていたからである、と。

国際法の下では、米は「合法的な戦闘作戦において発生した負傷と損失」を償う義務を負わない、と彼は述べた。

イラク政府は、1991年の湾岸戦争において、2278人の民間人が死亡したと評価している。



●6月12日(85日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○モスルで大規模衝突
・AFP通信速報。12日イラク北部の都市モスルで、元イラク軍人数百人が地元警察と衝突、銃撃戦となった模様。元軍人に死傷者が出た。数人か、多数か、現段階では不明。負傷者も多数に上ると見られている。
・地元自治体は、民間の役人に対して4月分の給与を支払った。しかし元軍人たちに対しての支払いを拒否したのである。これに対して元軍人が集結、抗議のデモとなった。
・AFP通信員に語った事件目撃者の証言によると、衝突の最中、米軍ヘリが上空を巡回していたという。デモを弾圧した地元警察と連動した動きではないか。
・事件の原因を作り出したのは、占領軍である。占領軍は旧イラク軍を解体し、またバース党員を公職から追放する決定を下した。彼らは、かってのフセイン政権を支えた者たちに対して、自らの圧倒的な軍事力を背景に、社会的な懲罰を加えようというのである。地元自治体による元軍人たちへの給料の支払い拒否も、米軍の明確な指導があったと推測される。先週バグダットにおいて、元軍人たちによる同様の抗議デモがあった。いきなり路頭に放り出され、家族を養っていけない元軍人たちの不満は、全国のあらゆる所で、占領軍への怒りに変わりつつある。
・今回の事件が占領軍支配に対していかなる影響を及ぼすのか。相次ぐ米軍襲撃事件とは異なる、大規模な占領軍への抗議の始まりとなるのか。注目していきたい。

※BBC NEWS “US loses two aircraqft over iraq” (12 June 2003)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2983486.stm
※時事通信 “元軍人数百人が警察と衝突=給料支払い拒否に抗議−イラク北部”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030613-00000568-jij-int


○イラク民衆の米英軍の軍事占領への反発
<6月10日 バグダット>
・バグダットにおける検問所にて、ロケット弾(RPG)の攻撃を受ける。米軍兵士1人死亡。その他に重傷者。攻撃を受けたのは第82空挺部隊。武器の回収作業の最中に攻撃を受けた模様。
・4月9日のバグダット攻略以降、今回を含め40人の米兵士が攻撃によって死亡している。米軍兵士の死亡者は増えており、今や米軍は、四方を銃口で固めても安心してイラクに居座ることすらできなくなっている。10日ワシントン・ポスト紙は、「米軍は強まりつつある抵抗に直面している−イラク中部における攻撃はますます頻繁に、巧みになりつつある。(“U.S. Soldier Face Growing Resistance −Attack in Central Iraq More Frequent and Sophisticated”)との見出しの記事を配信し、イラクにおける米軍の困難な状況を伝えている。

※BBC NEWS “US soldier dies in Iraq attack” (10 June 2003)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2980094.stm
※Washington Post “U.S. Soldier Face Growing Resistance” (10 June 2003)
http://www.ccmep.org/2003%20Articles/061003_U.S._Soldiers_Face_Growing_Resistance.htm


○深刻化する人道的危機 −猛威を振るいはじめたコレラ
・6月8日のBBCの記事において、イラクの子供たちにコレラが拡大し始めている現状が報告された。タイトルは「子供の病気が“増加している”(Child sickness 'soars' in Iraq)」。
・子供たちに、コレラ、赤痢、腸チフスが襲いかかっている。昨年同月(5月)と比較しての発生率は、2.5倍の増加を示しているという。米軍侵攻以前、下痢によって100万人の子供たちが栄養失調の状態にあったといわれている。しかし戦争と社会的インフラの崩壊は、事態をさらに悪化させている。消毒された水の供給をストップさせ、汚水処理システムを破壊し、さらに汚物収拾がなされなくなった。劣悪な環境によって多くの子供たちの命が奪われているのである。
・疫病、伝染病による犠牲者の多くは、戦争さえなければ命を失うことはなかったのである。これは、米英軍による殺戮、虐殺である。

※BBC NEWS “Child sickness 'soars' in Iraq” (8 June 2003)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2973564.stm



●6月7日(80日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○イラク民衆の米英軍の軍事占領への反発
 論評「苦境に立つ米英の軍事占領(その1)」において、民間人犠牲者との関連では、次の点が指摘されている。@占領軍に対するゲリラ攻撃が激化し、住民と米英軍の間で緊張関係が高まっている、A強圧的な武力をもって、米英軍は反抗を押さえつけようとするであろう。そのやり方は、住民虐殺を拡大させる危険性を高めるであろう。ここにおいても今後、この側面に関してできる限りのフォローを行っていきたい。

<6月3日 ファルージャ> 
・ファルージャに駐留する第101空挺部隊に対する攻撃。米軍兵士1人死亡、5人負傷。米軍兵士が巡回パトロールを終えたまさにその時、中心街の通りにある警察署前に停車させていた米軍車両にロケット弾(RPG)が打ち込まれたという。
・27日にも米軍は攻撃を受け、2人の米軍兵士が死亡している。ファルージャは、米軍が中学校の明け渡しを要求した住民に対して発砲し、15人が虐殺された場所(「ファルージャの無差別虐殺事件」参照)。それ以降米軍は支配を強化し、1500人以上の部隊を配備していた。
・下記の“Middle East Online”には、ファルージャ住民の声が紹介されている。「イラクの誰もが、この攻撃を支えている。我々は米軍がここに居ることを望んでいない。これは侮辱であり、占領だ。米軍にこそ、この暴力の責任がある。当然、さらなる攻撃があるだろう。すべてのイラク人が米軍を攻撃するであろう。」(事件現場付近の住人)「・・・米軍はイラク人を尊重していない。彼らは我々に何もしてこなかったし、この攻撃が始まりである。米軍は、我々の家族や、伝統を尊重してこなかった。彼らは女性に触れている。これは侮辱である。イラク人に対するすべての侮辱行為は、火に油を注ぐことになるであろう。」(別の住人)
※BBC NEWS 「US soldier killed in Iraq attack」 5 June 2003
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2965054.stm
※Middle East Online 5 June 2003
「US soldier killed as troop reinforcements arrive in Iraq unrest belt」
http://www.middle-east-online.com/english/?id=5833

<6月7日 ティクリート>
・ティクリート近辺にてロケット弾による攻撃。米軍兵士1人が死亡、4人が負傷。(米軍発表)
※ロイター 「U.S. Soldier Killed in Iraq, Four Hurt」 7 June 2003
http://reuters.com/newsArticle.jhtml?type=topNews&storyID=2892899


 この一週間も米軍襲撃事件は続発しており、それは必然的に住民と米軍との緊張関係を高めることになろう。罪のないイラクの民間人犠牲者をこれ以上生み出さない唯一の道、それは米軍の即時撤退である。


○深刻化する人道的危機
<混乱が続くイラクの医療現場>
 バグダットを占領軍が支配してから間もなく2ヶ月が経過しようとしているが、未だに医療現場における危機は解決していないという。5月末に報道された記事「バグダットの病院は未だに深刻な状態にある、と赤十字国際委員会は述べている(ICRC says Baghdad hospitals still on critical list)」(Reuters AlertNet)の紹介。
(記事要旨)
・バグダットの病院は、貧しい状態におかれている。サダム・フセインを倒した侵攻後、街全体で認められる同じようなカオスによって、ひどく苦しめられている。
・国際赤十字委員会のスポークスマンの証言。「病院における現状は、未だに危機的な状態にある。何らかの緊急措置が取られなければならない」、「500万人の叩きつぶされた都市における33の病院は、米主導の同盟軍がバグダットを陥落させた4月9日以後7週間以上を経過してもなお、治安の混乱によって、その活動が妨げられている。治安こそが、基礎的なサービスを実行していく上で最大の問題である。・・・略奪の危険性があるために、相当量の医薬品の配給を実施することができない。」
・未だに病院では、電力と水の供給が停止している。また医療スタッフに対する給料の支払いも実施されていない。

※Reuters AlertNet 「ICRC says Baghdad hospitals still on critical list」29 May 2003
http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/L29547912.htm

またWHOによるイラクにおける医療現場についての報告も、次のサイトで紹介されている。「手榴弾、銃、死、イラク人医師の日常業務のすべてを脅かしている、とWHOは語った(Grenades,guns,death threats all in an Iraq doctor's day of work, says WHO)」。
※Report,United Nation News Center
「Grenades,guns,death threats all in an Iraq doctor's day of work, says WHO」
http://electroniciraq.net/news/861.shtml

<懸念される疫病の発生>
 被害記録においても度々紹介してきた、汚染された水を摂取することによるコレラをはじめとする疫病の大爆発を懸念する報道である。気温がぐっと上昇する7月を前に、多くの援助団体は懸念を深めている。インフラを整備する担当省の再建を早急に成さなければならないにもかかかわらず、イラクを占領し続ける米英はまともな対応を行っていないという。
・現在イラクは、もしも保健省の復興させるための計画的な努力がなされなければ、公衆衛生の危機と夏期のコレラに直面するだろう、と人道援助団体のCAREは述べている。
・「今、コレラの夏期が始まろうとしている」とCAREのイラク緊急対応の責任者のアン・モリス氏は述べている。未だにイラクでは、50%の水が飲むのに適していないと推定されており、また7・8月に入ってからの気温は45℃を超える。「もしも適切な監視試験と防御機構が早急に設置されなければ、生息場所はカップの縁を溢れ出るであろう。その時、全イラク人は、公衆衛生の危機にさらされるであろう。イラクで起こっていることは、通例とは異なる危機である。飢饉やひどい疫病の発生が見られるわけではない。しかしながら、政府の肝要な部署がなくなってしまった。仮に省がすぐに復興されなければ、基礎的なインフラはぼろぼろになり続け、イラクの人々はその影響を被るであろう」と述べている。・子供が最も大きな影響を受ける。12万6千人の赤ん坊が、戦争が始まって以来誕生した。その中の少数が、結核のワクチンを接種しなかったのではない。5歳以下のすべての子供たちが、定期的なワクチンの接種の機会を失っているのである。イラクの風土病である飲料水と食物に起因する疾病は、流行伝染病のような勢いとなっている。国中の病院はコレラの症例を報告しており、通年の季節平均よりも、2、3、4倍も高い比率である。
※CARE International UK 「Iraq heading for summer of diarrhoea」6 June 2003
http://www.careinternational.org.uk/cgi-bin/display_mediarelease.cgi?mr_id=223



●6月3日(76日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○占領軍に対する民衆の怒りの高まりと、相次ぐ米軍の虐殺事件
 イラク各地において、米軍の占領政策に対する民衆の不満が高まっている。米軍を標的にした攻撃は各地で頻発し、また占領政策に反対する大規模な抗議行動が各地で巻き起こっている。人道的危機、失業問題の深刻化は、イラク民衆の不満に拍車をかけている。今週の月曜日(6/2)には、失業した元軍人たちがバグダットで大規模な抗議行動を行った。
 占領政策が破綻しているにもかかわらず、米はさらに軍事的抑圧を強化している。高まる緊張関係の中、多くの民間人が米軍によって殺害されているのである。イラクからの米軍の即時撤退を要求する声を、さらに強めなければならない。

<5月25日 バグダットの北方サマラ市>
・夕刻、結婚式のパレードに向けて米軍が発砲。十代の3人が死亡、その他の7人が負傷。祝い事に行われる空に向けての銃砲の音を米軍が攻撃と勘違いし、パレードに向けて銃撃した模様。
・米軍は「現在調査中」と発表。それ以外はノーコメント。誤認による殺害は明白である。いつもの「イラク側の責任」の常套文句は、今回は通用しないらしい。
・目撃者の証言によれば、銃砲が鳴り続けてからしばらく経ってから、いきなり米軍が銃撃を開始したという。事件には不明な点が多い。パニック状態の米兵が思わず銃撃を始めてしまったのかもしれない。米兵士が「銃砲は危険だ(誤解されるぞ)」と事件直後に述べたことが記事に紹介されているが、しかし米兵が不当に占領し、住民を威嚇し続けていることに問題がある。

※U.S. military says killed two Iraqi civilians 31 May 2003 (Reuters AlertNet)
http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/L2964377.htm


<4月29日 バグダットの北方サマラ市の検問所>
・2人が死亡、2人が負傷。
・米軍発表:検問所において車が速度を上げ向かってきたので、威嚇射撃を行った。
 「兵士が戦車に装備されているマシンガンを撃った。車の中の2人の民間人が死亡した。車の中のその他の2人は負傷した」。
・米軍の発表はたったこれだけである。民間人の命を奪ったにもかかわらず、事実関係の調査、謝罪と補償を行うつもりなどまったくない。数日前サマラにおいて米軍は攻撃を受けた。警戒を強める米軍に兵士にとっては、周りがすべて敵、不審な動きのすべてが、自分たちへの攻撃と感じているのであろう。

※US gunfire kills three teens at wedding 30 May 2003 (smh.com)
http://www.smh.com.au/articles/2003/05/29/1054177674323.html

○クラスター爆弾 大量散布の実態
・6月1日の“The Observer”に、「サダムの地雷と同盟軍のクラスター爆弾散布状況に関する地図(Saddam's land mines and coalition clusters litter the map of Iraq)」と題した、クラスター爆弾の散布状況を示すPDF版地図が掲載されている。この地図は、NGO組織である“Humanitarian Operations Centre”が作成したものである。そこには、南部のウムカスル、バスラからバグダットにかけて、また北部のモスル、キルククークにいたるイラク全土における、クラスター爆弾が散布されたポイントが描かれている。図の説明文には、バグダットが周辺が最も高い密度で散布されたことが指摘されている。いかに多くの無差別・非人道兵器を使用したのか、そのことを地図は明らかにしている。その多くが不発弾となって、今なおイラク民衆を殺害しているのである。米・英軍は、イラク全土におけるクラスター爆弾の大量使用とそれにともなう民間人犠牲者への責任から逃れることはできない。

※Revealed: the cluster bombs that litter Iraq
http://www.observer.co.uk/iraq/story/0,12239,968181,00.html



●5月28日(70日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○重大な局面をむかえる、ベルギーにおける戦争犯罪裁判
・以前の“被害記録”において、ベルギーの裁判所において米の戦争犯罪、トミー・フランクス司令官が裁かれるかもしれないことを報告した。この裁判を巡る情勢に関して新たな情報があり、それを紹介したい。
・下記の声明は、裁判の実現に向けての“ザ・コーディネーション・ストップ・USA(The Coordination STOPUSA)”のものである。裁判に訴えたイラク人18人、ヨルダン人2人を、このベルギーの反戦グループが支援している。そして今現在、裁判の行方を巡り、重大な局面にある。最大のポイントは、ベルギー政府による訴訟妨害である。近年改定されたジェノサイドと戦争犯罪に関する“普遍的裁判権”法(the law of universal jurisdiction)では、この法に基づく訴訟の是非に関して、@国際刑事裁判所、A当該国(この場合では米)の裁判所、のいずれかに引き渡すことも可能なのである。そしてベルギー政府は今、Aすなわち米軍の人道的罪=戦争犯罪を、米国の裁判所に引き渡す動きを見せているという。要するに、ブッシュにブッシュを裁かせようとしているのである。この背景には、戦争犯罪の数々が裁判によって暴かれることを恐れる米政府の露骨な介入と恫喝、政治的対立を回避したいベルギー政府の思惑が反映している。
・下記に紹介するのは、ベルギー政府の妨害を批判し裁判実現を要求する賛同署名の呼びかけである。ここでは割愛したが、訴状も添付されている。この訴状内容は、まさに米軍がイラクで行った戦争犯罪を暴く、今回の原告である犠牲者側からの声の集約となっている。裁判が実現したならば、ブリュッセルは、米軍の戦争犯罪を暴く、重要な場となるであろう。

www.globalresearch.ca
Centre for Research on Globalisation
Centre de recherche sur la mondialisation


ブリュッセルにおけるトミー・フランクス司令官に対する
ジェノサイドと戦争犯罪訴訟


http://stopusa.be/ , 20 May 2003
http://globalresearch.ca/ 24 May 2003
The URL of this article is: http://globalresearch.ca/articles/STO305A.html



米軍による犠牲者のための裁判

18人のイラク人と2人のヨルダン人が、イラクにおける米軍の指揮官であるフランクス司令官に対する訴訟をブリュッセルでまさに提訴したばかりだった。ベルギー法に独特の、ジェノサイドと戦争犯罪に関する“普遍的裁判権”法(the law of universal jurisdiction)に基づいてのことである。

この行動は、大きな民衆の支持を巻き起こした。何百ものメッセージが、この訴訟のまとめ役である“Stop USA Brussel”に送られてきている。

しかし来週の地方選挙の直後にも、ベルギー政府は訴訟をワシントンに送る準備をしている。米司法は公正であるとうそぶいて!ブッシュがブッシュを裁く審判になるのである!このことは、犠牲者を二度殺すことを意味するであろう。

この訴訟を守る唯一の機会は、国際的な圧力を直ちに組織することである。そこで、私たちは皆さん一人一人に、緊急に下記に掲げたこのアピールに署名する著名人を集めることに参加されるよう呼びかける:芸術家、知識人、スポーツマン、学者、政治家、人道家、あらゆる種類のよく知られた人々の署名を。

権力に対する正義の防衛=それはブッシュに脅かされる次の国を防衛することでもある。

具体的には、皆さんが得た諸個人の署名を Stop USA International Secretariat info@stopusa.be に、可能な限り早く送って下さい。告訴状の全文は、http://stopusa.be/にあります。



ブリュッセルにおけるフランクス司令官に対する訴訟

イラクにおいて米軍部隊が犯した戦争犯罪に対する免責はありえない。

イラクに対する直近の戦争の期間において米軍部隊が犯した戦争犯罪による20人の犠牲者たちは、ベルギー連邦検察官に国際的人道法の侵害で告訴した。

申し立ては、この段階では特定されていない、戦争犯罪を犯した兵士たちに向けられている。それは、特にトミー・フランクス司令官が戦争犯罪を命じ、他の者がそれらを犯すことを阻止しなかった、あるいは実行者を保護したことを記載している。

原告は、以下のことによって重傷を負い親族を失った。
*クラスター爆弾の使用、*ジャーナリストを含む民間人への攻撃、*公共医療サービスとその他のイラクのインフラに対する侵略行為、*米軍に守られての、あるいは米軍の命令の下での略奪。

原告とその親族は、米軍によって使用された劣化ウラン兵器の破壊的影響を危惧する理由を有している。すでにこれらの影響は、かってのイラク、ユーゴ、アフガニスタンに対する戦争で注目されてきた。

全世界の数百万のデモ参加者は、イラクへの戦争に反対を表明している。世論調査はどこにおいても、70〜80%の人々がこの侵略戦争を非難していた。人々の意志を無視して、ブッシュ政権は、安全保障理事会の承認もなくイラクを攻撃し、また国連憲章に定められた武力行使の禁止を尊重することを拒否することによって国際法を破った。戦場において米軍隊はまた、多くの情報源が明らかにしているように、数多くの戦争犯罪を犯した。

原告は、自らが犠牲者となった戦争犯罪に対する責任を明確にするための、独立した調査を要求している。

申し立ては、2003年5月7日に修正された「普遍的裁判権」に則ったベルギー法に基礎をおいブリュッセルで提訴された。修正された結果として、この法律はベルギー政府に対して、国際刑事裁判所(International Criminal Court )に訴訟を提訴する、あるいは被告人の出身国に訴訟を回す選択肢を与えている。

しかしながら米はICC法を批准しておらず、したがって、この国際刑事裁判所に移すことを不可能にしている。
(被告の)出身国の法廷に訴訟を移すことについては、その法は後者が中立性の保証を与えることを求めている。

1.提訴の可能性が公表されるや否や、国務省のスポークスマンは、ベルギー政府の介入によって司法の事件調査を妨害することを要求した。

2.ブッシュ政権の姿勢は、米国の行政がその国の法廷に同様の圧力を行使しないという保証がないことを明確に示している。この同じ政権は、グアンタナモに拘束されている捕虜にいかなる類の適法な状態を与えることも拒否し、「テロリズム」で告発された人々を裁く特別秘密法廷を準備し、無期限に、かつ適正な手続きなしに数百人もの外国人を拘留していることを思い出すべきである。それらは、公正な手続きへの介入の意図、また最も基本的な被告側の権利の尊重の完全な欠如を示している。

3.ニューヨーク選出の米下院議員ギャリー・アッカーマンは、普遍的裁判権に訴ようと試みるすべての国、とりわけベルギーとのすべての協力を禁ずる法案を提出した。

犠牲者の証言は、NGOである「第三世界のための医療援助」の人道的派遣団に従事し、攻撃の間バグダットに滞在していたコレット・モーラート(Colette Moulaert)医師とゲールト・ファン・モールター(Geert Van Moorter)医師によって文書化された。ベルギーで戦争に反対する活動に取り組む「コーディネーション・ストップ・USA(The Coordination STOP USA)」は原告を支援し、世界にこの訴訟に関する情報を提供するであろう。

国際アピール:イラクで米軍が犯した戦争犯罪を免罪するな!

署名者はこう考える。

*米軍は、イラクに対する戦争の間に罪を犯したのに、罰を受けないままにさせてはならない。*独立した調査が原告によって言及されている諸事実を調査すること、民事および刑事上の責任が確定されるべきこと、犠牲者が合理的な補償を受けること、が重要である。*現在のところ米の裁判所は、この訴訟上の公正についての十分な保証を与えていない。*国際刑事裁判所による調査は不可能である。なぜなら米は、その法令を批准していないからである。*結論として犠牲者は、第三国、この場合ベルギーにおける裁判権に訴える以外に他の選択肢はない。


(以下、署名のフォームと訴状が続くが、ここでは割愛します。)



●5月24日(66日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 “Iraq Body Count”の民間人犠牲者数が、7000人(最大)に迫っている。これまで掴めなかった病院における犠牲者の調査結果が次々と明らかになってきており、そのために犠牲者総数が大きくなっているのである。この民間人犠牲者総数は、湾岸戦争時に匹敵する数値である。一方的な地上戦に、多くの民間人が巻き込まれたことを、その犠牲者数は示している。地上戦において米・英軍は、徹底的な殲滅戦を展開したのである。あらためて、今回の戦争の非人道的性格=無差別・大量殺戮を暴露していくことの必要性を感じる。
 ここでは今なお継続する人道的危機の最新の続報を紹介する。人道的危機によって命を奪われた、また将来にわたって発生する犠牲者数も同様に、ますます増大するであろう。

○今なお続く人道的危機

南部バスラにおける深刻な人道危機の現状 (記事紹介)
After War, the terrible peace 22 May 2003 (Telegraph News) より(抄訳)
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2003/05/19/wirq19.xml

・まさに戦争直後の状態である。不発弾、水と電力の欠乏、街中に吐きだされる汚水−これらが人々を苦しめている。
・「私たちは人道的な危機を目撃している」とある援助団体は述べている。またユニセフは、1億6700万ドルに上る援助を要求している。
・特に水不足は深刻である。サフアンのある医院では、一杯のお茶を沸かすこともできない。ユニセフは、67台にも上る給水車を、クウェートから毎回送り届けている。しかしその量も、不足している地域においては、必要としている人々の10%相当にしか過ぎない。バスラは特に深刻である。いまだに40%の地域には、水が供給されていない。給水所のポンプのボルト、ネジ、ワイヤは略奪された。
・汚水の処理も深刻である。排水ポンプ116台の内、稼働しているのは3台のみ。街は汚水であふれている。浄水場に残された消毒用の塩素は、南部地方500万人の水1週間分しか残されていない。
・バスラにおける病院の状況も悲惨である。きれいな水が入手できない問題は、子供たちに襲いかかっている。バスラのイブ・ガズアウ母子病院には、下痢を患う子供たちであふれている。子供たちの多くが、母親に抱きかかえられている。なぜならベットは破壊され、使用できないからである。癌病棟では、子供たちが弱々しくベットで寝ていた。痛み止めがあるだけで、彼らに何ら治療も施すことができない。ユニセフが、粉ミルク、栄養ビスケット、基礎的な薬を配っていた。産科病棟では、「超音波装置のなく、稼働しているモニタもない」と医師は語っていた。多くの子供たちの命が失われている。4人の未熟児が保育器の中にいた。赤ん坊はたいそう小さく、おむつが顎にかかるほどの大きさであった。しかし、チューブは付けられていなかった。略奪されたのである。「4月には、92人の未熟児の内48人が死んでしまった。酸素吸引を施せず、生き残れなかった」。看護婦もいない。病院のマネージャーは、「汚れた赤ちゃん用のミルクとアイスクリームは、命を脅かしている。・・・・たまたまそのような水を口にしただけで、幼い子供の命は奪われる」と医師は語った。
・学校の悲惨な状況である。バスラにある700校のほとんどが、略奪の被害に遭った。ユニセフは、ノート、ペン、黒板、チョークを配給しようと試みている。「私たちはファンもなければ、子供たちに飲ませる水やミルクもありません。・・・・私たちは世界で二番目の産油量を誇る国なのに、何もありません。狂っています」と教師は語った。すでに学校が再開されたが、25%の子供がいまだに学校に通えずにいる。


配水・汚水処理システムの破壊にともなう危機的現状 (記事紹介)
Million of people in Iraq at the risk as water and sewage system crumble より(抄訳と若干の補足)
ELECTRONICIRAQ.NET 20 May 2003 NEWS & ANALYSIS
http://electroniciraq.net/news/815.shtml

・国際的な人道援助団体であるCAREは、大規模な公衆衛生危機を回避するためにも、イラク中央水道機関(Iraqi Central Water Authority)が即座に再建される必要があるとの声明を出した。
・「配水と汚水処理システムは破壊されている」、「多くの人々が、安全な飲み水を入手する事ができないでいる。また人間活動から出る汚水は、バグダットの多くの箇所の排水管からあふれている。猛暑がまもなくやってくる。その時の気温は43℃を越えるだろう。そのような状況は、コレラや腸チフスのような伝染性の疫病のレシピのようなものだ」とバグダットの水問題専門家のCAREの担当者は述べている。
・水問題をめぐる事情は複雑である。イラクでは、水を管理する部門は集権化されていた。その中央の機能が喪失している。この間の経済制裁により施設全体が老朽化しており、簡単にシステムを再構築できるものではない。また戦争によってずたずたにされた給水網、排水網の再構築には、巨大な労力と時間を要する。「私たちは、どのようにすれば水の供給が可能となるのか、とても心を痛める。・・・・イラクの水の供給と汚水処理施設は、長期にわたる抜本的な補修と分散的な異なるモデルが必要となるであろう。しかしこの危機的な局面においてイラクには、猶予も、新たなモデルを確立する経験もない。イラクの人々は、汚染された飲料水と併せて、街路にあふれる汚水にこれからも対応していかなければならない」とCAREのイラク担当者は述べている。


薬の不足、医療危機の現状 (記事紹介)
・満足な治療を受けられず、薬が不足といった深刻な医療状況がイラクを覆っている。また医師不足も甚だしく、病院には治療を受けることのできない患者であふれている。

Iraq's medical emergency 10 May 2003 (BBC NEWS)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/3014871.stm



●5月22日(64日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


米軍と住民との緊張は高まっている。 http://www.middle-east-online.com から
○ファルージャで虐殺事件 2人の民間人が犠牲
・21日の水曜日、ファルージャにて民間人が殺害される事件が発生。先月、米軍の発砲による多くの犠牲者に続き、米軍の発砲によってまた新たに2人の民間人が犠牲となった。犠牲者の1人は、事件当日に、結婚式を控えていた。
・夜間、米軍の装甲兵員輸送車に向けて対戦車ロケットが打ち込まれたという。この地点には米軍の検問所があったとの情報もある。これに対して米軍は、街の中心に向けて戦車から銃を打ちまくり、まったく関係のない市民2人が殺害された。見境のない米軍の銃撃の様子をマスコミは、「派手な銃撃、乱射(shooting spree)」と報じている。今回の事件も同様に、米軍の無差別な虐殺である。乱射によって多くの民間人が巻き込まれることを、米軍は理解していたはずだ。周辺がすべて敵に見え、パニック状態だったのかもしれない。しかしそれは当たり前のことである。彼らは、不当にイラクに居座る占領軍であり、イラクの人々にとって怨嗟の対象なのだから。特にファルージャでは、多くの住民が虐殺され、怒りを買っているのだから。
・通行人の証言によると、攻撃を受けた米軍は、街の中心に向けてランダムに発砲を繰り返し、現場から約300ヤード(約270m)離れた移動中の小型トラックの2人の乗客が犠牲になった。「米軍は狂乱状態になっていた。奴らは、あらゆる所に打ち込んだ」と他の目撃者は語っている。また付近の商店にも被害が出ている。
・ファルージでは先月末の虐殺事件以降、住民と米軍は緊張関係にある。米軍は主要な工業地から撤退することを余儀なくされた。しかしパトロールの最中の銃撃戦は、いまだに発生しているという。不当な占領を続ける米軍がイラクから出て行く以外に、民間人犠牲者をなくすことはできないであろう。


※U.S. Troops on Shooting Spree After Attack in Iraq   22 May 2003
 http://reuters.com/newsArticle.jhtml?type=topNews&storyID=2790964
※US troops kill two Iraqis in Fallujah 22 May 2003
 http://www.middle-east-online.com/english/?id=5664



●5月20日(62日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○イラク全土で悪化する治安−社会的混乱を生み出した米の戦争犯罪  
・紹介する記事は、今なお回復しないバグダットの治安状態を指摘した記事である。戦闘が終了してはや1ヶ月が経過しようとしているが、いまだにバグダットの治安は回復していない。むしろますます悪化する傾向にあることが記事の中で指摘されている。特に銃による殺害が顕著に増えているという。ある病院では戦争以前、銃による負傷者は一日に一人程度であったのが、この25日間に245人の負傷者が担ぎ込まれ、その中の9割が銃による犠牲者だという。また治安の悪化によって、夜間の外出にも大きな危険がともなうという。以前紹介した白血病の子供を抱える家族の話の中では、家族を武装集団から守っている唯一の男手である父親が家を空けることができず、子供を遠方の専門病院に通わせることができないことが問題にされていた。
・イラクの治安悪化はなぜ、どのようにして引き起こされたのか。記事の中では、治安維持に力を割くことのできない無謀なイラク占領計画が批判されている。イラク戦争全般を支配していた無計画性、冒険主義が、占領政策においても同じように当てはまるのである。しかし今日の混乱は、それだけでは語れない。決定的に重要なのは、イラク全土の無秩序状態を米軍は自らが演出し、そして支配のための手段として利用しているのではないかという点である。バグダット陥落の象徴=倒されるフセイン像の映像は、実は米軍の演出であったことが暴かれた。同じように、イラクの無秩序状態を、米軍は扇動したのである。この点については、バグダットでの多くの目撃証言がある。米軍が略奪をそそのかした場面を目撃した、「人間の盾」としてイラクに入ったスウェーデン人の証言には驚かされる。米軍は、自治体行政府ビルを警備していたスーダン人2人を撃ち殺し、周辺の住民に略奪を呼びかけたという(ダゲン・ニエター紙(スウェーデン)4月11日,“バグダッド略奪は、米軍が引き起こした”)。この事件をきっかけに、首都、イラク全土で一気に略奪が始まったという。イラクを支配している無秩序状態は米が演出したものであり、それを鎮める統治者として、絶対的な権力を行使しているのである。この米のやり口は、戦争犯罪である。略奪、無秩序状態下における犠牲者は、米による虐殺である。

*ダゲン・ニエター紙(スウェーデン) 4月11日,“バグダッド略奪は、米軍が引き起こした”は、次のサイトで見ることができます。http://truthout.org/docs_03/041603D.shtml
日本語訳はhttp://www.egroups.co.jp/message/TUP-Bulletin/41に掲載されています。このサイトは、「週間金曜日」5月9日号の中の“「解放」映像をデッチあげた米軍の手口−−ヤラセの「銅像引き倒し」と略奪扇動の背景”(星川淳氏)の記事に紹介されています。


記事紹介
Independent紙 16 May 2003
バグダットは戦後の代償を支払い続ける: 3週間で242人が死亡
Baghdad pays the postwar price: 242 die in three weeks
By Phil Reeves in Baghdad
http://news.independent.co.uk/world/middle_east/story.jsp?story=406657


現在まで公表されていない統計は、明確な事実を明らかにしている。バグダットでは、このわずか3週間に242人が殺された。そのほとんどが、銃弾による負傷であった。これは伝染病のようなものであり、事態はますます悪くなっている。

しかし市街の病院での深夜の光景は、戦後の代償についての真の物語を伝えている。イラクの首都は、街路を安全にする義務に従った活動に対する占領軍の怠慢の代償を支払い続けているのである。

昨日の午前3時20分、ハイダー・カセムさんの友人は、瀕死の彼を車の後部シートに押し込んだ。打たれたアザラシのように、もがき苦しみ、血を噴き出している屈強な若者が90分前に担ぎ込まれた際、アル・キンディ病院の救急病棟の医師たちは、胸部にあった4発の銃弾による傷の処置に全力を尽くした。医師たちは、20分程離れている心臓・胸部の病院での専門家による緊急治療が必要であると判断した。アル・キンディの唯一1台だけ残されている救急車の運転手は、−その他の3台は盗まれたり、略奪されたりした−すでに消え去っていた。そのために、重態のカサムさんは、おんぼろで、サビだらけのオレンジ色のモスコビッチ408に押し込まれた。友人は後部の窓から静脈点滴を支えた。サラ・ファヤクさんが座るフロントシートには、彼の頭部が、同じ銃撃時に負った傷口の血を止めている包帯のターバンにくるまれていた。

このように、ひどい傷を負ったり、負傷した者たちは、夜間外出禁止時間であり、時々起こる発砲の響く街となったバグダットの野蛮な街路へと、人命を救助すために乗り込むのである。

50分前−同様なことがあった。三人目の犠牲者であるモハメド・タハブさんは、白い旧タイプの自動車カトラスの後部に押し込められた。彼の目は、頭部を貫通した銃弾によってプラムのように腫れ上がり、緑のイラクのオリンピック用の陸上スーツは、大きな血のしみに覆われていた。「彼がそのようなことを引き起こしたとは、私にはとうてい思えない」。車の窓の外から手で点滴の上を支える一方で、病院の入り口をカードしている米軍兵士の横を乗用車が離れるのを見やりながら、アル・キンディの研修医であるレバー・ノウリ医師はこう言った。

驚くことには、二人とも昨日の午後にはまだ生存していた。医師たちは、タハブさんは脳損傷を受けていたが、かろうじて生命を維持していた、と述べた。カサムさん容態は安定している。

彼らが銃撃された正確な状況を明らかにすることは不可能である。彼らの親類は、(銃撃したのが)米軍兵士であると主張していたが、このことは確証されていない。今では、このような場面は、ここでは普通のことになってしまった。

242人が過去25日間に殺害され、その中の10人の内9人は銃撃されたことによるものである、と市の遺体安置所の管理責任者であるファーク・アミン・バクル医師は語った。バグダット侵攻以前では、銃撃による負傷を原因とする死者は一日一人平均であった、と彼は語った。

サダムの時代からの略奪者と定住者との間の争いはそのまま続いており、治安の真空状態のためにむしろ煽られている。それは、最小限の部隊数でイラク侵攻と占領を目指す−例えば二つの師団、短期間で−、といったドナルド・ラムズフェルド国防長官による決定にその原因は帰せられる。同盟軍の復興チーム内部の、事情を熟知している情報源はそのように伝えている。

またそれらは、十分な数のバグダット警察の機能を、同盟軍が回復させることができなかったことの思わぬ副産物であった。すでに復帰したイラクの警官の大半は、今ようやく警察署から出ようとしているのである。

また殺人の数はますます増えている。過去10日間における銃弾による負傷を原因とした死亡者124人という数は、その前の10日間よりも60%も増えている。

アル・キンディ病院には、昨日の朝からのこの24時間以内に、13人が銃弾による負傷によって担ぎ込まれてきた。彼らの総合された物語は、バグダットの今を多く伝えている。弟に撃たれた18歳少女がいた。明らかに彼は、武器売買をしている父親から武器を与えられていた。彼女は病院で死亡した。6歳の少年。治療した医師によると、家の前に立っていた間に、少年は銃で撃たれた。「血であふれた胸部」を抱え、彼は病院に到着した。ナジム・ザイダンさんは脚を撃たれた。親類が医師に語ったところでは、弟を殺したバース党員の父に対する復讐であった。28歳のハミッド・ターキさんは臀部の骨を砕かれた。部族間の争いで発砲を受け、ここにやって来た。まだまだこのリストは続く。

ヘンリー・キッシンジャーの子分であるポール・“ジェリー”・ブレマー氏を、ワシントンが問題解決のために派遣したことは、困惑すべきことである。イラクの文民行政官に取って代わったこの人物は、ジェイ・ガーナー氏とは違い、イラクにおける同盟軍の行政すべてにわたって最高の権限が与えられている。

昨日のバグダットでの最初の記者会見では、ブレマー氏は、強気のように思われた。犯罪容疑の300人は今週、再開されるイラクの監獄に送り込まれる−水曜日だけで92人である。首都の「深刻な法と秩序の問題」は、最も優先度の高いものである、と彼は語った。昨年の10月、10万人もの収容者がサダム・フセインによってイラク監獄から放されたことに彼は言及した。「このような連中が、再び監獄に収監される時である」と語った。

このようなサダム時代の司法システムへの奇妙な是認は、人権と市民権の活動家たちをブレマー氏に慕わせることにならないだろう。異議をとなえることがなさそうなのは、死に物狂いの医師たちである。医師たちは、遺体安置室において数百人以上の人々が最後を迎える前になされなければならない対策を求めている。



●5月16日(58日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

・サッカーのプロリーグ再開が、イラクの市民生活が平時に戻りつつある象徴として報じられている。しかし傷ついたイラクの人々は、戦争を過去のこととして片づけられるのか。今なお、クラスター爆弾の不発弾で子供たちが死んでいる。人道的な危機は継続している。米・英軍が放った劣化ウランは、そのままイラクに残されたままである。人々は劣化ウラン弾のすぐそばで生活している。
・紹介する記事は、“San Francisco Chronicle”紙に掲載された、米軍のクラスター爆弾を批判した記事である。“Iraq Body Count”の米軍発表批判−クラスター爆弾の犠牲者はわずか1人のみである−と同じように米軍発表に疑義をとなえるとともに、ベルギーにおける訴訟を大きく取り上げている。有名紙である“San Francisco Chronicle”紙がこの問題を報道していることから、米国内の一部からも、クラスター爆弾による民間人犠牲者を問題しようとする動きがあると思われる。
・クラスター爆弾をめぐる問題は、米軍の戦争犯罪をめぐる一つの中心的な課題となっている。クラスター爆弾の犠牲者たちが、ベルギーの裁判所に提訴した。クラスター爆弾の問題は、その使用と犠牲者とを結びつける物的証拠が数多く残されている。それだけに、イラクの人々を愚弄した米の態度は、イラクの人々のみならず、世界の平和を願う人々、良識ある人々の怒りを巻き起こさずにはおかないであろう。私たちもこの問題におおいに注目していきたい。


○クラスター爆弾による犠牲者  世界から沸き起こる米軍批判の声 
記事紹介

San Francisco Chronicle
Thursday, May 15, 2003
(Colorado Campaign for Middle East Peace http://www.ccmep.org/ より)

イラクにおけるクラスター爆弾の使用で非難にさらされるアメリカ
U.S. under fire for use of cluster bombs in Iraq
http://www.ccmep.org/2003_articles/Iraq/051503_us_under_fire.htm

 イラクにおける戦争が終わったからには、米軍は、民間人犠牲者を最小にするあらゆる対策を尽くすとの約束を守るためにも、何千発にものぼるクラスター爆弾の不発弾を即座に撤去しなければならない。人権団体はこのように要求している。

 この殺戮兵器による犠牲者数の評価はまちまちである。統合参謀本部のリチャード・マイヤーズ議長は、3週間の戦争の間にクラスター爆弾はわずか一人の命を奪ったにすぎないと述べた。別の評価は、200人近い数を上げている。

 ニューヨークにある世界政策研究所の武器資源取引センターの軍事専門家ウィリアム・ハートゥング氏は、ペンタゴンのクラスター爆弾の使用は、「彼らがどのように戦争を闘っているかについてのレトリック−−最小の民間人犠牲者によるクリーンな戦争−と正反対のものである」と述べている。

 100ポンドのクラスター爆弾の中には、200〜300個の“子爆弾”−それを詰めたキャニスターはフットボール場数面分のエリアに無数の破片をまき散らす−が入っている。

 マイヤーズ議長によると、米軍機はイラクに1500発のクラスター爆弾を投下し、その中の26発を民間人居住区から1500フィート以内に落とした。英国防大臣は、英陸軍は砲撃あるいはロケット砲によって2000発のクラスター兵器を使用し、バスラ周辺に66発のクラスター爆弾を落としたと述べた。

 報道によれば米軍部隊は、バグダット近郊のドーラ地区から、約600発の不発子爆弾を撤去した。しかし不発のクラスター爆弾はいまだに、ナジャフのような諸都市のいたるところに散乱しており、その存在は米占領軍に対するイラク人の憤慨のもう一つの原因になっている。

 ペンタゴンのスポークスマンであるジェイ・ステューク空軍少佐は、クラスター爆弾は、飛行場、戦車、敵の輸送車を破壊するのに特に効果的であるために、使用されたと述べている。さらに彼は、子爆弾は、当たった瞬間に爆破しそこなうのはそのときの5〜20%であり、他の多くの爆弾よりも小さな物理的破壊しか引き起こさないと付け加えた。

「国防省は、いかなる兵器システムの使用にも注意深く考慮している」とステューク空軍少佐は述べた。「使用中も使用後も、不要な民間人の死者を出そうとの意図はまったくない」と。

 しかしながらイラクにおけるクラスター爆弾の使用は、水曜日にベルギーの裁判所に提訴された訴訟に登場する。それは、トミー・フランクス米司令官と海兵隊の将校であるブライアン・P・マッコイを戦争犯罪で告発する訴訟である。

 ベルギー人弁護士のジャン・ファーモン氏は、自分は米軍兵器による民間人犠牲者である17人のイラク人と2人のヨルダン人の代理人であり、そのうちの4人がクラスター爆弾による負傷者であると述べている。この訴訟は、他に例のない1993年のベルギー法によって可能となった。それは、被告人の国籍にかかわりなく、戦争犯罪、ジェノサイド、人道に対する犯罪に対して、普遍的な裁判権を主張している。

 e-mailでのインタビューにおいてファーモン弁護士は、クラスター爆弾を明確に禁止する法律は存在しないが、「民間人居住区における深刻な被害と犠牲を生み出す兵器の使用は、国際的人道的権利に反するものである。私は、この批判がクラスター爆弾の全面的な禁止につながることを望んでいる」と述べている。

 国務省は、その訴訟を政治的いやがらせだとして退けた。

 「ベルギー政府は、政治的目的のために法システムを濫用することを防ぐために取り計らうよう努力することが求められている」と国務省のリチャード・バウチャー氏は先月に述べた。

 しかしクラスター爆弾の使用−−それは破片によって脾臓を破裂させ、衝撃によって腸を吹き飛ばすことができる−−は、長い間論争になっている。

 コソボ紛争後、米・英・オランダ軍の戦闘機が1765発ものクラスター爆弾を投下した後、赤十字は、その兵器を禁止する新たな国際法を提案した。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、1991年の湾岸戦争後、推定120万発ものクラスター爆弾の不発弾によって1600人を超えるクウェートとイラクの民間人が殺され、2500人が負傷した。その中には、80人の米軍兵士も含まれている。

 1999年のNATO軍による78日におよぶコソボ空爆に関する調査で、赤十字国際委員会は、戦闘終了の翌年に、クラスター爆弾によって50人が殺され、101人が負傷したことを見出した。そのレポートによるとまた、NATO軍のクラスター爆弾によって殺されたり、負傷したらしい子供たちは、セルビア軍の地雷によるものの5倍にのぼる。

 アフガニスタンでは、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、米軍のグラスター爆弾が127人の民間人を殺し、負傷させたと推定している。

 批判者たちが言うには、イラクにおけるクラスター爆弾の死者に関するマイヤーズの見積もりは、地上から発射されたクラスター兵器を除外している。イラクでは、この地上発射クラスター兵器は、空から投下されたものよりも大量に使用されたと伝えられている。多連装ロケットランチャーは、一度に12個のクラスター爆弾を発射できる。それぞれが644個の子爆弾を抱えている。

 「ある夜、クラスター爆弾による35人の死者を受け入れた」と、ナジャフ教育研究病院の管理責任者であるサファール・アマイディ医師は先月、ロイター通信に語った。

 西側の報道機関の説明によると、4月7日、ラシード・マジドさんと彼の3人の息子たちはバグダットで不発の子爆弾を拾って亡くなった。




●5月14日(56日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○米の戦争犯罪が裁かれる!
・イラク侵攻作戦の最高指揮官=フランクス司令官が戦争犯罪の罪で裁判にかけられることになった。この訴訟に大いに注目したい。この裁判は、米軍の戦争犯罪の告発に向けての、大きな一歩を切り開くことになるかもしれない。
・ベルギーの裁判所に告訴したのは、17人のイラク人と2人のヨルダン人である。ヨルダン人の2人は、戦争で犠牲となったアルジャジーラの記者の身内である。どのような団体が訴訟を支援しているのか等、今後明らかになるであろう。訴訟内容は、非人道的殺戮を繰り返した米軍と、その戦闘を指揮したフランクス司令官を告発している。クラスター爆弾の使用にともなう民間人の殺戮も含まれている。フランクス司令官が作戦の最高責任者として裁かれるのは当然のことである。しかしフランクス司令官の犯罪の弾劾は、同時にこの戦争の責任者であるラムズフェルド長官とブッシュ大統領の戦争犯罪の追及でもある。
・93年に成立したベルギーの「人道法」では、戦争犯罪を人道法違反として、ベルギー国内法で裁くことができる。しかし、紹介した下記のBBCの記事に書かれているように、原告の資格を3年以上ベルギーに住む者に制限するほか、被告が在住するなど、また訴訟に関係する国が民主的な司法制度を持たない場合に限定される等、法律はその後に改定された。それによって今回の訴訟の行方がどうなるのか、今のところ不明な点が多い。しかし、イラク戦争における米軍の戦争犯罪が公の場にさらされる意義は大きい。例え裁判にかけられないとしても。“Iraq Body Count”が暴き出した米軍の戦争犯罪の数々(例えば前回紹介したクラスター爆弾による民間人犠牲者の評価等)が、再び大きな注目を浴びることになるであろう。



フランクス米軍司令官 「戦争犯罪」で提訴される
US general 'war crimes' case filed
BBC NEWS  14 May 2003
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/3026371.stm

 イラク戦争の米軍司令官を戦争犯罪で告発する訴訟が、ベルギーの法廷に提訴された。しかしその訴訟は、ベルギー政府から即刻攻撃を受けている。

 ルイス・ミッシェル外務大臣は、その行動を「法の濫用」であると述べ、ブリュッセルは「米国を裁く権利」を持たないと付け加えた。前米統合参謀本部議長リチャード・マイヤーズは、このような状況は米政府によって「たいへん深刻に」考慮されていると述べ、さらにブリュッセルにおけるNATO本部での会議への米高官の参加を中止させるかもしれないと語った。

 大半がイラク人からなる告訴人は、ベルギーの「普遍的権利」(universal competence)法に基づき、トミー・フランクス司令官を提訴した。その法律は、申し立てされた犯罪の場所にかかわりなく、告発に持ち込むことができることを認めるものである。

改定された法律
 この訴訟では、米軍部隊が救急車と民間人に発砲したことが非難されている事件はもちろん、イラクにおける米軍のクラスター爆弾の犠牲者の申し立ても関係している、とジャン・ファーモン弁護士は述べている。この訴訟が成功することはあり得ないとみられている。「普遍的権利」法が制限されない限り、国際的なハブとしてのベルギーの機能に影響が及ぶことになりかねないことを、既にワシントンは警告した。フランク司令官の告訴は、イスラエル首相アリエル・シャロンと元大統領ジョージ・ブッシュ父に対する注目を集めている訴訟を受けて行われた数年前の法改定のテストのようなものである。今では裁判官は、それがベルギー国民によって起こされたものでなければ、戦争犯罪の訴訟を他国に引き渡すことも、あるいは拒絶することもできる。

“メディア・スタント”
 最新の訴訟における告訴人は、17人のイラク人と2人のヨルダン人である。ヨルダン人の2人は、アラブ系放送局アルジャジーラのヨルダン人の特派員であったタレク・アユブ記者の未亡人と父親である。彼は4月8日、米軍戦車がバグダットのホテルを砲撃した時に殺された。

 ファーモン弁護士は、レポーターに次のように語っている。「フランク司令官は最高指揮官として、地上戦で彼の部下がとった行動に対して責任を負っている。例えば、民間人地域におけるクラスター爆弾の使用は戦争犯罪です」と。訴訟はまた、狙撃兵が隠れているとの疑いで救急車を「合法的な標的」としたことで非難されている海兵隊中佐であるブライアン・マッコイを告発している、とAFPは伝えている。

 しかしながら、ルーフェン大学における国際法学科の指導教官であるジャン・ウォータズ教授は、訴訟は、「メディアの注目を集める、大いに目立つものとなりうる」と述べている。
以上

○ラムズフェルド長官 新型ミサイルの実戦使用を認める
・イラク戦争において、「熱圧で人間のみを殺傷する」ことのできる新兵器=ヘリ発射型空対地ミサイル「ヘルファイアー」(地獄の業火)を使用したことを、ラムズフェルド長官は上院歳出委員会で認めた。このミサイルは、建物や、洞窟を破壊せずに、そこに潜む人々を熱風と衝撃波で殺傷する。文字通りの、無差別・大量殺戮兵器である。
・この兵器によって、イラク兵、そして多くの民間人も殺害されたことであろう。このような無差別・大量殺戮兵器の使用を自慢げに語るラムズフェルドは、まさに殺人鬼である。米軍、ラムズフェルド長官の戦争責任は、決して免罪されないであろう。

※米国防長官「新型ミサイル使った」 15 May 2003 毎日新聞 夕刊


●4月15日〜5月10日

●3月20日〜4月14日