イラク戦争被害の記録
被害報道日誌(4月15日〜5月10日)
●5月10日(52日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○クラスター爆弾による犠牲者
・私たちだけではなく、世界の反戦運動が注目してきたサイト“IRAQ BODY COUNT”は、クラスター爆弾による犠牲者数を発表した。“HOW MANY CIVILIANS WERE KILLED BY CLUSTER BOMBS?−The Pentagon says 1: Iraq Body Count says at least 200”。
・この発表内容は極めて重大な意義を持っている。米軍はクラスター爆弾の使用を認めながらも、驚くことに、それによる犠牲者は1人であると発表した。このようなデマを公然と垂れ流し、自らの戦争責任を一切認めない、これが米軍のやり方である。“IRAQ BODY COUNT”は、複数の確かな報道情報から、クラスター爆弾の被害を算出した。その結果は、最低でも200人、多い場合では372人にものぼるというものである。1人対372人。この歴然とした差は、米・英軍による戦争犯罪の追及において重大な意味を持つ。米軍の嘘は、暴かれなければならない。そして米軍はイラクの人々に、世界に謝罪せねばならない。徹底して断罪されなければならない。世界のメディアは、“IRAQ BODY COUNT”の発表を報じた。例えばガーディアン紙は、「クラスター爆弾の死者に関して、ペンタゴンが異議を申し立てられる(Pentagon challenged over cluster bomb death)」との見出しで、“IRAQ BODY COUNT”の発表を取り上げた。
・米軍の戦争犯罪を追及する手を緩めてはならない。デマを垂れ流す米軍を追及し、そして戦争犯罪を認めさせること。このことは、将来の侵略を阻止することでもある。
記事紹介 「クラスター爆弾によって、どれだけの民間人が殺されたのか。」
この記事を紹介している他のサイト
※Pentagon challenged over cluster bomb death (The Gaurdian) 7 May 2003
http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,951942,00.html
※More than 200 civilians killed by claster bombs (ELECTRONICIRAQ.NET) 7 May 2003
http://electroniciraq.net/news/776.shtml
●5月8日(50日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○異なる形態による虐殺 南部イラクでコレラ発生
・前回の被害記録では、飲み水の汚染よる疫病、コレラの拡大が懸念されているイラク南部の実状に関する記事を紹介した。米・英軍によるインフラの破壊=生存条件の破壊にともなう犠牲者が、猛暑の夏を前に、爆発的に拡大することが懸念され始めている。否、今回の紹介する記事の中にもあるように、既に、コレラに感染した疑いをもたれている患者が発生した。そして、コレラの爆発的拡大の戸口に今立たされているのではないか、このような深刻な懸念が沸き起こっている。
・イラク南部のバスラの人口は150万人。その内、抵抗力の弱い幼い子供は数十万人近くを占めるであろう。まず第一には、彼らの命が懸念される。大人への影響も懸念されるであろう。また、バスラ以外の南部の都市ではどうなのか。インフラ、特に水道と汚水処理システムが破壊されてしまったイラクでは、医療体制が未だ再建途上にあるイラクでは、この問題は人々の生死にかかわる重大な問題である。
・繰り返しになるが、私たちは、疫病、コレラ感染によって死に至るイラクの人々も戦争犠牲者であると考える。そして、米・英軍による、ミサイル、爆弾、また彼らに先導された略奪の結果にともなうものとは異なる、別の形態の“虐殺”行為であると考える。私たちも可能な限り、この面における犠牲者も米・英の戦争犯罪として記録していきたい。
・戦争は「終結」し、マスメディアの多くは、イラクの戦後復興に関心をシフトさせている。民間人の犠牲に関する現地の報道は、大きな事件があれば別ではあるが、取り上げられるスペースは以前と比較して格段に少なくなった。そのような中にあっても、人道援助の中心をなす国連関係筋からの情報は、現地の情勢を知る上で貴重なものである。国連 の"Department of Humanitarian Affairs (DHA)" のサイトである“ReliefWeb”には、イラクにおける人道的危機に関する情報が掲載されている。今回の情報も、ReliefWebに掲載されたWHOとAFP(フランス系通信社)の記事である。またそのサイトには、“Iraq crisis daily update ”と題する世界食料計画(WFP)からのイラク関連の情報が、ほぼ毎日更新され掲載されている。深刻化するであろう、イラクにおける人道的危機の現状をリアルに把握するためにも、このサイトに注目していきたい。またご参照下さい。“ReliefWeb−Serving the information needs of humanitarian relief community ”(http://www.reliefweb.int/w/rwb.nsf)
WHO(世界保健機構)からのレポート
“疫病の拡大が報告されている:イラク南部におけるコレラ問題”
・イラク南部のバスラ市内の二つの病院において4月28日以降、急性の水様性下痢の症状を示している17症例が報告されている。バスラでの初期的な確認試験によると、コレラがもっとも疑わしいということである。さらなる抗原反応による実験室における確認検査が準備されている。
・この分野におけるWHOのスタッフは、監視システムをすでに作り上げている。彼らは現在、その他の病院における下痢の症状の監視を指導しており、必要な装置を利用した管理を実施している拡大対策委員会を設立した。
・現在の安全体制と人々に供給される安全な水の復興が困難な局面を前に、広範なコレラ感染が懸念されている。
※Disease outbreak reported: Cholera in Iraq
Source: World Health Organization (WHO)
Date: 8 May 2003
http://www.reliefweb.int/w/rwb.nsf/480fa8736b88bbc3c12564f6004c8ad5/fc22a3cf86b5a4eb85256d20006451dd?OpenDocument
“コレラ問題 WHOとICRDはバスラにおいてイラク保健担当者と会談予定”
・イラクの保健担当者は火曜日、WHOと赤十字国際委員会とバスラで会談する予定である。南部イラクにおけるコレラの感染の懸念について討論される。
・「現状把握を行うことを目的に、ワーキング・グループが設置されるであろう」とバスラにおける国連のスポークスマンは発表した。「目的は、汚染源の特定を一致させること、即座に消毒せねばならない水の所在を明らかにすることである」。バスラ一帯では、コレラは“風土病”である。
・南部イラクでは、すでにコレラが確認されている。二つの病院では、17症例がコレラと認定されている。そして水を介した伝染性の疾病が拡大する危険性が指摘されている。
・普通のことではあるがシャトル・アラブ川の水路から汚染された水を飲んだり、150万人の人口を抱える大都会においてゴミが収集されてされていない事態は、疫病拡大の背景であるとWHOは指摘している。
・治療が行われなければ、コレラは死に至る病である。WHOはコレラに対応する十分な治療薬を保有している。しかし現在の危急を要する状況は、この疫病を広範に伝染させるかもしれない。
※WHO, ICRC to meet with Iraqi health officials in Basra on cholera
Source: Agence France-Presse (AFP)
Date: 8 May 2003
http://wwww.reliefweb.int/w/rwb.nsf/480fa8736b88bbc3c12564f6004c8ad5/d2a37fd137028de2c1256d20003c0da2?OpenDocument
●5月6日(48日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○異なる形態による虐殺 インフラの破壊と幼い生命の生存条件の破壊
・戦闘は確かに終了したのかもしれない。しかし、多くの幼い命が今なお危険にさらされている。インフラの破壊にともなう生存条件の破壊の問題もその一つである。赤痢、コレラによって抵抗力の弱い子供たちの命が奪われているのである。たしかに彼らの犠牲は、米・英軍の直接的な攻撃によるものではない。しかし、戦争による生存条件の破壊といった今日の事態は、まさに米・英軍が引き起こしたものである。彼らにこそ、その責任がある。湾岸戦争後の経済制裁下で数多くの人々が殺されたが、今回の戦争によるインフラの破壊が引き起こす深刻なダメージもまた、多くの人々の犠牲を引き起こした重大事として、後々まで記憶されることになるのではないか。数百万人の命を奪った米・英の戦争犯罪として。
・安全な飲料水の確保の問題が最も重要である。電気が復興したとしても、安全な飲料水の供給、下水道の再整備には大変な労力と時間がかかる。あらゆる配管が、破壊されているからである。夏を前にして、赤痢、下痢、コレラ、伝染病によって多くの犠牲者が出ることが予測されている。米・英は、インフラの復興に、無条件に、即座に取り組まなければならない。しかし後に紹介した国連の危惧の一つとして、その面における米・英の取り組みの遅れが指摘されている。それはイラクの多くの人々を緩慢な死にまねくことであり、事態を引き起こした者として許せる態度ではない。
・ここでは、インフラの破壊と人道的危機を問題にした三つの記事を紹介したい。
国連 イラクの現状について危惧を表明
・国連は、イラクにおける人道的危機の現状について、次の内容を表明した。
@戦争以前には、約4%の人々が重大な栄養失調の状態にあった。しかし今は、三分の二にあたるイラク人は食料援助に完全に依存している。その内の40%が栄養失調の状態にある。A多くの人々が不適切な水を飲んでいる。そのことによって特に南部では、伝染病を引き起こしかねない。しかし電気は供給されておらず、病院は略奪され、薬と施設は十分ではない。B独自の統治(=占領)を進める米との役割分担が明確になされておらず、国連の人道援助は立ち後れている。米軍は、国連の政治分野への介入を極度に嫌がっている。
・国連イラク派遣団の代表はこの間、イラクにおいて人道的危機は未だに終わっていないことを幾度も強調している。「私たちは未だに危機を脱していない。人道的危機の改善のための業務は、未だに残されている」。(ロマリオ・ロペス・ダ・シルバ国連事務局)。「基礎的なサービスは破壊されている。・・・・・未だに人道的危機の状況にある」。「並行して人道援助が行われていたコソボやアフガニスタンとは違う。そこでは国連は、広範な指揮権を持っていたが、(イラクでは)まったく曖昧な状況だ」。
※Iraq still ripe for hummanitarian disaster 3 May 2003 (Middle East Online)
http://www.middle-east-online.com/english/?id=5411
ユニセフ 飲料水消毒のための塩素ガスの緊急輸入を要請
・ユニセフは、イラクの飲料水を消毒するための、数百トンの塩素ガスとそれによって処理された飲料水を供給することを米・英軍に対して要請した。「消毒をしなかったら、数百万人のイラク人は水を媒介とした疫病の感染に直面するだろう」と警告している。
・特に南部では、早急な消毒が必要である。水の問題は、コレラ、赤痢、下痢の爆発的な拡大を引き起こす。ナシリア、バスラ、ズバイヤ、サフワンが問題となる。
・3百万ドルの塩素ガスがあれば、今後三ヶ月間、飲料水を消毒できる。
・脱水症状と栄養失調を加速する下痢、気管支の疾患は、5歳以下の子供の死亡原因の70%を占める。ユニセフは同盟軍に対して、早急に塩素消毒した水を供給するように要請した。
・イラクでは、わずかな割合の汚水しか処理されていない。そのまま処理されずに、チグリス川、あるいはユーフラテス川に流されている。排水処理はイラクにとって不可欠なのである。
※Iraq faces water pollution threat 29 April 2003 (BBC NEWS)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2986287.stm
南部、特にナシリアの状況 (BBC NEWS)
・戦争による破壊は、死のサイクルをとらえた。電気はなく、水を汲み上げることができない。一部では地下配管が破れており、配管システムに汚水が混入している。コレラの大爆発が現実的な問題となっている。
・ナシリアでは、戦争が始まって三日目で電力がストップした。ナシリアのインフラは空爆によって破壊された。電力のストップは汚水汲み上げを停止させ、50万人の人々は汚れた人間の排泄物の上で生活しているのである。ある所では、すでに路上にまであふれ出しているのである。においをかぐこともできないほど、汚物が路上にあふれている。
・いまや汚水は、水道の配管にあいた穴を通して、入り込んでいる。たとえ電力が復旧下としても、死に至るバクテリアをばらまくことになるのである。
・夏が近づき温度が上昇するにしたがい、ナシリアではコレラの伝染が懸念される。きれいな水は、その欠乏は、ナシリアではどの問題よりも重要である。
・医療従事者によると、治療を求める患者の内80%が、水を介しての伝染病によるものであるという。ナシリアのアブダル・アル・シャドゥード医師によると、彼の病院には、一日に22人の胃腸に問題を抱える患者が来る。戦争前は、1人あるいは2人であったという。「子供の場合、診察に訪れなかったり、治療を受けなければ、死んでしまいますよ」と医師は語っている。病気が若い命を奪っていると彼は語った。その他の問題は、医薬品不足によって簡単な病気すら直せないこと。すでにストックがないのである。
・「イラク南部では、コレラはこの地方の風土病です。しかし夏にむけて、コレラの伝染の重大な危険性がある。それは人々の中に広がり、何千人もの人々の命を奪うことになるでしょう」、「現在の問題は、汚水が水に混入し汚染されていることなのです。」(アイルランドの援助団体)
※Not a drop that's safe to drink 23 April 2003 (BBC NEWS)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2969283.stm
●5月4日(46日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○ファルージャの虐殺事件 続報
・虐殺事件の真相がますます明らかにされるとともに、ファルージャにおける住民の怒りは頂点に達している。第82空挺部隊の駐留地の前には、アラビア語と英語による米軍への怒りの横断幕が掲げられている。「我々の街から出て行け! 拒むならば、我々はお前たちを追い出すぞ。 お前たちは自由にためではなく、石油のためにここに来ているのだから」、「殺人者の米よ。 まもなくお前たちを追い出すぞ!」。
・学校に押し寄せた200人の群集。そのほとんどが子供と若者だったことが明らかになっている。犠牲者の大半が子供だったことも明らかになっている。そして事件後の米軍発表がさらに住民の怒りをかき立てている。「25人の武装した市民が、200人のデモ隊の中に散らばっていたり、隣接する家屋の屋上に陣取っていた。まさに銃撃戦が行われた」(米中央軍発表)。また米軍は、無辜の群集に銃弾を発射した米軍兵士を明確にすることを拒否している。
・虐殺事件当日の状況が、さらに明らかになっている。@周辺では空に向けての射撃があった。空に向けた射撃は普通のことであり、火曜日のファルージャでの抗議デモは、サダム・フセインの誕生日と重なっていた。Aしかし午後9時過ぎ、学校を占拠する米軍に対して立ち去るように求め押し掛けた少年と若者からなる群集の近くでは、一切銃撃はなかった。B学校においていかなる射撃も群集からなかった。群集は、サダム・フセインの肖像一枚を掲げ、投石はあったかもしれないが、銃は一切なかった。C兵士は上から(学校の2階テラス部から)、眼下に集まった人々に対して銃を撃った。米軍は銃撃を受けたと主張しているが、米軍が陣取る校舎の外壁、あるいはその前に立つ周囲を囲む壁には、銃で撃たれた跡はなかった。D銃の発射があったと兵士が主張する真向かいの家屋の最上階には、何の痕跡もない。窓も無傷である。(米軍は向かい側の家屋に対して射撃をしていない。向かい側の家屋からの銃撃はなかった。米軍は応戦していない。眼下に集まった住民のみを銃撃したのである。)E流血事件の後、向かい側の家屋から発見されたとする3丁の銃を米軍は公開した。しかしこれは何の証拠にもならない。なぜなら、イラクでは誰でも銃を持っているから。
現場の残された数々の証拠と証言は、米軍の主張を真っ向から否定するものである。それらが示しているのは、集まった住民に恐れを抱いた(当たり前である!米軍は侵略者なのだ!)米軍兵士が、眼下の住民に対して無差別に銃撃を行ったということである。一方的な殺戮の絵図である。
・米軍は、イラクの人々が虐殺事件を忘れ去るのを待っている。また米は、「安定と経済を再建することによって、ダメージを修復できるものと考えている」(The Indepandent)。しかしファルージャの虐殺に対して、住民、イラク各地の人々は怒りをさらに高めている(下のタイトル粗訳を参照)。それだけではない。米は、イラクの人々の感情を逆撫でする政策を次々と打ち出している。イラク石油省の顧問団トップに、英・オランダ系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル社の米国法人のフィリップ・キャロル元社長を任命した。イラクの石油を、ブッシュの息のかかったメジャーに管理させようというのである。ブッシュは馬脚を現した。これが戦争目的だったのである。
米軍と住民の衝突は今後ますます強まるだろう。占領政策に対して住民が徹底して反対すればどうなるか。パレスチナの今日がそのことをよく示している。今現在も占領軍=イスラエル軍はパレスチナ自治区に侵攻し、多くのパレスチナの人々の命を奪い、家屋、財産を破壊している。米軍が撤退することが、これこそがイラクにとって平和に向けた第一歩である。
※Iraqi rage grows after Fallujah massacre 04 May 2003(The Indepandent)
(ファルージャの虐殺以後、イラク人の怒りは強まっている)
http://news.independent.co.uk/world/middle_east/story.jsp?story=402964
※Bloodshed and bullets fuel rising hatred of Americans 04 May 2003(The Observer)
(流血と銃弾が、米軍への憎しみに火を付けた)
http://www.observer.co.uk/international/story/0,6903,949043,00.html
※Published on Friday, May 2, 2003 by the Telegraph/UK
Iraqis Vow Revenge as Hatred of US Grows
(米への憎しみが強まり、イラク人は復讐を誓う)
http://www.commondreams.org/headlines03/0502-04.htm
※<イラク>石油省顧問団トップに石油会社米国法人元社長 5 May 2003 (毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030505-00000116-mai-int
※<パレスチナ>イスラエル軍ガザ侵攻 死者12人に増える 2 May 2003 (毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030502-00001012-mai-int
●5月2日(44日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
5月2日、ブッシュは対イラク戦争の「勝利宣言」を行った。血塗られた空母「エイブラハム・リンカーン」の艦上にて。数百回ではないであろう。おそらく1000回を超える航空機がこの艦上から出撃し、イラクに爆弾の雨を降らせたはずだ。通常爆弾、クラスター爆弾、ナパーム弾、艦載機から投下されたあらゆる種類の爆弾によって、多くのイラクの民間人、兵士の命が奪われた。ブッシュの降り立った甲板上には、命を奪われた人々の血と怨嗟によって彩られていたであろう。まさにブッシュが立つに相応しい場所だったかもしれない。
ブッシュよ、畏れよ。汝の命令によって、どれほどの尊い命が奪われたのかを。そして今なお、どれほどの多くの人々が苦しめられているのかを。ブッシュよ、恥を知れ。石油と軍需産業の利益のために、また汝の政権維持のために、多くの命を殺めたことを。
米軍がイラクで行った虐殺の数々、そして今なお続く軍事占領下で続発する虐殺事件。良心ある世界の人々は米の暴虐を暴き出し、その責任を告発し続けるであろう。
○ファルージャの虐殺事件 続報
・虐殺を糾弾する住民と米軍との間での緊張は高まっている。またティクリットでは米軍が掃討作戦を展開しており、1人が殺された。イラク全土で米軍は、「掃討作戦」に名を借りた虐殺行為、住民虐殺を繰り広げている。
・繰り返しになるが、米軍がイラクから撤退する以外に、彼らの残虐行為は続く。米軍よ、イラクから撤退せよ!そして犠牲者に謝罪、補償を行え!
ファルージャにて。米軍が望んでいたような花束ではなく、靴で歓迎される。
(middle-east-online.comから)
※Tension high in Iraq after week of bloodshed 2 May 2003
Killings in Fallujah enflame sentiment over US occupation, general chaos that still reigns.
http://www.middle-east-online.com/english/?id=5388
※U.S. Troops Raid Saddam's Hometown 2 May 2003
http://apnews.excite.com/article/20030502/D7QP0V8O0.html
○劣化ウラン弾の犠牲者 白血病に苦しむ子供たちの今
・戦争が始まる以前から、劣化ウラン弾の被害に苦しむ子供たちが戦争によってどうなるのか、多くの人たちが懸念を表明してきた。白血病に必要な治療薬が入手できるのであろうか、病院で適切な治療を受けることができるのだろうか、彼らが入院している病院は爆弾から逃れることができるのだろうか、等。しかし白血病に苦しむ子供たちを取り巻く情報はなかなか伝わってこない。紹介する記事の中においても指摘されていることであるが、爆弾、伝染病、その他の危急を要する患者への対応に現場の医療は追われ、白血病に苦しむ子供たちのような長期的な治療を必要とする患者への関心は、ほとんど払われなくなっていると言われている。それだけに、彼らを取り巻く状況は悲劇的である。戦争によって治療薬が入手できなること、このことは即、彼らの死を意味するからである。
・今回の記事を通して、彼らを取り巻く環境のその一端を知ることができる。しかし、バスラをはじめとする南部において長期間苦しんできた子供たちの今の状況の全体像は、現段階ではよく分からない。情報が入手でき次第、随時紹介していきたい。
記事紹介 BBC NEWS (29 April 2003)
戦争の中、見過ごされてきた癌に苦しむ子供たち
Iraq's cancer children overlooked in war
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2982609.stm
イラクの病院の事情は混乱を極めている。そのような中、長期にわたる治療を必要とする疾病は、緊急事態に対処するための必至の取り組みの前に振り返られることもなかった。数千人を超える幼い白血病の患者にとって、これまでと比べてその前途は決して明るくない。
イラクでは、治療を求める列にはマンサー君の前に並ぶ数え切れない子供たちがいる。この7歳の少年は例えば胃腸炎、肺炎、破片による負傷等、戦争によってもたらされたものによって苦しんでいるのではない。彼は、白血病として知られている急性リンパ性貧血に苦しんでいる。
イラク南部のナシリアでは、これは死に至る病である。白血球の癌であり、マンサー君の治療が止めれば、彼は死んでしまうだろう。戦争は少年に対して、決定的な打撃になりかねないのである。マンサー君は癌専門家に月一度の治療を受けてきた。しかし230マイル離れたバグダットへ向かうことが出来ないでいる。バグダットで彼は、脊椎への化学療法の薬剤の注入と点滴を受けていたのである。安全が、マンサー君の父親にとっての心配事であった。彼の父親であるヤヒア・アル・アッバスさんは、首都への出かけるときには何時でも息子に付き添ってきた。未だに無秩序状態が支配しており、アッバスさんは家から離れることができない。しかしながらアッバスさんは、まもなく安全な状態がやってくるだろうと信じている。
さらに深刻なことは、マンサー君が治療を受けていたバグダットの病院が、戦争の結果略奪者によって破壊され、かろうじて機能しているだけであることである。また癌の治療薬は、イラク国境の警備が厳しくなり、配給システムのネットワークが停止しているために、ここ数週間で底をついてしまった。マンサー君の薬も一週間後には底をつき、誰も、いつ新たな供給が実現するのかを知らない。
「私たちはナシリアの米軍病院に行き、赤十字にも助けを求めました。しかし対処してくれるのは最初だけで、それ以上のことは何もできないのです」とアッバスさんは語った。「今息子は、良くない状態なんですよ。彼は吐いたり、熱を出したり、貧血がひどく、免疫力が落ちているのです」、「私は祈っています。米、英あるいはその他の国々が慢性疾患の患者に手を差し伸べてくれることを。私の悩みは、何かが起こって子供が死んでしまうことです。こうなってしまうと、私の家族への暗い将来を見てしまいます」と。
これはイラク全土で繰り返されている光景である。癌やそのほかの重い病気に罹り、治療が定期的な治療が必要な患者は、戦争終了後の危急を要する治療の中にあって、忘れられていた。
「人々は何度も私の所に訪れ、癌の治療薬を求めるのです」とナシリアにおける人道援助団体のマリー・カクローリン医師は言った。また「多くの人々が死ぬことは分かっています。なぜならば、今現在問題となっているのは、初期的な健康管理であるから」と述べた。血液と骨髄に影響を及ぼす白血病は、これまでのイラクでは、ほとんど見られることはなかった。前の健康省によると、癌の症例は第一次湾岸戦争後4倍にも増加した。多くの人々は、戦闘中に同盟軍によって使用された劣化ウラン弾の使用であると批判している。
戦争以前では、国中の利用可能な治療薬を支えてきたブラック・マーケットからの供給に頼ることができた。マンサー君が14ヶ月前に癌であると診断された後、アッバスさんは、ほとんどがヨルダンやシリアに向かう大型トラックの運転たちによるものだるが、非公式なルートで薬を手に入れてきた。100ドルもする。それはアッバスさんには法外な金額ではあるが、戦争が始まるまでは、ナシリア技術大学の部長として月40ドルを得ていた。彼は二ヶ月分も支払うことができなかった。家族、友人、親族は金銭面で手を差し伸べ、マンサー君は必要な時には薬を受け取ることができた。このようにアッバスさんは語った。
病棟の一部が砲撃を受け四分の一のみが機能しているナシリア女性・小児病院では、医師は、このような症状の患者に対して無力感を抱いている。先週、ザハラちゃん6歳が急性リンパ芽球性白血病と診断された時、ニマ・アルテミミ医師は、南部のバスラに行くように告げた。より大きな都市に行くことをすすめたその理由は、クウェートによって面倒をみてくれるだろうと思われたからである。クウェート政府は、イラクの、深刻な病におかされた子供たちを自国に運び込んでいる。「私たちはイラクにおいて、このような人々を治療できないのです。バグダットとバスラの専門病院は略奪されました。私たちは、感染症と治せる疾病に専念するしかないのです」と、病院のアブドル・ガファ・アル・シャドー医師は語った。
数分後、彼は新たな患者を診療した。いまやこの病気は、あまりにも一般的なものとなってしまった。ムスタファ・アリフ・ハマード君8歳は、昨年の10月、急性リンパ芽球性白血病と診断された。彼は少しは症状がよくなってきたが、彼の薬が底をついたために父親によって病院に運び込まれてきたのである。「治療が続けられなくなったら」とシャドー医師は言った。「彼の改善は、再び悪化します」と。
●5月1日(43日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○ ファルージャの虐殺事件 続報
・28日、30日に起きた虐殺事件への住民の新たな抗議。木曜日には、虐殺に抗議する住民デモがあった。「米軍は殺人者。いつかは米軍を追い出すぞ」と英語で書かれたプラカードもあった。民衆と米軍の間の緊張は、さらに高まっている。木曜日には、虐殺事件を引き起こした第82空挺師団の駐留地に手榴弾が投げ込まれる。米兵6人が中程度の負傷、7人が軽傷。
・28日の虐殺事件の新たな目撃証言。「我々の中で武器を持っていた者はいなかった。しかし米軍は撃ってきた」、「我々はスローガン、サダム反対!ブッシュ反対!イスラム万歳!を叫んでいただけである」、「住民から銃撃はなかった。一部から投石はあった」。銃を持たない無抵抗な住民に対して、米軍が発砲したことは間違いないないだろう。ファルージャの住民の多くは、平和的な抗議デモに米軍が一方的に発砲したことを疑っていない。
・また“アムネスティ・インターナショナル”は民間人犠牲者をめぐる事実調査の必要性を表明した。「米軍の過度の武器使用に懸念がもたれる」と“アムネスティ・インターナショナル”は述べている。
・占領軍である米軍に対して、ファルージャだけではなく各地から怒りの声が沸き起こっている。米軍とイラクの人々との間の緊張は高まっている。住民に恐れおののく米軍による虐殺事件は、今後もイラク各地で発生するに違いない。米軍がイラクから撤退する以外に、住民虐殺を防ぐことはできないであろう。
※US troops attacked in Falluja
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2991069.stm
※Town vents its anger at US
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2989923.stm
※Iraq:Death of Civilian Demonstrators Must Be Investigated
http://commondreams.org/news2003/0430-10.htm
※ファルージャでの無差別虐殺事件の写真は次のサイトを参照。
http://www.mirror.co.uk/printable_version.cfm?objectid=12908278&siteid=50143
http://sf.indymedia.org/news/2003/05/1606113.php
●4月30日(42日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○28日の発砲・住民虐殺に引き続き、30日にも再び住民へ発砲 2人死亡 14人負傷
・30日、ファルージャ。13人(17人との情報もあり)が虐殺され、多数が負傷した虐殺事件への抗議のデモに対して、再び米軍が発砲。2人の死者、14人の負傷者。ファルージャにて大惨事が、再び繰り返された。
・2日前の虐殺に怒った住民たち約1000人は、米第82空挺師団が駐留していた旧バース党本部前に押し寄せた。そして米軍は住民に発砲したのである。
・いつもの事ながら、米軍の主張と住民の目撃証言は真っ向から対立している。米軍は、「デモに参加した住民が投石を行った直後、発砲してきた」と主張している。そして「正当な防衛だった」と。28日と同様、イラク側が悪い、住民が先に発砲してきた、これが彼らの回答である。今段階では、事件の詳細は分からない。しかし28日の米軍の発表内容は、住民に目撃証言によって完全に否定されている。
・現在の市長は住民の声を代弁し、調査と犠牲者に対する補償を要求している。そしてモスク、居住区、住民感情を逆なでする場所等から米軍が撤退することを求めている。28日の住民の主要な要求は、中学校の再開、そのために米軍が出ていくことであった。住民は今も、「米軍は出て行け」との叫び声を上げている。
・これ以上の民間人の犠牲者を出さない唯一に道、それは米軍のイラクからの撤退以外にあり得ない。自らの責任を認め、犠牲者に謝罪、補償を行うこと、そしてイラクから即座に米軍を撤退させること、私たちはこのことを米に要求する。
※“U.S. Soldiers Fire on Iraq Demonstrators Again” April 30 2003 by the Associated Press
http://www.commondreams.org/headlines03/0430-01.htm
※“To the US Troops It was Self-Defense. To the Iraqis It was Murder”
April 30, 2003 by the Guardian/UK
http://www.commondreams.org/headlines03/0430-04.htm
※参照 「ファルージャの無差別虐殺事件」(署名事務局)
●4月29日(41日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○米軍 抗議デモに発砲 13人死亡 75人以上が負傷
・28日夜、バグダットの西約30マイルにあるファルージャにて米軍がデモに発砲、13人が死亡。戦闘終了後、米軍発砲による最大規模の犠牲者を出す惨事となった。これはまぎれもない、米軍による住民虐殺である。
・学校を基地に利用している米軍に対して、再開のために明け渡すよう要求した住民数千人に対して発砲した模様。住民側からは投石があったのか、なかった、目撃証言は別れている。しかし米軍が主張するような「民衆側から発砲があった」というのはデマであろう。「決して武装していなかった。彼らは平和的に抗議行動を行っていた」との目撃証言あり。
・ロイターによると、13〜17人が亡くなったという(病院関係者の証言)。そして75人が治療を受けているという。(亡くなった犠牲者のうち6人は既に埋葬された。下写真)
・住民の証言。「彼らは、子供たちを学校に通わせるために、米軍が占拠している学校の敷地を明け渡すように要求していた。米軍は抗議した者たちに発砲した。彼らが行動・デモに出ようとしたからである。私たちは米に対して、イラクから完全に撤退することを求め続ける。しかしまずは、米軍が住民居住区から出ていくことを要求する」。
・この間イラク各所で米軍と住民の緊張関係が高まっていたが、ついに大規模な犠牲者が出た。米軍は、素手の民衆に対して発砲したのである。許される行為ではない。米軍はいつもの通り、「イラクが悪い」「住民から発砲があり自衛であった」と直後に述べた。しかし今回の事件は明らかに、侵略軍による一方的な民間人虐殺である。米軍はイラクの占領を止め、即刻イラクから撤退しなければならない。
目撃者の証言では、犠牲者のうち6人は子供だという。(middle-east-online.com)
※U.S. Troops Kill 13 Iraqi Protesters 29 April 2003 (Reuters)
http://reuters.com/newsArticle.jhtml;jsessionid=YAQG52YPJKJ32CRBAELCFFA?type=topNews&storyID=2654651
※US troops kill 13 Iraqis marking Saddam's birthday (middle-east-online)
http://www.middle-east-online.com/english/?id=5332
※US troops 'kill 13 Iraqi protesters' April 29, 2003 (The Guardian)
http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,945719,00.html
※Iraqis killed in Falluja protest (BBC NEWS)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2984663.stm
※At least 10 dead as US soldiers fire on school protest (Independent)
http://news.independent.co.uk/world/middle_east/story.jsp?story=401718
※デモの住民に米軍発砲 イラクで13人死亡 (共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030429-00000130-kyodo-int
●4月28日(40日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○バグダットにおける米軍主導の会合 しかし米占領への抗議デモは続く
・米軍に守られる形で28日、反フセイン各派の第2回目の会合が行われた。外では数千の人々が抗議を行った。写真は、米軍の戦車砲に守らた会合の様子。イラクの人々と侵略者の米軍、その軍事政権との対立は、これから激しくなるに違いない。
※Iraqis protest at Baghdad talks April 28, 2003 (The Guardian)
http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,945126,00.html
○イラク北部で今も増え続ける犠牲者
・“ヒューマン・ライッツ・ウォッチ”からのイラク北部の現地報告(続報)。「戦争終結以前と比べて、民間人の犠牲者は増えている」(“Civilian deaths higher since war ended ”)。ショッキングな見出しである。イラク北部のキルクーク、モスルでは、現地に残された火器、弾薬による犠牲者が、戦争終結以前よりも増えているという。そしてその犠牲者の大半が子供なのである。戦争はまだ終わっていないのである。
・無秩序状態下の北部では、イラク軍が「放置」した火器、弾薬によって民間人、子供たちの間に犠牲者が増えていることが報告されている。それでは相次ぐ犠牲者の責任は誰にあるのか。武器を放置したイラク軍か。それとも米軍か。その責任は米軍にある。戦力において圧倒的劣性にあったイラク軍は、総力戦を余儀なくされた。そのため小火器を広範に配布したという。そしてイラク軍は潰走した。地域一帯が無秩序状態となり、多くの武器だけが残された。そもそも戦争さえなければ、このような問題が起こらなかったはずである。根本的な問題は戦争にあり、その戦争を引き起こした米軍に最大の責任がある。
記事紹介 ELECTRONICIRAQ.NET
戦争終結以前と比べて、民間人の犠牲者は増えている
Civilian deaths higher since war ended
Report, Human Rights Watch 27 April 2003
http://electroniciraq.net/news/713.shtml
イラクの北部では、戦争終了後に死んだり、傷ついたりしている民間人の犠牲者数は、戦争が起こっていた時期よりも増えている。“ヒューマン・ライッツ・ウォッチ”は今日このような発表を行った。
キルクークとモスルにおける病院ならびに死体安置所の広範囲の調査によって、多くの民間人犠牲者の数は、地方の政権が崩壊した後一般化した無秩序状態によってもたらされたものであることが明らかにされている。兵器と弾薬が容易に入手できるようになったこと、イラク軍によって残された地雷、ロケット弾その他の爆発物などを含む膨大な弾薬と火器、これらも犠牲者増大に拍車をかけている。犠牲者の大半は、おもちゃ代わりに弾薬で遊んだり、不発弾をつまみ上げる子供であり、その結果、重傷を負うことが多い。
「ある面では、今の平和は戦争時よりも悲惨であることが明らかになっている」と“ヒューマン・ライッツ・ウォッチ”の中東・アフリカ地区の責任者であるハニア・ムフティはロンドンで語った。モスルのアル・ザラウリ病院(かってのアル・ジャムフリ病院)では、例えば緊急医療室の記録によると、バイクに乗ったある男が彼らに向かって手榴弾を投げ込み、3人の民間人が4月22日に治療を受けたという。その他10人の患者は、街のハウィ・アル・カニサ地域における略奪事件があったその日に運び込まれてきた。その後3人が銃による負傷によって亡くなった。
イラク当局は戦争に備え、各家庭、学校、住宅地に膨大な弾薬と小火器を備蓄していた。キルクークにあるアル・バイダ中学校では、“ヒューマン・ライッツ・ウォッチ”の調査担当者は4月13日、ロケット砲、83mm、100mm迫撃砲、12.7mm自動小銃の弾薬を含む多くの火器類を発見した。“ヒューマン・ライッツ・ウォッチ”に対して守衛は、イラク軍は戦争が始まる約5〜6日前、学校に火器を運び込んだという。監視兵を一人残し、生徒たちはこのような状態で学校に通っていたという。まだ機能している学校において火器類を備蓄することは、国際人道法に反するものである。
モスルにおけるアル・ラジ病院(かってのサダム病院)において緊急病棟のある医師は、同盟軍の空爆が継続している期間中の犠牲者の大半は、市街地と周辺のイラク軍によって置かれた火器類の結果であると話している。「イラク軍は戦争に備え、家屋内や民間人の施設の中に弾薬と兵器を隠した」とその医師は語った。「しかし米軍は民間人居住区を攻撃しなかった。軍が撤退した後、爆弾、砲弾、自動小銃が残された。人々は、大部分は子供であるが、それらをもて遊び、爆発させているのである」。
医師は8時間の勤務時間で毎日おおよそ15人の火傷を負った患者を治療しており、火薬で火遊びをする子供もしばしば見かけると語った。モスルのアル・ラジ病院のその他の医師は4月21日、彼が治療しているほとんどの患者は、地雷、火器や銃弾の爆発による負傷者であると語った。彼はまた、バース党に忠誠を示す者たちは未だに病院内におり、報復を恐れて自由に語り合うことができないと言った。「彼らは至る所にいます。また今でも私たちのスパイです」、「以前と同じ状況を想像してみて下さい」と彼は言った。狙撃と手榴弾による負傷はいまだに、モスルにおいては重大な問題であり続けている。キルクークにおける状況以上に危険な状態にある。
キルクークのアザディ病院(かってのサダム病院)の医師たちは市が陥落した3日後、毎日70人前後の犠牲者を治療していた。犠牲となった民間人の多くが、銃弾や破片による外傷、地雷、その他の爆発が原因の負傷であった。しかしその数は一日当たり1人か、2人程度までに減り、現在負傷者の大部分は、顔や手を火傷した子供たちである。対人用地雷や火器は居住区の地面に埋められており、一方同じような爆発物はモスルやキルクークの周辺の軍事基地の付近に散らばったままである。共和国防衛隊の施設であったキルクーク南部のアル・カアリド基地、モスル市内のアル・ガズラリ・ガリソン基地である。
●4月27日(39日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○武器保管庫で大規模な爆発 大勢の犠牲者 自らの責任を隠す米軍
・26日バグダット郊外のザファラニヤの武器保管庫で大爆発発生。民間人の犠牲者は14〜40人近くにのぼる模様。大惨事である。
・事故の真相をめぐって米軍の主張と住民の証言は真っ向から対立している。米軍の報道官は、イラクの武装勢力と交戦状態となり、保管庫のミサイルに引火したと主張。住民は、「銃撃戦の音はなかった。武器の処理中に集積場から突然ミサイルが撃ち出された」と主張している。米軍の主張はいつもの通りである。「自分たちに責任はない」、「イラクが悪い」である。
・そもそもこの地区の武器保管庫で廃棄作業を行っていた米軍に対して、地元の住民は激しく反対していた。怒った住民は直後に、米軍に投石、抗議のデモを行った。“中年女性が「これが彼らの言う自由と民主主義なのか」と、住宅地のそばに危険な武器保管庫を設置していた米国を非難した”。(“ ”内は共同通信から)
・米軍は直後付近の道路を封鎖し、現場への立ち入りを認めていない。真相を隠そうとしているのではないか。民家の近くで処理作業を行う、想像するに、その作業もずさんな形で行われていたに違いない。今回の出来事は「事故」ではない。米軍による住民殺害である。
※バグダッド郊外で武器集積所爆発、死亡40人の情報も 27 April 2003 (読売)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030426-00000312-yom-int
※Six die as Baghdad weapons dump is blown up 27 April 2003(Independent)
http://news.independent.co.uk/world/middle_east/story.jsp?story=400766
※イラクの武器集積場で爆発 ミサイル暴発し多数死傷 (共同通信)
http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2003/iraq2/news/0427-905.html
※「これが自由か」と住民 瞬時に消滅した民家4軒 (共同通信)
http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2003/iraq2/
●4月26日(38日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○米軍 イラク北部における援助物質の搬入を阻止する
・英の援助団体“セーブ・ザ・チィルドレン”がイラク北部のアルビルに航空機によって援助物質を搬入しようとしたところ、米軍は「安全が保障できない」として着陸を拒否している。“セーブ・ザ・チィルドレン”は木曜日、米軍が医療物質のアルビルへの搬入を拒否していることはジョネーブ条約に反している、と批判した。その条約によると、占領軍は、民間人の保護、法と秩序の回復、人道援助の促進を求めている。
トルコ国境を越える国連の食料を積んだトラック(4/16)。しかし航空機による医薬品の搬入は米軍によって阻止されている。(http://english.aljazeera.net)
・“セーブ・ザ・チィルドレン”は次のように述べている。「米軍には別の優先順位の高いものがあると見なさざるを得ない。安全ではないとの言い分は、受け入れることはできない」。「医薬品援助は、今の段階では外からなされるしかないし、問題があるとは思われない」。彼らは、住民4万人に対して3ヶ月間援助できる支援物質を搬入しようとしている。また「理解できないのは、ジョネーブ条約に反しているということだけではない。。モスルにおいて毎日私たちが目撃している子供たちの苦境を無視していることなのである」と述べている。
・特にイラク北部において米軍は、油田の確保を最優先として活動を行っている。医薬品、食料、飲料水等の人道的援助はさほど重要ではないということであろう。米軍はバグダット空爆の際にも、石油省のみは手を出さなかった。そして真っ先に保護し、再開させたのが、他ならぬ石油省である。イラク北部の病院における医薬品は底をつきつつある。略奪によりその機能の停止を余儀なくされた所も多い。今なお不発弾によって多くの犠牲者がかつぎ込まれているが、まともな治療ができないのが現状である。米軍の現地で行っている行為は、直接砲弾でイラクの人々は殺さなくとも、生存条件を奪い去り虐殺しているに等しい。
※“US accused of blocking medical relief plane” 22 April 2003
http://english.aljazeera.net/topics/article.asp?cu_no=1&item_no=2828&version=1&template_id=277&parent_id=258
○不発弾によって殺される子供たち
・IRINからの現地の様子を伝える新たな記事(続編):「不発弾が多くの人々の命を奪っている」(“Unexploded ordnance killing dozens in north ”25 April 2003)。
・米軍によるクラスター爆弾の不発子爆弾以外にも、崩壊したイラク軍が残し辺りに散乱する弾薬や、イラクとイラン国境に埋設されている地雷によって多くの命が危険にさらされている。
・現地に入っているIRINメンバーの言葉。(イラク北部では、不発弾によって毎日多くの人々が殺され、傷ついている。)「非常事態です」。「短期的には、この地域の抱える問題は極めて恐ろしいものです。世界の他のどの地域に比することのできないものです」。
※“Unexploded ordnance killing dozens in north” 25 April 2003 Report, IRIN
News & Analysis ELECTRONICIRAQ.NET
http://electroniciraq.net/news/709.shtml
○泥沼のアフガン
・米軍の侵攻は、アフガンに未だに平和をもたらしていない。米軍が撤退することでしか、平和はおとずれない。米軍はアフガンから即刻出て行け!イラクから即刻出て行け!平和の要求と米軍撤退の要求は同一である。
※<アフガン>武装勢力の攻撃で米兵2人死亡 タリバン残存勢力か
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030427-00002036-mai-int
●4月25日(37日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○国防大臣
・ガーディアン紙(ネット版)、劣化ウラン弾に関する記事。「癌を引き起こすウラニウムの危険性 派遣部隊を調査する」(“Uranium hazard prompts cancer chech on troops” 25 April 2003)。副題が「英国防省は科学者からの警告に注目している。放射能のリスクに関してフーン大臣から(安全性が)保証されているにもかかわらず」。
<要旨>(主要部 抜粋)
・劣化ウラン(以下DU)による被曝よって腎臓疾患や肺癌の危険性があるかどかを調べるために、湾岸帰還兵の体内のDUのレベルを調査することになるだろう、と国防省は24日に語った。
・英国で最も権威のある科学者組織である英国学士院は、兵士と市民は危険なレベルの放射能によって被曝しているだろうとの警告を発していた。その見解は、DUは危険ではないとする国防大臣ジョフ・フーンの以前からの主張に真っ向から対立するものであった。
・国防省の報道官は、危険なエリアにおいて教育された通りにきっちりと従事し、また呼吸装置を装着していたならば重大な被曝はないだろうが、全員の尿検査を実施するだろうと述べている。その全結果は公表されることになろう。
・国防省は、どこに、またどの程度の劣化ウラン弾が使用されたのかの詳細もまた公表されるであろうと述べている。また米軍も同様なことを実施するであろうと。
・「兵士と民間人がどれほど被曝し続けているのかを知ることなくして、弱い放射線を出し続け、また化学毒性を持つ物質の莫大な総量をそのまままき散らしたままにすることは許されないことである」とDUに関する学士院のワーキング・グループ議長であるBrian Spratt教授は述べている。また「戦場において発生したDUの摂取を評価するためには、兵士の尿中のDUのレベルを測定するしかない。それは健康被害へのよりよき評価のためにも必要なものである。この調査が実施されること、しかも数ヶ月以内に実施されることが重要なのである」。
・さらにSpratt教授は次のように述べている。「イラクの住民にとっては、ミルクと飲み水のサンプルを長期間にわたって調査することで防ぐことができるであろう。相当量を吸引したならば、兵士たちの一部に腎臓疾患が現れ、肺癌の危険性が増大することもあるだろう」。「戦場を駆け回った兵士のサンプルを調査することが不可欠なのである。相当量を吸引したであろう兵士だけではなく、イラクを駆け回った歩兵や野戦病院のスタッフも含めて」。「DUが広まってしまった住民のいるすべての地域における被曝を知ることが必要である。DUに対する被曝は、ほとんどの住民に対しては低いものかもしれないが、計測する必要がある。」
・先月フーン国防相は、その脅威を問題にもしなかった。彼は下院で、DUが毒性を持った残留物であることを示唆する「わずかな科学的な証拠」もないと述べた。
・専門家はすべての情報源を総合して、同盟軍による3週間にわたる攻撃により1000〜2000トンのDUが使用されたと見積もっている。それを受けてSpratt教授は次のように述べている。「約340トンのDUが1991年の湾岸戦争で使用された。同盟軍はこの戦争で、どこに、どれだけのDUを使用したのかを明確にしなければならない」。「最初の調査と除去を誰が実行するのかといった問題は、科学的な問題と言うよりもむしろ政治的な問題である。調査は、しかしながら、長期間にわたる取り組みとなる。長時間かかる。だからこそ、イラク自身がそれを行うことのできる能力を確保しなければならない」。「同盟軍は、DUは本質的に危険なものであり、どこで、どれだけのDUが散布されたのかについてオープンであり続けることによって、取り除くことができるのである」。
・先日の記事に続き、いよいよ劣化ウラン弾による健康被害を危惧する声が世界から沸き起こってきた。その危険性は明白である。英国学士院のBrian Spratt教授は、まずはどこで、どれだけの量の劣化ウラン弾が使用されたのかを明らかにすることが何よりも重要であること、そして即座に調査を開始することの必要性を強調している。英国では、主要には帰還兵の尿検査の要求が焦眉の課題となるかもしれないが、しかしその結果は、イラクの人々へのDUの影響を推し量るデータとなるものであろう。もしも湾岸戦争をはるかに超える1000〜2000トンの劣化ウラン弾が使用されたとするならば、そのイラクの人々へ与える影響は甚大なものとなろう。まずは劣化ウラン弾使用の実態を明らかにすること、そしてDUの除去作業、イラクの人々の健康被害に対して無条件に補償すること、このことを米・英に求めていかなければならない。
※Uranium hazard prompts cancer check on troops 25 April 2003 (The Guardian)
http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,943341,00.html
○米軍 クラスター爆弾1500発以上使用の事実を認める
・ようやく米軍はクラスター爆弾の使用を認めた。これまで米軍兵器の映像、空爆や砲撃地点に残された子爆弾の存在によって限りなく黒と見られていたが、ようやく正式に認めたわけである。これでクラスター爆弾をめぐる問題は次の展開を迎える。使用したのか、否かと言った次元ではなく、使用したことにともなう民間人の被害と米・英の責任が直接問題となる。しかし発表の場においても、「イラク側が軍事施設を住民地区近くに置いたため」に民間人に被害が出た、と米軍は主張した。
・クラスター爆弾による犠牲者の実像が今後ますます明らかにされるであろう。事実を突き付け続けることによって、非人道兵器を使用したことに対する責任を米・英に認めさせなければならない。
※記事抜粋 (毎日新聞 ネットから) 26 April 2003
<クラスター爆弾>イラク攻撃で約1500発を使用 米英軍
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030426-00001027-mai-int
【ワシントン藤原章生】マイヤーズ米統合参謀本部議長は25日、米国防総省の会見で、米英軍がイラク攻撃の際、クラスター(集束)爆弾約1500発を使用したことを明らかにした。議長は「大半は(攻撃目標に向け)正確に落とされたが、26発が民間人地区から約4.5キロ以内に着弾した。うち親爆弾1発が(不発弾による市民への)2次被害をもたらした」と報告した。クラスター爆弾による市民への直撃被害については明らかにしなかった。米軍はバグダッド攻略時にクラスター爆弾を集中的に投下した。
マイヤーズ議長は「さまざまな種類のクラスター爆弾をイラク軍のミサイルやレーダー施設、砲兵隊を標的に使用した」と述べ、「イラク側が軍事施設を住民地区近くに置いたため、我々は市民に被害が出る可能性があることを知りながら投下した」と明言した。
さらにマイヤーズ議長は「戦争はきれい事ではない。とても醜いものだ。敵(イラク)は自国民を危険にさらすことを何とも思っていない。民間人の死は彼らの作戦の優先課題であり、米英軍に圧力をかけるつもりだったのは確かだ」と、市民の犠牲は、あくまでのイラク側の責任と強調した。
●4月24日(36日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○米下院議員 イラク戦争犠牲者を明確にすることを要求
・4月21日デニス・クシニッチ下院議員(民主党・オハイオ州)は、戦争による犠牲者数を明確にすることを求める文書を、ラムズフェルド長官に提出した。
・文書の中で彼は次のように述べている。「今や戦争における戦闘の局面は終わった。失われたもののすべての範囲が評価されなければならない、このことがまさに重要なのである。戦闘で死んだイラク兵士の正確な数をカウントすることは難しいだろうが、争いの中で犠牲となったイラクの民間人の数は公表されるべきである」。また文書を送り届けた21日、「公開されるべきこの情報は重要である。米国はイラクの人々にその責務を負っている。また全世界に対して情報を公開する責任を負っている」と述べた。(紹介記事から)
・デニス・クシニッチ下院議員は、国家安全保障・新たな危機・国際問題に関する議会政治改革小委員会のメンバーである。彼は米国の単独行動主義を批判し、対イラク攻撃に反対した。また彼はアフガン戦争に反対し、次のような言葉を残している。「我々は、9月11日に亡くなった罪のない人々の血をアフガニスタンの罪のない村人の血で償ってくれと頼んだ覚えはない」と。
・イラク兵士の犠牲数については、米軍は明確にすることを避けている。戦場では戦闘が行われたのではなく、米軍による一方的なイラク兵の虐殺が行われたからである。その事態が知られることを恐れているに違いない。イラク兵が一発の銃弾を撃つと、米軍からは戦闘機、戦闘ヘリからの爆弾で応戦する。数万人にものぼるイラク兵が、直接戦火を交えることなく空から降る爆弾によって虐殺されたとみられている。民間人の犠牲についても、その数を公表していない。民間人の犠牲に自らがかかわっているいることを否定し、イラク軍と犠牲となった民間人にその責任を転嫁している。「市場の犠牲者はイラクのミサイルによるものだ」「検問所での彼らは停止を無視した」「民家の近くに兵器を配置したイラク軍が悪い」等々。米に被害を公表させること=自らの責任を認めさせる、このことは重要なことである。
※Common Dreams - Progressive newswire
Kucinich Requests DOD Release Number of Iraqi Casualties
Send Letter to Secrety Ramsfeld
http://www.commondreams.org/news2003/0421-09.htm
○劣化ウランの影響を懸念
・ついに劣化ウラン弾によるイラク人の健康被害を問題にした記事が現れた。「イラクの現地調査訴える報告書 人体影響などで」(毎日新聞)。現場調査が進むにつれて、米・英軍による劣化ウラン弾の使用実態が明らかにされるであろう。この問題についても、可能な限りフォローし続けていきたい。
・記事の要旨(抜粋)
国連環境計画(UNEP)は24日、イラク戦争による生活・軍事施設の破壊や劣化ウラン弾の使用が「人体や環境への深刻な影響をもたらす可能性がある」として、早急な現地調査と緊急対策の必要性を訴える報告書を発表した。特に米軍が使用を認めた劣化ウラン弾は「着弾地点の半径150メートル以内で粉じんを吸引すると、呼吸器が放射線にさらされる可能性がある」と警告している。・・・・・・
※<国連環境計画>イラクの現地調査訴える報告書 人体影響などで(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030425-00001011-mai-int
●4月23日(35日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○病院をめぐる悲惨な状況 記事紹介
・「アル・カーナ病院はすべてを剥ぎ取られた」(“Al-Qurnah hospital stripped bare”:IRIN(国連の統合地域情報ネットワーク))。戦闘は終了したかもしれない。しかし医療現場においては未だに「戦闘」は終わっていない。紹介する記事は、イラクにおける最新の医療現場の実態である。
・略奪によって病院の機能停止に陥ったとしても、それは米・英軍が引き起こした結果であり、彼らが責任を負わなければならない。直接的な空爆、砲撃による破壊は、言外である。多くの援助団体、慈善団体がイラク各地の病院現場の支援を行っているが、まずもって米・英は自らの責任を明確にし、無条件に償いを実施しなければならない。彼らに代替させるやり方など、言語道断である。
・それにしても医療現場を破壊したことによる影響はあまりにも大きい。爆弾による犠牲者への影響も甚大である。DUよって白血病に苦しむ子供たちへの医療支援が戦争によって絶たれたことも大きな問題である。また生まれくる子供への影響も同様である。イラクの人口2200万人のうち14歳以下の子供たちが1200万人だとすると、粗く見積もっても、毎日3千人の赤ちゃんが生まれていることになる。開戦から5週間が経過したが、その間に10万人以上。戦禍とその後の混乱の中における、新たな命の誕生をめぐる状況を考えただけでもぞっとする。記事でも紹介されているように、帝王切開が必要にもかかわらず手術ができないこともあったでろう。また衛生状態の悪化のために、母子共々感染症にかかる場合もあろう。未熟児を育てるだけの設備は大丈夫なのか。新生児をフォローできる態勢はあるのか。母体の栄養状態に問題はないのか。あらためて米・英の戦争責任を追及し、このような不幸が二度と繰り返されないようにせねばならない。
記事紹介 「アル・カーナ病院はすべてを剥ぎ取られた」
●4月22日(34日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○米・英は自らの戦争犯罪について、世界に対してどのように回答してきたのか。
・先週配信されたBBCの記事「Iraq War:Unanswered question」。@イラクがクゥートに発射したとされるスカッドミサイル疑惑、Aウムカスル陥落情報の真偽、Bバスラを南下した戦車の行方、C市場への「誤爆」=虐殺の真相、D英軍兵士が処刑された事実、E化学兵器の有無、F検問所における民間人虐殺の真相、Gクラスター爆弾の実戦使用の疑い。これら諸問題に対する米・英軍の公式見解と記者たちが現地で目撃した真相を対比したものである。
・これまでも私たちがたびたび言及してきたように、民間人犠牲者に対して発せられる米・英軍の声明は、イラクが悪い、警告を無視した、自分たちは悪くない、およそ真摯に真相を究明し対応するといった態度とは対極のものである。駄々っ子の台詞である。戦況の報告に関しても同様で、バスラ陥落、住民蜂起、侵攻を歓迎するイラク市民、垂れ流される情報の真偽に疑わしいものが圧倒的であった。
・米・英は確かに戦闘では勝利したかもしれない。しかし、これで戦争責任、虐殺の責任の追及が終わると思ったら大間違いである。ここでは特に、民間人犠牲者にかかわる問題について紹介したい。そしてあらためて、自らが引き起こした民間人被害=虐殺の真実から逃げまわり、責任を回避し続ける米・英を批判していきたい。
市場への「誤爆」=虐殺の真相
<シャーブ地区>
伝えられている事実関係
・3月26日、シャーブ地区にて大きな爆発。14人の民間人が死亡。現場に駆けつけたBBC記者は、軍施設はここにはなく、1マイル以上も離れた所にしか存在しないことを伝えた。
・イラク政府はその直後、市民をねらった爆撃だと非難した。
米軍発表
3月26日
・バグダットにある9つのミサイルと発射台をターゲットにした。これらは市街地近辺に配置されていた。
その数日後
・この地区をターゲットにしていない。その後、軍の高官は米軍のミサイルか、イラク軍の対空ミサイルか、断定できないと発言している。
現地記者の報道
・その後BBCは現地記者から証言として、この期間中にイラク軍の対空砲の音を耳にしていないことを伝えた。
<シューラ市場>
伝えられている事実関係
・4月2日、シューラ市場にて大きな爆発。50人以上の民間人が死亡した。
米軍発表
・イラクによるものだと主張。英軍も同様。
現地記者の報道
・インディペンデント紙の記者による物証。現場近辺において30cmの破片が発見された。そこにはシリアルNo.が刻印されており、製造メーカーのRaytheon社のものであることが分かった。
検問所における民間人虐殺の真相
伝えられている事実関係
・3月31日米軍は、民間人が乗ったバンを停止させるために銃撃を行った。米軍当局の発表によると7人の女性と子供が死んだ。
米軍発表
・停車を無視したことに対する警告、威嚇射撃だったと主張。「最後の手段だった」。「適正な対応だった」。
現地記者の報道
・同行していたワシントン・ポストの記者は、10人以上が米軍によって殺害されたと報告した。警告、威嚇射撃も聞かなかったと伝えている。さらに現場指揮官が直後に次のように言ったという。「(お前は)家族を殺したのだ。事前に警告、威嚇射撃を行わなかったからだ」と。
クラスター爆弾の実戦使用
伝えられている事実関係
・イラク政府は市街地におけるクラスター爆弾の使用を度々指摘していた。
・4月3日には西側の報道機関も使用されている事実を確認した。
米軍発表
・米軍、英軍ともにクラスター爆弾の使用を公式に否定。英軍の報道官は、「われわれはクラスター爆弾をバスラ市内、周辺でも使用していない。明らかな二次的被害がその理由だ」と述べている。
英国政府の説明
・英軍の高官はBBCに対して、「われわれは至る所でクラスター爆弾を使用している」と述べた。極めて効果的な兵器だということがその理由である。
・また国防相ジェフ・フーンは4月4日におけるクラスター爆弾の使用に対して、それは合法的であり使用しないことによって英国兵士を危険にさらすだろう、と述べた。
Iraq war: Unanswered questions (BBC NEWS)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2929411.stm
●4月21日(33日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○非人道兵器による虐殺の実態 クラスター爆弾による子供の犠牲者に関する報告 続編
・ORHAによるイラク統治が本格化しようとしている。またバグダットにおける市民生活が日常に戻りつつあると、マスコミ等では報道されている。あたかも戦争は遠い過去の出来事のような雰囲気が醸し出されている。しかし戦闘こそ終息しつつあるかもしれないが、今なお米・英軍は罪のない一般市民を虐殺している。彼らによってばら撒かれた非人道兵器によって。
・今なお多くの犠牲者が病院にかつぎ込まれている。今回の紹介するイラクで地雷ならびに不発弾除去の活動に取り組むMAG(Main Advissory Group)レポートの内容は衝撃的である。キルクークではなんと戦闘終了後の一週間において、地雷と不発弾によって52人が死亡し、63人が負傷したという。これは一病院において取られた統計にすぎない。キルクークだけでもこれをはるかに越える犠牲者が出ている。クラスター爆弾が散布された地域、また多くの不発弾が埋まっている地域を考えてみると、イラク全土におけるそれによる被害規模の大きさが想像される。しかもその最大の犠牲者は子供である。
記事紹介
イラクでは、地雷と不発弾によって多くの子供たちが殺されている。
ElectronicIraq.net News & Analysis 21 April 2003
Dozens of children killed by mines and unexploded bombs every day in Iraq
By Mines Advisory Group
http://electroniciraq.net/news/693.shtml
地雷と不発弾によって52人が死亡、63人が負傷。これはキルクークの一つ大病院における、一週間だけの驚くべき統計である。真実の数値ははるかに大きいだろう。多くの犠牲者は市内の他の病院にかつぎ込まれるであろうし、またその数に含まれる犠牲者は、その期間内において判明した人々である。さらにひどいのは、殺され、傷ついているのが子供だということある。
死と隣り合わせで遊んでいる子供たち
負傷者の圧倒的多数は、遊び場にばらまかれた不発弾に手を出す子供たちである。楽しげにそれらをもてあそび、手遅れになるまで手放さない。火薬を取り出そうと筒をこじ開けようとしている子供たちが目撃される。彼らはそれに火を付けるのである。子供たちは火花が興味深いのである。かって塹壕があった所で火柱を作り、不発弾の束に投げ入れる。そして逃げ去る。逃げ切る子供もいるが、多くは死に至る。
地雷と不発弾
支援団体MAGがキルクークに入ったその日の4月10日火曜日、爆弾は投下された。数十万の不発弾が、かっての軍事拠点付近と市街地周辺で大量に発見された。市街地からみて北部と西部にある軍事施設は米軍のクラスター爆弾による攻撃を受け、黄色で筒状の子爆弾の約15%が、衝撃によって爆発しなかったとみられている。MAGがそれらを取り除くまで、子爆弾は無実の人々を待ち受けながら埋まっている。
緊急対策
この広範囲にわる緊急事態に呼応して、MAGはイラク北部のキルクークに技術者のチームを派遣した。多くがすでに任務についており、地雷/不発弾の教育チームが、その危険性を子供と両親に教える業務を行っている。これを書いている今段階では、この分野における世界的な指導的立場にあるMAGは、イラクにおける唯一の地雷除去組織である。
MAG 地雷を除去する
それは時間との戦いである。また唯一MAGだけが除去活動を大きく進めることができる。わずか一週間でMAGは、不発弾をトラック30台分も除去した。さらに11000発の地雷と200000発の爆発しなかった砲弾、爆弾、ミサイルがMAGチームによって破壊され、あるいは将来の処理に備えて安全な場所に移された。数十万発の地雷とUXOがいまだに家屋や通り、学校などにある。MAGは10年以上も前からイラクにとどまり、ノウハウを蓄積してきた。チームはドハーク近辺で活動しており、MAGはイラク中央部と南部にさらに移る必要がある。
関連記事(是非ともご参照下さい)
<バグダッド>不発弾で指失った11歳「もうサッカーしない」 22 April 2003 (毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030422-00001077-mai-soci
●4月20日(32日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○非人道兵器による虐殺の実態 クラスター爆弾による子供の犠牲者に関する報告 続編
・バグダットにおけるクラスター爆弾による被害報道に引き続き、ナシリアにおける被害の様子も伝わってきた。「クラスター爆弾の主要な犠牲者は子供たちだ」(Times/UK)。
・クラスター爆弾の非人道性は、殺傷能力の高さ、無差別虐殺にとどまらず、その二次的被害の大きさにある。米・英軍のこの爆弾を使用し、多くの民間人を巻き添えにし虐殺した。しかし今、イラク各地に散布されたこの爆弾による深刻な二次被害が続出している。彼らは市街地をも、地雷原に変えてしまったのである。米・英軍は今なお、イラクの人々、特に子供たちを虐殺しているのである。彼らはこのような事態になることを知っていたはずである。
・私たちはこの問題に注意を払っていきたい。クラスター爆弾の使用は米・英軍の最大の戦争犯罪の一つであり、無条件に彼らは犠牲者に対して償いを行わなければならない。
記事紹介 「クラスター爆弾の主要な犠牲者は子どもたちだ」
続々とクラスター爆弾の被害状況が伝えられている。
参考 バグダットにおけるさらなるクラスター爆弾の被害
※集束爆弾で2次被害拡大 子ども巻き添え、米兵も 20 April 2003(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030420-00000031-kyodo-int
●4月19日(31日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○米軍占領への怒りの声
・米軍による占領と植民地支配に反対する金曜日の抗議行動の様子を伝える記事が次々と配信されている。
・「抗議のデモは“占領軍”がイラクから立ち去ることを求めた」(Independent)(“Protesters call for 'army of occupation' to quit Iraq”19 April 2003)もその一つである。多くのマスメディアは金曜日の大々的な抗議デモを、シーア派の親イラン勢力の政治的思惑を強く反映したものとして報じている。しかしこの記事は、クルド人勢力も含む、シーア派とスンニ派の国家的統一を要求している点を指摘している。デモは「アメリカ反対!サダム反対!我々の革命はイスラムである!」と叫び、「我々の国から出て行け!我々は平和を求める!」「我々はアメリカの覇権を拒否する!」といった横断幕が掲げられていたという。
※Protesters call for 'army of occupation' to quit Iraq 19 April 2003 (Independent)
By Kim Sengupta in Baghdad
http://news.independent.co.uk/world/middle_east/story.jsp?story=398526
○非人道兵器による虐殺の実態 クラスター爆弾による子供の犠牲者に関する報告
・15日の“ヒューマン・ライツ・ウォッチ”によるバグダット攻撃に際してクラスター爆弾が使用されていたことへの告発に続き、18日付けでロイター通信は、被害者に関する記事を配信した。「クラスター爆弾:イラクの子供たちへの隠された敵」(“Cluster Bombs: a Hidden Enemy for Iraqi Children”)。
・バグダットにおいて多くの子供たちが、投下されたクラスター爆弾の不発弾によって負傷しているという。
・記事の要旨:バグダットのドーラ地区を歩いていた13歳の少年アル・フセインは5日前、クラスター爆弾を踏み脚を吹き飛ばされた。また彼の兄弟、従兄弟を含む7人が負傷を負った。当然のこと、彼自身何を踏みつけたのかを分かっていないが、治療を行った医師はそれがクラスター爆弾によるものだと確信している。ベルギーの医療慈善団体の医師は、「彼はクラスター爆弾による最初の犠牲者でもないだとろうし、最後の犠牲者でもないであろう」と語っている。そして「私はこのような負傷を負った100人以上の犠牲者を見てきた。その半数が子供たちである。爆弾はまだ地上に残されている」と付け加えた。また中央子供病院(旧サダム子供病院)の医師は、3月20日以降の米・英軍の攻撃開始以後、アリ・フセイン君のような傷を負った患者たちを数百人近く見てきたことを語っている。
・バグダットへのこの非人道兵器の使用は、米・英軍による戦争の実態=民間人をも巻き込んだ非人道的、無差別殺戮であったことを示す一つの有力な証拠である。
※Cluster Bombs: a Hidden Enemy for Iraqi Children 18 April 2003
http://reuters.com/newsArticle.jhtml?type=focusIraqNews&storyID=2590298
○イラク人捕虜885人を釈放 米英軍 (毎日新聞)
・非戦闘員であることが確認され、885人が釈放されたという。これが事実ならば、嫌疑をかけられただけで、また反米的だということだけで相当多くの一般市民が米・英軍に拘束されていることになる。
※<イラク戦争>イラク人捕虜885人を釈放 米英軍 19 April 2003(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030419-00001041-mai-int
○イラク戦争 民間人犠牲者の声 BBC現地リポートの紹介
バスラにおける空爆 “私の家族を奪った”
Basra bombing 'destoryed my family' 16 April 2003
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2952339.stm
イラクにおける戦争は、アビッド・ハッサン・ハモーディ(72歳)から愛しい人々を奪いさった。かって彼が率いてきた誇れる大家族は、そのほとんどが殺された。バスラの自宅に米軍の戦闘機が爆弾を投下した時に。
老人の言葉:
私は家族10人を失った。かって私はその家で6家族と暮らしてきたが、今や独り身となった。
侵略が始まるや、多くの家族が私の家に身を寄せるようになった。なぜなら、私の家はコンクリートで強化されており、とても頑丈だったからだ。医者の息子、微生物学者の娘、そして彼女の3人の子供たちがいた。その他の娘たちは顧問医師であり、彼女は乳児と共にやってきた。私たちは家の後ろのとても安全な場所で眠り、私のベットはみんなのベットとは2〜3メートルしか離れていなかった。
すでに数発のロケットが自宅からの道を横切った所にあるクラブに落下した。それは私の破滅の5日前のことだった。2日前にはムクハバラット−秘密警察の建物が攻撃された。その時自宅の窓ガラスが全部割れ、私たちは傷を負いながらも逃げまわった。
4月5日の午前5時半、一機の戦闘機がメイン道路にロケットを投下した。私たちは飛び起きた。私たちが再びベットに入ったその5分後、戦闘機が舞い戻り、急降下しながらロケットを発射した。ロケットはなんと、私たちがいた自宅の後ろに落下した。家屋は倒壊した。部屋の壁が崩れ落ち、あっという間に私の家族の多くが殺された。私は部屋に駆け込み、全員が崩れ落ちたレンガとコンクリートの下敷きになっているのを見た。
部屋には13人がいた。私はどうにかして娘の一人、彼女の5歳になる息子と6ヶ月の乳児を救い出した。私の妻の真横で眠っていた彼女の3番目の娘は殺された。私の懸命の救出にもかかわらず、彼らの体に積み重なる物を取り除くことができなかった。私の息子の妻は助けを求めて通りに飛び出したが、まだ未明であり、家屋は完全に破壊されてしまっていた。私たちは、救急車が到着して彼らを救い出すまで待たなければならなかった。しかし彼らすべて死んでしまった。
私は彼らを蘇生させようと3人に対して人工呼吸を試みた。しかし彼らの命を蘇らせることができなかった。彼らはあまりにも長い時間、下敷きになっていたから。もし彼らが数分間埋まっているだけだったら、たぶん命は助かっただろう。しかし30分以上もそのままだったのだ。私が家族を救い出すのに懸命であり、ショックと悲しみに沈んでいた間、人々は自宅を略奪しにやって来た。奴らは、2万5千ドルもする宝石に入った箱と、私の二人の息子たちがイギリス市民として暮らしているマンチェスターから持ち帰った衣服を収納した箱を持ち去ったのだ。
同盟軍は、ケミカル・アリとして知られているアリ・ハッサンがいた家と自宅が接近してたと弁解している。奴らは、バスラが陥落した1日後に攻撃を行った。奴らはこの男を捕らえることができたはずである。彼を殺すこともなく。一人のろくでなしを捕まえるために、この通りに面した20人もの人々を虐殺する必要があったのか?
私たちは、同盟軍がイラクにやってくることを歓迎していたが、私たちが殺されることなどを望んだのではない。私たちは軍隊ではない。私たちは軍事基地の近くに住んでいたわけでもない。私の人生は、政治家たちによって奪われてしまった。
私は決してサダムを邪魔したりしなかったし、彼は、私の家族がとともに生活できるようにしてくれた。子供たちを養育してくれたし、教育してくれた。同盟軍は、イラクにとって将来のある家族とかけがえのない人々を殺した。同盟軍は、望むものは捕まえるであろうし、この国を解放するかもしれない。しかし私に関して言えば、私の失ったものはあまりにも大きく、奴らを受け入れることはできない。
●4月18日(30日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○米軍占領への怒りの声
・イスラムの休日にあたる金曜日、バグダットでは数万人の抗議デモ。群集はイラクからの米軍の撤退を求めた。
・群集は金曜礼拝の終了後街頭に繰り出し反米スローガンを叫んだ。またフセイン政権に替わるイスラム国家の樹立を叫んだ。(ロイター)
・「我々の国から出て行け、我々は平和を求める」「アメリカ反対!サダム反対!」「この国家は、シーア派とスンニ派のものだ!」(アルジャジーラ)
・またBBCのレポーターは、戦争終結後の最も大規模なデモを次のように報道している。「アラブ主義者によるこれまでで最も大きなデモだ。このデモは、米に率いられたイラク侵略に対する強烈な反感が生じつつあることを示している」と。
※Iraqis Protest Against United States 18 Apri 2003
http://reuters.com/newsArticle.jhtml;jsessionid=0ECXDDPUMHS3ACRBAEOCFFA?type=topNews&storyID=2590875
※Tens of thousands in Baghdat call for US withdrawal 18 Apri 2003
http://english.aljazeera.net/topics/article.asp?cu_no=1&item_no=2820&version=1&template_id=277&parent_id=258
※Baghdat protesters denounce 'occupation' 18 Apri 2003
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2959015.stm
○非人道兵器による虐殺の実態 バグダットにおけるクラスター爆弾の使用
・15日の“ヒューマン・ライツ・ウォッチ”の「Newsday」を“Common Dreams”が紹介したものである。
・それによると、米中央軍スポークスマンが匿名で、米軍によるバグダット都市部の攻撃に際して、クラスター爆弾が用いられたことを認めたという。その攻撃は、街の中に配備されたイラクの砲撃部隊とミサイルシステムの破壊を目的にしたものだった。
・“ヒューマン・ライツ・ウォッチ”は「バグダット市内におけるクラスター爆弾の使用は重大な犯罪行為であり」、国防総省に対して「公式に(この事実に対して)回答する」ことを要求している。また“ヒューマン・ライツ・ウォッチ”は、クラスター爆弾が住居にも落下し、多くの民間人被害がでているに違いないと主張している。
・米・英軍の「民間人被害を最小にする方法によって攻撃を実施している」との言葉がいかほどまでに嘘で塗り固められたものであるのか。被害状況、戦闘の詳細が明らかにされるにしたがい、米・英軍の空爆、地上侵略によって多くの民間人・イラク兵士が、実は虐殺されていたのだということがますます明らかなっている。私たちも微力なから、米・英軍の戦争犯罪を追及していきたい。
※U.S. Use of Clusters in Baghdad Condemned 16 Apri 2003
http://www.commondreams.org/news2003/0416-14.htm
○米系マスメディアの戦争報道 内部から批判の声
・「戦争の真実伝わらず CNN看板記者が不満」(共同通信) 18 Apri 2003
抜粋:「「戦場でのイラク兵死体の映像を流さないのは不誠実だ」。イラク戦争に従軍した米CNNテレビの看板記者が、死体や負傷者の映像をカットする米テレビ各局の姿勢を批判、戦争の真実が伝わらない要因になっていると強い不満を表明した。17日付の米紙ニューズデーが伝えた。・・・・・150−200人のイラク兵が死亡したと伝えられたが、ニューズデーなどによると、CNNは死体などを嫌悪する視聴者の反応に配慮、現場から送られてきた死傷者の映像をほぼ全面的にカットした。」
・今更ながらという気もするが、内部から批判が出るほどまでに徹底した検閲を受けていたということ。しかし記者たちの米軍との深い関係にも強い疑問を感じる。果たして彼らに真実を伝えることができたのか。カタールでの記者会見の様子は常に異常なものであった。バグダット「陥落」時の、戦勝を祝うかのような和やかな会見。イラク高官たちの顔写真をコピーしたトランプカードを見せた時の記者の質問。「ジョーカーのサハフ情報省はどこ?」。爆笑の渦の会場。米軍と記者たちのなれ合い。そして、自らが引き起こした悲劇を伝えられず、真実をまともに知らない米国民たち。腐敗した、恐ろしい構図である。
※戦争の真実伝わらず CNN看板記者が不満 (共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030418-00000014-kyodo-int
●4月17日(29日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○モスルにおける虐殺、弾圧 続報(前日分の内容訂正を含む)
・火曜日の群集への発砲。これに続く水曜日の米軍の発砲。水曜日の事件はいまだに詳細が伝わってこないが、政府庁舎から数百メートル離れた市場で発生した模様(AP)。前日伝えた少女の負傷もこの事件に関連か。
・犠牲者が担ぎ込まれた病院の情報。火曜日の事件で14人が死亡。水曜日の事件で3人死亡。米軍は、火曜日の事件における7人の死亡を確認。しかし水曜日に発砲に関しては依然として沈黙。
・多くの市民の米軍への反発が明らかになってきている。「サダムの方がましだった」「サダムは自分の利益を守ることで頭がいっぱいだったが、・・・・・米国も『イラクの解放者』ではなく石油が目的だ」(市民の声、共同通信)。
※Civilians killed as Mosul riots continue 17 April 2003
http://news.independent.co.uk/world/middle_east/story.jsp?story=397931
※「サダムの方がましだ」混乱と無秩序のモスル
http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2003/iraq2/news/0417-838.html
○米軍占領への怒りの声
・イラク全土で米軍占領への怒りの声が沸き起こっている。マスコミもイラクの現実を伝え始めた。
“多くのイラク人が米に対して怒り始めている”
“Many Iraqis Turn Anger Toward the U.S”. By NIKO PRICE, Associated Press Writer
http://story.news.yahoo.com/news?tmpl=story&u=/ap/20030417/ap_on_re_mi_ea/war_anti_americanism&cid=540&ncid=1480
・サダム・フセインが倒されたことを喜んだ市民は、いまでは米の占領へ怒り始めたことを紹介。新たな「抑圧者」アメリカに対する怒り。
・「彼らは侵略者だ」「奴らは我々を粉々にした。奴らは我々に戦争を与え、決して安らかに眠らせてはくれなかった」。このような市民の生の声を紹介。また一方で異なる宗派間の対立、民族間対立が深刻化している実態に触れている。
“イラク:反米抗議行動が強まっている”
“Iraq: Anti-US protests growing” 15 April 2003 (news 24)
http://www.news24.com/News24/World/Iraq/0,,2-10-1460_1348146,00.html
・バグダットにおける米軍占領に反対する抗議行動が日増しに強まっていることを紹介。またナシリアにおける2万人規模の抗議集会の様子も紹介されている。今モスルでは、虐殺事件に対する怒りが渦巻いているという。「米軍は寛容な支配者ではない」との市民の声。
“町中の人々にとっては、これは解放ではなく新たな植民地的抑圧である”
“For the people on the streets, this is not liberation but a new colonial oppression”By Robert Fisk 17 April 2003 (Independent)
http://argument.independent.co.uk/commentators/story.jsp?story=397925
・「米の「解放」のための戦争はすでに終わっただろう。しかし米からイラクを解放する戦争は、たった今始まったばかりである」。この書き出しで始まる本レポートは、戦争とその後の混乱に苦しむイラクの市民が米に対して怒りを向け始めている現状を紹介してる。たしかにフセイン時代における抑圧にも過酷なものであったが、しかし今や米がそれ以上の怒りの対象になっているという。「早く出て行け」との市民の声。
○イラク「解放」の真の目的 米は石油の確保に血眼になっている
・イラク人の米への怒りの背景の一つには、国家の無秩序状態、人道的危機、様々な社会対立を戦争に引き起こしたにもかかわらずそれを放置し、その一方で油田の確保に全力をあげる米の行動がある。
・アムネスティー・インターナショナルは、米軍は油田を確保するのに全力をあげているが、イラクの人々に対してはなんら熱心な取り組みを行っていないことを批判した。そして次のような声明を発表した。「病院、水の供給、市民を保護するよりも、油田を守ることに力が注がれている」と。
※US Said to 'Care More About Iraqi Oil Than Its People'
Published on Thursday, April 17, 2003 by the lndependent/UK
http://www.commondreams.org/headlines03/0417-09.htm
○侵略の犠牲となった子供たち
BBCレポート
「イラクの病院にあふれる小さな犠牲者たち」(Child casualties 'fill Iraq hospitals')
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/2955829.stm
・アリ・イスマエル・アッバス君。マスメディアに頻繁に登場するこの少年の名前を耳にされたことがあるに違いない。彼を除く家族全員が空爆によって殺害され、そして自らの両腕を失った少年。戦争犠牲者の象徴。彼は今クウェート人の援助を受け、彼の地にて集中的な治療を受けている。しかし本レポートは警告する。彼だけが犠牲者でないことを決して忘れてはならないと。
・現地に入った援助団体は、子供に多くの犠牲者が出ていることに対して驚きの声を上げている。「ひどい負傷を負ったのは、アリ・イスマエル・アッバス君だけではない」。これはモスル入りした慈善団体セーブ・ザ・チィルドレンのブレンダー・パティさんの言葉である。「その苦しみが同じように注目されない、同じように傷ついた子供たちが多くいる」。
・モスルにおける無秩序状態は、病院にも暗い陰を落としていることが報告されている。何と職員たちは、素手で略奪者を撃退しているのである。
・セーブ・ザ・チィルドレンは12年間もの間イラク北部で活動を行っており、戦闘期間中においても60人のクルド人スタッフが働き続けた。
○市民を抑圧する米軍
●4月16日(28日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○各地で相次ぐ米軍の虐殺、弾圧
モスルにおける米軍の虐殺
・徐々に詳細が明らかにされている。ネット、各紙で大々的に報じられるようになった。犠牲者の数については幅があるが、少なくとも10人が死亡、数十人が負傷し病院に担ぎ込まれた模様。
・経過も明らかになりつつある。しかし様々な情報が錯綜している。親米派の新市長が群衆に米軍への協力を呼びかけたところ、それに怒った民衆が市長に詰め寄った。それに米軍が発砲。米軍は迫り来る群衆の背後の建物から二人が銃撃したと主張。しかしそれは銃も持たぬ少女であった。彼女も銃撃によって負傷した。また米軍兵士と市民の小競り合いもあったという。
・米軍は市民に支持されていなかったということである。米軍と市民の間には緊張した雰囲気があったのであろう。米兵士はパニックになっていたとの報道もある。
・このような事件を引き起こしたにもかかわらず米軍は、「結果として住民に犠牲者が出たが、連合軍に対する違法な射撃への応戦だった」と開き直った。ようするに攻撃は正当防衛だったというのである。もはや米軍は解放者などではない。侵略者である。「今すぐ帰ってくれ」、これがイラクの大多数の声である。
※Riots greet would-be leader of Mosul 16April 2003 (The Guardian)
http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,937639,00.html
※US admits Mosul killings 16April 2003 (BBC))
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/2951789.stm
※American soldiers fire on political rally, killing at least 10 civilians (Independent)
http://news.independent.co.uk/world/middle_east/story.jsp?story=397631
※U.S. Puts Iraqi Death Toll at 7 in Mosul Clashes (New York Times)
http://www.nytimes.com/2003/04/16/international/worldspecial/16CND-NORT.html
※<イラク戦争>モスルで群衆に発砲 米軍苦しい立場に(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030417-00000121-mai-int
ケルバラ郊外における少年虐殺
・イラク各地で米軍による虐殺が発生している。ケルバラ郊外で15日(?)、米軍兵士が自転車に乗っている少年を射殺したという。少年は武器を携帯しておらず、威嚇行動もとっていなかったという。詳細は今段階で不明。さすがの米軍も、兵士が射殺したことに対して開き直れず調査を開始するという。
※米軍、イラク人少年の射殺事件で調査へ (ロイター)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030416-00000444-reu-int
○バグダット市内の病院が危機に直面してる 国際赤十字委員会からの現地報告
※Baghdad hospitals facing emergency: ICRC
http://english.aljazeera.net/topics/article.asp?cu_no=1&item_no=2497&version=1&template_id=278&parent_id=258
写真 バグダット病院の職員が、冷凍車の中に置かれた民間人の遺体を調べている。
○民間人の犠牲者のカウントを拒む米軍
・国防総省は14日、イラクにおける軍事行動にともなう民間人犠牲者(死亡した人々ならびに負傷した人々)を明確にする予定はないことを明言。ブッシュ政権は、議会法案−戦争による損失によるイラク民間人を特定し、“適正な援助”を与えることを求めている−に答えることを拒んだのである。この法案は、先に可決された戦争関連の財政支出とセットであった。
・米軍は「誤爆」=大量虐殺の事実をまったく認めていない。彼らの答えは、「近くに兵器があり、そこを狙った」「イラクの対空ミサイルである」など、イラクにその全責任をなすりつけた。一つでも「誤爆」の事実を認めてしまうと芋蔓式に責任を問われる。そのことを恐れているのだろう。また検問所における射殺を「防衛措置」「正当防衛」として、その非を認めていない。武力で屈服させたイラク人がすべて敵に見え、一時でも気を緩めることができないのだろう。クラスター爆弾による犠牲者など、彼らの眼中にはまったくない。国防総省は米兵士の死者が121人であることを(15日)を報告しているが、イラクの人々の命は彼らにとってはどうでもいいものらしい。
・世界は米軍の虐殺を記憶している。世界の仲間たちと、米軍の虐殺=民間人の犠牲の責任を追及しよう。そして今なお続けられている民間人の殺害、弾圧を糾弾しよう。
※U.S. Has No Plans to Count Civilian Casualities
Congress Calls for 'Assistance' to Iraqis For War Losses
http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn/A26305-2003Apr14?language=printer
○バグダットにおける米軍への抗議
●4月15日(27日目)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○バグダット
・昨日までの散発的な戦闘も伝えられず。
・米軍に対する市民の抗議行動が報道され始めた。人道的危機を引き起こした米軍へのイラクの人々の怒り。
・生活に対する不満だけにとどまらず、空爆に対する批判、軍事占領に対する批判のスローガンもある。米軍の軍事占領を歓迎していない。
※Anti-US protests again in Baghdad
http://english.aljazeera.net/topics/article.asp?cu_no=1&item_no=2656&version=1&template_id=277&parent_id=258
・ナシリアでは、米国主導の反フセイン派の会合への抗議行動。2万人以上が、米軍が設営した会場を取り囲んだ。
※イラクで2万人が抗議行動 米国主導の会議に反発
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030415-00000184-kyodo-int
○北部
モスル 米軍群集に発砲 10人以上が死傷
・詳細は明確ではないが、モスルの親米派の新市長の演説に抗議した群衆に対して米兵が発砲。10人が死亡、100人以上が負傷した模様。
・米軍は正当防衛を主張。「銃を発砲した二人がいた」。
・恐れていた事態が発生した。イラクの人々の支持を受けていない米兵にとって、抗議する人々がすべて敵に見えているのであろう。今事件は米軍による虐殺であり、決して「正当防衛」などではない。
※<イラク戦争>モスルで米軍兵士が群衆に発砲 10人以上死亡
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030416-00000146-mai-int
※Clash in Mosul Complicates Already Troubled U.S. Arrival
http://www.nytimes.com/2003/04/15/international/worldspecial/15CND-NORT.html
※At least 10 killed in Mosul shooting
http://www.middle-east-online.com/english/?id=5149
キルクーク 相次ぐ市民の犠牲
・キルクークにおける深刻な人道的危機の現状 ヒューマン・ライツ・ウォッチからの報道。
・4月10日以降、多くの市民が殺害されているとのこと。そして略奪、武力衝突は依然として続いているという。米軍の現在のやり方はジョネーブ協定に違反していると、彼らは批判している。
※Iraq latest: At-a-glance BBC News Online charts the latest developments in the Iraq conflict
http://news.bbc.co.uk/2/hi/in_depth/middle_east/2002/conflict_with_iraq/at_a_glance/default.stm
○米軍の空爆=爆発に苦しむ市民 記事紹介
三人の子供が死んだことを、家族は父に告げられないでいる
Family Struggles to Tell Father That Three Daughters Are Dead
Published on Monday, April 14, 2003 by the New York Times
http://www.commondreams.org/headlines03/0414-06.htm
バグダット 4月13日−「私は彼にどのように告げたらいいのか分からない」。シンドウス・アッバスさん(30歳)は今日こう語った。彼女の夫であるサード(34歳)が、苦しそうに、また無関心な様子で腰掛けている歩道の外の背後の窓辺に目をやりながら。彼は二日前に退院したばかりである。彼女は、彼には聞こえないように話をはじめた。
「それは普段の愛情とはまったく違う」。アッバスさんはこう告げた。「彼はそのことで気が変になりかけている。他の父とは事情がまったく違う」。
近所の人々、親族、彼女はいまだに告げることができないでいる。3人娘−マーワ(13歳)、タバレク(8歳)、サフィア(5歳)たちが、米軍の空爆が始まった3日目の、あのアパートを破壊したミサイルから生き残ることが出来なかったことを。誰もが、米軍のミサイルのせいだと確信している。
アッバスさんはその日の夕刻、負傷したかかとをいすの上で支えながら、胸、足、腕を吹き飛ばした破片による傷を抱えながら、その夜の出来事を語った。アパートが噴煙に覆われ、どのようにして子供たちを引きずり出したのかを。彼女の夫は、3人の娘を助けるためにアパートに引き返したのである。その時、ミサイルが爆発した。「私の子供たちはまだ病院にいるよ」とアッバスさんは言った。これこそ、誰もが彼に伝えたいことなのである。
アメリカ軍の高官が繰り返し、イラク攻撃に際して民間人の犠牲者を回避する努力をしていると強調する。しかし一方では、多くの犠牲者が出ている。またサダム・フセインの政権は、いまや存在しない。細々とした取り組みによって、負傷者と死者を数えられているだけである。
確かな数はいまだに分からない。しかし爆弾と銃撃によって数百人が死に、さらに多くの人々が傷ついたことは明らかである。また負傷者たちは大変高くつく治療を必要としている。
「サダム・フセインは去った。そして私たちは、死ぬためここに取り残された」。サダム医療センターの外でタクシーを待ちながら路上に立っていたフセイン・ナメーさん(22歳)はこう語った。
この施設はほとんど機能していない市の病院の中にあって数少ない機能している一つであり、−大半が略奪され、職員は退避した−、ナメーさんのいとこであるトーマ・サバー・トーマさんもその一人であるが、負傷者であふれかえっていた。(土曜日には、海兵隊がこの病院の外で狙撃兵の銃弾によって殺された。)
今日トーマさん(18)は、裸足で、呆然と、無言で立っている。彼の鼻は砕け、口は腫れ上がっている。流動チューブは彼の鼻につながれている。彼のいとこにおると、一週間前のカドヒム地区に落とされた米軍の爆弾の破片によって彼の舌の一部が吹き飛ばされたのである。
通りでは、アデル・サムライさん(40歳)が病院のベットで横になっていた。路上まで移動し、タクシーを待っていた。彼の兄弟であるアリさん(50歳)は、兄が負傷した当日のことを語った。米軍の部隊との間で銃撃戦が発生した木曜日の夜、兄は家で座っていた。胸を二度撃たれた。米軍のものだと確認できる銃弾であり、一発は貫通し、もう一発を医師が摘出した。
「多くの人々が殺された」とアリさんは言った。彼は、米軍の爆弾と主張するものによって殺された9人の葬儀からいま病院に駆けつけたのであった。「説明するまでもなかろう。アメリカ人はどん欲で、我々の資源が欲しいだけなのだ。我々は、一度たりともアメリカを攻撃していない。」
狭い路地とバルコニー、シーア派のイスラム教徒が住んでいるバグダットの旧市街アワ地区。アッバスさんの親族は、どこにミサイルが着弾したのかを示すために、屋根の上にまで昇った。屋根の上にある羊を囲うための金属棒をはぎ取り、給餌用の金属製のトレイを突き抜けて、ミサイルの破片はアッバスさんの小さな家に飛び込んだ。
アパートの中でミサイルの破片は壁を跳ね回り、床に突き刺さっていた。彼の4人の娘たちが眠っていた近くに。
アッバスさんは自らの足に傷を負いながらも、二人の息子と娘を抱きかかえながら飛び出した。彼女の父親は砲弾に気がつかなかった。残りの家族を助けに再び駆け込んだ時に爆発した砲弾に。
家屋の壁は今、肉片によって黒ずんだ。少女の片足は吹き飛ばされ、天井に備え付けられたファンに片足がぶら下がっていた。
「イスラエルでさえ、ここまでひどいことはしないだろう」とアッバスさんのいとこであり、アパートの清掃を手伝ったティア・ラシッドさん(35歳)は言った。「言語道断。これは犯罪行為だ」。
傷を負った娘のサラ(14歳)の近くに座っているアッバスさんは、彼女が3人の娘たちがアメリカによって殺されたことに怒っていても、何も言うことができない。
「私は心を失っていました」と彼女は言った。「何を言っていいのか、分からない」。
●3月20〜4月14日