[翻訳資料]クラスター爆弾によって、どれだけの民間人が殺されたのか。
IRAQ BODY COUNT
解説と分析 5月6日
ペンタゴンは1人だと主張。しかし“Iraq Body Count”は、最低でも200人の民間人犠牲者を主張する。HOW MANY CIVILIANS WERE KILLED BY CLUSTER BOMBS?5月6日
The Pentagon says 1: Iraq Body Count says at least 200.
(http://www.iraqbodycount.net/editorial.htm)
クラスター爆弾によるイラク民間人のダメージを米政府が軽く扱おうと望むことは、理解できる。戦争の規則は、本質的に無差別・殺戮的な兵器の使用を禁止している。クラスター爆弾は、民間人と兵士の間を区別する義務に従う慣習において、使用することが認められない兵器である。民間人のいる地域においてクラスター爆弾を使用した者たちは、それ故に、戦争犯罪の責めに自らをさらすものである。
そうであったとしても、クラスター爆弾によってわずか1人だけが死亡したとするペンタゴンの先月の主張は、現実に対する厚かましいばかりの歪曲に、あっと言わせるほどのものであった。統合参謀本部のスタッフであるリチャード・マイヤーズ将軍は4月25日、次のように述べたのである。
イラクでは、同盟軍の約1500発のクラスター爆弾の内1発のみが、民間人犠牲者を生み出した。これまでに使用されたすべてのクラスター兵器と標的に関する初期段階の評価は、約1500発の内の26発だけが、民間居住区の1500フィートの範囲内で標的に命中したというものであった。またこれまでにおいて、クラスター兵器による二次的ダメージのケースとして記録されているのは1例のみである。1)
しかし、これは全体像のほんの一部に過ぎなかった。
[...] マイヤーズは、さらに多くの民間人犠牲者を生み出したと考えられている地上発射クラスター兵器(surface-launched cluster munitions)に関して、何も述べていない。
「クラスター兵器がイラク民間人に対してほとんど損害を与えなかったことを暗示することは、極めて不誠実である」。ヒューマン・ライツ・ウォッチのケネス・ロス氏はこのように述べた。また「事実をごまかす代わりにペンタゴンは、民間人にとってさらに致命的な、陸軍のクラスター兵器の使用について明確にする必要がある」と。2)
一般に公表されたプレスとメディアからの報道に基づく“Iraq Body Count”が提出したデータは、次のことを示している。少なくとも200人の民間人の死者がクラスター爆弾によるものであると、既に信頼できる報告が行われており、さらに172人の他の兵器も関係したクラスター爆弾との結びつきがより確かでない死者が報告されている。下の表(注:ここのでは割愛)は、372人の死者と、報告されたすべてのクラスター爆弾が関係した出来事についての情報を列挙している。それは、372人の内の死者147人が爆発しなかった爆弾、あるいは“不発弾”によるものであり、この数のおよそ半分が子供であったことを明らかにしている。
戦争期間中ずっと、クラスター爆弾は同盟軍によって使用され続けた。バスラ、ナシリア、ヒッラ、ナジャフ、マンナリア、バグダッド。すべての都市では、クラスター爆弾による爆撃によって、多くの民間人の命が失われた。その報告は、読むと吐き気を催すものである。例えば、インデペンデント紙のロバート・フィスク記者は、次のように書いている。
女性と子供の恐るべき写真がもっと後になって、ロイター通信とAP通信が、市街地にカメラを持ち込むことをイラク当局に許可された後に、現れた。それらの写真は、西側報道員によるイラク側の前線からの最初のものであった。それに写っていたのは、半分に引き裂かれた赤ん坊と切断間際の傷を追った子供たち、明らかに米軍の砲弾とクラスター爆弾によるものである。ビデオテープのほとんどは、テレビで上映するにはあまりにも恐ろしすぎた。通信社のバグダットにいる編集者は、21分の内のわずか数分のみしか、送ることができないように思えた。そこには、カメラに向かって自分の赤ん坊の断片を差出し、“卑怯者, 卑怯者”と叫ぶ一人の父親が写っている。着飾ったドレスをまとった女性を含む、トラック2台分の死体が、ヒッラ病院の外に見られた。3)
クラスター爆弾は殺しただけではない。特に、耐え難い方法によって、人々を傷つけた。“アジア・タイムズ”のペペ・エスコバル記者は4月10日、次のように報告した。
バグダットのいたるところで、市の5つの主要な病院は、民間人死傷者の殺到に十分対処できていない。医師は、空爆のために病院に行くことができない。アル・キンディ病院のオサマ・サーレー・アル・ドゥレイミ医師は、その過半数の患者が女性と子供で、弾丸と爆弾の破片、その大部分はクラスター爆弾の破片の犠牲者であることを確認した。「彼らはすべて民間人ですよ」と医師は述べた。また「戦闘機や大砲の砲撃にあったのです」と。赤十字国際委員会は、(ICRC)は、ほとんど絶望的な状態にあった。衛星電話によって接触できたICRCのスポークスマンであるローランド・ヒューガニン・ベンジャミン氏はそれでも、一時間に100人、少なくとも一日100人もの割合で犠牲者が病院に到着していることに言及した。4)
ヒッラの病院を訪れたミラー紙のレポータであるアントン・アントノウィックズ記者は、次のように書いている。
私が数えた168人の患者の中で、砲弾による負傷の治療を受けていたのは、1人ではなかった。患者は皆、男性も、女性も、子供も、爆弾の破片による負傷を負っていた。それが彼らの体に浴びせられたのである。皮膚を黒こげにした。頭を砕いた。手足を引きちぎった。「あなたの目撃したすべての負傷者は、クラスター爆弾によるものだ」と、ハイダー・アッバス医師はアントノウィックズ記者に言った。「大部分の人々は、南部、西部周辺から来た。その犠牲者の大多数が子供たちであり、外にいたために死んだ」。5)
そのダメージは、たとえ爆弾が降り注がなくなっても、終わっていない。爆発しなかったクラスター爆弾の子爆弾は、人を殺し、傷つけ続けている。その犠牲者は圧倒的に子供たちである。“アムネスティー・インターナショナル”は次のように述べている。
おのおののキャニスター(円筒型の親爆弾)には、202発のソフトドリンクの缶程度の大きさの子爆弾が詰まっている。これらのクラスター爆弾は、フットボール場2面に相当する広範囲にわたってばらまかれ飛び散る。子爆弾の少なくとも5%が衝撃によって爆撃せず、実質上の対人地雷となる。それは、それに触れるかもしれない民間人を含む人々に脅威を与え続けるからである。6)
このことは、1発のクラスター爆弾から、平均して10発の子爆弾が、不発弾として残されることを意味する。仮に、1500発のクラスター爆弾を使用したとするペンタゴンの数値を受け入れるならば、それだけでも、15000発にものぼる不発の子爆弾が作られたことになる。その1つ1つが数人の民間人を殺し得るのである。
これまで、これらの報道において明確に子ども−−赤ん坊から10代前半までの−−と確認されている犠牲者のほとんどは、直接的な空爆の停止後に殺されたのである。子供たちは、きれいに彩色されているなどで興味を誘う子爆弾に触ったり拾おうとしたりしたからである。毎日さらに多くが死に、今後何ヶ月にもわたって死に続けるかもしれない。AP通信のハムザ・ヘンダウィ記者は、バグダットの病院で、最も悩ましいケースの一つに遭遇した。
荒廃した緊急治療病棟では、モハメド・スレイマン氏は、生後8ヶ月の彼の娘、ロワンドちゃんを興奮して探していた。彼女は、爆撃後、兄弟がうっかり家に持ち込んだ爆弾が爆発し担ぎ込まれたのだ。「彼女の顔をよく見てくれ。そして彼女がどんなに美しいか、見てくれ」と、彼は叫び声をあげた。命を失った、毛布にくるまれた赤ちゃんの体を見つけた時のことである。赤ちゃんの目は、半分開いており、鼻と口からは、血が流れていた。7)
赤ちゃんは他の子供によって家に持ち込まれたクラスター子爆弾を乱しながら床をはっていたので、体の下半分が吹き飛ばされたのである。8)
4月8日、アムネスティー・インターナショナルは、次の主張を行った。
独立した、徹底した調査が行われなければならない。そして戦争法へのどのような違反に対しても責任を負うと決定を下された者は、法に照らして処断されるべきである。米英当局は、クラスター爆弾のこれ以上の使用を直ちに停止することを命じるべきである。9)
マイヤーズ将軍が彼の“body count”を1人と発表した同じ日、サダム・フセイン下の犯罪に関する国連人権委員会の調査団がサダム後の時期に関心を向けるのを許そうという国際的な努力を米が妨害したことは、私たちにとって驚きではない。10)
数カ国は、先月の侵略後、現在イラクを統治している米軍と英軍の行為を検討する権限を、この調査団に与えることを望んでいた。
そのような妨害は、米と英には隠さなければならない多くのことがあるということを強く示唆している。私たちが公表してきた記録は、イラクの人々が「この戦争を済んだことにする」よう求められる前に、十分に語られることを要求する資格がある申し立ての、ほんの一部にすぎない。世界の大多数の人々は、このようないかなる要求も支持するであろう。
John Sloboda と Hamit Dardaganによる Tuesday May 6th 2003
参照
1) Agence France-Presse April 25, 2003
2) Human Rights Watch April 25, 2003
3) The Independent April 03, 2003
4) Asia Times April 10, 2003
5) The Mirror April 03, 2003
6) Amnesty International April 08, 2003
7) Associated Press April 12, 2003
8) Newsday April 22, 2003
9) Amnesty International April 08, 2003
10) Reuters April 25, 2003
この記事を紹介している他のサイト
※Pentagon challenged over cluster bomb death (The Gaurdian) 7 May 2003
http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,951942,00.html
※More than 200 civilians killed by claster bombs (ELECTRONICIRAQ.NET) 7 May 2003
http://electroniciraq.net/news/776.shtml