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女性2000年会議、日本NGOレポート
by NGOレポートを作る会, 1999.08.13
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K. 女性と環境

1.はじめに-3つの基本的視点

2.主に国内問題として

  1. 化学物質と生命倫理
  2. 国土の環境を守る
  3. データベースの継続的蓄積と情報の公開
  4. 女性の人材育成・環境運動の支援・環境教育

3.アジア、世界向けにとりくむこと

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1. はじめに - 3つの基本的視点

 今回の、国連に対する政府の回答報告書は、環境問題にたいし、終始「支援」の域から出ておらず、かなり消極的といわざるをえない。ひとつには、政府自身が、女性と環境にたいする「視点」をもっていないことが、その原因と思われる。

 20世紀の、経済発展優先主義、大量生産、大量消費、大量廃棄の結果、我々は地球環境に大きな負荷をあたえてしまった。女性も、この人為的環境にもっとも敏感でありながら、男社会のつくった経済優先主義と、生活の便利さに慣らされ、この状況に大きな圧力をかけることなく、21世紀を目前にしている。 私たちはまず、その反省とともに明日の地球環境を真剣に考え、次世代のためにも国境を越えて21世紀へともに行動を起こすことを、以下の視点をあげて、確認したい。

 第1に、環境とジェンダーの問題。 周知のように、環境破壊は世界どこでも、「力のない人々」にしわ寄せされている。熱帯林の伐採、ODAで輸出されるゴミ、ヨーロッパからアジアに輸出される核廃棄物、都市のスラム化、過疎地のゴミ処理場、産業廃棄物の埋めたて等々、枚挙にいとまがないほどである。 女性も、社会的につくられた差別のなかにある限り、その影響をからだ(内なる環境)に、日常の生活にもろに受けている。しかし、地球の生態系のなかでみるとき、それはさらに次世代の子供たちに、他の動物、植物、生きとし生けるものいわぬものたちに、及んでいる。「女性と環境」という問題を提起するとき、まず生きものと地球にたいする感受性と、社会のなかで差別されている人々とくに女性の痛みにたいする共感を根底に据えなければならない。

 第2に、環境問題は男女を問わず、21世紀への最大の課題であり、また女性がもっとも敏感に反応して活動しているにもかかわらず、その政策にたずさわる人は、ほどんどが男性であるということ。

 NGOなど、草の根で有害化学物質や水問題、大気汚染の問題、食品公害や共同購入の問題、ゴミ問題、ダイオキシンを含む外因性内分泌撹乱物質の問題に取り組んでいるのは大半が女性であるが、地方自治体や関係省庁(環境庁、厚生省、建設省、農水省、通産省など)では、意思決定の場に女性の担当者はほとんどいない。

 1992年のリオ地球サミットで採択された「アジェンダ21」の24章には、天然資源管理における女性の重要な役割がうたわれており、1995年北京女性綱領にも、「K女性と環境」において、女性は天然資源の管理者・生産者として、持続可能な開発と、人びとの生活の持続に重要な役割を果たしていると明記されている。

 しかし、政府の報告書にはこのような視点は明記されておらず、また現状において女性の意思決定権は遅々として確立されていない。エンパワ―メントのために政府の「積極的措置」(affirmative action)は急務であり、担当職員に女性と、そしてNGOを積極的に登用するよう、求めたい。

 第3に、環境問題は経済と深くかかわっているために、企業の姿勢を正すことなしに、解決することが困難だということ。市場に出回っているほとんどの商品を生産・販売している企業は、また環境や人体に有害なものや大量の廃棄物を日々生み出している。政府はこれらの企業への指導と規制をつよめるとともに、国際的にもその姿勢を貫いてほしい。

 さらに、これらの政策を有効にするために、経済的インセンテイブ、たとえば奨励金や罰則や税制など、実効のある施策に取り組んでもらいたい。

 以下、日頃環境問題に取り組んでいるさまざまな女性団体から寄せられた意見をもとに、提案をしたい。

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2. 主に国内問題として

1.化学物質と生命倫理

 便利で快適な生活のためとして、人間が開発した化学物質は、報告されているだけでも1200万あるといわれている。それらの化学物質は、生態系に、人体に、特に女性に、大きな影響を与えている。

a) ダイオキシンの規制がようやく発表され、TDI(1日摂取許容量)が国際基準ぎりぎりの4pgと出たが、1pgまでもっていくよう努力をお願いしたい。 また、外因性内分泌撹乱化学物質対策では各関連省庁が連帯して行うといって いながら、まだその積極的姿勢がみえない。早急にその調査・情報開示を行 い、生産過程からの規制にとりくんでもらいたい。

b)人間のからだ、とくに女性の身体に影響が危惧される遺伝子組換え食品 を明示すること。

c)ピルの解禁に伴い、その副作用情報の収集と提供を行うこと。

d)有害化学物質の規制をうたったPRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法が成立した。まだ200種類の化学物質についての規制であるが、外因性内分泌撹乱物質をはじめ、追加すべき物質や調査のフォローアップにつと めてほしい。

e)農薬の空中散布をやめ、農薬の使用とくにPOP's(残留性化学物質)を厳しく規制すること。

f)工場の降下煤塵の規制を行うこと。

g)合成洗剤、プラスチックなど有害人工化学物質の製造・使用を規制すること。

h)近年は、国境を越えて臓器まで売買されるようになり、遺伝子レベルから人体、環境まで、生命が経済優先の法則に支配されている。生命を育む女性としてはとくに、上記の分野を含めた生命倫理の確立を求める。

2.国土の環境を守る

a)食糧の自給率を高め、森林や河川、周辺の漁場を持続的に利用できるよ うにし、有機農業の推進、生ゴミの資源化など国土の環境を守る政策に転換すること。

b)自然環境の整備と維持に果たす農山村社会の女性の重要な役割にかんがみ、これら女性の知識・経験が、環境および地域開発に関わるあらゆるレベルの意思決定に反映されるようなしくみをつくる。また、これを促進すべく女性の人材育成をはかる。

c)町づくり(廃棄物処理場、ゴミ政策を含む)において、女性の視点を入れた政策を計画・アセスメントの段階から反映するために、各段階の政策会議へ女性とNGOを参加させること。

d)資源再利用やリサイクルなどの環境政策の実施にあたっては、女性の「無償労働」に依存しないシステムをつくること。

e)廃棄物処理にあたっては、排出者の責任を明確にし、負担させるこ と。

3.データベースの継続的蓄積と情報の公開

a)母体や次世代に影響があると思われる化学物質は、長期にわたる調査・研究が継続的に行われなければならない。そのデータベース化を早急にはじめるべきである。

b)原子力発電所や化学工場の事故がたびたび起こっている現在、放射能物質などリプロダクティブ・ヘルスに重大な影響をもたらす汚染状況の情報を迅速に公開し、予防原則にのっとた対策を講じるべきである。

4.女性の人材育成・環境運動の支援・環境教育

a)多様な環境問題にジェンダーの視点を入れるために、環境庁(省)はじめ地方自治体は、女性のスタッフをふやし、また資源管理、生命・環境倫理、環境保全技術などの女性専門家を育成する。

b)行政は、消費削減プログラム(Demand Side Management)などの女性専門家を養成し、自治体ごとにモデルプログラムを作成する。

c)行政は、地道な環境調査(大気汚染、水質、ゴミなど)を継続的に行っている地域NGOとくに女性NGOに、資金援助をする。

d)学校、地域、企業向けに「環境教育推進ハンドブック」をつくり、その作成と教育には女性が参加する。

e)各地で、またさまざまなレベルで活動している女性環境運動家のネットワークづくりを行うことによって、エンパワーメントをはかる。

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3. アジア、世界向けにとりくむこと

1. 現在行われているODAなどの「国際協力」は、紙、水産資源、アルミなど、日本人に都合のよい大量消費を支えるという性格が強く、現地の経済を助けるど ころか、大量の環境破壊をもたらしている。女性が自分たちの経験を分かち合い、開発と環境問題の解決に参加できるよう、援助を受ける側・援助する側双方の提案提言とくに女性の提案提言できる場を設けるべきである。

2. 世界銀行、GEF、WTOの、環境や開発に関する国際意思決定機関に女性やNGOを派遣する。

3. 草の根の、とくに女性どうしの対等な貿易や経済交流・技術交流を支援して、相手国の環境保護に寄与すべきである。

4. 多国籍企業は、往々にして現地の女性が歴史的に築いてきた技術「知的所有権」をうばい、環境破壊をもたらしている。日本は、関連企業にたいし、その調査と追跡と規制を真剣に考えるべきである。

5. 国境を越えた環境問題として、ごみ、廃棄物の移動、タンカーの垂れ流し、紛争による空中薬物散布や爆撃による化学物質汚染などの環境破壊が進んでいる。また、地球温暖化への二酸化炭素の規制も始まったばかりである。これらにたいし、女性も含めた国際的監視のネットワークが必要である。

 かつての公害は、日本が、世界でも類をみないスピードで近代工業化を進め、経済発展をなしとげたなかで引き起こされた。今日の環境問題の多くは、人々の日常生活や企業活動による環境負荷の増大に起因する。その解決のためには、経済社会全体のあり方や生活様式を見直し、循環型社会システムを国際的に構築することが求められている。地球規模で進む環境破壊に対して、先進工業国の立場からの責任は重い。多くの途上国では、地域の公害と地球環境問題の両方への対応を迫られている。

 全国各地の女性たちの活発な活動にもかかわらず、まだまだ達成すべき課題は多い。日本および国際連合は、科学技術、自然資源、生命倫理、経済や開発などの専門的知識を世界の女性が共有できる場を、いわば「女性と環境」の学校をつくり出してほしい。この研究と交流を通して、はじめて男女共同の、グローバルな地球環境を守ることができると考える。

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